第18回 日本歯科放射線学会記録 - J-Stage

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第18回 日本 歯 科 放 射 線 学 会 記 録 理 事 会,評 議 員 会9月22日 特別講演 頭頸部悪性 リンパ腫の放射線医学的病態生理 信州大,医 教授 座長 宿題報告 口 腔 領 域 に お け る67Gaス キヤンの意義について 神奈川歯大,放 教授 座長 安 1969年,米 のEdwardとHayesが67Ga-citrateを 用 いて ポ ジ キ ン病 患者 の 骨 ス キ ヤ ン を お こ な い,そ の病 域 と り込 み が きわ め て好 も しい との報 告 を した 。 こ の報 告 以 前 か ら著 者 は この核 種 の 有 用 性 に つ い て検 討 をお こな って い た の で,そ の後 引続 い て人 体 の診 断応 用 をお こな って今 日に至 った。 この核種の取込みは細胞質に顕著であって電顕像での模疑実験では ライソゾーム ,細 胞 膜 に取 り 込 まれ るこ とが明 らかであ る。 しか し悪性腫瘍細胞 に選 択的 に取 り込 まれ る機序 については今 は解 明で きていない とし乍 らも今 日まで約60例の自家経験か ら,(1)転移病巣 の発見,(2)腫瘍 の大 き さの推 定,(3)治療効果 の判定,(4)腫瘍の放射線感受性 の推定,(5)腫瘍 の良性 か悪性 の鑑別 お よび(6)上顎 癌 と洞 炎 の鑑 別 な ど 口腔 お よ び隣 接 域 疾 患 の診 断 に大 きな寄 与 が え られ て い る とい う。 但 し この新 しい,一 見有 用 な核 種 もす べ て の場 合 に有効 で あ るわ けで は な く,正 常 組 織 に も当 然 と り込 み が生 じ悪 性 腫 瘍 に だ け限 っ て の取 込 み が 絶対 的 な もの で あ る とは い え な い。 こ の こ とは同 一 疾 患 で も病 期 に よ って治 療 効 果 の程 度 を し めす取 り込 み量 が異 る とい う難 点 が あ る 。 この よ うな 予 見 が外 れ る理 由 は 「67Gaの 取 り込み はDNA合 成度 の高い ほどそれが顕 著であ る」 とい う事 実 か らあ る程 度 解 答 が 引 き出 され るで あ ろ う。 目下,医 ・歯 の両 分 野 を通 じて,こ の核 種 の臨 床 応 用 を多 数 例 につ い て精 力 的 に追 及 を続 け る演 者 の学 究 的 実 りの多 か らん こ とを祈 る もの で あ る。 (62) 62

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第18回 日本 歯 科 放 射 線 学 会 記 録

理事会,評 議員会9月22日

松 本 歯 科 大 学

特 別 講 演

頭頸部悪性 リンパ腫の放射線医学的病態生理

信州大,医

小 林 敏 雄 教授

座長 加 藤 倉 三

宿 題 報 告

口 腔 領 域 に お け る67Gaス キ ヤ ン の意 義 に つ い て

神奈川歯大,放

東 与 光 教授

座長 安 藤 正 一

1969年,米 のEdwardとHayesが67Ga-citrateを 用いてポジキン病患者の骨スキヤンをおこ

ない,そ の病域 とり込みがきわめて好 もしいとの報告をした。 この報告以前か ら著者はこの核種の

有用性について検討をおこなっていたので,そ の後引続いて人体の診断応用をおこなって今 日に至

った。

この核種の取込みは細胞質に顕著であって電顕像での模疑実験では ライソゾーム,細 胞膜に取 り

込まれることが明 らかである。 しかし悪性腫瘍細胞に選択的に取 り込まれる機序については今は解

明できていないとし乍 らも今 日まで約60例 の自家経験か ら,(1)転 移病巣の発見,(2)腫 瘍の大き

さの推定,(3)治 療効果の判定,(4)腫 瘍の放射線感受性の推定,(5)腫 瘍の良性か悪性の鑑別お

よび(6)上 顎癌と洞炎の鑑別など口腔および隣接域疾患の診断に大 きな寄与がえられているとい う。

但 しこの新 しい,一 見有用な核種 もすべての場合に有効であるわけではなく,正 常組織にも当然

とり込みが生 じ悪性腫瘍にだけ限っての取込みが絶対的なものであるとはいえない。 このことは同

一疾患でも病期によって治療効果の程度をしめす取 り込み量が異 るとい う難点がある。 このような

予見が外れる理由は 「67Gaの 取 り込みはDNA合 成度の高いほどそれが顕著である」 とい う事実

からある程度解答が引き出されるであろう。

目下,医 ・歯の両分野を通じて,こ の核種の臨床応用を多数例について精力的に追及を続 ける演

者の学究的実 りの多か らんことを祈るものである。

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一 般 講 演

生 物1(1~3)

1.  マウス放射線障害時の脾ポリアミン代謝

Polyamine metabolism in mouse spleen

after ƒÁ-ray irradiation

阪大 ・歯 ・放

○西 原 平 八 ・淵 端 孟

*阪大 ・歯 ・生化学

加 藤 幸 夫*

Department of Oral Radiology Osaka

Univ,Dental School.*Department

of Biochemistry Osaka Univ,

Dental School

QHeihachi NISHIHATA Hajime FUCHIHATA*Yukio KATO

プ トレッシン,ス ペル ミジン,ス ペル ミンは,生 物界

に普遍的 に分布す るポ リアミンで ある。最近,胚,再 生

肝,腫 瘍組織 な ど,増 殖 の盛 んな組織 では,ポ リアミン

含量 が高 く,ま た,ポ リアミン合成 の律速酵素で あるオ

ル ニチン脱炭酵 素(ODC)活 性 も著明 に亢進す ることが

明 らかにされ,ポ リア ミン と細胞増殖 との密接な関係が

注 目を浴 びている。

我 々は,放 射線 障害後 の組織の修 復 と,ODC活 性及

びポ リ ア ミ ン ・レベル との関係 を明 らかにす るた め,

ddY系 マ ウスに コバ ル ト60ガ ンマ線600ラ ドを全身一回

照射 し,白 血球数及 び脾重 量の変 化 と,脾 臓 のポ リア ミ

ン代謝の変動 を経 時的に追跡 した。

白血球数,脾 臓重量は,い ずれ も照射 の1日 後 です で

に著明な減少が認め られ るが,2週 間後 よ り徐 々に回復

す る。脾臓重量は,放 射線 照射の4週 問後 に,ほ ぼ正 常

レベル にもどる。肝臓重量 も照射後やや減少す るが,脾

臓重量 の減少 に比べ ると,軽 微で ある。

脾臓 にお けるODC活 性 は,照 射10日 後 よ り上昇 しは

じめ,4週 間後 で最大 に達 し,以 後減少す る。 この よ う

なODC活 性 の変動は,脾 臓重量の増加 及び 白血球 数の

回復 とほぼ並行 してい る。 これ に対 して,放 射線照射に

よ る障害の少 ない肝臓 では,ODC活 性 はほ とん ど変動

しない。 したが って,照 射後 に見 られる脾臓 のODC活

性 の著明な上昇は特異的な ものであ り,放 射線 照射後 の

造血機能 の回復 と密接 に関連 してい ると思われる。

正常 マウスの脾臓 にお けるポ リア ミン ・レベルは,プ

トレッシンが,組 織19あ た り152n mole,ス ペル ミジ

ンは1418n mole,ス ペル ミンは803n moleで あるが,放

射線 を照射す る と,プ トレッシ ンの組織 内濃度 は,ODC

活性 とほぼ並行 して上昇 し,照 射4週 間後で最大に達 し

て以後徐 々に減少す る。スペル ミジン ・レベルには,あ

ま り変動 が見 られず,ス ペル ミン ・レベルは,照 射後,

徐 々に減 少す る。

一方,マ ウスに,溶 血作用 のあるフェニル ヒ ドラジン

を体 重1kgあ た り50mg腹 腔内注射す ると,脾 臓重量 は

代償性 に約3倍 に増加 するが,こ の際,脾 臓 のプ トレッ

シン ・レベルは約2倍 に上 昇す る。 これ に対 し,ス ペル

ミジン及びスペル ミンの組織 内濃 度は,ほ とん ど変動 し

ない。

以上,我 々は,放 射線 照射及び フェニル ヒ ドラジン投

与後 のマウスを用いて,脾 臓ODC活 性及び プ トレッシ

ン ・レベルが,造 血機能の回復の際に重要 な役割 りを果

してい るこ とを示唆す る結果 を得 た。

2.  マ ウ ス初 期 胚 放 射 線 感 受 性

Radiation-Sensitivity of Mouse 2-Cell Embryos

東京 医歯大 ・歯放

土 門正 治 ・中村 正

Dental radiology,Tokyo Medical

and Dental Univ.

Masaharu DOMON,Tadashi NAKAMURA

StewartとKnealeの 疫学 的調査 に よれば(Lancet,

1970)胎 児 の放射線感受性 は高 く,子 宮内X線 撮影後 白

血病 による小児 の死亡 の危険度 が増加す る。そ の倍加線

量は,ほ ぼ1ラ ドと推 定 されている。 口腔領域 のX線 診

断時 の胎児の被 曝線 量は1ラ ドを越 える ことはない と考

えられ るが,10~100ミ リラ ド程度 は現 実的 と思 われ る。

しか し,低 線量域での危険度 を知 るには線量一効果 関係

にっいての厳密な理論 が要求 され る。本研究 は,放 射線

感受性 の高い もの の一 つで あるマ ウス受精 卵の致死効果

のデータを集積す るこ とによ り,線 量一効果関係 を考 察

してゆ くことを試みた もので ある。今回は,一 実験結果

(63) 63

について報告 したい。

マ ウス受精卵 の照射及び致死 の判定 は,in vitroで 行

った。 つま り,マ ウスか ら受精卵 を液体培地 内に集 め,

また培地 中でX線 照射 した。照射後,受 精卵 の培養 を培

地 内で行い胚 盤胞(Blastocyst)段 階 に進行 した胚 の割

合 か ら致 死の指標 を求 めたものである。

照射時 のマウス受精卵 の段階 は,2細 胞期で受精後36

時 間程度 である。今回使用 したマウス はチ ャールス リバ

ー社製 の2 .5カ 月齢 のICR系 であ る。卵胞 刺激ホルモ ン

5IUで 処理後,40時 間 目にヒ トゴナ ドトロピン5IUを

投与 した。 これ らの メス を成熟 したICR系 のオスで受

精 し,1.5日 後 に2細 胞期胚 をWhitten培 地(5%FCS

を添加)内 に集 めた。プール した胚 を6個 の小室 に30卵

ずつ移植 し,そ れぞれの小室 に0,25,50,100,200及

び300ラ ドのX線 照射 を した。Siemens社 製 の深部治療

用X線 発生装置 を,200kV,HVL1.12mm Cu,FSD 50

cmで 操作 した。照射後,孵 卵器内 で密封培養 し,3日

目に形態 的に正常な胚盤胞 に成育 した胚 を算 え致死率 を

求めた。

線量一致 死率 関係 をみるために線量 を横軸 に,致 死率 を

たて軸 に とった対数正規確率紙上 にプ ロッ トす る と,こ

れ らの点に合 う直線 を引 くこ とがで きる。つま り,線 量

一致死率 関係 は対数正規確率紙上 の直線 によ り近似で あ

るこ とがわかる。 この直線 か ら,50%致 死率 を与 える線

量,半 致死線量(LD50)を 求 めるこ とがで きる。

今 回報告 した実験結果 では,112ラ ドで あった。更に,

25ラ ドで十分 に大 きな致死率 を検出で き,ま た300ラ ド

で も生残 してい る胚 を得た ことか ら,遺 伝 的にみて比較

的均一 と思われ る胚の集団 に於 て も,放 射線感 受性 の分

布 には大 きな分散が存在 してい ると言 え る。

3.  燕麦細胞癌由来培養株OAT-1975細 胞の放

射線及び各種抗癌剤による細胞不活化

Cell inactivation kinetics with X-rays and

anti-tumor agents in an established

human lung cancer cell line,

the OAT-1975.

*日 大 ・歯放

**放 医研

*御 影 文 徳 ・**大 原 弘 ・**恒 元 博

*安 藤 正 一

*Department of Radiology,Nihon University

School of Dentistry.**National

Institute of Radiological Sciences

*Fuminori MIKAGE **Hirosi OHARA

**Hirosi TSUNEMOTO*Shoichi ANDO

肺 の未分化型小細胞癌 の一っ である燕麦細胞癌 は発育

が速 くかつ浸潤性 で,早 期 に肺 門や縦隔 リンパ節 に転移

し発見時す でに手術不能 なこ とが多 い。

1975年 大原 と関本 は肺 の未分化型小細胞癌 の一つ であ

る燕麦細胞癌 をもっ63歳 男子患者 よ り培養細胞株 の分離

を試みOAT-1975細 胞 の樹立 に成功 した。今回我々は こ

の細胞 の放射線及び各種抗癌剤 による不活化 を調べたの

で報告す る。

細胞は10%牛 血清 を添加 したMEM培 地 を 用いて培

養 し,対 数増殖期 にあるものを実験 に用いた。単層 に成

育 してい る細胞 を0.5%EDTA液 で単離細胞 とし,適

当な細胞濃度に して培 養皿 に移植 した。 この実験皿 を約

3時 間炭酸ガス培養 器(5%炭 酸 ガス+95%空 気)で 培

養 し細胞の付着 をまってか ら細胞 にX線 及び薬剤 の処理

を施 した。X線 照射 は室温 で200kVp,20mA,半 価層1.2

mm Cu,F.S.D50cm,0.5mm Cu+0.5mm Al Filter使

用 とい う条件下 でお こないその時の線 量率は102R/min

であった。細胞 の薬剤処理 はそれ ぞれ の薬剤 を適 当濃度

含 む培養液 と交換 し作用 時間は濃度反応 曲線 を求 める場

合 は1時 間,時 間反応 曲線 の場合 は20分 か ら36時間 まで

とした。処理後細胞 をDulbecco's Phosphate Buffer

Salineに て2回 以上洗浄す る方法 をとった。その後生存

細胞の コロニー形成 のため薬剤 処理 細胞 を10~12日 間炭

酸 ガス培養器 にて培養 した。 この方法 によ りX線Ble-

omycin A5,Mitolnycin C,Carbazielquinone,Adria-

Inycin,Vincristine,Actinomycin D,Hydroxyureaに

つ い て 細胞 の投与量一生存率 に関す る反応 曲線 を求 め

た。そ の結果,細 胞 のX線 に対 す る生存率 曲線 のパラメ

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ー タ ー はD0=85R ,Dq=229R,n=10.5で あ りHela

S3細 胞 の それ と比 較 して 放 射 線 感 受性 が 高 い こ とが わ

か った 。 また そ れ ぞ れ の 薬 剤 に対 す る細 胞 の反 応 曲線 は

薬 剤 に関 して 特 徴 的 な 型 を示 した 。各 種 薬 剤 に対 す る細

胞 の50%生 存 率 に関 す る濃 度 はBleornycin A5 17μg/ml,

Mitomycin C 0.27μg/ml,Carbazielquinone 0.005

μg/ml,Adriamycin 0.42μg/ml,Vincristine10.0μg/ml,

Actinomycin D0.45μg/ml,Hydroxyurea 2mM/36

hoursで あ っ た。 これ らの 結 果 を従 来 他 の細 胞 で得 られ

た 結 果 と比 較 検 討 した 。 ま た これ らの薬 剤 に対 して高 感

受 性,中 等 度 の 感 受性 お よび低 感 受性 を示 す もの と三段

階 に分 け る とMitomycin C,Carbazielquinone,Adri-

alnycinに 対 してOAL-1975細 胞 は高 感 受性 を 示 し,

Bleomycin A5,Actinomycin Dに 対 して は 中等 度 に,

Vincristin, Hydroxyureaに 対 して は低 感 受性 と判 定 で

き る。 尚,文 中Do値 は 生 残 率 曲線 の 直線 部 分 に お け る

63%致 死 線 量(又 は濃 度)を,Dq値 は生 残 率 曲線 で直

線 部 分 の延 長 と横 軸 の 交 点 の線 量(又 は濃 度)を,ま た

n値 は 曲線 の直 線 部 分 の延 長 線 とY軸 の交 点(外 挿 値)

を示 す 。

座長のまとめ

岡山大医 ・口外

西 嶋 克 己

演題1,組 織増生 の誘発 に重要な役 割 を果 す と考 え ら

れ るポ リア ミン代謝 について,放 射線 障害後 の組織修復

との関係 をマ ウスを用 いて経時的 に実験観察 した もので

あ る。600ラ ド全身1回 照射後,白 血球数 および脾臓重

量は4週 後 にほぼ正常 レベルに回復 したが,ポ リア ミン

合成 の律速酵 素であ るオル ニチン脱炭酸酵素活性 および

その生成産 物であるポ リア ミンの うちプ トレッシンの レ

ベルが脾臓 重量 の回復 開始 に先行 し,4週 後 に最大 に達

し,以 後,徐 々に減少 した。 このこ とか ら造血組織 の放

射線 障害 か らの回復 に もポ リア ミンが重要な役割 を果す

こ とを示唆 してい る と結論 してい る。

この種 の酵素 の働 き,酵 素活性 の支配機構 などさらに

追求すべ き興味 ある問題で ある。

演題2,マ ウス初期胚 の放射線感受性 について受精堺

の致死効果 の線量依存性 を検討 した もので ある。2細 胞

期 の胚 を0~400ラ ドの線 量 でエ ックス線 照射後 培養,

5日 目に胚算定,致 死率 を得,半 致死線量(LD50)は ほ

ぼ50~100ラ ド程度 で胚が非常 に 放射線 感受性が高い も

のであった こ とも報告 してい る。本 演題 に対 し,神 奈川

歯大放射線 の閑野政則 よ り2期 細胞の時期に最低何 ラ ド

位 照射 した時 に変化 が出て くるのか,さ らにこの実験 結

果 を臨床 に結びつ けれ ば歯科領域 の撮影時 においては生

殖線 に対す る影響 はほ とん ど無視 して良いか との質問が

あ り,こ れ に対 して,演 者 よ り25ラ ド程度でほぼ対 照群

と差 が出 て くるよ うで あ り,臨 床の場 においては実際に

は生殖腺 に対 して数10ミ リ ラ ドの照射 もあ り得 ると考

え,白 血病 の誘発 の可能性 も考慮すべ きで あろ うが,誘

発線量 の下限 に関 して は不明で あると述べた。悪性腫瘍

の誘発 は放射線 の もつ生物学的効果 の不利益の面 の宿命

であ り,放 射線防護 の問題 とも関連 して今後 ともこの よ

うな基礎実験 の積み重 ねが重要で ある。

演題3,燕 麦細胞癌 由来培養株(OAT-1675細 胞)に

つ いて放射線お よび各種抗癌剤 による細胞不活性化 を調

べ たものである。エ ックス線 に対す る感受性は線量 の増

加 に伴い高 くな り,Mitomycin C, Carbazilquinone,

Adriamycinに 対 して は高い感受性 を示 し,Bleomycin,

Actinomycin Dに は中等度 に,Vincristine,Hydroxy

ureaに 対 し ては 感受性 が少 なかった と報告 してい る。

近年 とみ に進歩 した組織培養法 によ り各種腫瘍細胞 をそ

の特性 を失 うこ とな く,培 養,動 態研究 が可能 で,今 後

これ ら培養法 のさ らに多様 な利用 が期待 できよ う。

生 物II(4~5)

4. 放射線照射による下顎骨血管像の変化

Experimental studies on the vascularization

of blood vessels in mandible

following irradiation

岡山大 ・医 ・口外

○石 田 元 久 ・西 嶋 克 己

Department of Oral Surgery,Okayama

University Medical School

Motohisa ISHIDA,Katsumi NISHIJIMA

顎 口腔領域 悪性 腫瘍 に対す る放 射線 療法 は重要な療法

の一つで あるが,こ の放射線 照射 による血管像の変化は

治癒過 程の指針 として,ま た外科 的な らびに化 学療法 併

用の際の指針 として重 要な もの と思われ る。そ こで コバ

ル ト照射 による下顎骨血管像 の変化 および肉眼的,病 理

組織 学的所 見について比較 検討 したので報告 した。

実験材料 として健康 な成犬60頭 を使用 し,そ の右下顎

臼歯部 に照射 した。照射方法 は1回300radで,4,500rad

までの8階 梯 にっいて,血 管像 はク ロロパ ーチャ血管注

入法 を用 い透 明標本作製,一 部 は病理組織標本 を作製 し

観 察 した。

(65) 65

血 管像 では,顎 骨 において600radま では著変はみ ら

れ なか ったが,900~1,500radで 血管 の走向が不規則で

特 に1,200radで は著 明な毛細血管 の増加 がみ られ,大

小不同の蛇行す る 毛細血管 がみ られ た。3,000radで は

蛇 行す る太 い血管 は,や や数 を減 じ,4,500radで 細い

毛細血管 が多 く不 明瞭 とな り,所 々断裂 していた。歯髄

血 管は,600radま で は著変 はみ られな かったが,900

radで 軽度 の蛇行 と,や や数 の増加 がみ られた。1,200

radで は大小 の血管 がみ られ,著 明な数の増加 と蛇行が

み られた。2,400radに なる と血管 は太 く蛇行が著明 と

な り,4,500radで は歯髄腔の 狭窄 と血管 の 狭小化お よ

び数の減 少を認 めた。

病 理組 織所見 において,歯 髄では,600radで 毛細血

管が増加 し血 管拡 張,充血 および浮腫 がみ られ た。1,200

radで は細静脈 に血管拡張 と血行静止 がみ られ,細 動脈

は迂曲 し,内 皮細胞の増殖 を伴 う毛細血管 の増生 が認 め

られた。2,400radで は軽度 な 血管拡張 がみ られ たが,

浮腫は減弱 し,線 維芽細胞の増生がみ られ,全 体 として

結合組織が増加 していた。また象牙芽 細胞 の胞体 は空胞

状 を呈 していた。 骨髄では,1,500radで 瀰漫性 の浮腫

がみ られ,造 血細胞は消失 していた。2,400radの 骨 で

は,所 々に骨細胞の核の 脱 落 した ラ ク ー ネがみ られ,

4,500radで は骨梁 は層状構造が不明瞭 とな り,骨 細胞

窩 はほ とんど空虚 と な り,全 体 として骨 の呼吸像 を呈

し,部 分的 に腐骨片が散見 された。

肉眼的所見 では,1,500radよ り歯肉お よび 頬 粘膜に

軽度 の脱色2,400radよ り頬部 の 脱毛傾向な らび に歯

肉部 に軽度 の出血,3,000radで は歯肉 お よび 頬 粘膜 の

脱色が著明で,一 部軽度 の潰瘍形成 をみ とめた。4,500rad

では歯 肉は一部壊死 を呈 し,浮 腫お よび脱毛が広範囲 に

み とめ られた。以上 よ り血管像および病理 組織所見 に関

連性 がみ られ たが,血 管像 においては特 に各照射線量 に

よる変化 をみ とめ られ た。

5.下 顎骨骨傷治癒過程に関するX線 学的研究

Roentgenological Studies on the Healing

Process of Experimentally Fractured

Bone of Mandibula.

日歯大

○嶋田 康 ・山崎良雅 ・北村信安

千葉正春 ・加藤二久 ・佐藤 功

古本啓一

Department of Radiology,Nippon

Dental University,Tokyo

Kou SHIMADA,Yoshimasa YAMASAKI

Nobuyasu KITAMUKA,Masaharu CHIBA,

Tuguhisa KATO, Isao SATO,

Keiichi FURUMOTO

骨傷,骨 折治癒過程の研究は,す で に数多 く研 究報告

され,骨 内層 のカンビーム層 と内骨膜 との骨芽細胞 が関

与す るとい う説が多 くの研究者に支持 されてい る。

骨傷治癒過程 に関す るX線 写真 による検索 も,ま た,

種 報々 告 されてい るが,い ずれ も肉眼的観察によ る定性

的 な ものであ り,定 量的 に観察 した ものは少ない。

今回,著 者 らは,家 兎下顎 隅角部に機械 的切創 を加 え,

X線 写真 を撮影す る際 に,被 写体 に対す るFilmの 位置,

照射方 向 との幾何学的 関係 の一定化 に努 め,X線 写真の

骨陰影 の濃度 を 数的 に 測定す る方法 を 用い,濃 度の規

格 化を計 り,切 創 部 をA1板 と同時に撮 影 した経 日的

Filmをmicrophotorneterで 測定 し,AIwedgeに よ

るcaribration curveと 対照 して各 々の値 をAlの 厚 さ

に置 き換 えて,骨 傷 の治癒過程 をX線 透過度 から診断 し

た。

また,経 日的 に観察 している各群 ご とに,生 体のX線

写真 と,同 一個体 の軟組織 を可及的 に取 り除い た骨 のX

線写真 とを比較 して,軟 組織 の補正 を も試 みた。

(結果)

1)  骨傷治癒過程の状態 を,定 量化 を計 る こ と に よ

り,肉 眼的観 察よ りも一層詳細 に観察す る事 ができた。

2)  今回,測 定 した部位 では,軟 組織計測点 を減 く事

で,あ る程度軟組織 の補正が可能である と考 え られ た。

3) Microphotometerの 波形解析 の しかたに よって

は,骨 塩沈着 の状 況 を 数量的に示す事が 可能 と思 わ れ

た。

4)  骨傷治癒 に対す る骨塩の動員に対 しては種 々の説

をあるが,本 研究 においては,骨 傷周辺部の骨 も,骨 塩

(66) 66

動 員の主体 となす ことが推測 された。

〔考 察〕

X線 写真 は従来 か ら,肉 眼的観察 で診 断 され て い る

が,客 観的立場で数値 として判 定 し,解 析す る ことは生

体 の直接 の侵襲 な しに観 察で きることか ら有効 な方法 と

考 えられ る。又,microphotometer自 体 の精度 も,肉 眼

的な もの よ りかな りの精度 で,骨 変化 を読 み とれる との

報告 もある。 し か し,測 定結果 に関与す る諸要因 を多

く,こ れ ら様々な要因 を可能な範囲で一 定条件 にし精 度

の向上 を計 ってい くことが,今 後の課題 と思 われ る。

座長のまとめ

阪大 ・歯放

渕 端 孟

演題4(岡 大,口 外 石 田元久 ほか)

犬下顎骨臼歯部に コバル ト60γ線 を300~4500rad(1

回300rad,週3回 の分割 照射)照 射 し,顎 骨の血管像 の

変化 をクロロパーチ ャ注 入法を用い透 明標本 を作製 し観

察 した もので,そ の病理 組織像の変化について も5段 階

に分類比較観察 した。結果 は線量 の増加 と共 に,走 行不

整,数 の増加,蛇 行,あ るい は断裂な どの変化が認 めら

れ た との報告 であった。

古本(臼 歯大)よ り,造 影剤 の違いや標本 の厚 さの問

題 がある と思 うが,ク ロロパ ーチャを用いた場合 に出血

個所 が形態 的に血管 の走行 な どか ら良 く判定が できた か

との質問がな された。演者 は透 明標本 ではわか らない。

漏出性 出血は病理組 織像 により確認 された ものである と

答 えた。

演題5  (日歯大,嶋 田康 ほか)

家兎下顎骨隅角部に機 械的切創 をつ くり,そ の治癒 過

程 におけ るX線 写真上の変化 を客 観的に評価 しよ うと試

み られた実験で ある。写真濃度の経 日的変化 をマイ クロ

フォ トメー ター によ り測定,こ れ をアル ミ当量 に変換 し

定量化 をはかるこ とによって 肉眼的変化 よ り,さ らに詳

細 な治癒経過 の判 定が可能であ るとの報告 であった。 ま

た軟組織濃度 の補 正 もあ る程 度可能 であ り,今 後 の問題

としては測定結果 に影響 する諸要 因を可及 的除去す るこ

とで,将 来骨塩 の変化 を定量化 し数量 的に表示す る こと

が可能 となるのではないか との見通 しをのべ た。

中村(東 医歯 大)よ りアル ミ当量(X線 透過度)の 変

化 とい う物理学 的な変 化 と骨 の量 的変化 とい う生物学的

変化 とのつなが りを どの様 に考 えれば良いのか との質 問

が あったが,演 者か ら本来骨 と同 じ組成の もの を用い る

のが良い と思 うが,製 作上 の困難 さか ら今回はアル ミを

用 いた との説 明がなされ た。 また閑野(神 奈川歯大)よ

りX線 的に骨折 の治癒経 過 を追 うとある時期 に周囲 よ り

不透 過性 を増す ことが あるのではないか との質 問がされ

たが,演 者 な らびに共 同研 究者古本 よ り客観 的評価 では

そ うい うことがな く,そ の辺は微 妙であるが見 かけ上 の

変化ではないか との答 えがあった。

そ の他 マイ クロフォ トメーターのス リッ ト幅 の 設定

(本実験 では15μ)に っいての質疑 があった。X線 写真 に

よる硬組織 の定量的評価 とい うこの問題は,臨 床 レベル

での利用 とい う点で はまだ まだ多 くの問題 を残 している

と考 え られ るが,今 後 の発展 に興味が もたれ るテーマで

あろ う。

RI (6~8)

6.  放 射化 分 析 に よ る歯 牙 中 のF,Caの 定 量

Measurement of fluoride and calcium in

tooth with activation analysis

神奈川歯大 ・放

○若尾博美 ・志村 彰 ・青山 亘

Department of Radiology Kanagawa

Dental College

OHiromi WAKAO, Akira SHIMURA,

Wataru AOYAMA

歯牙及 び顎骨 中のFの 定量 につい て,我 々は第十五回

歯科放射線学会 で既 に放射化分析法 を用 いて行 った結果

にっ いて報告 した。

方法 は前 回 と同様 に,試 料 を原子炉 で15秒 間 中性子照

射 を行 い,こ れをGe(Li)半 導体検 出器,及 び400チ ャ

ンネル波高分析器 を用 いてF,Caを 同時に測定,定 量

した。

この放射化分析法は従来の方法に比べて,試 料 の作成

等 も極 めて容易で あ り,1サ ンプル測定に要 する時間 も

1分 以内で終了 し,ま た非破壊的な方法で あるため,同

一条件下 で何回 で もくり返 して測定す ることができ ると

い う利点が ある。

しか しなが ら前 回に報告 したよ うに,得 られた測定値

にバ ラツキがみ られ,放 射化分析法 の精度,再 現性,信

頼性 についての問題 点の検討 が必要 となった。そ こで今

回は従来 か らのF,Caの 定量法 である,イ オン電極法,

原子 吸光分析 法について行 った結果 とを比較 しま とめて

みた。

実験は ピロリン酸 カルシ ウムに フッ化カルシ ウムを混

ぜて作成 した歯 牙模 型及び人抜去歯牙の象牙 質 を粉 末に

(67) 67

した もの,ま たF,Caの 標 準試料 として,フ ッ化 カル

シウム,Fの 妨害元素 であるNaの 標準試料 として炭酸

ナ トリウムを用 い4回 測定 を行 った。またFに ついては

イオ ン電極法,Caに ついては原子吸光分析法 でもそれ

ぞれ4回 測定 を行 い,得 た値 のバ ラツキ をみ るた め標準

偏差 を求 めた。

この結果,歯 牙模 型のCaの 値 を除いては,放 射化分

析法の方がわずかで はあるが偏差値が小 さ く,精 度等の

面か ら充分に実用の可能な もので あることがわか った。

7.  骨 ス キ ャ ンで 興 味 あ る経 過 を示 した 上 顎癌

の1症 例

An interesting case of the maxillary carcinoma

performed with bone scanning

神 奈川歯大 ・放

*神奈川歯大 ・口腔 外

○杉 本 康 樹 ・ 鈴 木 信 一 郎 ・ 青 山 亘

東 与 光 ・*志村 介 三

Department of Radiology Kanagawa Dental

College.*Department of Oral Surgery

Kanagana Dental College

OKaju SUGIMOTO,Shinichiro SUZUKI,

Wataru AOYAMA,Tomomitsu HIGASHI,*Kaizo SHIMURA

は じめに

左上顎 口蓋部 の腫脹 で来院 した患者 にっいて,放 射線

治療前 には,口 蓋骨,上 顎骨 が レ線的 に破壊像 を示 して

いたが,放 射線治療後 に,そ の局所が石灰化 を示 した症

例 を経験 し99mTc-polyphosphate (P. P.と 略す)に よ

る骨 スキャンで追求 したので報告す る。

症例 は73歳 の女性で昭和50年8月 に左上顎か ら口蓋 部

にか けて,び まん性 に膨隆 したので来 院 した。組織診 の

結果 は腺様嚢胞癌で あった。9月9日 よ り,5Fuに よ

る化学療法 を行 ったが,腫 脹は増大す るばか りであ り,

昭和51年1月20日 よ り60Co照 射 を正,側 面 よ り74日 間

にわた り5850rad照 射 した。左上顎及 び口蓋部 の腫脹 は

60Co照 射 によ り明 らかに縮少 した。 ところが,治 療前

のX線 透過 部が60CO照 射 によ り,不 透過像 を呈 し,あ

たか も石灰化の 沈着 を 思わせた。99mTc-P. P.に よる骨

スキ ャンでは石灰 化巣 に一致 して,著 明な陽性像 が認 め

られた。 その後,患 者 は 経過 が良 く一時,退 院 しま し

た。

51年10月 頃よ り,反 対側 の右頬 部がやや膨 隆 し,疹 痛

を伴 った。そ こで昭和51年10月20日 よ り右 上顎部正側 に

60Co照 射 を3900rad,39日 間 にわた り照射 し症状は軽減

したが,同 年11月 頃よ り頸 部の疼痛 を訴え た の で再び

99mTc-P . P.に よる骨 スキャ ンを行 なった。 そ の結果 頸

椎 転移 を疑わせ るよ うに,頸 部の異常集 積 を認めた。そ

こで,頸 椎 のX-Pを 撮 ってみた ところ,第4頸 椎 の骨

がやや粗造 であった。 さ らに断層撮影 した所,第3,4

頸椎 に明 らかな骨 の破壊 を認 め,転 移 による もの と診断

した。疼痛軽減 のため,昭 和52年3月11日 よ り4月9日

まで 同部 に60Co照 射 を3100rad,28日 間行 った。 そ の

後,両 側上顎部 の膨隆 もやや消退 し,経 過 は良好 であっ

たが,昭 和52年8月17日,老 衰 のた め死亡 した。解剖 し

な かった ので,詳 しい死因 については不明で ある。

結論

以上の結果 よ り,上 顎 部の腺様 嚢胞癌 にっいて,放 射

線 治療前 には,口 蓋 骨,上 顎骨 がX線 学 的に破壊 像 を示

していたが,放 射線 治療後 には,そ の局所 がX線 学的 に

石灰 化 を思わせ る像 を示 し,ま た99皿Tc-P. P.に よる骨

スキャ ンで も石灰化 を思 わせ る像 に一致 して,著 明な陽

性像 が認 め られ た興 味あ る1症 例 を経験 したので ここに

御報告致 しま した。

8. CTス キ ャ ン と67Gaス キ ャ ン を行 つ た

2症 例

Two cases performed with CT scan

and 67Ga scan

神奈川歯大 ・放

○ 鹿 島 勇 一一 ・井 口雅夫 ・閑 野 政 則

東 与 光

Department of Radiology Kanagawa

Dental College

Olsamuichi KASHIMA,Masao IGUCHI

Masanori KANNO,Tomomitu HIGASHI

最近,コ ン ピュー ター横断断層撮影法(CT)が 新 しい

X線 撮影 法 としてブームを呼 びつ っある。今 回,私 達 は

前頭洞癌 と上顎癌 の2症 例 に67Gaス キャンと放射線照

射後,CTス キ ャ ン を試み る機会 をえたの で報告 した

い。

第一例は72歳,男 性,既 往歴 は 一年前 鼻た けにて手

術。昭和51年10月,左 側上顎歯肉部 に栂 指頭 大の腫瘤 を

主訴 として本学 に来院。67Gaス キ ャンを行 った ところ,

左 上顎部 と左側 頸部 リンパ節の転 移病巣 に陽性像 が認 め

られた。組織 像は扁平上皮癌 であ った。 同年12月,東 京

女 子 医 大 で左上顎洞部 に6040rad/61day,左 頸部6750

(68) 68

rad/60day 60Co照 射 を行い,そ の間,左 上顎洞 の開洞手

術 を行 った。そ こで再 び67Gaス キ ャンを行 った ところ,

67Ga集 積像 は明 らかに 減 少 した。 その時 に,CTス キ

ャンを行 った ところ,眼 窩後方 の骨 のErosion,お よび

左側篩骨洞 にTurnor,膿 汁,あ るいは 壊死巣 と思われ

るdensityの 強い部位が 認 め られた。 さ らに 深い位置

のス キャン像では眼窩後方 の骨 は破壊 され,Tumorで お

きかわ ったmass densityが 認 め られ た。 この症例 では

眼窩後方へ のTurnorの 浸潤 の所見 がX線 写真 では,は

っき りとしなか ったが,CTス キャンではTumorの 浸

潤や骨 の破壊像 が良 く観察 できた。

第二例 は,49歳,男 性,既 往歴 は20歳 の とき,両 側蓄

膿症 で手術,28歳 の とき両側鼻 たけにて手術 。昭和51年

11月,右 前頭洞mucoceleの 診断 の もとに某病院 で手術

し,悪 性腫瘍 を疑 い,本 学 に 放射線治 療 のため来 院 し

た。 そこで,67Gaス キャ ンを 行 った ところ,右 前頭部

か ら側頭部 にかけての広範 囲にわた る陽性 像が認 め られ

た。病理組織 像は角化扁平上 皮癌 で あった。本 学で60CO

1400rad照 射 した後,同 年12月,横 浜市立大学 にてCT

スキャ ンを行 った ところ,右 前頭骨 の破壊 と前頭 部か ら

側頭部 にかけての部位 にTumorのrnass densityが 見

られた。 さらに深い位置のスキ ャン像では,右 前頭洞の

1部 にTumorのdensityを 認 めた。 この症例で は,

CTス キャンによ り,前 頭骨 の破壊,及 び前頭部 か ら側

頭部 にか けて の軟組織 がTumorで 置 きかわった所見 が

良 く観察 できた。

以上,CTス キャ ンと67Gaス キャンを行 った2症 例

を経験 したので報告 した。

CTス キャン と67Gaス キャンはそれ ぞれ,一 長一短

があ り,そ の評価 は今後 にまたねばな らないが,副 鼻腔

疾 患の診 断にはCTス キャンは意義があ ると思 われ た。

最後 に御教 示いただいた横 浜市立大放射線学教 室,小

野助教 授,及 び,横 須賀共済病 院耳鼻科,森 部長に深 く

感 謝致 します。

座長のまとめ

東 医歯大 ・歯 ・放

中 村 正

演題6歯 牙 に含 まれ るFお よびCaの 量の測定 を目

的 として,模 型 を使 ったFお よびCaの 放 射線分析 の結

果 が報告 された。得 られた結果 は,従 来 の方法 によるも

の と較べて遜色 のない精度 のもので あった。生物系で物

を考 えるのに必要 とす る精度 との比較 におい て測定精度

が取 り上 げ られれ ば と思 う。

演題7上 顎癌 の放射線治療 うけた患者 の患部 のX線

不透過性 が増加 し,そ の様相 を99mTc-P. P.に よる骨ス

キャンによって追求 した結果 の報告 である。東北歯大,

島野氏 か らの追加 とMachanismに 対す る質問が あ り,

答 は不 明 と言 うこ とであった。それ程稀な こ とで は な

く,線 量一時 間関係,動 物実験 の結果等 か ら説 明出来 る

か も知 れない。

演題8前 頭洞癌 と上顎癌 に対 しての主 にCTス キャ

ンを行 った結果 の報 告である。顎,顔 面領域 の癌 の診断

への本 法の導入 の得 失に関す る質 問に対す る答 は不 明 と

言 うことであった。

情 報I(9~11)

9.  過 去17年 間 に お け る 日本 歯 科 放 射 線 学 会 の

演 題 の 考 察

The Thema Observation Represented in

Japanese Society of Dental Radiology

for 17 years

神奈川歯大・放

○藤枝めぐみ ・閑野政則 ・松尾洋一郎

Department of Radiology Kanagawa

Dental College

Megumi FUJIEDA,Masanori KANNO,

Youichiro MATSUO

過 去17年 間における 日本歯科放射線学会 の演題 につ い

て,統 計的な分析 を試 みた。

演題 の分類 方法は,現 在,日 本歯 科放射線学会 で演題

申し込み時 に使 用 してい る分類方法 を もとに,基 礎 系,

診 断 ・治療 系,及 び技術系の3つ に大別 し,そ れを さら

に17項 目に細分 した。総演題数 は593題 であ った。その

うち最 も多か ったのは,歯 牙,顎 骨の 疾患等に 関す る

「診断1」 の演題 で全体 の22%を 占め,次 いで 「放射線

治療」「歯科基礎実験 」 と続 き,最 も少 ない のは パ ノラ

マの被曝 に関す る 「パ ノラマIII」で あ り,0.8%で あっ

た。

次 に系統的 に見た場合 は,診 断 ・治療系が288題 で全

体 の44%,技 術系が33%,基 礎系18%と な り,こ れ を年

次別 にみ ると,診 断 ・治療系が どの年代 にも多 く上昇傾

向を示 し,基 礎系 は毎年一定 してお り,技 術系は昭和45

年以降 に急激な上昇がみ られた。

また,17項 目の うち診断 に 関係す る項 目を 細分す る

と,歯 牙,顎 骨 に わ た る疾患 の症例報告な どが約50%

(全体 の22.7%)を 占めていた。

(69) 69

さらに,興 味 をもった4項 目,即 ち,最 近器械 が特 に

発達 して来たパ ノラマ(65題),医 学方面 では欠 く事 ので

きないR・I(44題),社 会的な問題の線 量 と防護(42),

な らびに情報化時代 と云われてい る中での歯科 分野 での

情報(26題)に っいて年次別 に検討 してみた。その結果,

R・Iの 研究 は昭和45~46年 を ピー ク としてお り,パ ノ

ラマは昭和43年 頃か ら急激な増加 を示 していた。また,

線量 と防護,R・Iに 関 して,コ ンピュー ター(日 本電

子JEC-6型)を 用い今後 の予測 を行な った所,両 者 と

も今後演題数 は上昇す る 傾向がみ られ,R・Iと パ ノラ

マ については,現 状 維持 あるいは,や や減少 の傾 向が予

測 された。

10. 減 弱 曲 線 に よるX線 スペ ク トル 分 布 の推 定

Estimation of X-ray spectrum distribution

by calculated attenuation curve

日大 ・歯 放

○西岡敏雄 ・白根茂光 ・長田 寛

篠田宏司

Department of Radiology Nihon University

School of Dentistry

Toshio NISHIOKA, Shigemitsu SHIRANE,

Hiroshi OSADA, Koji SHINODA

は じめに

撮影 系において,画 像 を改善 した り,被 曝量 を軽減 さ

せた りす る試行 の中で,被 写体 の場 での線質の変化 を理

解 しよ うとすれ ば,そ のX線 の線質 を最 も忠実 に表現す

るのはスペ ク トル分布で あ り,被 写体 に対 す る入射前後

のエネル ギー変化 とを併せて知 る必要が ある。

今回 は特別 の装置 を用いず,実 際に測定 した減 弱曲線

か ら計算 によって,こ れ らの状 態 を推 定 した。

現在,被 写体透過後の減弱曲線 の代表的な近似式 とし

てはGreeningの 式があ るが,低 エネルギー範 囲にお

ける精度 には,い まだの感があ る。最 近になって斉藤 ・

杉本 らによって ±5%の 範囲内での実験 式が報 告 され て

い る。また,X線 スペク トル分布 の測定,お よび推定 に

はす でに多 くめ 研究 があ り,Kramersの 理論計算 をは

じめ,Twidellに よるラプラス変換 法,永 田 らによる反

復近似計算法な どが あ り,そ れぞれかな りよい一致度 を

示 してい る。

方法

今回著者 らは こうした先 人 らの報告 を参考 に して,歯

科 用X線 撮影 領域でのスペク トル分布 を推定 した。X線

発生 装置 にはGE-100,線 量測定 には ラ ドコン10LAを

使用 し,Alフ ィルターを用 いた減弱 曲線 を 実験的 に求

め,計算 による曲線 と比較 し実験式 の一致性 を検討 した。

さらに この減 弱曲線 か らのスペ ク トル分布 の推定 には,

Alフ ィル ターの厚 み をt,密 度 を ρ,質量減 弱係数 μ(E)

で減 弱 されたエネルギーEに おけ るX線 強度分布がf

(E,t)で あるY(ti)=Σf(Ej,O)exp{-μ(Ej)ρti}

△Ej+ε(ti)の 式 に従 った。

f(E,t)を 分割 して幅 が △Ejの15個 のセル を有す るヒ

ス トグラムを考 え,X線 管電圧 か らそ のスペ ク トル分布

の上 限を45keV,下 限 を14keVと 設定 し,減 弱 曲線 の測

定 データの個数 を ヒス トグラムの数 と等 しくしてお き,

セルの中心 エネル ギーを大 き さ の 順 につ ぎのよ うに並

べ,そ の上YiとEiと をそれぞれ

Y1>Y2>…・>Y15,E1<E2・…<E15

対応 させ,各Yiを 用 いてセル の高 さ(Ei)を 差分法 に

よって推定 した。

結果

減 弱曲線 は60kVp,10mAでI(O)=exp-0.182x-

0.975(1-e-0.44x)〕 で実測値 とかな りよい 一致 を示 し,

推定 したスペ ク トル分布の各セルの中心エネルギーは,

15,17,19,21,23,25,27,29,31,33,35,37,39,

41,43keVで あった。低エネルギー特 に20keV以 下の

領域で の減弱は きわめて大 きか ったが,以 後 は さらに,

X線 管の構造 と動 作条件が詳 し く決定 されておれば,数

値計算 によってかな り精度 のよいスペク トル分布 の推 定

が可能で あると思われ る。

質問1  東北歯大 大 坊 氏,

私 もGreeningの 式でスペ ク トル を推 定 した ことがあ

るが,50kVpの ところで急激 に下 ることを経験 した,何

故 と思 うか?

答Greening法 によるスペ ク トルの変化は,原 因 と

して線 量計の特性や,こ の推 定方法の もっ近似性 な どが

考 え られ る。

質問2  日本歯大 加 藤 氏

各条 件下の中でX線 管 の構造 が一定 であって も,X線

の線 質は管電 圧に大き く左右 され る筈 であるが?

答 実際には管電圧以外 の条件 で もX線 特性 にはかな

りの変化が起 るため,X線 スペク トルを正確 に求 めるた

めには,よ り複雑 な計算処理 が必 要である。

(70) 70

11. 口内法撮影の情報工学的研究(1)

Study on Image Formation of Intra-oral

Roentogenography

東北歯大・放

○鈴木陽典 ・小椋教順 ・大坊元二

島野達也

Department of Radiology, Tohoku

Dental University

Yosuke SUZUKI, Kyojun OGURA,

Motoji DAIBO and Tatuya SHIMANO

はじめに

X線 写真 か ら得 られ る種 々の情報 の定量的把握 とまた

情報 量を多 くし,か つ患者被曝線量 を少 な くす る最適撮

影条 件な どについて検討 を加 える場合,関 与す る因子 は

非常に多い。例 えば

1)  X線: 照射線量,ス ペ ク トル,焦 点の大き さ,線

錐 の広が り

2)  被写体: 幾何学的構造,各 組織のX線 吸収散乱特

3)  記録 系(フ ィルム ・現像):エ ネル ギー感度特性

H-D特 性

4)  撮影配置

な どは,す べて重要 な因子 と考 え られ,実 験的 にこれ

らを総合的に評価す る事は技術 的に難 しい事 が多 い。そ

こで これ らの検討の第一段 階 として,電 算機 による口内

法撮影系全体 のsimulationを 試 み,若 干 の検討 を加 え

た。

なお,今 回 の内容 は,情 報工学的な取扱い をす る基 礎

となる もので,X線 撮影系が ある設定の もとで,数 式的

に把握す る事 が可能で ある事 を示 した。

「方法」X線 エネルギーおよび照射線量 をパ ラメータ

ー とした場合 のX線contrastを 検討す るため,口 内法

撮影系 を3次 元直交座標上 にと り,XY面 をFilm面 と

し,Film面 上の各点へ のX線 強度分布 を計算 し,Te-

letypeに よるdisplayを 行 った。 ここではX線 は点焦

点 とし一次線 のみ を扱い,被 写体には幾何学的に簡略化

した下顎切歯根尖部 を設定 した。なお被写体 の線 減弱係

数 は,緻 密骨(下 顎緻密骨Z=12.5±0.8ρ=2.5±0.5;

鈴 木1976)μ=2.93λ3+0.36と し,軟 組織,エ ナ メル質,

および象牙 質は島野1)に従 った。なおdisplayの 最少間

隔はX-0.15mm Y-0.225mm,X線contrastの 出力

は10mRき ざみで印字 させ,後 で等線 量曲線 を加 えた。

計算 は 日常臨床 に使用 され ている条件60kVp(25keV

effec.),600mRを 基準 として,単 色X線 の15KeV~80

KeV,ま るで5KeVず つそれぞれ600mR,お よび観 察

しうるX線contrstの 得 ら れ る最少線 量について行 っ

た。

「結果」 照射線量600mRで の像は,エ ネル ギーが低

くな ると,例 えば15KeVで は1レ ベル のみ とな り,15

KeVで は像 は得 られ なかった。 また20KeVで 日常使用

されてい る条 件60KVP 25KeV effec.と 同程度 のX線

contrastを 得 るには約10倍 の線量 を必要 とした。逆 にエ

ネルギーが高 くな ると,例 えば80KeVで は1/3の線量 で,

十分像 は得 られ るが,X線contrastの 低下 が大 きい。

しか し40KeV付 近では1/2の線量で も像は得 られ,X線

contrastの 低下 も少なかった。

「結論 および考察」 非常 に簡略化 した設定か らの結論

では,約20KeV以 下 のエネルギーのX線 は,吸 収が大

き く像形成 にはあま り関与 していない こと,ま た40KeV

位 までな らあま りX線contrastを 低下 させない ことが

言 える。

最適撮影条 件決定には これ らの基礎資料 を もとに,さ

らに散乱線,フ ィルム系の検 討 と,最 大情報量撮影 とい

う観点か ら情報工学的な扱 いが必 要 とな り,こ れにつ い

て は今回若干の試み を行 ったが,ま だ結論 を得 て い な

い。

1)  島野他: 歯牙X線 像 のcomputer simulation,第

18日 歯放抄録

座長のまとめ

広大・歯放

和 田 卓 郎

演題9は 過 去17年 間における 日歯放学会 の演題 を17

項 目に分類 し,現 在 どの様 な方 向づけがあるかを統計的

に分析 しよ うとした ものであ る。 さらに演者 らは コンピ

ューター処理 によって,将 来 の動 向 として,被 曝 と防護,

情報 の分野 に強 い傾 向のあることを示 した。 この報告に

対 して山本(鶴 見大)よ りこの様な分類結果が大学 の診

療,教 育,研 究面 に どの様 に反映 され てい るのか,傾 向

には繰 返 し現 象のあ ること,分 類 の意義 づけ等 にっ き質

問がな された。 これに対 し,学 会 の基準 として前2者 の

分野 の他 にパ ノラマ,RIに 興 味 をもった との ことであ

り,コ ー ド化で きる様な決 まった学会 としての分類 が欲

しい とのことで あった。

本演題 は,学 会 の学術活動 として演題 の分類法お よび

その動 向につ いて本質的 な問題 を提起 してはい るが,客

観 的 に分類す るのは実際上極 めて難 か しい要素 のあるこ

(71) 71

と,又,動 向 を知 るため にコンピューターまで駆使 した

ことは,た とえ考え られ るすべての因子 を含 んでいる と

して も,私 達の意志に よって変え ざるを得 ない動 向まで

予測す るこ とは不可能 であ り,い ささか検討 の余地が あ

る様 に思 う。

演題10は 歯科用X線 撮影領域 でのスペ ク トル分布 を,

実際 に測定 した減弱曲線か ら計算に よって推定 しよ うと

した ものである。演者 らはGreeningの 近似式やKra-

mersの 理論式等 を参 考に して,計 算 による曲線 と比較

し実験 式の一致性 を検討 し,さ らにスペ ク トル分布 の推

定 を,有 限差分法 を用 いた ヒス トグラムの型の近似計算

によ り行 なった。撮影領域 よ りさらに低エネルギーでの

スペ ク トル分布 について も,X線 管の構造 と動作条 件が

詳 しく決定 しておればかな り良い精度 で推 定可能 となる

との ことであ った.質 問 として,大 坊(東 北歯大)よ り

50KVpあ た りでの急激 な変化(Greening法)の 原因,

加藤(日 歯 大)よ り,ス ペ ク トル と管電圧 の関係等 があ

ったが,線 量計 の特性,推 定方法,計 算処理 につい ての

諸要素 が影響す るとのことで あった。MTF,粒 状性等 の

純物理 的性質 とは別 に,被 写体 の場で の線質 の変化 を知

るこ とは,画 質,被 曝量な どの実際面での理解 につなが

ることで もあ り,今 後の興味 ある進展が期待 され る。

演題11は,口 内法撮影系computer simulationを 行

ない,さ らに被 写体 の空間スペ ク トル を導入 して検討 し

よ うとした ものである。情報 工学的面か らは予報 的では

あ ったが,X線 像 をcomputerに よ って求 める試 み とし

て,ど の様 なスペク トルで撮影すれ ば診断上,防 護上有

効 であるか とい う点 で興味 のある研究 といえよ う。今回

は コン トラス トにつ いて重点的 に扱 っているが,演 者 も

述 べている様 に,骨 梁構造 の変化 につい ても今後更 に研

究 を進 める点 で大 いに期待 したい ところで ある。本 演題

は次 の演題12と 関連 してお り,両 演題が別 セッシ ョンに

分 かれ てい る点,又 そ の順序 につい ても少 し問題が ある

様 に思われた。

情 報II (12~14)

12. 歯 牙X線 像 のComputer Simulation

Computer Simulation of roentgenographic

image of teeth

東北歯大・歯放

島野達也 ・鈴木陽典 ・小椋教順

大坊元二

Department of Dental Radiology , Tohoku Dental University.

Tatsuya SHIMANO, Yousuke SUZUKI , Kyojun OGURA, Motoji DAIBO

物体 を通過 したX線 の強 さ1は,入 射X線 の強 さをI0

とす るとI=I0e-μXで あ らわ され る。 ここで,Xは 物体

の厚 さで,μ は物体 の線減弱係数 である。 また低エネル

ギー領域では,μ は次 の近似式 μ=kρZ3λ3で示 され る。

kは 定数,ρ は物体 の密度,Zは そ の実効原子番号,λ

はX線 の波長 である。

したがって,我 々はX線 の波長(エ ネル ギー分布),被

写体 の形,構 造,密 度 および実効原子番号,フ イル ムの

特性,X線 管焦点,被 写体,フ ィル ム夫 々の三次元的配

置な どを知れ ば,口 内撮影系 を一つ の式 として扱 うこと

がで き,画 像 を計算 によって近似的 に求め ることができ

る筈で ある。

今回は被写体 として抜 去上顎 中切歯 を選 んで,X線 撮

影 を行 い,そ れ と同一条件 によ りX線 像 を コンピュータ

ーによって求 め,か っ二,三 の考察 を行 った。

X線 発生には島津KXO-15を 用 い,使 用 した電圧お よ

び夫 々の実効 エネル ギーは,50,60,70,90KVp(28.4,

30.0,32.0,34.2KeV)で あり,ス ペ ク トルはGreening

の方法 によ り近似的 に求 めた。

撮影 を終 った歯牙は,歯 軸 に平行 に唇舌的に0.25mm

の間隔で削 り,そ れぞれ断面か らエナメル,象 牙 質,歯

髄腔の形態 を拡大,グ ラフペ ンの使用 によって三次元的

に把握 した。

各 λに対す るエナ メル,象 牙質,歯 髄 の線減弱係数 は

次 の各近似式 によ り算 出 した。

エ ナ メ ル μ=70.9λ3+0.44

象 牙 質 μ=37.6λ3+0.37

軟 組 織 μ=2.36λ3+0.17

フ ィル ム は コダ ックDF下45を 使 用 した 。

computer simulationに よ っ て得 られ た 歯 牙 の像 は,

濃 度0.2を 一 段 階 と して等 濃 度 曲線 の分 布 と して示 した 。

(72) 72

平行法 と二等分法に よるものでは,撮 影 法に よる像 の

差が明 らかで あ り,電 圧が高 くな るに したが って,コ ン

トラス トの減少 を見 ることがで きた。

また,線 量 の相違 による変化 を60KVpの 一例 によっ

て示 した。

次 に15,20,25,30,35,40,45,80KeV各 種エ ネ

ルギーの単色X線 による像 を示 した。これ らか ら20KeV

以上のX線 が歯牙 のX線 像形成 に寄与 しているこ とがわ

か り,一 方80KeVの よ うな 高 エネル ギーの ものが有効

でない ことも理解 でき る。

以上歯牙X線 撮影 のComputer Sirnulationの 結果 を

示 したが,今 後 この方法 を発展 させ ることに よって,歯

牙X線 像 の形成 を検討す る上 にまた撮 影法の検 討に役 立

っ もの と考 える。

13. Fuzzy積 分による人間の判断のあいまいさ

の解析

―X線 写真画像評価への応用―

Analysis on ambiguousness of the decision

by Fuzzy's integral computation

-Application to image judgment

日大 ・歯放

○ 西 岡敏 雄 ・有 田一 郎 ・大 橋 清

安 藤 正 一

Department of Radiology Nihon University

School of Dentistry

Toshio NISHIOKA, Ichiro ARITA,

Kiyoshi OOHASHI Shoichi ANDO

は じめに

X線 写真 の画像評価 の判定 には,物 理 的 と心理的 との

両面か らの総合評 価が必 要であ ることは論 を ま た な い

が,と くに後者においてはそのための評価 尺度があって

も,判 断者それぞれの思 考過 程の如 何に左右 され ること

が しば しばで ある。

そのた め,診 断 に最適な画像 を得 よ うとす ると,不 満

足 で も統計的 な把握 の仕方 に頼 らざるを得ない。 この こ

とは,人 間 の意志決定 の中に,判 断 に対す るあい まい さ

があ り,判 断結果 を左右す るこ とにな る。 このあいまい

さは,だ いたい・ぐらい ・非常 にな どの言葉 によって示 さ

れ るもの と同 じであって,現 実 には明か くに定義 しがた

か った事象 であった。1965年 にZadehに よ ってFuzzy

集合論 としてあたえ られた概念 は,こ のよ うなあいまい

さの処理 のための手法で あ り,今 回著者 らは,上 記 のX

線画像 の評価 の際 に生 じる判断 のあいまいさを客観 的に

評 価す るために,こ の理論 を応用 して解析 した結果 を報

告 した。

方法

総合評価 の例 として,物 理 的評価の結果がわか るX線

写真 を使用 した。写真 の良否は見 る人 の主観で左右 され

るが,こ こ で 用いたFuzzy論 とは,HD曲 線 とか,

MTFな どの よ うに 物理的 に 数値化 され る 評価 に対 し

て,人 間の感覚的判断 のよ うな非数値情報 を,主 観的な

尺度 に よって数値化 し,こ れ を客観的評価 に置 きかえる

場 合に有効 で あ り,し か もこれ は隣接 す る判 断カテゴ リ

ーの境 界の設 定に も都合 のよい手法 であ る。

評価 して もら うX線 画像 を,た しか によい(S1),い

くぶん よい(S2),普 通(S3),い くぶ ん悪い(S4),

たしか に悪い(S5),の 評価点で判断 して もらお うとす

る と,こ のよ うな5つ のカテゴ リー についての評価関数

は,k(S1,…S5)と なる。 評 価は 判断者 に よって

かな りの個人差 が あるので,こ れ らの平均 をh(si)と し

個 人の もつ 評価 要素 の重視度 を9(ki)と して,実 験 デ

ー タ か ら 計 算 す るFuzzy積 分 は,fkh(si)og(・)=n

i=1

〔h(si)>g(ki)〕 で あ た え られ る。 こ こ でfは フ ァジ ィ

積 分 の記 号,∧ は積 を,∨ は総 和 の意 を表 わす が,こ こ

で得 られ た結 果 は,Fuzzy測 度 の判 断 過 程 に お け るあ い

ま い な 評 価 につ い て の 客 観 性 を表 わ して い る。

結果

同一 患 者 を撮 影 した オ ル ソ とデ ン タル のX線 写 真 を使

用 して の 両 者 の優 劣 の 評 価 で は,症 例Aの 場 合 デ ン タル

の総 合 評 点 が た しか に よい0.090,い くぶ ん よい0.232,

あ ま り変 らな い0.232,い くぶ ん悪 るい1.058,た しか に

悪、るい0.375の とき の評 価 の あい まい さは,0.15,0.09,

0.34,0.33の 順 で あ り,症 例Bで は 同 様 に0.181,1.298,

0.0,0.375,0.142の 総 合 評 点 の あ い ま い さ は0.24,

0.21,0。0,0.37,0.19で あ った 。 そ の他 の結 果 か ら も

総 合 的 な評 価 に は,個 人差 が 見 られ,個 々 の部 分 要 素 の

判 断 に は判 断者 全 員 の 統一 した 見解 が得 られ た。 ま た,

今 回 の画 像判 断 の場 合 は 多 分 に カテ ゴ リー の設 定 は あ い

ま い さに よ って 左右 され る こ とが わ か った。

(73) 73

14. オル ソパントモグラムと全顎口内X線 写真

との画像形成の比較

―第2報 根尖病巣について―

A Comparison on the Radiographic Appearance

between Orthopantomogram and

Intraoral Radiogram

•\2nd report, Periapical lesion—

日大 ・歯放

大木 享 ・岩井一男 ・橋本光二

篠田宏司

Department of Radiology, Nihon University

School of Dentistry

Tohru OKI, Kazuo IWAI,

Koji HASHIMOTO, Koji SHINODA

昨年 の本総会 にお いて,歯 周疾患 のOP像 と口内像 と

の違 いを報告 したが今回 は主 として根尖部付近 の病像 に

つ いて,所 見 の違い を報告 した。

予備実験 を して,成 人下顎骨標本 に,人 工的骨欠損 を

与 え,両 撮影法 で行 なったX線 写真 を作成 しそれ らの濃

度 曲線 を,比較検討 した。 これ によ り(1)濃 度 曲線 上,

OP像 における骨欠損像 の輪郭の立上 りは,口 内像のそ

れ に くらべ,緩 徐 である(2)骨 欠損部 と正常骨 との濃

度値 の差 は,明 らか に認め られた。(3)OP像 では位

置 によ り,ま た口内像では主線の射入 方向の差 に より結

果が逆転す る事が ある,等 の傾向が見 られた。

次 に臨床写真で,成 人患者 の中でOP写 真 と口内全顎

X線 写真 とが同時 に得 られた ものの うち,濃 度範 囲が診

断上適切で,X線 写真上根尖病巣 を有す ると思 われ るも

のを50例 抽出 して,比 較 検討 した。臨床 写真 の計測 にあ

た っては,根 尖病巣 を有 する歯根軸 をY軸 とし,根 尖 を

通 りY軸 と直交す る直線 をX軸 とした。 そ してOP写 真

と口内X線 写真 を,さ くら光電濃度計PDM-12型 を用い

X軸 上Y軸 上 をマイク ロフォ トスキャニ ングを行い,こ

れをスムージ ング して濃度 曲線 を得 た。そ して同一症例

のOP写 真 と口内X線 写真 とについて,健 康組織(Y軸

では根 尖)か ら病巣 内に至 る部分 と,病 巣内か ら健康組

織 に至 る部分 との2カ 所 の立上 りの角度,す なわち勾配

を求 めた。 さ らに濃度 曲線上で,病 巣内部の濃度 と健 康

組織 の濃度値 の差 もあわせて比較 した。 この際,OP像

と口内像 との問 には写真濃度 に差が あるため に,こ れ を

補正 し解析 に 便利 な 様 に,正 常骨 の 部分 を0と 正規 化

し,相 対的 に濃度値 の差 を計測 した。

結果: 健康組織 か ら病巣 内に至 る部分 の勾配の平均値

は,X軸 でOP像122.61°,口 内像122.00°,Y軸 につ い

てOP像133.51°,口 内像177.19° であ った。病巣 内か ら

健康 組織 にいた る場合 も同様 な傾 向であった。(こ こで

数字 が大きい事 は勾配 がよ り緩徐 な 事 を示 してい る。)

X軸 での濃度差 は,OP像 で0.304,口 内像 で0.233で あ

った。Y軸 も同様 な傾 向であった。

結論:(1)病 巣 の境界 の勾配 は,X軸 では差が少ない

が,Y軸 では口内像 に くらべOP像 の方が緩徐であ る

(2)濃 度 差 はOP像 の方が 口内像 よ り大 きい。

ここでX軸 とY軸 とで差が出たのは,OP像 は画 像形

成過程が 口内像 と違 うため と思われるが,従 来 いわれ て

きた ほどOP像 と口内像 とでは差がな く,臨 床写 真の中

にはOP像 の方が病 像の認識 が容 易な例 もあった。

以上 の点か ら見 る と,OP像 は適 切なる位置 づけ,適

切 な る濃度等 の条件 が満 たされれ ば,根 尖病巣 の診断 に

も特有 な診断寄与が ある と考 える。

座長のまとめ

岐阜歯大 ・歯放

今 井 一 彦

演題12島 野 ら(東 北歯大)は,X線 像 を数 式化する

ことに よって,読 影時 の主観的な見方 とい う因子 を取 り

除 き,客 観評価 を 目的 にComputer Simulationを 応

用 した。X線 の波長,フ ィルムの特性,構 造 ・密度 およ

び実効原子番 号 ・X線 管焦点 ・被 写体 ・フィル ム夫 々の

三次元的配置な どを知れ ば,(I=I0e-μx)と い う式 で扱 う

ことができ,X線 画像 を計算 によって近似的 に求 められ

た。西 岡(日 大 ・歯)よ り,コ ン ピュー ターフ.ログラム

時につ いての問題点 が提起 され,ま た今後 の応用,展 望

についての質 問があ り,演 者 らは,病 的像 について も検

討 を進 めたい由の発言が あった。

演題13X線 写真 の画像評価 の判定 には,物 理的 と心

理的 との両面 か らの総合評価 が必要 であるが,判 断す る

人各 々の思考過程 によって左右 され ることが多 く,問 題

とな る。

そ こで西岡 ら(日 大 ・歯)は"Fuzzy集 合論"を 導入

し,人 間 の判断な ど非数値情報 を,主 観 的尺度 によって

数値価 し,Fuzzy積 分によ ってあいまい さを求 めた。そ

の結果,各 々の評価はまちまちであったが,あ る特定 の

部分要素 については,評 価の重 点が置 かれ ているこ とが

わか った。

演題14大 木 ら(日 大 ・歯)に よる発表 は く根 尖病巣

について"オ ル ソパ ン トモグラム と全顎 口内X線 写真 と

の画 像の違 いを比較検討 した ものである。そ の結果,根

(74) 74

尖病巣の境界 は口内X線 写真の方が明瞭であ り,病 巣 と

周囲健康骨 との濃度差 は,オ ル ソパ ン トモ グラムの方が

大 きい とい う結論 が得 られた。また,歯 根軸(Y軸)方

向 と,こ れ に直交す る軸(X軸)方 向 とを比較 してみ る

と,X軸 方 向について両者 の大差 はなかった。 しか し,

Y軸 方向については,オ ル ソパ ン トモグラムの方 が濃度

差は大 きか った。 これはオル ソパ ン トモグラフィーの特

性 によるもの と考 えられた。従 って,オ ル ソパ ン トモグ

ラムは,日 常臨床 にお ける根尖病巣の診断 に十分応 用で

きる との結論で あった。

情 報III(15~17)

15. 口内 法X線 写 真 に お け る写 真 コ ン トラ ス ト

とX線 透 過 像 検 出能 と の 関係 に つ い て

(そ の2)

A study on the minimum perceptible film

contrast in the intraoral roentgenogram

(the 2nd report)

愛知 学院大 ・歯放

塩 島 勝

Department of Dental Radiology, School

of Dentistry, Aichi-Gakuin University

Masaru SHIOJIMA

(目的)第17回 日歯総会 にて,均 一な背景におけ る透

過像検 出能 について報告 したが,臨 床 で得 られ るX線 写

真,例 えば根尖病変 の検出では,そ の背景は,骨 梁構造

とい う不均一 な ものである。そ こで今回 は,不 均一な背

景 が透過像検 出能 に どのよ うに影響す るかを,心 理物理

学的に検討 する ことを 目的 とした。

(方法)実 験1)濃 度1.04~1.15のX線 フィルムに,

5種 類 の写真 コン トラス ト(To:0,T1:0.11,T2:

0.34,T3:0.34,T4:0.48)の 格子状パ ター ン(幅0.2

mm,間 隙1.4mm)を 各20枚 作成 し,各 群 に,4種 類 の

写真 コン トラス ト(0~0.11)の 直径5mm,円 形透過

像 を与 えた。 それ を本学歯学部6年 生49名 に見せ,「 透

過 像が ある,あ る と思 う,な い」 のいずれ かの回答 を求

め,検 出能 を算 定 し,翌 日再 び同 じ実験 を行 なった。

実験2)歯 科用 ファン トーム(京 都科学標本製,PT-1)

の下顎左側第一大 臼歯 を,65kVp.4mAs.FSD26cm,

コダックDF58で24枚 口内法撮影 し,そ の近心 また は遠

心根 尖に,4種 類 の写真 コン トラス ト(0~0.11)の 直

径3mm,円 形透過像 を与 え,い ずれ の根 尖にあるかを

同様 に して6年 生48名 に回 答 を求 め,検 出 能 を算 定 し

た。 な お根 尖 周 囲 の写 真 濃 度 分 布 を知 るた め に,根 尖 を

中心 と して1mm毎 に近 心,遠 心 各15カ 所 を濃 度 測 定 し

た 。

(結 果)実 験1)で は,格 子 状 パ タ ー ン の写 真 コン ト

ラ ス トが,T0か らT4へ と増加 す る に つ れ,検 出能 は

低 下 す る傾 向 に あ り,80%検 出 可 能 な透 過 像 の 写 真 コ ン

トラ ス トCmin,は,0.0!!,0.025,0.047,0.061,

0.086,と ほ ぼ 直線 的 に上 昇 し,翌 日の 実 験 で は,T0~

T2は ほ ぼ 同 じ値 を示 した が,T3,T4で は0.052,0.078

とや や低 い値 を示 した。

実 験2)で は,Cmin.は 近 心 根 尖:0.067,遠 心 根

尖:0.060と な り,翌 日の 実験 で は,そ れ ぞ れ0.065,

0.057と や や 改 善 され た が,い ず れ も近 心 根 尖 の方 が そ

の検 出 が 困 難 で あ った 。 これ らの値 は,実 験1)のT=

0.41,0.37のCmin,に 相 当 した 。 濃 度 測 定 結果 か ら得

られ た標 準 偏 差 の4倍 値 を骨 梁 構 造 の写 真 コ ン トラス ト

とす る と,そ れ は近 心 で は0.276,遠 心 で は0.212と な り,

T値 の0.6~0.7倍 の コ ン トラス トで,同 じCmin,と な

る結 果 を得 た。

16. 顎骨骨梁像の成り立ちについて(そ の3)

Comparison of the image on the dental

roentgeograms with histological findings

of the lower jaw (the third report)

愛知学院大・歯放

西村 章 ・岡野恒一 ・高木信雄

三矢晶吾 ・菊地 厚

Department of Dental Radiology, School of

Dentistry, Aichi-Gakuin University

Akira NISHIMURA, Tsuneichi OKANO,

Nobuo TAKAGI, Shogo MITSUYA,

Atsushi KIKUCHI

X線 写真像の成 立には,撮 影条件,被 写体 の状態,写

真処理等の種々の因子が関与す ることは周知 の事実 であ

るが,X線 写真よ り被 写体の欠損 の程度,換 言すれ ば定

性的定量が可能で あれば診断上,更 に大きな役割 を果す

こ とは言 うまで もない。私達は顎骨のX線 像 と組織像 と

を対比 させ,骨 梁構造 に於 ける被写体の厚 さの違 い と,

写真 コン トラス トとの相互関係 について検討 し,2~3

の知 見を得 たので報告 した。

実験材料 と方法 人の下顎骨 臼歯部 を20mm厚 さのポ

リエ ステル系樹脂に包埋後,1mm厚 さに切 断 し,頬 舌

(75) 75

面観は 口内法に近似 した撮影条件 でX線 撮影 し,ミ ク ロ

フォ トメーターにて骨梁像 の客観 的認知 を企 り,写 真 コ

ン トラス ト0.1で ある所 を測定 の対称 とし,そ れ以外 の

部位 を対 照 とした。一方隣接面観 は ソフテ ックス写真 を

作 り,20倍拡大投影 を行 って,頬側 よ り舌側 までの骨 の厚

みを計 った。用い た試料 では骨 の総厚みが7.5~8.5mm

程度 の ものが最 も多 く,中 に4mm前 後 と粗な もの,或

は17mmと 非常 に骨 の緻密な試料 もあった。

まとめ 写真 コン トラス ト0.1の 部位 に於 け る骨 の頬

側 よ り舌側 までの総厚 みが8mm,で あ る場合,相 隣接

した箇所 は7mm,或 は12mmの 時,1.25mmと,そ の

骨 の厚みの差は約1割 前後 であ った。今 回の設定 した条

件 は成 人下顎大 臼歯部 と軟組織 の代 りとして20mm厚 さ

の樹脂,撮 影条件 は65KVp,75mAS,FSD150cm,フ イ

ルムは コダ ックのDF58,写 真 コン トラス ト0.1であ り,

このよ うな条件下 では,骨 の厚みの差(y)と 骨の頗側 よ

り舌側 までの総厚み(x)と の問 には,y=0.15x-0.14

の式が導 き出 された。

この様な 値は,即 利用 でき るものではないが 撮影条

件,被 写体 の軟組織が およぼす影響 も順 次考慮 すれば,

1枚 のX線 写真 よ り,あ る程度の精度 をもった定量 が可

能にな ると考 え られ る。

17.VTRに よ る発 音 時 の舌 の うご きに つ い て

Application of Video taperecorder to the

Observation on Tongue Movements

during Pronunciation

鶴見大 ・歯放

*鶴見大付属病院 レン トゲン室

近 藤 久 子 ・足 立 忠 ・山本 昭

五 島洋 太 ・*田 中 守

Dept. of Oral Radiology, Tsurumi University,

School of Dental Medicine.

Hisako KONDO, Tadashi ADACHI,

Akira YAMAMOTO, Yota GOSHIMA

and Mamoru TANAKA

〔は じめに〕

発音時 の舌 の運動 を観察す るのに際 し,い ろい ろな方

法が考 えられ るが,そ の 動 的観 察 を行 うため,Vide o

taperecorderで 再生 したX線 テ レビ像 を用いた。

〔実験方法〕

X線TV装 置 で,舌 の側面像 を 「あか さたな」の順

に あ段 か ら順 次発音 させなが らビ デ オ テ ープに記録す

る。音声 は同時録音 す る。 さらにVideo Timerを 使 用

し,時 間 の経過 も同時 に記録す る。 観察 に際 し て は,

VTRを 遅 速 した り,必 要 と思 われ る個所では,画 像 を

停止 して行な った。 また,そ の停止画 像 をポ ラロイ ド写

真で記録 し トレース を行ない,各 段階 にお ける トレース

図 を重ね あわせ比較 検討 した。

〔観 察項 目〕

(1)発音開始時において,口 蓋 部 ・前歯部 との舌 の接触

位 置について。

(2)発音終 止時の舌の形状 につ いて。

(3)発音 開始 時(a),終 止時(b)の 下顎 の うご く割合

(b/a)に っいて。

(4)口唇 の接触 の有無 について。

〔結果〕

(1)(4)につ いては,い ままで報告 されて きた もの と比較

した場合,ほ ぼ同様 の結果で あった。(1)では,あ 段 の時

は 「あ」 のよ うに,一 部例外 を除いて,お お よそ母音 の

形 に もどる。(3)のb/a値 において,清 音 よ り濁音 ・半濁

音 のほ うが大きい値 を示す。 また,段 別 に較べ る とあ段

が最 も大 きく,い 段 が最 も小 さく,そ の間 にえ ・お ・う

段 がはいる。

今後 はさ らに,発 音開始時 か ら終止時 にお ける舌 の運

動方 向や,発 音開始時 にお ける舌 の形状な どについて も

観察 し分類す る予定で ある。

座長のまとめ

神歯大 ・放

東 与 光

演題,15は 愛知学院大学,歯 放の塩島に よる 「口内法

X線 写真 におけ る写真 コン トラス トとX線 透過像検 出能

との関係 について(そ の2)」 であ った。 この 実験 の目

的は根 尖病変の検 出にあた り,い かなる写真 コン トラス

トの とき,も っ とも良 く人工的 に作 った円形透過像が検

出できるかを調 べた ものである。臨床 におい て,根 尖病

巣 が どのよ うなフィル ムの条件 の ときに,も っとも検出

できるかの基礎実験 であって,臨 床的 にもきわ めて重要

な実験 といえよ う。今後 の発展 を望みたい。質問は あ り

ませ んで した。

演題,16は 同 じく愛知学院大学,歯 放 の西村 らに よる

「顎骨骨梁像 の成 り立ち について(そ の3)」 であった。

演者 らは過 去2回 にわた り,顎 骨 のX線 像 と組織像 との

対 比 をこころみ,発 表 してきたが,今 回は顎骨 の厚 さの

違 い と写真 コン トラス トの相互 関係 につ いて検討 してい

る。 その結果,骨 梁像 は0.25~0.5mm程 度 の厚 さのち

(76) 76

がいで とらえ られ ることがわか った。 その時 の写真 コン

トラス トは0.05で あった。臨床 的に顎 骨骨梁 の消失 は顎

骨病変 の診断 に重要な要因で あるゆえに,こ のよ うな基

礎実験 は大切 であろ う。 と くに 質問は あ りませんで し

た。

演題,17は 鶴見大,歯 放の近藤 らによる 「VTRに よ

る発音時 の舌 の うごきについて」 にっいての演題で あっ

た。 前回 に も 発音時 にお ける舌 の うごきの発表が あっ

たが,今 回 は舌 の動 きをI~IVに 分類 し て 考察 してい

る。

この実験 の意義 につい ての質問が あったが,す べての

研究 において必 らず しもはっき りした意義が見いだせな

い場合 もあ り,実 験 している うちに意義 が発見 され るこ

とも少 な くない よ うである。今後,舌 疾患 の ときの発音

時の舌 の うごきな ど面 白い現象 が解 明され るこ とを望 ん

でいます。

写 真I(18~20)

18. 本 学 に お け る 口 内法 撮 影 の実 態

Analysis of Request for Intraoral Radiography

by Dentists belong to Nippon Dental

Universty Hospital, Niigata,

日本歯大 ・新潟歯 ・歯放

藤 由一 枝 ・伊 藤 嘉 章 ・村 山俊 一

前 多 一 雄

Nippon Dental University, Niigata Depertment

of Dental Radiology

Hitoe FUJIYOSHI, Yoshiaki ITO,

Syuniti MURAYAMA, Kazuo MAEDA

演者 ら は,歯 科放射線学教育 でX線 診査 を行 な う場

合,撮 影前 に どの部位 の何 を見 たい のか明確 に して,そ

の目的 に合 った撮影法や投影法 を選択 しな けれ ばな らな

い と教 えてい る。 当科は昭和46年11月,附 属病院 開設 と

同時 に撮影業務 を始 めた。撮影 は他科 か ら放射線科宛 の

撮影依頼 票にて実施 され るが,昭 和46年11月 か ら47年9

月までの1366件 の依頼 票の うち,撮 影 目的の明確 の もの

は9.7%に す ぎなか った。演者 らは,他 科 の主治 医に撮

影 目的を明確 に して もらうため依頼 票の改訂 を試 みた。

同時に口内法撮影 の投影法別撮 影の割合 をみた。

1. 撮影依頼 票の改 訂

No.1昭 和46年11月 か ら昭和47年9月 まで使用

No.2昭 和47年10,月 か ら昭和49年4月 まで使用

No.3昭 和49年5月 か ら昭和50年12月 まで使用

No.4昭 和51年1月 か ら昭和52年6月 現在 も使用 中。

No.1で は,1366件 の撮影依頼 があ り撮 影 目的の明確

な ものは9.7%で あった。

No.2,依 頼票 に撮影 目的の欄 を作 る。 この期 間中に

おいて3650件 の撮影依 頼 を受 け28.3%に 撮 影の 目的が明

らかにな った。

No.3,依 頼票 を全面的 に記訂,歯 の撮 影 には,撮 影

法 に○印 をつけ るよ うにす る。 この期間 中5315件 の依 頼

が あ り60.7%に 撮 影 目的 の記入 を見た。

No.4,歯 の撮 影 に関 しては,投 影法別 に歯 牙名記入

の欄 を作 る。結果は全て の依頼 に撮影 目的が明確 とな っ

た。

2.  投影法別割合

昭和51年1月 か ら昭和52年6月 までの間の投 影法別割

合 を見 ると,根 尖投影94.7%辺 緑投影4.4%,咬 翼法0.5

%,偏 心投影0.3%で 口内法 の殆 ん どは根尖投影法 であ

る。各科別 に見 て も90%以 上 は,根 尖投影法 が占めてい

た。

3.  歯 の撮影 の割合

歯 のみの撮影,歯 の撮影 と他 の撮 影,歯 の撮影 を含 ま

ない撮影 の割合 を見 る と,71.8%,13.1%,15.1%で あ

った。

ま とめ

49年 頃までは,歯 の撮 影においては,歯 牙名のみの記

載 が多 く,依 頼票 の不備 もあった と思われ る。 これ を解

消す るために依 頼票 の改訂 を行ない,よ い結果 を得た。

当科 においては,歯 のX線 撮 影 の割合が,85%を 占め

てお り,歯 め撮 影 の重要 さが強調 され る。 口内撮 影法の

殆ん どは,根 尖投影が 占めてお り,歯 周疾患 の診 査 に不

可欠 の辺縁投影法や,歯 内療法 で必要な偏心投影法 の活

用が,非 常 に少い こ とがわか った。

以上 か ら診療 に適格なX線 診査が行なわれてい るか ど

うか疑問が もたれ た。

(77) 77

19. 本学におけるX線 口内法写真の検討

その2.口 内法X線 フイルムの処理技術に

ついて(第6報)

The Study of the Intra-oral Radiographic

Technic in Our Clinic

Part 2 On the Processing Systems

(6th Repoort)

鶴見大歯附属病院 レン トゲ ン室

*鶴見大 ・歯放

田 中 守 ・小湊 弘 ・*山本 昭

*松 沢輝 子 ・*近藤 久 子

Dept. of Oral Radiology, Tsurumi University,

School of Dental Medicine.

Mamoru TANAKA, Hiroshi KOMINATO,

Akira YAMAMOTO, Teruko MATSUZAWA

and Hisako KONDO

目的: 写 真 処 理 の立 場 か ら,患 者 の 被 曝 軽 減 を計 るた

め,第16回 総 会 にお い て は 現 像 液 温 の上 昇 を,第17回 総

会 に お い て は現 像 時 間 の延 長 を計 り,そ の 増 感 効 果 につ

い て報 告 し た。

今 回 は,処 理 用 薬 剤 の処 方 の検 討 の 一 端 と して,カ ブ

リ抑 制 剤 とし て高 湿 現 像 液 に用 い られ るStarter量 の変

更 に よ る増 感 効 果 と 日常 管 理 へ の応 用 を検 討 した 。

実 験 機 器 と材 料:1)歯 科 用 自動 写 真 処 理 機,Litton

P-10型2)X線 装 置,(1)KD100L-II型(2)ORAX(モ

リタ)3)濃 度 計 ・東 京 光 電MODEL-185型,4)PH

計 ・EA-120型(飯 尾 電 機)5)撮 影 用 フ ァ ン ト ー ム ・

DXTTR,6)乳 剤 ・Kodak Ultra-speed ,7)処 理 液 ・

(1)Dupont Cronex Auto Developer,Fixer & Starter

(2)Kodak RP Developer & Fixer,

実 験 方 法:1)LittonP-10現 像 液 温 を,28℃ か ら2

℃ ず つ 上 昇 させ,36℃ ま で の5種 につ い て,現 像 液 中

のStarter量 を0.5%ず つ 増 量 させ な が ら添 加 し,4段

の 階 段 曝 射 フ ィル ム と下顎 大 臼歯 部 を撮 影 した フ ィル ム

と を処 理 し,お の お の 黒 化 曲線 を比 較 し,ま た 肉 眼的 観

察 に よ る画 質 の 比較 を行 な っ た。

2)  現 像 液 中のStarterの 量 を1%ず つ5%ま で 増 量

させ,そ のpH値 が どの よ うに 変 化 す るかStarterの

効 果 との 関係 に つ い て検 討 した。

3)  通 常 補 充 液 の 中 に はStarterは 添 加 され な い が,

日常 の 処 理 の安 定 を計 る た め,補 充 液 に もStarterを 添

加 して応 用 した。

結 果:1)Starterに よ る増 感 作 用 は,各 液 温 と も ほ

ぼ2.5%添 加 の 場 合 を ピー ク と して認 め られ,そ れ 以 上

の 添 加 で は現 像 力 は 抑 制 され る傾 向 に あ る。

2)  Starterの 効果 に よ る撮 影 時 間 の短 縮 は ほ ぼ20~

30%,現 像 液 温 を32℃ ~34℃ に上 昇 させ,か っStarter

を添加 して使 用 した 際 の撮 影 時 間 は,ほ ぼ40~50%短 縮

可 能 。

3) Dupontの 現 像 液 のpH値 は10.6,Starter原 液

のpH値 は1.2と 強 酸 で あ った 。Starterの 量 を増 加 す

る と,当 然 の こ とな が らpH値 は低 下 し,2.5%で9.8,

5%で9.0で あ った 。Starter量2.5%ま で は,pH値 が

低 下す る に もか か わ らず 黒 化 曲線 上 ガ ンマ ー が 高 い 傾 向

が み られ,さ らにStarterの 量 が増 え る とガ ンマ ー は急

激 に低 くな る。

4)  日常 の使 用 で は,現 像 温度32℃ ~34℃ で現 像 液

及 び補 充液 に0.5~1%の ス タ ー ター を添加 して 用 い る

と,処 理 の安 定,カ ブ リ抑 制,増 感 効 果 な どで 良 い 結果

を示 した。

20. 散乱線除去効果による画質の改良法 につい

Improvement of radiographic image quality by

means of the scatter control among

different intensifying screens

日大歯 ・放

*大 日本塗料小 田原工場

本 城 谷 孝 ・ 丸 橋 一 夫 ・ 佐 藤 精 明

西 岡敏 雄 ・*四宮 恵 次 ・*三浦 典 夫

Department of Radiology Nihon University

School of Dentistry.*Dai Nippon

Toryo Co., LTD. Odawara

Takashi HONJYOYA, Kazuo MARUHASHI,

Seimei SATO, Toshio NISHIOKA,*Keiji SHIMIYA ,*Norio MIURA

は じめに

散 乱線によ る写真 コン トラス トの低下 を防 ぐため に,

最 近ではカセ ッテ前面 に金属板な どを付着 させて使用す

る方法 な どが試み られ てお り,好 結果 を得てい るが,今

回著者 らは同一 カセ ッテ内 に2種 類の増感紙 を入 れ,そ

の中間に鉛 フィル ターをはさんで撮影 し,こ の2層 間で

の画像 の差,お よび2層 間 での相対 コン トラス トの差に

つ いて検討 し報告 した。

方法

カセ ッテ内の第1層 目にはFSを 固定 し,第2層 目に

(78) 78

は,FSに 対す る比感度が(1)330,(2)240,(3)

160,(4)100,(5)60,(6)40の6種 の 増感紙 をそ

れぞれ第1層 と組 み合 せて使用 し,そ の中間 には,厚 さ

0.03,0.1mmの 鉛 フィルターを 挿入 して実験 した。X

線 発生 装置には,東 芝KX-15,肥 田N-70,P-100を 使

用 し,フ ィルムはサクラニューYを 使用 した。

結果

高 さ10cmの 水槽 中に置 い たAIstepの 撮影 では,

60kVpの 場合の 上記(1),(2),(3)の 各増感紙 の

使用時 に,80kVpで は(3)の 増感 紙 を使 用 した際に,

これ らの増感紙 を単純 に使用 した時 よ りも,相 対的に写

真 コン トラス トの向上が 目立 った。

また,第2層 目の各増感紙 の相対感度の比較では,写

真濃度 をX線 強度 に換算 して求 めた結果,鉛 フィル ター

の厚 さが0.1mm以 上 になる と,鉛 によるX線 の吸収効

果 が大 き く,FSよ り感度 の高い増感紙 でも,相 対感度

が低下 し写真 は淡 かったが,軟 部パ ターンの示現 には都

合 がよかった。

FSの 濃度 を1と した場合 では,FSよ り比感度 の低 い

増感 紙では,も ち ろんFSよ り高 い濃度 の写真 は望 めな

いが,鉛 フィルター を入 れる ことによって,第1層 とは

違 った黒化度の低い範囲の写真がえ られ,逆 にFSよ り

比感度の高い増感 紙 を使用す ると,鉛 の厚 さが0.1mm

と厚 くな って も黒化度の高い写真がえ られ た。

また,ア ク リル とA1のstepを 水槽中で カセ ッテに

近い位置 において撮影 した際の実験では,鉛 フィルター

を中間 に入れた場合 と,入 れなか った場合の相対 コン ト

ラス ト比 は,ア ク リル の方が大 きか った。

これ とは反対 に,stepを 水槽 中でX線 管側 に近づ けた

場合 には,Alstepの 方 が相対 コン トラス ト比 が大 きか

った。

これ らの結果 か ら,カ セ ッテ内に鉛 フィル ターを入れ

ることによって,カ セ ッテ側 に近 い位置 にお かれ骨部 に

相 当す るAlstepの 相対 コン トラス トは向上 した。

また,軟 部そ しきに相 当す るアク リルstepで は,X

線管側 にあった場 合その相対 コン トラス トは向上 した。

カセ ッテ内の散乱線 を除去 し,し か も第1層 と第2層 と

の相対 コン トラス トの違 う写真 を得 るために種 々の組 み

合せで実験 したが,そ れ らの効果は骨部 よ りも軟 部組織

の示現 性が高か った。

座長のまとめ

愛院大 ・歯 ・歯放

菊 地 厚

このセ ッシ ョンの発表は3題 であったが,演 題相互間

に関連がないので各演題 についてま とめる。

演題18本 学におけ る口内法撮影 の実態(日 歯大 ・新

潟 ・放 ・伊藤嘉章 ほか3名)

この演題 は,放 射線 科 にX線 撮影 を依頼す る場 合 に,

依頼票 の様式 によって撮影部位 は記入 されて も撮 影 目的

あるいは撮影法 の記入が少なか った(9.1%)も の を,数

次 に亘 る依頼票 の改善 によって撮影 目的 の記入が多 くな

った(60%)実 例 につい ての発表で あった。依頼 票の様

式 によってある程度撮影法 が決定 できるわけであるが,

この問題 は病院 内にお ける放射線科 のあ り方 にまで進ん

でゆ く問題 も含 んでいる と思われ る。

演題19本 学 におけるX線 口内法写真 の 検討,そ の

2 .口 内法X線 フィルムの処理技術 につ いて(鶴 見大 ・

歯 ・歯 放 ・田中守 ほか4名)

鶴 見大歯放では現像 液の増感 法についての研究 を続 け

てい るが,今 回は現 像液 の温度上昇 とこれ に併せ てスタ

ー ター を加 えて増 感現像 を行ない34℃ の現像液 に1%

のスター ター を加 えて約2倍 の増感現 像を行 ない好結果

を得てい ること,ま た補充液 に2.5%の スターターを加

えて好結果 を得てい る旨の具体 的デー ター を発表 した。

この演題 に対 して大坊(東 北歯大)よ り補 充液 の用 い方

や現像液更新 の時期 な どについ て質問,こ れに対 して応

答 があった。

演題20散 乱線 除去効果 による画質 の改良法 について

(日大 ・歯 ・放本城谷孝 ほか5名)

X線 写真 の コン トラス ト向上 のために種々な る散乱線

除去の方法 が用 い られ ているが,演 者 らはカセ ッテ内 に

感 度の異なる2種 の増感紙 を入れ,そ の中間 に鉛箔 を挾

んで前 増感 紙までの散乱線 を除去 し,感 度 の高 い後増感

紙の発光に よ り,前 増感紙 と同 じ種類 の複合増感紙 を用

いた時の増感率 よ り感 度 を低下 させないで散乱線 除去 の

目的 を達 しよ うとす る実験 で今後 どのよ うにこの方法 を

発展 してゆ くかに興 味があ る。

(79) 79

写 真II(21~23)

21. 増 感 紙 一 フイ ル ム組 合 せ 系 に よる 歯 科X線

撮 影 につ いて

Introduction of screen-film combination system

into the intraoral radiography

東京 医歯大 ・歯放

岡野 友 宏 ・井 上 照 夫 ・中村 正

Department of Dental Radiology Tokyo

Medical and Dental University

Tomohiro OKANO, Teruo INOUE,

and Tadashi NAKAMURA

歯科X線 検査 時における患者被曝線量 の軽減 を図 るた

めに,増 感紙 一フィル ム組合せ系 を採用す ることは従来

か ら検討 され てきた。 しか し,口 内法 においては カセ ッ

テを口腔 内に挿入 しなけれ ばな らない とい う問題 と,増

感紙 を使用す るこ とによる画質 の低下 とい う欠点があ る

ため,日 常 の臨床 に利用 され るには至 っていない。そ こ

で,こ れ らの欠点 を少 しで も補 うことによって増感紙 一

フィル ム系 を利用で きない ものか検討 した。

まず カセ ッテ は口腔内での異物感 を少な くす るために

フ レキシブル とし,増 感紙 とフィルムの密着 をよ くす る

た めに真空パ ックとした。即 ち,増 感紙 とフィルムを含

ん だパ ックか らひいたチ ューブの先端 の真空バル ブを介

して注射器な どを利用 し パ ッ ク 内の空気 をぬき,そ の

後,注 射器 をはず して 口腔 内に入れ る。パ ック と増感紙

は再使用でき るよ うに した。

次に,こ のよ うな真空パ ックを利用 した増感紙一 フィ

ルム系による検査法 が,従 来 のノンスク リー ン系撮影 に

よ る検査法 と比較 して感度 と画質が どのよ うに異な るか

を,線 量黒化度 関係な らび にMTFに よって評価 した。

ここで使 用 した増感 紙一 フィルム系は,FSとKXの 組

合 せ とKodak Min-R systernで あ り,比 較のための ノ

ンスク リーン系 はKodak Morliteで ある。 これ らの線

量黒化度 関係 に よ る と,感 度 は,Morliteに 比較 して

Min-Rは5倍,FSとKXの 組合 せは20倍 であ ったの

で,こ れ らの増感紙一 フィル ム系 を用いれば,必 要 な線

量 はMorliteの1/5な い し1/20でよい ことがわか る。 また,

コン トラス トは,増 感紙 ーフィル ム系 では,Morliteに

比較 して,低 ・中黒化度域 で高 い。MTFは,Morlite

が,増 感紙- フィル ム系 に比べて,は るかに優れ ている

ことがわか った。

一般 に,増 感紙使用 による画質の低 下は当然 であるの

で,歯 科X線 検査 に増感紙 を使用す る場合,同 時 に診 断

に必要最少限 の画質 とは何か とい うことを整理 してお く

必要 がある。 これ を,こ こで用いた増感 紙ー フィルム系

によって撮影 したX線 写真 を用いて検討 した。即 ち,ラ

ン ドマー クとしてエナメル質,象 牙質,歯 髄腔,歯 根膜

腔,歯 槽硬線な らび に歯槽骨骨梁,さ らに充填物,病 巣

およびその 境 界について,こ れ らのX線 写真 を観察 し

た。その結果,日 常 の歯科 臨床における最小 限の画質 は,

ここで用 いた増感紙 ーフ ィルム系によって充分得 るこ と

ができる と考 えた。

以上 の結果,歯 科X線 検査時 の 被曝線量軽減 のため

に,フ レキシブル の真空パ ックによる増感紙ー フィル ム

系 が利用 できるこ とがわか った。

22. パノラマ撮影用高感度PS II増 感紙の特性

Characteristics of PS-II Screens for use in

Orthopantomography.

大 日本塗料 ・小 田原工場

*日大歯放

〇 四 宮恵 次 ・三 浦 典 夫 ・*西 岡敏 雄

Dai Nippon Toryo Co., LTD. Odawara. *Department of Radiology . Nihon

University School of Dentistry

Keiji SHIMIYA, Norio MIURA,*Toshio NISHIOKA

歯科放射線領域,特 にパ ノラマ撮影 においては,X線

診断能 の向上 と患者被曝線量 の低減が重要視 さ れ て 来

た。 我 々はCaWO4螢 光体 を用いた増感 紙では,写 真

感度 を高 めても,それ程粒状性が悪化 しない点に着眼 し,

増感紙 の構成,螢 光体 の特性 を検討 し,写 真画質即 ち鮮

鋭度,粒 状性 をHS増 感 紙 と同程度 にして,感 度 を1.4

倍 まで高 めたパ ノラマ 撮影用増感 紙PS-IIを 開発す る

こ とが出来たので,そ の構成 並び に写真特性 について報

告 した。

HS増 感 紙 と同一鮮鋭 度で感 度 を上げ る手法 として,

従来 の増感紙 と異 り,LT,LH,の 開発に用いた多重層

構造 のス クリー ン化技術 を駆使 したわけである。

ス クリー ン断面 か らも判 る如 く,従 来 の構造 では,螢

光体 は均一 分布 していた ものに対 し,多 重層構造 ではス

ク リー ン表面 か ら支持体側 に粒子経 の分布 を傾斜 させた

もので,こ の多重層構造 にす るこ とによ り,感 度は大粒

子螢 光体 に,鮮 鋭度 は小粒子螢光体 に近い特性動向 を示

し,特 に線状X線 入力 に対す るスク リー ン発光分布で あ

(80) 80

るLSF分 布 の裾 の広 が りが小 さい ことか らも判 る如 く,

低空間周波数領域 のMTFが 向上 してい る。

以上 の基本構造 で設 計 したPS-II増 感紙 は,HSと 同

等 の鮮鋭度 を持 ち,FSの3.3倍,HSの1.4倍,KZと

同等 の感度 を示 し,LT,LH増 感紙 の延長線上 の特性 を

保持 している。

更に管電圧 一感度特性 は同 じCaWO4螢 光体 を用 いて

いる こ と か ら,他 の増感 紙の電圧 変化 と大 きな差 はな

く,多 少高電圧 になる と感度比 は大 き く な る傾 向にあ

る。又粒状性 に関 して も,心 理 的粒状 に相 関 ある250μ

角のス リッ トで ミク ロ トレース した結果及 びRMS粒 状

性 もD=0.8で2.5×102の 値 であ り,殆 ん どHS増 感紙 と

同 じであ る。 この理 由は,Ωuantum mottleの 影響度合

が同 じCaWO4螢 光体 を用いてい ることで差 を生 じない

もの と判 断 される。

このPs-IIをOrthopantomographvに 使 用 した結果,

KZと の比較 では80kVp,15mA,20sec,の 全 く同一条

件 で撮影が可能で あ り,PS-IIの 方が明 らかに鮮鋭度 は

向上 してい る。 更 にHSと の比較 では,感 度 関係 か ら

HSで は22mA,PS-IIで は15mA,の 露出差が あ り,被

曝 を低減 して しか も低周波MTFの 良 いこ とか らPS-II

の方が良好の画質 を有 してい る。感度 の上昇分 を撮影電

圧 で調整すれ ば,約10kVp低 圧 で撮 影が可能であ り,コ

ン トラス ト上昇 に伴 う画質改良 も期待出来 る。

以上鮮鋭度,粒 状性 を保持 して感度 を上昇 させ る増感

紙 の開発方 向は,患 者の被曝低減 とあわせ て,X線 管 の

負荷 も減 じ,小 焦点X線 管 の使用,撮 影電圧 の選択域が

拡大す る等 の利点 を有 してい る。

23. オ ル ソパ ン トモ グ ラ フ ィ に お け る 稀 土 類 増

感 紙 の評 価

Evalulation of rare earth screenin

orthopantomography

大阪大 ・歯放

角 田 明

Department of Oral Radiology Osaka Univ.

Dental School

Akira SUMIDA

(目的)近 年,患 者被 曝線量 を軽: 減 させ る目的で,稀

土類増感紙 の導入 が各方面 で行なわれてい る。 しか し診

断 目的 によっては画質の点か ら,情 報量の低下 を招 く場

合 がある とされてい る。 口腔 領域では,オ ル ソパ ン トモ

グラフィが通常70~90kVpの 管電圧で 撮影 されてい る

こ とに着 目し,稀 土類増感紙 の利用 を試みた。現在まで

画質の比較 は,MTFや 粒状性 な どの物理 的評価 を基本

とす るものが中心 であ ったが,臨 床写真 の評価 と一致 し

ない場合が あるため,本 研究は,専 門医がX線 像 を読影

す る主観 的評価 を基本 とした。

(実験器具)使 用装置:Panoramax100-20R(朝 日レ

ン トゲ ン工業K.K)撮 影条件:80KVp12~2mA,13

sec被 写体:Alderson Rando Phantom,自 現 機:

M6A-N(Kodak)90sec,現 像液:Kodak指 定液33.5

℃,濃 度計:PDA-65(サ ク ラ)フ ィルム:Q,RX,

O&-1,RXO,QSO,増 感 紙:MS,LT-II,LM,

LANEX,G-4

(実験方法)被 写体 は断層軌道 に一致 させ るため,垂

直方 向に近い下顎骨 を選ん だ。そ して装置のchinrest

を前後 させ,実 際 に数枚撮影 を行 ない最適画像 と思われ

る位置 に被写体 を固定 し,以 後,本 研究 の撮影 はすべて

この同一状態 で行 な っ た。 撮影条件 の増減は管電圧80

KVpを 一定 とし,管 電流 を連続的 に変化 させた。 フィ

ルム濃 度の決 定は,従 来用 い られ ているMS+Qの 組合

せで数枚撮 影 を行ない,最 適 と思 われた ものを選 んだ。

この撮 影条 件は13mAで あ り,X線 像 のある部位 の濃度

が1.50で あったので,こ れ を濃度基準位置 として以後 の

実験 を行 な っ た。 尚,基 準部位 での濃度範囲 は1.50±

0.15と した。

(観察方法)多 数の試 料 フィルムの中か ら任意 に選 び

パ ノラマX線 像 に現 われてい る7点(図 エナメル質 と象

牙質 の境界,右 下顎管 の壁,司 近心Lamina dura,l67

間 の骨梁,「7近 心 の根管,「7近心 の歯石,「1根 尖Lami-

na dura)を 観察部位 とし,読 影者 の評 価 を求めた。各

観察部位 について,読 影者は次の5つ の回答 の中か ら1

つ を選ぶ もの とした。非常 に良い(2点),良 い(1点),

普通(0点),悪 い(-1点),非 常 に悪 い(-2点)

(結果)総 合的な画質は,評 価 された観 察部位7カ 所

の合計点 の大小 で比較 した。画質の良否の判定基準は,

一般 に多 く用 い られ ているMS+Q ,MS+RX,LT.II+

Q,LT.II+RXの4種 の組合せ を標準 フィル ム とした。

各 々の読影者 が評価 した標準 フィル ムの最下限 を読影像

として許 され る画質基準 と定 め,そ れ よ り上方 に評価 さ

れ た稀土類増感紙 とフィル ムを利用可 とした。読影者5

名 中,3名 以上共通 して標準 の組合せ よ り評価点数 の上

まわった稀土類増感紙 とフ ィルムの組合せ は,LM+Q,

LM+OG.1,OG.4+〇G.1の4種 で あ り,そ の相対感

度 は,そ れぞれ2.3倍,2.4倍,2.0倍,2.3倍 であった。

以上の結 果か ら従 来の画 質 と同程度 で稀土類増感紙 をオ

ル ソパ ン トモグラフィに使用で きる事が判 ったが,そ れ

は必ず しもメーカー指 定 フィルム との組合せ ではなか っ

(81)  81

た。

座 長 の ま とめ

鶴見大 ・歯放

山 本 昭

このセ ッシ ョンで と りあげ られた3題 は,い ずれ も増

感 紙 とフィルム との組合 せによって,従 来 の方法 を用 い

た場合 よりも被 曝量 を減 少 させ よ うとの試 みによる もの

であった。

医歯大,岡 野 らは演題21で,口 内法X線 検査 に増感紙

一 フィル ム組合せ系 を用い,ノ ンス クリー ン系の撮 影法

と感度 と画質 の面 で どのよ うな差異が生ず るか について

検討 し 。

対照 として のノンス ク リー ン系にKodakの デンタル

フィル ムを用 い,真 空パ ックしたFS(極 光)とKX(富

士)とKodakのMin-Rシ ステム とした。

その結果,感 度 はMin-Rで 約5倍,FSとKxで は

20倍 とな り,低 中濃度域 での コン トラス トは ともにす ぐ

れ,解 像力 もさほど劣 らなか った。臨床応用 の可能性 も

ある とした。

これ に対 し西岡(日 大)は,解 像力 の点でMin-Rが

かな り良いよ うに見受 け られ るが,そ れは この システム

自体 がす ぐれ てい るのか あるいは真空パ ックとい う操 作

が寄与 してい るのか と質 し,演 者は,主 として このシス

テムその ものの持つ効果 である と答 えた。

スク リーン系 の画質が,ど こまで ノンス ク リー ン系の

それ にせ まるこ とがで きるか。今後大い に期待 され ると

ころであろ う。

四宮 らは,演 題22で,大 粒子 と微粒子 の螢光体 の組合

せ による新 しい 多重層構造 の増感 紙PS-IIの 商品化 を

行 ない,そ の特 性の紹介 を した。

パ ノラマ撮影用 の増感紙 であ り,鮮 鋭度,粒 状性な ど

の写真画質 はHSと 同程度 で,感 度 は,そ れの1.4倍 で

ある。

患者被曝量 の低減 に加 え,管 球 の負荷 の減少,小 焦点

使用 の可能性 な どを強調 した。

角 田 らは,演 題23で,被 曝量 の軽減 にはかな り有効 と

は されなが らも,診 断 目的 によっては画質上 の問題が あ

る とされ ている稀土類増感紙,各 種 につ いて検討 した。

被 写体 としては,Rando Phantomを 用 い,80kVp

で,基 準部位 の濃度 がほぼ1.5に なるよ うに管電流 を調

整 した。得 られたX線 写 真は,あ らか じめ定 め られ た7

カ所(エ ナメル象牙境,根 管,骨 梁,歯 石 な ど)に つ い

て専門医によ る主観 的評価 を した。

結 論 と して は,従 来 の画 質 と ほ ぼ同 じ程 度 で,稀 土 類

増 感 紙 は オル ソパ ン トモ グ ラ フ ィ に利 用 で き る との こ と

で あ っ た。

演 題22お よび23に は,質 疑 はな か った 。 ス ク リー ン撮

影 法 の問 題 点 は,現 状 の ノ ンス ク リー ン撮 影 の 画 質 を標

準 ない しは理 想 と考 えた 時 に,ど こ まで そ の レベ ル に せ

まれ るか とい うこ とで あろ う。

読 影 者 側 に つ い て,ど の 位 の画 質 低 下 が あ って も フ ィ

ル ム を読 み こな せ る か とい う問題 と と もに,追 求 され な

け れ ば な らな い と考 え る。

線 量 ・防 護I(24~25)

24. X線 ス ペ ク トル 分 布 変 換 に よ る 被 曝 線 量 軽

減 に 関 す る 研 究

1. Gdフ ィ ル タ ー に つ い て

The study on alleviation of patient dose by

transformation of X-ray spectrum distribution.

Part1. Gd Filtration

日本 歯 大 ・新 潟 歯 ・歯放

和 田 真 一,伊 藤 嘉 章,前 多 一 雄

Department of Dental Radiology. Nippon

Dental University, Niigata.

Shinichi WADA, Yoshiaki ITO,

Kazuo MAEDA

目的: 現 在 診 断 を 目的 と して使 用 され てい るX線 は,

低 エ ネ ル ギ ー部 分 のX線 スペ ク トル を カ ッ トす る た め,

A1, Cuな どで フ ィル トレー シ ョン され るの が 一 般 的 で

あ る。 しか し,フ ィル ム乳 剤 を構 成 す るAgBrのX線

エ ネ ル ギ ー 吸 収 係 数 の エ ネル ギ ー レス ポ ン ス を 考 え る

と,こ れ ま で のX線 スペ ク トル に は,不 必 要 な エ ネ ル ギ

ー が 多 く含 まれ て い る こ とにな る。

そ こで我 々 は,40keV~50keVにK光 電 吸 収 端(K-

absorption edge)を もつ 希 土 類 元 素 を フ ィル ター と し

て,X線 撮 影 に最 適 の ス ペ ク トル 分 布 を得 よ う とす る実

験 を行 な っ て来 た。 今 回,Gdフ ィル タ ー に よ る スペ ク

トル変 化 と,そ れ に よ る被 曝 線 量 軽 減 に関 して報 告 す る。

方 法: X線 装 置 は,KXO-15を 使 用 した。 スペ ク トル

分 布 は,Greeningの 減 弱 曲線 式 の ス ペ ク トル 分布 変換

と,そ れ に よ っ て得 た線 量 スペ ク トル 分 布 をX(λ)と し,

Gdフ ィ ル タ ー を付 加 した時 の分 布XfGd(λ)をXfGd(λ)=

X(λ)e-μGd(λ)xに よ って 求 め た 。

減 弱 曲線 の測 定 に は,20KeVeff~31KeVeffを 二 次 標

準 線 量 計 で校 正 し,30KeVeff~45KeVeffをTLD,LiF

(82) 82

素 子 との レス ポ ンス 比 較 を行 な ったRadoconII,プ ロー

ブ10LAを 用 い て 行 な った 。 測 定 時 には,多 重 しぼ りに

よ り,A1吸 収 体 の照 射 野 を25mm×25mm squareと

し,更 にA1吸 収 体 と線 量 計 の 間 に鉛 コ リメ ー タ ー をお

き,照 射 野 を20mmφ,A. C. Dを310mmと してnarrow

beam geometryを 得 た 。 これ に よ り,H. V. L, Q. V. L

の上 昇 変 化 は3~5%以 内 で あ った 。

結 果:厚 さ0.07g/cm2~0.28g/cm2のGdフ ィル ター

を付 加 して70KVpと90KVpのX線 減 弱 曲 線 を測 定 す る

と,70KVpで は 実効 エ ネ ル ギ ー は,29KeVeff→40KeVeff

で あ り,不 均 等 度 は1.5→1.15へ と均 一 とな っ て お り,

又90KVpで は31KeVeff→44KeVeff,不 均 等 度 の変 化 は

1.56→1.04で あ っ た 。

スペ ク トル 分 布 の変 化 は,70KVpのX線 で,フ ィル

タ ー な し の 時 が,37KeV程 度 に ピ ー ク を もち,15

KeVか ら70KeVに 尾 を 引い て分 布 す るが,0.28g/cm2

のGdフ ィル タ ー を用 い る と,30KeVか ら50KeVに 分

布 し,50KeVで は,Gdk-edgeの た め に 不 連 続 的 に分

布 が 変化 した。

このGdブ イル トレー シ ョン に よ るX線 線 量 黒 化 度 曲

線 を描 き,フ ィル ター な しの場 合 と比較 す る と,フ ィ ル ム

濃 度1を 得 るた め に必 要 な 照 射 線 量 は50%(Gd厚0.28

g/cm2)で あ っ た。即 ち,Gdフ ィル タ ー0.28g/cm2を 使 用

す る こ とに よ り,被 曝 線 量 を1/2に 軽 減 す る こ とが 出来 た 。

更 に,Xf(λ)の 式 に よ り,70KVpのX線 にLaを フ ィ

ル ター した 場 合 の ス ペ ク トル 分 布 を求 め た 。K-edgeは

39KeVに あ り,フ ィル トー シ ョン に よ るス ペ ク トル の

単 一 化 に,よ り有 効 で あ る。

25.  歯 科 撮 影 時 のX線 ス ペ ク トル の 測 定

Measurement of X-rayspectrumin

Dental radiography

日大 ・歯 放

*放 医研 ・物 理

○ 西 岡 敏 雄 ・ 本 城 谷 孝 ・ 御 影 文 徳

安 藤 正 一 ・*丸 山 隆 司 ・*橋 詰 雅

Department of Radiology,Nihon University

School of Dentistry.*Division of Physics,

National Institute of Radiological Science

Toshio NISHIOKA,Takashi HONJYOYA,

Fuminori MIKAGE,Shoichi ANDO,

*Takashi MARUYAMA ,*Tadashi HASHIZUME

は じめ に

X線 診 断 に用 い られ るX線 は,と くに 低 濾 過 で用 い ら

れ るだけに,示 性X線 の寄与を も含 めたX線 スペ ク トル

の状 態 を理 解 してお くことは,線 量測 定の立場 か らも,

またX線 撮 影 を理論的 に取 り扱 うた めに も,必 要な こと

で ある。

今回著者 らは,口 内法やオル ソパ ン トモ グラフィな ど,

歯科X線 撮影時 の患者 の被ば く低減 のた めの基礎資料 を

得 る目的で,フ ァン トームか らの散 乱線 の線質 を測定 し

た。

方法

X線 発生装置 には,口 内法撮影 装置GE-100,オ ル ソ

パ ン トモ撮影装置N-70・R100を 使用 し,フ ァン トー ム

には,米 国 アル ダー ソン社 の女性 ラン ドフ ァン トー ムを

使用 した。

スペ クル の測定 には,厚 さ6mm,直 径50mm,1mmφ

の鉛 コリメータをっ けたNaI(Tl)シ ンチ レーシ ョンス

ペク トル メータ(0.1mmBe窓)を 用 いた。

シ ンチ レータか らの信 号は,TMC400チ ャンネル の

PHAで 波高分祈 した。得 られ たカウン ト数 をグラフ上

で正規 化 し,各 エネルギーの光子数 を求 め,測 定 した光

子 スペク トルは,次 式 によって算出 した。E=ΣN(E)・

E・ △E/Σ(E)・ △E,N(E)は エネルギーEの 光子数 で

あ る。

また,エ ネルギーの校 正には,銅 や鉛 か らの特性X線

を用い,チ ャンネルに対 する実効エネルギーの補正には

241Amの γ線 を用 いた。

結果

X線 か ら発生す るX線 は連続 スペ ク トル を有 してい る

が,管 電圧 を一定 として,X線 管 の前面 にA1,Cuフ ィ

ル ター を挿入 しての結果は,付 加 フィル ター の厚 さを増

して行 くと,そ れ に 従 って実効エネルギーが高 くな っ

た。

また,口 内法,お よびオル ソパ ン トモ撮 影時の ファン

トーム透過線+散 乱線 は,共 に最大 エネル ギーに大 きな

差 は見 られな かったが,し かし,管 電圧 を高 くす るに従

って,散 乱光子 のスペ ク トル の ピークは,わ ず かに高エ

ネル ギー側 に移行 していた。

比較 のため,一 次X線 や,鉛 扉か らの一次漏洩線 を測

定 した結果 は,鉛 扉 か らの漏洩線 にはフィル ター レー シ

ョンがみ られ た。

(83)  83

26. 口 内法 撮 影 に よる 国 民 被 曝 線 量 の 軽 減 法 に

つ い て

Reduction of population dose inintraoral

radiography

東京医歯大 ・歯放

岡 野 友 宏 ・坂 巻 公 男 ・醍 醐 毅

房 安 欣 三 ・榎 本 晃 ・中村 正

Department of dental radiology, Tokyo

Medical and Dental University.

Tomohiro OKANO, Kimio SAKAMAKI ,

Tsuyoshi DAIGO, Kinzo FUSAYASU,

Akira ENOMOTO, and Tadashi NAKAMURA

わが国の口内法X線 撮影 による国民線量 は遺伝有意線

量 で,最 近15年 間 に お い て10倍 増加 した(丸 山 ら,

1976)。 この国民線量 の軽減 を図るため,こ こでは,撮

影時 の線量 の空間的分布 を改善す る方法 と,高 感度 フィ

ル ムを使用す る方法 との双方 につ いて検討 を加 えた。

線量分布 に関 しては,線 質 ・焦点皮膚間距離な らび に

照射野 の大 きさが 口腔内 にあるフィル ムに到達す る線量

を どのよ うに修飾す るかについ て測定 した。即 ち,歯 科

用X線 装置 を用 いて,10cm厚 アク リル 樹脂 フ ァン トム

内,深 さ2cmに おいた歯科用 フィル ムに 一定黒化度 を

与 えるのに必要 なフ ァン トム表面 における空気 中線量 を

求 め,こ れ に各照射条件 に応 じた背後散乱係数 を乗 じて

皮膚線量 を,Mayneordの 近似式(1940)を 用 いて積分

線 量をそれぞれ算 出 し,こ の2つ の線量 を指標 として患

者負担 を比較 した。 その結果,線 質の変化(HVL 1.5

mm A1か ら2.3mm A1ま で)に 対 して皮膚線量 は20%

減 少 したが,積 分線量 はやや増加 した。焦点皮膚問距離

の変化(25cmか ら100cmま で)に 対 しては,と もに10

%~20%減 少 し,ま た焦点皮膚 間距離 を20cmよ り短 か

くす る と,線 量が急激 に増大す る ことが予想 され た。照

射 野の大き さの 変化(直 径7cmか ら4cmま で)に 対

しては,皮膚線量 は変 化 しないが,積分線量 は70%減 少 し

た。以上3つ の測 定結果か らロングコー ンによ りFSD

を40cmと し,照 射野 をフィルム大 に限定す る コリメー

タを用 いれ ば,積 分線量 を従来 の1/3以下 にで きることが

わか った。

フィル ムに関 しては,線 量黒化度 関係 と乳剤 中のハ ロ

ゲ ン化銀 粒子 の大 きさを,ス ク リー ンタイプな らびに ノ

ンスク リー ンタイプの フィルムを用 いて測定 した。その

結果,線 量 と黒化 度の関係は,ノ ンスク リー ンタイフ。が

直線 的であ りスク リー ンタイプが飽和 曲線 に似た形 にな

った。 これは前者 が単位面積 あた りのハ ロゲ ン化銀粒子

の効 が多 く,最 高黒化度 が高い ためで ある。また上記 の

関係 が直線的 であるほ どコン トラス トが高 くな るといえ

る。ハ ロゲン化銀粒子 の大 きさは,ノ ンス ク リー ンタイ

プ では小 さ く,そ のため鮮 鋭度は高 くハ ロゲ ン化銀粒 子

あた りの感度は低 くな る。以上2つ の測 定結果 か ら,診

断 に役 にたつ全 黒化度域 において高い感 度 を示 し,か っ

ある程度以上の鮮鋭 度 をもつ フィルム とは,比 較 的小 さ

なハ ロゲ ン化銀粒子 を単位面積 あた り数多 く含 む フィル

ムで あるといえた。 このよ うなフィルムを開発 し画一的

に使 用す ることは,国 民線量 の軽減 に極 めて有効 である

と考え る。

ま とめる と,国 民線量 の軽減 のためには,ノ ンスク リ

ー ンタイプのフィル ムの高感度化 と行政 によるそ の画一

的な使 用が最 つとも有効 であ り,こ れ に空 間的線量分布

の改善 を加 えれ ば,従 来 に比べ線量 を1/2ない し1/6まで減

少できる ことになる。

座 長 の ま と め

目歯大 ・放

古 本 啓 一

このセ ッシ ョンは線量 と防護 に関す る演題 で あ っ た

が,い ずれ も障害 を少 くし撮影効果 を良 くす るための基

礎 的研究 であった。

演題24は 日歯大 ・新潟 の和 田 らによる発表 であ り,稀

土 類元素 であるGdフ ィル ター を用い,X線 スペ ク トル

分布 を感光乳剤 の高感度領域へ変換 させ るこ とを試み た

ものである。且 っての40KeVのX線 の波長領域 を主 と

して通 すサマ リウム62に よるフィルター利用 と同 じよ う

な 目的 であったが,Gdフ ィル ター を用い ると,同 一の

写真濃度 を得 るに必要 なX線 量 はフ ィルターな しの時 に

比べて軽減 でき,今 後 の実際面 での利用 が期待 され た。

これ に対 し東北歯大 ・大坊 は半価 層測 定で,厚 さと線

量 との関係 に乱 れがなかったか との質 問があった。 しか

し,そ のよ うな変化 はな く,ま た日歯大 ・加藤 は線量特

性 のないモニター線量計 を用 いてフィル ターの厚 さを可

変 して測定 したほ うがよい との コメ ン トがあった。

演題25の 日大歯西 岡 らはオル ソパ ン トモグラフィーの

散乱線 の線 質 をファン トームを用 いて,NaIシ ンチ レー

ターで測定 し,そ の信号 を波高分析 し,こ れ と一次X線

や鉛 ドアーか らの一次線 の漏洩線 な どのそれ と比較 した

ところ,散 乱線 のエネルギーの意外 と高 いこ とを指摘 し

たが,興 味深 い結果 であった。

これに対 して東北歯 大 ・大坊 は撮影時 の条件 が被曝量

に関係 するのではないか との質問 があったが,撮 影時 の

(84)  84

条件 でエネル ギー範囲 が どの程度 に変 るかを知 る目的で

あ ったこ とが強調 され た。

演題26の 東 医歯大 の岡野 らは国民被曝線量 を少 くす る

ための方法 として,撮 影時 の空 間的線量分布 の改善 と高

感度の フィルム を使 用する ことを強調 し,そ の裏付 け と

して,測 定 を行い,前 者 に対 しては線質や焦点皮膚問距

離 さ らに照射野 の大 きさに よって,口 腔 内にある口内法

フィル ムに到達す る線 量 を測定 し,同 時に皮膚線量 や容

積線量な ど求 めた。 また,ノ ンス クリー ンタイプのフ ィ

ル ムの粒子 の大 きさ と,その単位密度 について検討 した。

その結果,焦 点皮膚間距離 を離 し照射野 を小 さ くす るこ

とにな り現行 の撮影条件 に比 し,皮 膚線量 を1/4位にまで

軽減 できる とし,ま たフィル ム乳剤 の粒子 が小 さ く分布

密度 の高 い もので1/2~1/6の被曝線量 の軽減 が図 られ るこ

とを報告 した。

これに対 し,岩 手 医大 ・歯 ・村井 は 口内法 フ ィル ムの

鉛 箔 の有無 について質問があ ったが,有 との ことであっ

た。

線 量 ・防 護II(27~30)

27. 歯 科 用X線 撮 影 時 の 散 乱 線 分 布

Specific Distributions of Scatterd Radiation

in Dental X-Ray Examinations

日歯大

加 藤 二 久 ・他

Dept. of Radiology, Nippon Dental Unive-

rsity, Tokyo. Dept. of Radiology, Tohoku

Dental University. Radiation section, Divi-

sion of Quantum Technology Electrotechni-

cal Laboratory. Division of Physics, Natio-

nal Institute of Radiological Science. Dept.

of Radiology KanagawaDental College.

Dept. of Oral Radiology, TsurumiUniv-

ersity School of Dental Medicine. Dept.

of Radiology, Nihon University School of

Dentistry, Matsudo.

T. KATO, K. FURUMOTO. Y. SUZUKI,

K. SAKIHARA, T. MATSUMOTO,

A. KATO, T. NAKAZIMA, M. KANNO,

M. TANAKA, and M. KAWADA

口内法撮影時に患者より発生する散乱線の分布を推定

する基礎的研究として,球 状水ファントームによる散乱

線分布を測定した。

照射 に用いたX線 ビームは,60KVp自 己整流,付 加 プ

ィル ター1mmA1,実 効エネルギー27KeVで あ る。照

射野 は,FSD20cmに て,直 径6cmと した。

フ ァン トームは,直 径18cmの 球状水 ファン トームで,

中心 を焦点 よ り29cmの 所 に置いた。 また,フ ァン トー

ム をその位 置よ り,入 射 ビーム と直角 に測定平面 内で2

cm4cm移 動 させた場合 も測定 した。

測定 には,三 種TLD(KYOKKO MSO-S,MSO-10D,

Aloka NTL500G)と,電 離 箱サーベーメーター(東

芝MRU-201)を 用いた。エネルギー較 正乗数 は,入 射

ビームの実効 エネル ギー27KeVの 値 を用 いた。 フ ァン

トームに入射す るX線 ビーム強度は,発 生 装置内部で,

シ リコンフォ トセル よ り モニター し た。 以上の測定器

は,す べて電総研 の国家標準 と トレーサブルで ある。

結果 は,各 点 での散乱線量 を,入 射X線 のファン トー

ム表面での空中線量 で割 った商 によ り求 めた。

結果 をま とめる と,次 のよ うにな る。

1.  四種 測定系に よる測 定値 は,±10%以 内で一致 を

見た。TLDに よ る 散乱線 の測定は,充 分 に可能 であ

る。

2.  ファン トーム よ り1mで の散乱線量 は,フ ァン ト

ー ム表面での入射 ビームの空中線 量の,10-5~10-4の オー

ダーで ある。

3.  ビーム後方へ の散乱線 は多 く,前 方 にい くに従 っ

て減少す る。

4.  フ ァン トームを移動 した場合,移 動 した方 向の側

の散乱線 は著 しく減 少 し,反 対側 では増 大す る。 このこ

とよ り,散 乱線 が発生す る各点か ら,フ ァン トーム表面

に至る迄の,Attenuation path lengthが,散 乱線 の方

向分布 に大 き く寄与 してい ると考 え られる。

5.  距離に よる減 弱 は,フ ァン トーム より1m以 上離

れれば,ほ ぼ逆二乗 則に従 うと考え られ るが,そ れ以下

の距離では,逆 二乗 則 は成立 しない。

以上,一 照射条件での水平面内の散乱線量分布につい

て報告 したが,今 後 は,散 乱線のエネルギ ーの実用的決

定法 と,立体的 な空間分布測定及び異 る実験条件(線 質,

照射野等)で の傾 向に対 して,検 討 を加 える予定 で あ

る。また,散 乱線場 を決定す る因子 についての,理 論的

な解析 も行 な う予定 である。

(85)  85

28.  フ ァ ン トー ム の ま わ り の 線 量 分 布

Scatter dose distribution in the surrounding

area Rand-Phantom by dental radiography

and orthopantomography

日大 ・歯 放

*放 医研 ・物 理

○ 本 城 谷 孝 ・ 御 影 文 徳 ・ 西 岡 敏 雄

安 藤 正 一 ・*丸 山 隆 司 ・*橋 詰 雅

Department of Radiology,Nihon University

School of Dentistry.*Division of Physics,

National Institute of Radiological Science

Takashi HONJYOYA,Fuminori MIKAGE,

Toshio NISHIOKA,Shoichi ANDO,

*Takashi MARUYAMA*Tadashi HASHIZUME

は じめ に

歯 のX線 撮 影 時 にお け る患 者 か らの散 乱 線 分 布 につ い

て の報 告 は,す で に 効 編 の 報 告 が あ り,最 近 で は また,

患 者 ・術 者 の 被 曝 線 量 の標 準 測 定 方 法 と併 せ て,散 乱 線

量 の測 定 の た め め 試 み が2・3検 討 され て い る。

今 回 著 者 らは,当 放 射 線 科 の施 設 に お け るX線 撮 影 時

の 散 乱 線 量 分 布 を測 定 し,そ の線 量 分 布 曲 線 か ら,X線

室 設 計 の た め の 参 考 資料 お よび被 曝 線 量 低 減 の た め の 基

礎 資 料 を得 た の で報 告 した 。

方 法

測 定 に 使 用 した 器 材 は,線 量 計 と し て振 動 容 量電 位

計,お よ び容 量3,000ccの 球 状 電 離 槽 をIonex線 量計 で

相 互 校 正 して 使 用 した 。被 写 体 と して は,米 国 ア ル ダ ー

ソ ン社 の 女 性 ラ ン ドフ ァ ン トー ム を使 用 し,口 内撮 影 時

(GE-100),お よび オ ル ソパ ン トモ撮 影 時(オ ル ソパ ン ト

モN-70R100)に お け る フ ァン トー ム か らの 散 乱 線 量

を測 定 した 。

結 果

上顎 前 歯 部 撮 影 を60KVpで 撮 影 した場 合 は,フ ァ ン

トニ ム の 照射 部 か らの散 乱 線 は,45° 方 向,50cmの とこ

ろ で80μR,100cmの とこ ろで28μRで あ り,同 様 に90°

方 向,50cmで55μR,100cmで16μRと,ほ ぼ 同心 円的

に,各 方 向 の距 離 が離 れ る とそれ に と もな って 散 乱 線 量

も減 衰 して い た 。

一 方 下 顎 前 歯 部 撮 影 の場 合 は,フ ァン トー ム正 面(00)

の方 向 で の散 乱 線 は ほ とん ど検 出 され ず,そ の た め分 布

は左 右 別 個 の特 異 な型 を示 して い た。

上 顎 大 臼歯 部撮 影 時 で の 散 乱線 は,90KVp0° 方 向,

100cmで22μR,45° 方 向,100cmで60μRと,線 源 か ら

後方 に向って貝殻状 にひ ろが り,照 射方向の対側では狭

かった分布 をしてお り,下 顎大臼歯 部撮影時で もファン

トーム背後 の散乱線量 は少な く,上 顎大 臼歯部 と似た分

布 であるが,そ の範囲はかな り狭か った。

結局,口 内法撮影時の散乱線量分布は,X線 発生器 の

背後方 向でもかな り大 きか った。

オル ソパ ン トモ グラム撮 影時の散乱線量分布は,検 出

用 の電離槽 を床上80cmに 固定 した場合,フ ァン トーム

が立位 の ときと,座 位 のときとにっいて測定 したが,フ

ァン トーム背後50cmの 距離 における散乱線 量は,座 位

で400μR,立 位で110μRで あ り,距離 が100cmと な ると

座位 で100μR,立 位で105μRで あ った。立位 の場合 は相

対的 に散乱線量分布 はゆるや かな変化 を示 していた。

以上 はX線 発生器の差,撮 影 時の使 用 フィルムの感度

差,お よび照射条件 の差な どのため,い ずれの施設 の結

果 も同様で あろ うとは決めがたい点があ るが,こ れ まで

の報告例 よ りも全般 的に多少,散 乱線 量は少 く な か っ

た。

29. Status-Xに よ るX線 撮 影 の際 の積 分 線 量

の推 定

The estimation of integral dose in

radiography by Status-X

東京医歯大 ・歯放

中村 正 ・坂 巻 公 男 ・佐 久 間 順 子

岡 野 友宏 ・秋 本 武 男

Department of Dental Radiology,School of

Dentistry,Tokyo Medical and

Dental University.

Tadashi NAKAMURA,Kilnio SAKAMAKI,

Junko SAKUMA,Tolnohiro OKANO

and Takeo AKIMOTO

口腔 内に管球 を挿入す る撮影法 にお ける積分線量 を以

下 の様 にして推定 した。患者頭部 を構造が均一な円柱 と

みな し,こ の円柱 を底 に平行 な平面 で横断 した厚 さ1cm

の円板 の集積 と考 え,さ らに円板 は,回 転 の半径 が1cm

ずつ異な る切 口が1辺1cmの 正方形 の,円 柱の中心軸

のまわ りの回転体 の集合 とした。

円柱の重心にX線 管 の焦点を置き,点 線 源 とみな し,

さらにX線 の強度 に方向性がない とすれば,こ の回転体

の積分線 量 は,切 口とな った1辺 の正方形 の中心 が うけ

る照射 と回転 体 の体 積の積 とか ら与え られる。照射 はX

線の減 弱に関する逆二乗則 と指数法 則 とか ら計算 によっ

(86)  86

で求め られ る。 この回転体 の積分線量 を,回 転 の半径 に

ついて積 分 し,更 に円柱 の高 さにつ いて積分すれ ば,全

積分線量は得 られ る。

患者頭部 を半径10.5cm.高 さ21cmの 円柱 とみな し,

管電圧55KVp,半 価層 プ ラスチ ック2.2cmのX線 を用

いた ときの積分線量 は,焦 点か ら1cmの 点での線 量 を

1000mRと した とき約44g・Rで あってほぼ全吸収 と見

倣 した。この値 はMayneord(1945)が ラジ ウムの点線源

に関 して全 吸収 を想定 して用いた式に よって得 られた価

と良い近 似 を示 した。実際の撮 影ではX線 の照射 は無 方

向性 には行なわれない。用いたStatus-Xの 管球 を水平

に し,上 ・下 に1cmづ っX線 フィルムを重 ね 置いて照

射 し,実 際 にX線 の照射 を うける部分 を上記各 円板毎 に

描記 して,求 めた積分線量 に補 正を加 えた。 そ の 結果

は,全 吸収約44g・Rに 対 して約27g・Rを 示 した。用 い

たStatus-Xに よる撮影 では 焦点か ら1cmの 距離 にお

け る線 量は上顎 の場合,T. L. D.に よる測定に よれば約

10Rで ある。従 って,大 凡の見積 りとして,本 撮 影法1

回 当 りの積分線量は約270g・R或 いは約240g・radと 考

え られ る。

上顎 の撮影 の場合,下 顎領域は焦点か ら3cm以 上離

れれば殆ん ど照射 を受けない。アプ リケーターの工夫 に

よ る結果 である。

算 定の結果 は,管 球 の周辺3cm以 内は1回 の撮影 あ

た り数百 ミリレン トゲンか ら 数 レン トゲンのorderで

照射 を うけ る事 を示 した。本 法 の撮影 にお ける防護 を考

えるとで管球近傍組識 は,下 顎 撮影時 の甲状腺 と共 に極

めて重要で ある。

30. パ ノ ラ ミ ック ス撮 影 時 の防 護 につ い て

A Trial of Radiation Protection in

Panoramix Roentgenography

鶴 見大 ・歯放

*鶴 見大附属病 院 レン トゲ ン室

丹 治 か ほ る ・ 足 立 忠 ・山本 昭

五 島 洋 太 ・*田 中 守

Dept.of Oral Radiology,Tsurumi University,

School of Dental Medicine.

Kaoru TANJI,Tadashi ADACHI,

Akira YAMAMOTO,Yota GOSHIMA,

and*Mamoru TANAKA

歯科X線 撮 影におけ る患者被曝軽減 とい う立場か ら,

これまで私達 は高感度 フ ィルムの使 用,プ ロテ クターの

使 用,コ ー ンの応用,写 真処理法 の改善等,様 々な角度

か ら検討 を加 えてきた。今 回,特 にパ ノラ ミック応用時

の臨床的試みについて報告す る。

臨床上,多 くの場合,上 下顎 は別 々に撮影す る点 か ら,

上顎撮影時 には下顎へ の,下 顎撮影時 には上顎への照射

は,無 駄 な被 曝を患者 に与 えるこ とになる。そ こで,管

球 の上半分又は下半分 を鉛板 で しゃへ いすれ ば,照 射野

は二分割で きる。 この方法は,現 在 では既成 のアプ リケ

ー タもで き,実 用化 されてい る。

次 に,フ レキシブル カセ ッテ を患者 自身の手で固定 し

撮影す るパ ナグラフィにおいて,手 への被曝が相当量で

はないか と考 え られ る。そ こで,通 常 のカセ ッテの外側

に,さ らに もう一枚 のカ セ ッ テ を重ね合わせ照射す る

と,線 量はかな り減少す る とはレヽ え,十 分診断 し うる程

度 のX線 像す ら得 られ る。次に二枚 のカセ ッテの問 に鉛

板 をお き重ねて照射す ると,当 然 の事 なが ら二枚 目の被

曝 はほ とん どみ られな かった。 この よ うな考 えか ら,カ

セ ッテの外側 に鉛 をお き撮影 を行な って きたが,先 目,

大 日本塗料 に依頼 してあった,既 成 のカセ ッテ の後 面増

感 紙背部に0.1mmの 鉛 を うらうち したカセ ッテの試作

品がで き上 り,現 在実 用化に向け,検 討 を加 えてい る。

以上,照 射野 を二分割 す ることと手 に対す る遮へ いの

た めの新 しい カセ ッテの応 用 とい う二っ の方法 で,患 者

の被曝はかな り軽減で きるはずであ る。

今後,さ らに手 を用いず にカセ ッテ を固定す る方法 も

工夫 してい きたい。

座 長 の ま と め

目歯大 ・新潟 ・放

前 多 一 雄

私の担当 した線 量 ・防護IIは 散乱線 の測定に関す るも

の(2演 題)と パ ノラミクス に関す るもの(2演 題)で

あった。

X線 撮影 時に患者 か ら発生す る散乱線 は術者やそ の周

囲の人々の被 曝管理 上重要であ るが,こ れまで報告 され

た散乱線測定デー タは報告者によ って,測 定値 の差 が大

き く信頼性 に欠 けた。演題27で 加 藤(日 歯大)ら は,測

定値 の再現性 を高 める目的で球状水 ファン トーム を使 用

して散乱線 を測定 した。そ の結果 から将来実用上 の評 価

方法 を検討 したい と結 んだ。演題28で は本 城谷(日 大)

らが 日常の撮影 で患者 か ら出る散乱線 を口内法,オ ル ソ

パ ン トモ グラフィについて,ラ ン ドファン トームで実測

した。本演題 につい て加藤(日 歯大)か ら使用X線 装置

の減弱 曲線 を示す よ う要望 が出 された。

(87)  87

演題29で 中村(医 歯大)ら は,前 回のオル ソパ ン トモ

グラフィの積 分線量 に続 いてパ ノラ ミクス撮影時 の積分

線 量を推 定 した。 そ して被曝 による癌 の誘発 を考 えると

き,各 撮影法 による積分線量 の大 きさでその危険度 を比

較 して も意味 はな く,撮 影法 ごとに線 量が集中す る場所

が異 なるので,口 内法では皮膚が,オ ル ソパ ン トモグ ラ

フィで は回転 中心が,パ ノラミクスでは舌,唾 液腺 な ど

に線量が集 中す るので,そ の線 量の集 中する ところが危

険で あると考 えた方がよいのでは と提 唱 した。

演題30で 丹治(鶴 見大)ら は,パ ノラ ミクスの管球 の

上 あるいは下を鉛板 でシール ドす るこ とによって,ま た

カセ ッ トの後面増感紙 の脊部 に鉛板 をはるこ とで患者 の

防護 を試 みた ことを報告 した。 これ らはちょっ とした工

夫 で不必要 な被曝軽減 ができるこ とを示 した。

線 量 ・防 護III(31~35)

31. 広 島,長 崎 市 に お け るRERFサ ンプ ル と

一 般 市 民 が 受 けた 歯 科X線 検 査 の比 較 と被

曝線 量 の推 定

Exposure factors and doses fromn dental

radiology in the adult health study and the

Hiroshima and Nagasaki populations

財 団法入放射線影響研 究所放射線 部

○木 原 卓 司

Department of radiology,Radiation

Effects Research Foundation

Takuji KIHARA

財 団法人放射線影響研究所(放 影研)は,広 島および長

崎の原爆 による電離 放射線 の後影響 について,長 期 にわ

た る追跡 調査 を行 ってい る。 これ ら の 調査 の対象 は,

1950年 の被爆者調査 に もとつ く両市 の固定調査集 団であ

る。す なわち,死 亡率調査 の集団 は,最 初11万 人で構成

され ていた。そ の うち2万 人か らな る副次集団は,2年

毎 に放影研外来 で定期検診 を受けてい る。放 影研放射線

部 では,15年 問 にわた って,原爆 の影響 に関す る評価 をよ

り正確 にす るため,放 影 研の調査集団の各対 象者が受け

た人工電離放射線 源 としての医療用および歯 科用X線 被

曝 について,調 査 を行 って きた。

本 報告は,放 影研 の調 査対象者な らびに広 島および長

崎 の一 般市民 におけ る歯科X線 検査 の頻度 に関す るもの

である。歯 科診 療を活発 に行 っている広 島大学歯学部附

属病院の調 査 を行 うと同時に,40%無 作為抽出 によって

選 ばれた広 島市 の106の 歯科 医院,長 崎市 の62の 歯科 医

院 について も調査 し,そ の うち広 島では83(78 .3%),

長崎では46(74.2%)の 医院の協力を得 た。 これ らの各

医院 において行 われた2週 間 の歯科X線 診療 に関す る調

査 を行 った。

一般歯 科診療所 において,1施 設 当 り平均 撮影患者数

は,広 島48人,長 崎40人 であった。 また,1施 設 当 り平

均撮影枚 効は,広 島において,85枚(デ ンタル) ,2.9枚

(パノラマ)で あるの に対 して,長 崎では,69枚(デ ン

タル),2.7枚(パ ノラマ)で あ った。

年間市民1人 当 りのデ ン タ ルの撮影 回数 は,全 年齢

で,広 島市民1人 当 り約0.7回,長 崎 市民1人 当 り約0 .5

回で あった。

これ らの資料 をさらに詳 しく分析 し,原 爆被爆者 と非

被 爆者な らびに放影研 固定集 団 とその他 の市民 との問 で

比較 した結果

1. 原爆被爆者 は,非 被爆者 に比べて,歯 科用X線 照

射 を受 ける頻度 がやや低い。

2.  放影研 固定集 団 とそ の他の市民 との間 には,1人

当 りの歯科用X線 照射 にっ いて,ほ とん ど差がみ られな

かった。

(88)  88

32.  歯 科X線 診 査 に 関 す る 実 態 調 査 報 告

第1報 歯 科 大 学 に お け るX線 診 査 内 容 に

つ い て

Report on the Survey of the Actual Status of

Dental Radiology in Japan-october,1976.

Part1;Contents of X-Ray exarninations

in Dental school.

*日 本 歯 大 ・放

**日 本 歯 大 ・RI総 合 研

***日 大 ・歯 放

****東 京 医 歯 大 ・歯 ・歯放

*****日 大松 戸 ・歯放

******東 北 歯 大 ・歯 放

*古 本 啓 一 ・**関 孝 和 ・***安 藤 正 一

***西 岡 敏 雄 ・****中 村 正 ・*****尾 沢 光 久

*****河 田 昌 晴 ・******島 野 達 也

*Dept . of Radiology, Nippon Dental Unive-

rsity, Tokyo.**Laboratory of RI, Nippon

Dental University, Tokyo.***Dept. of Ra-

diology Nihon University School of Dentistry.

****Dept . of Radiology school of Dentistry

Tokyo Medical and Dental University

*****Dept . of Dental Radiology, Ni-

hon University School of Dentistry at Matsudo.

******Dept . of Dental Radiology, Tohoku

Dental College.

*Keiichi FURUMOTO ,**Takakazu SEKI,

***Shoichi ANDO ,***Toshio NISHIOKA,

****Tadashi NAKAMURA ,*****Mitsuhisa

OZAWA,*****Masaharu KAWADA,

and******Tatsuya SHIMANO

歯科用X線 装置 が急速 に普及 し始 めたのは1960年 頃 か

らであるが,そ の利用 の実態 につい ては最近 の木原,丸

山 らの報告 のあるほかは従来 か ら全国的な詳細な調査 は

ほ とん ど行 われ ていない。 また,被 曝線量 の測定 も一定

の基 準に よって行 われていな く,し たがってその報告 さ

れた個々の測 定値 を比較す るこ とは困難 な現状 にある。

さらに術者 もさる ことなが ら,患 者 および一般公衆人 の

被曝 をで きるだ け 少 くす るよ うICRPの 勧告 で も強調

されてい る。

このた め49年 日本歯科放射線 学会内に防護 委員 会が発

足 し,51年 度文部省科学研究費補助金の助成 を受けた こ

とを機会 に,歯 科X線 診査 による国民被曝線 量の軽減 を

目的 とした広範 な研究 が進 め られ てい る。そのプ ロジ ェ

ク トチームは3つ に大別 され てい る。

1. 歯科X線 診査 に関す る実態調査.2.線 量計 の更

正規準 化.3.被 曝線量.散 乱線 量の測定.

この うち歯科診療 に関す る実態調査 につ いて51年10月

17日 か ら23日 にわたる間に全 国の全歯科診療所約34,000

ヶ所 の うち約10%の3,400ケ 所 を対象 に所 定の事 項につ

いて アンケー ト調査 を行い,都 道 府県各28%を 越す 平均

した回答率 を得た ので,目 下資料整理 中であるが,そ の中

間的結果 を1報 か ら4報 にわた り報告す る。なお,本 調

査 には 日本歯科 医師会,日 本歯科放射線学会の御協力 を

いただいた ものである。

第1報 は全 国歯科 系大学 の うち20校 か らの回答分 のも

のであ り,そ の1週 当 りの歯科X線 撮影人数,撮 影 回数

お よび撮 影回数な どについての統計値 である。

(1) 1週 当 りの歯科X線 撮影 人数 は1校 当 り平均446

人で あ り,最 高1078人 最低138人 であ り,標 準偏差 は55

%で あった。女子は男子 よ り多 く,大 人は小児 よ り約5

倍多 かった。撮影 回数 の平均 は1校 当 り905回 であ り,

最高2241回,最 低374回 であ り,標 準偏差 は56%で あっ

た。性別,年 齢別 につい ては撮影人数 の傾向 と同様で あ

った。

(2) X線 装置 の保有 台数 は歯科用X線 装置5.5±2.8台

パ ノラマX線 装置2.0±0.9台,そ の他4.8±1.8台,で あ

った。

(3) 含鉛 防護エプ ロンを常時使用 している所 は55%,

一部 に使用は45%で あった。専用のX線 室はす べてに設

備 され,撮 影 を担当 してい る人数は7.2±5.2人 にわた っ

ていた。

(4) 撮影内容 の うちスク リー ン型 フィルム使 用時 とノ

ンスク リー ン型 フィル ム使用時の撮影 時間の差 はほ とん

どな く,フ ィル ムの感光度 に応 じた撮 影時間の調整 が望

まれた。

(89)  89

33.  歯 科X線 診 査 に 関 す る 実 態 調 査 報 告

第2報 歯 科X線 診 査 件 数 に つ い て

Report on the Survey of the Actual Status of

Dental Radiology in Japan-october,1976.

Part 2; Number of Patients and expousures

by Dental Radiology in Japan.

*日 本 歯 大 ・RI研

**日 本 歯大 ・放

***日 大 ・歯 放

****東 京 医歯 大 ・歯 放

*****日 大 松 戸 ・歯 放

******東 北 歯 大 ・歯 放

*関 孝 和 ・**古 本 啓 一 ・***安 藤 正 一

***西 岡 敏 雄,****中 村 正 ・*****尾 沢 光 久

*****河 田 昌 晴 ・******島 野 達 也

*Laboratory of RI, Nippon Dental Unive-

rsity, Tokyo. **Dept. of Radiology, Ni-

ppon Dental University, Tokyo. ***Dept.

of Radiology Nihon University School of

Dentistry. ****Dept. of Radiology School

of Dentistry Tokyo Medical and Dental

University. *****Dept. of Dental Radiolo-

gy, Nihon University School of Dentistry

at Matsudo.******Dept. of Dental Radi-

ology, Tohoku Dental College.

*Takakazu SEKI, **Keiichi FURUMQTO,

***Shoichi ANDO, ***Toshio NISHIOKA,

****Tadashi NAKAMURA, *****Mitsuhisa

OZAWA, *****Masa haru KAWADA,

and ******Tatsuya SHIMANO

目的:我 国 にお ける歯科X線 診査 の普及 はめざま しい

ものがあ り,歯 科X線 診査が多様化 され,件 数 も急増 し

ている と推定 され る。そ の報告 もな されてい る。

  このよ うな歯科X線 診査 の現状把握 はまった くな され

てお らず,歯 科X線 診査 の全国的な調査は未だな く,ご

く限 られた2・3の 地域 において部分的な調査報告がな

されてい るにす ぎない。

今回,1976年10月17日 ~23日 の1週 間全 国歯 科診療

所,病 院併設歯科,歯 科大学 について歯科X線 診 査に関

す る実態調査 を施行 した。 この調査 項 目の うち,歯 科X

線 診査件数の結果 に つ い て,全 国推 計 を含 めて報告 し

た。

調査方法並び に調査項 目

a)  調査対象: 厚生省統計局 の1976年5月,歯 科診療

所録並び に1975年 病院録 上の歯科 の併設 の あ る 診療所

(大学病院 も含む)の 記載 名薄 に基 ずき,1/10の 歯科診療

所 を調査対象 として抽出 した。

b)  調査項 目: 歯科X線 診査件数に関す る調査項 目は

口内法撮影,パ ノラマ撮 影,そ の他 のX線 撮 影の3項 目

について行い,そ れぞれ の人数,撮 影枚 数 を性 別,13歳

未満 か以上かの区別で調査 した。 口内法 につ いては部位

別 について も調査 を行 った。

c)  調査区分: 全 国診療所 を16地 域 にわけ,各 々調査

結果 を推計 した。病 院併 設歯科 については別 の調査 区分

に分けた。

d)  調査数 の推計方法: 調査診 療所の うち回答 のあっ

た診療所の うち,記 載の不完 全な ものを除き各地域 ご と

に集計 した。 これ ら集計値 よ り,全 国,年 間診査件数 を

推 計 した。 尚各 々のX線 装置保有歯科 医療機 関につい て

1診 療所,1週 間当 りの診査件数 につい て も触れた。

結果:

我 国の歯科 医療機 関において施行 され てい る歯科X線

診査件 数の1976年 度 の調査 を した結果 のま とめは以下 の

ご とくである。

1) 歯科X線 診査人数:総 数5.2×107人

内訳(女/男:58%/42%,子 供/大 人:8%/92%,診

療所/病 院:95%/5%,口 内法(8%):パ ノラマ(13

%):そ の他(1%)

2)  歯科X線 診査件数:総 数7.5×107回

内訳(女/男:57%/43%,子 供/大 人:7%/93%,診

療所/病 院:94%/6%口 内法(92%):パ ノラマ(7

%):そ の他(1%)

各 々のX線 装置 を保有 してい る歯科医療機関の一 週間

当 りの診査件数:口 内法40.3回,パ ノラマ11.0回,そ の

他13.9回

4)  口内法の撮 影回数の割合:

上顎: 大臼歯22%,小 臼歯14%,前 歯20%,咬 合法0.3

%,小 計56%

下顎:大 臼歯24%,小 臼歯12%,前 歯9%,咬 合法0.3

%,小 計44%

5)  人 口千人当 りの歯科診査 に よ る 一年 間の撮影 回

数,664回

(90)  90

34. 歯科X線 診査に関する実態調査報告

第3報 施設の内容について

Report on the survey of the actual status of

Dental Radiology in Japan-October, 1976

Part 3; Estimated number and ratio of X-Ray

generator in the different dental clinic and

those laboratory systems

*目 大 ・歯 放

**日 歯 大 ・放

***日 歯 大 ・RI

****医 歯 大 ・歯 放

*****目 大 松 戸 ・歯 放

******東 北 歯 大 ・放

*安 藤 正 一 ・*○ 西 岡 敏 雄 ・**古 本 啓 一・

***関 孝 和 ・****中 村 正 ・*****尾 沢 光 久

*****河 田 昌 晴 ・******島 野 達 也

*Dept . of Radiology Nihon University School

of Dentistry.**Dept. of Radiology, Ni-

ppon Dental University, Tokyo.***Labo-

ratory of RI, Nippon Dental University,

Tokyo.****Dept. of Radiology School of

Dentistry Tokyo Medical and Dental Uni-

versity.*****Dept. of Dental Radiology,

Nihon University School of Dentistry at

Matsudo.******Dept. of Dental Radiology,

Tohoku Dental College.*Shoichi ANDO ,*OToshio NISHIOKA,

**Keiichi FURUMOTO , ***Takakazu SEKI,****Tadashi NAKAMURA ,*****Mitsuhisa

OZAWA, *****Masaharu KAWADA,

and******Tatsuya SHIMANO,

は じめに

昭和51年10月 に実施 した全 国歯科X線 診査 の実態調査

の うち,と くに各施設 の被 曝管理 についての調査 か ら,

X線 発生装置 を保有 してお り,日 常患者 に対 してX線 撮

影 をしてい ると回答の あった全国の病院併設歯科診療室

(以下Aと す る)41ケ 所,お よび全国各地の個人歯 科診

療所(以 下Bと す る)859ケ 所 について の内容 を集計 して

報告 した。

結果

各施設 の概要 についての調査項 目では,危 険率5%で

全 国施設の母 平均 を推 定 した。

歯科用ユニ ッ ト台数はAで は3.25台,Bで は2.70台 で

あ り,歯 科用X線 装置台数 はAで は1.34台,Bで は1.47

台,パ ノラマX線 装置 台数 はAで は0.61台,Bで は0.55

台 であった。一方,日 常X線 撮影 を している歯科 医師数

は,Aで は2.34人,Bで は1.34人 で あ り,放 射線技師 の

人数 は,Aで は4.06人,Bで は0.14人 であった。

また,歯 科用X線 装置 を保 有 していて,専 用X線 室を

持たない施 設は,Aで は42.3%,Bで は78.8%も あ り,

暗室 を持たない施設 は,Aで は41.5%,Bで は69.1%で

あった。

さらに,撮 影 したフィル ムの現像処理 につ いての調査

では,自 現 のみによって処理 し て い る施設 は,Aで は

40.4%,Bで は23.7%で あ り,他 の施 設では,イ ンスタ

ン ト現像,お よび タンク現像な どで処理 してい ることが

わ かった。

X線 撮影時 の患者 の体位 についての調査では,坐 位 撮

影 がAで は86.9%,Bで は79.8%で 水平位 に比べ て圧倒

的に多かった。

患者 の被曝管理 についての調査 では,防 護 エプ ロンを

持 ってい るが使用 しない とい う施設 を含 めて,全 然使 用

しない とい う施 設は,Aで は23%,Bで は67%と やは り

Bの 方が多か った。

一方,術 者の被曝管理 の調査結果 を対比 して見 ると,

X線 撮影時 のフィル ム保持 につ いては,止 む を得ない と

判断 した状況下 では,歯 科 医,お よび補助者がす るとい

う施設 が,Aで は31.3%,Bで は44.1%で あ り,こ れが

幼児 のフィル ム保持 とな る とAで は同様 に32.7%,Bで

は50.2%,と もに増 えていた。

また,X線 撮影 時のスイ ッチの操作距離 につい ての調

査では,患 者 か ら1.5m以 内の距離 で操作 している とい

う回答 は,Aで は24.6%,Bで は42.8%で あ り,今 後 こ

のよ うな状態 が,ど の ような事情 による ものかを分析す

る必要が あるもの と考 え る。

さらに,術 者個人の被 曝管理 につ いての調査 では,全

然管理 をしていない のが,Aで は28%,Bで は87%と 多

かった。

尚,今 回 は,保 有装置台数etcの 調査結果 を無回答,

および不明回答 をともに欠損値 として扱 ったため,平 均

の値 が少 々高 くでて恥たが,今 後裏付 けデー タによって

補 正を加 えてい くつ もりである。

(91)  91

35. 歯科X線 診査に関する実態調査報告

第4報X線 撮影条件について

Reports on the Survey of the Actual Status of

Dental Radiology in Japan (October, 1976)

4th. report. The Data on Exposure Factor of

Intra-oral radiography and Panoramic radiography

*目 大 ・松 戸 ・歯 放

**日 本 歯 大 ・放

***東 京 医 歯 大 ・歯放

****日 大 ・歯 放

*****東 北 歯 大 ・粛 放

*尾 沢 光 久 ・*○河 田 昌晴 ・**古 本 啓 一

**関 孝 和 ・***中 村 正 ・****安 藤 正 一

****西 岡 敏 雄 ・*****島 野 達 也

*Department of Radiology, Nihon Uni-

versity School of Dentisty at Matsudo.**D-

epartment of Radiology, Nippon Dental Uni-

versity. ***Department of Dental Radiology,

Tokyo Medical and Dental University.

****Department of Radiology, Nihon Unive-

rsity School of Dentistry.*****Department

of Dental Radiology, Tohoku Dental College.

*Mitsuhisa OZAWA,*OMasaharu KAWADA,

**Keiichi FURUMOTO,**Takakazu SEKI,

***Tadashi NAKAMURA,****Shoichi ANDO,

****Toshio NISHIOKA,*****Tatsuya SHIMANO

1976年10月 に歯科X線 診査 に関 して全 国的な実態調査

を施行 した。 その中で病院併設歯科診療所 と個人歯科診

療所 の調査 か ら,各 施設 での歯科標準X線 撮影 とパ ノラ

マX線 撮影 の撮影条件 につ いて報告す る。

(A) 歯科標準X線 撮影

1. 使用 してい る管電圧: 病院併設歯科診療所の74%

が60KVpで あ り65KVp,70KVpが それぞれ10.7%,そ

して80KVp,90KVpが それぞれ2.6%で あった。個人歯

科診療所は80.2%の 施設が60KVp,8.8%が65KVp,50

KVp,70KVpが5.1%、 そ して0.8%が55KVpで あ った。

2. コーンの形状: 病院併設歯科診 療所 の63%が 砲 弾

型 を用い,開 放型 は シ ョー トコー ンが17.4%で あ り,

19.6%が ロングコー ンを使用 していた。個人歯科診療所

では砲弾型が47.5%,開 放型はシ ョー トコー ン26.9%で

ロングコー ンが26.9%で あった。

3. 撮影時間 と撮影距 離: 大 人 と子供 の上顎前歯部,

大臼歯 部,咬 合撮影 について各施設 のx線 検査 での撮影

で平均 の時間 とその時 の コーン先端 と皮膚間距離(こ れ

を撮影距離 とした)を 調査 した。 そ の 結果 どの 部位で

も,撮 影時間,撮 影距離 ともに大 きなバ ラツキを示 し,

この間に相 関をみ るこ とはなか った。

撮影 時間は どの 部位 で も80~60%の 施設 で子供 は1

秒,大 人 は1.5秒 以内で撮影が行なわれ ていたが,残 り

の10~20%の 施設 では,こ れ よ り長 く,個 人歯科診 療所

では10秒 以上 に も及び,大 きな幅の分布 を示 した。撮影

時間 の平均は子供で上顎 前歯部0.8秒,大 臼歯部1.1秒,

咬合0.9秒 であ り,大 人は上顎前歯 部0.8秒,大 臼歯部1.3

秒,咬 合1.3秒 であ った。

撮影距離は撮影時間 と 同様 に 大 きな幅の 分布 を示 し

た。そ して病 院併 設歯科診 療所 は個人歯科診療所 に比較

して長い撮 影距離 をとる傾向にあ り,ど の部位 で も約5

cm長 い距離が平均 に示 され,個 人歯科診療所 での撮影

距離 の平均は子供で上顎前歯部7.6cm,大 臼歯部7.7cm

咬合9.4cmで あ り,大 人 は上顎前歯部7.8cm,大 臼歯部

8.1cm,咬 合9.5cmで あった。

(B) パ ノラマX線 撮影

パ ノラマX線 撮影 は子供 と大人の撮影時の平均の管電

圧 と管電流 にっ いて調査 を行な った。その結果,個 人歯科

診療所 にお ける撮影条 件の平均 は子供 で管電圧72KVp,

管電流7.5mA,大 人で管電圧83KVp,管 電流9.4mA

で あった。また病 院併設 歯科診療所 の撮影条 件は個 人歯

科診療所 とほぼ一致 した平均 であった。

管電圧 と管電 流の分布 の傾 向は子供 と大人 また病院併

設歯科診 療所 と個人歯科診療所 の間 で同 じ傾 向を示 し,

管 電圧は50~100KVpの 間 に分布 してお り5KVpご と

の ヒス トグラムは一応 の低 い分布 を示 し,特 に高い ピー

クを示す管電圧 の幅 はなかった。管電流は施 設の96%が

20mA以 内 に分布 てしお り,そ の うち6~10mAの間 に

分布す るのが60%あ るのが特徴であ った。

座長のまとめ

岩手医大 ・歯放

村 井 竹 雄

このセ ッシ ョンの報告は古本会員 が代表者 となって文

部省 よ り昨年 か ら3年 間補助金 を受 けつつ行 ってい る歯

科 におけ る放 射線 防護 関係 の研究成果 の一部 であった。

発表者 は分担研 究者 とその関係者 および研究協力者で あ

った。演題31は 広 島,長 崎 における地 区調査 であったが

被 曝線 量の推定 につ いては述べ られなか った。演題32は

歯科大学 における診査内容,33は 歯科X線 診査件数,34

(92) 92

は施設 の内容,35は 撮影条件 につ いての報告で あった。

演題32~35は いずれ も全 国的調査 につ いての ものであっ

た。演題33に 対 し三好会員(福 井県立病院)よ り質問:

パ ノラマ撮影頻度 の府県別 バラツキは?答:東 海地方 で

は1台 当 りの撮影頻 度は最低 であった。理 由は不 明。 そ

の他 の発言はなか った。

歯科診療 にお ける 被曝がICRPに よ り注 目されてき

た現況 を 考 える と,我 々学会の 防護委員会が 中心 とな

り,線 量計 の改善 と標準化,患 者 の被曝線量,散 乱X線

量測定等 の権威 ある成果 を も加 えてご く近 い将来欧文 と

しての発表 が強 く望 まれ る。

装 置(36~39)

36. 歯科用X線 装置タイマに関する研究

Measurements of time delays of X-ray out put

after working of timer in dental

X-ray machines.

岩手医大・歯放

守口憲三 ・笹川幸男 ・前田光義

村井竹雄

Iwate Medical University School of Dentistry.

Department of dental Radiology.

K. MORIGUCHI, Y. SASAGAWA,

M. MAEDA and T. MURAI

第15回 本学総会 におい て同時点火式歯科用X線 装置 の

タイマ作動時 点か ら一定強度 のX線 発生 までの時間 の遅

れ実測について報告 した。今回 は同様 な実測 を国産歯科

用X線 装置3機 種 と外 国製P社,S社 の2種 にっいて行

った結果 について述 べた。

実験法X線 照射 によ り螢光板 に発生す る螢 光パルス

を光電子増倍管(ホ ト・マル)に 受けて電流 パルス とす

る部分,ホ ト ・マル高圧電 源(Kepco, Regulated D. C.

SupPly),オ シロスコープ(lwatsu Dual Beam Synchro-

scope),記 録装置(横 河,ElectromagneticOscilograph)

等 の組合せ によ り実測 した。螢光板線源距離 約20cmと

し,タ イマ作動 時点か らのX線 装置への入 力電源 パル ス

と螢光 によるパルスの強 さ(高 さ)の 変化 と数を2チ ャ

ンネルで同時記録 した。

結果M社 製 は先点火式 であるが電源 スイ ッチon後

直 にタイマを作動 させ る と同時点火式 との差 が現われな

か った。他 のす べての機種 は同時 点火式装置 で,それ らは

いずれ もタイマ作動後一定強度 のX線 発生 まで少 くとも

5パ ルス,(0.1秒)遅 れ るこ とを知 った。 この遅れ は装

置へ の入力電圧 の高低 に左右 され るもの と考 え られ る。

低 ければ ブイ ラメ ン トの加熱飽和 に達 す る時 間 も長 くな

り一定強度 のX線 照射開始 までの遅れは0.1秒 以上に及

ぶ もの と考 える。

結論 下顎前歯部 撮影 のよ うに短 い照射時間 において

は電子式 タイマの ようにそれ 自身 の精度 が高 くとも照射

線 量 と照射時間の間に直線 比例 関係 は得 られない。先点

火式では得 られ る。P社,S社 の 自動照射 タイマ付装置で

は電源電圧 の高低 は照射時間 の長短 として現われ る。 し

たが って先点火式 を除 き,同 時点火式利用 による小児等

の短時間撮影 に当っては実効照射時間 を考慮すべ きと考

える。 さらに本実験 によ り撮影 回数 のい ちじるし く高か

った装置では 日常使用 に支障 なかったが,タ イマ作動後

X線 強度が一 定に達 した時間後 のX線 パルスの高 さに不

規則な高低が現われた。その原因は不明だ ったがX線 発

生は正常 とは考 えられなか った。 したが って今回の測 定

法 はX線 装置 の機能検査 にも応用 し得 るものと考えた。

37. X線 物理実験示説用X線 装置の試作 とその

利用

A specially made x-ray machine and box type

radiation shielding as a teaching aid for

physics of radiology and its use in

teaching undergraduate students

in lectureroom.

岩手 医大 ・歯放

*岩 手医大 ・医放

南 原 性 七 ・ 小川 武 祐 ・緒 方 邦 敏

村 井 竹 雄 ・*柳 澤 融

Department of Dental Radiology, Iwate Medical

University School of Dentistry.*Dept.

Radiology School of Medicine of

the same Univ.

S. NANBARA, T. OGAWA, K. OGATA,

T. MURAI and *T. YANAGISAWA

X線 物理学 の講義 に示説 を加 えて学生 の理解 を容易に し

たい との 目的 で 設計製作 され たX線 発生装置等 につい

て,そ の構造,使 用法 を述 べた。A:発 生装置は単相全

波整 流,60KV,5mA,45KV,7mA,max2秒 照射 と

透視条件60KV,5mA,45KV,3mA,max7秒 定格 と

し,先 点火,同 時点火,上 記の条 件は電 源スタ ビライザー

を備 えた操作 台上 の切替 スイ ッチ で任意の組合 せ可能 と

した。 照射野 は可変絞 りで 広 さ も変 えられ る。 全体 の

(93)  93

大 きさは2D×34×20cm3,14kgで ある。B:X線 防護

は鉛板裏装箱形鉄板 で行 う。 そ の大 きさは36×41×100

cm3で 底面 は開放 して ある。 この長軸方 向一次X線 照射

面 には,取 りはず し可能 とした鉛 ガ ラスでカバー された

螢 光板(33×41cm2)を,一 側 面には螢 光板 に近 い部に

開き戸式 の散 乱X線 取 り出 し窓 を備 えて ある。キ ャス タ

ー付特製 台の上 に前記X線 装置その他 実験 に必要 な もの

をセ ッ トした ら上 か ら箱形防護 をかぶせ る。か くす れば

すべ ての方向のX線 防護が完全 に行 える。 この状態 で任

意 の場所へ容易 に 移動 させ1KWの 電源 があれ ば直 に

X線 照射 を行 うこ とができる。防護箱 内側 にセ ッ トされ

たX線 装置 は螢光板か らの焦点距離16~76cmの 範 囲で

外部か ら自由に変 えられ る。

利用1.  螢 光像に よるX線 像の成 立

2.  空気中線 量測定 時の線源電離箱絞 りの大 き さ等 の

必要幾何学的条件,実 測

3.  A1板 による半価層 を求 めるための実測

4.  螢 光板 と線 源問にアルダー ソン頭部 フ ァン トー ム

をおいて これ に照射 を行 い,散 乱線取 り出 し窓 を開けて

散乱X線 の実測 を行 う。 この実験 で絞 りの大き さと散乱

線量 の関係 を示 す。以上 の実験 の仕組 み,線 量計 の読み

とりな どはすべて4台 の大形 テ レビを通 じ講義室 で示説

を加 えつつ行 う教育法 につい て述べた。

38. 歯 科 用X線 テ レビ(1)

X-TV for DentalUse.

城西歯科大 ・放

*吉 田製作所

丹 羽 克 味 ・ 金 井 良維 ・岩 野 孝

山 中延 元 ・ 大 類 清 ・茂 呂安 男

川 津―泰 一 ・ 高 木 仁 ・赤 間 力

上 松 和 夫 ・*平柄 喜 章

Department of Dental Radiology, Josai Dental

University.*K. K. Yoshida Corporation

Katsumi NIWA, Yoshiyuki KANAI, Takeshi

IWANO, Nobemoto YAMANAKA, Kiyoshi

ORUI, Yasuo MORO, Taiichi KAWAZU,

Zin TAKAGI, Tsutomu AKAMA, Kazuo

UEMATSU,* Yoshiaki HIRATSUKA

歯科X線 撮影 の うち 口内法 は高鮮鋭度 の画像 を得 るこ

とがで きる反面,撮 影,現 像 の技術的 な難 しさや頻雑 さ

か ら,ま た装 置の正 しい使用 がな され ていないこ とな ど

か ら十分 その良 さが生 か され ていないこ とが前 回の報告

の アンケー トの結果 からわかった。オル ソパ ン トモ グラ

フィはその鮮鋭度の点 と広範囲撮影 であるこ とか ら小範

囲のX線 撮影 に は不適当で ある。われわれ は被曝線量 を

よ り低 く,鮮 鋭 度 もあ る程度 満足 され るX線 撮影 系 とし

てX線 テ レビが応用 され るので はないか と考えてい る。

歯科領域 のX線 テ レビの具備 すべき条件 としては診 断が

硬組織 が主 であるこ とか ら高鮮鋭度 であ って被曝線量 が

少 いこ と,装 置 の操作性 が良いこ と,安 価 であるこ とな

どが考 えられ る。 われわれ の考 えているX線 テ レビは体

腔管方 式のX線 発生装置 と増感紙 テ レビ系 を組合せ た大

出方式 に準 じた もの で低価格 にす るため1,1,を 除 い

てい る。鮮鋭 度向上に は微 小焦点に よる拡大撮影法 を併

用 し,被 曝線量軽減 には高圧撮 影 と希土類増感紙,高 感

度撮影 像管お よび ビデオ装置等 を応用す ることを考えて

い る。 今 回 これ ら諸々の問題 の まず 初め として,増 感

紙,撮 像 管の組合せ で得 られ るX線 テ レビ画像 が どの程

度 の画質 であるかについて 若干 の 基礎 的な 実験 を 行 っ

た。使用装置 にナシ ョナル ニ ューピ コン,お よび ビデオ

装置,NV 9300,極 光希 土類増感 紙GreneGX-8で ある。

乾燥下顎骨 を斜位撮影位置 に準 じてOFD,15cm,被 写

体増感紙間距離2cmに 配 置 し,被 写体 を人体 と等価 に

す るた め水 フア ン トーム3cmをOFD間 に挿入 した。

増感紙画像 をビデオに収録 しこれ を再生 して ミニコヒ。一

撮影 した。結果 は十分臨床 に使 用で きると考え られた。

39. 超解像法によるガンマーカメラの高解像化

Resolution of r camera using super

resolution method.

城西歯大 ・放

丹羽克味 ・金井良維 ・岩野 孝

Department of Dental Radiology, Josai

Dental University

Katsumi NIWA, Yoshiyuki KANAI,

Takashi IWANO

光示 的結像系 は空 間周 波数特性上 か ら伝送帯域 には上

限があ り,こ れ よ り高 い周波数 は通 すこ とはできない。

ガ ンマーカメラのよ うに帯域幅 の狭 い場合 には得 られ る

画像 は非常 にぼけの大 きな もの となる。本研究 はこの上

限 を越 えた周波数 を伝送す るこ とによってガ ンマーカメ

ラの高解像化 を計 るこ とを目的 としたもの で,わ れ われ

はLukoszが 用いた変調復調系の超解 像法 をガ ンマーカ

メラに応用 した。今伝送 しよ うとす る周波数 をUと し,

これに周波数Uoの 格子 を重ね てこの二つの重な った も

の を被写 体 と考え ると,積 にな ってい ることか ら,直 流

(94)  94

成 分,周 波数U,UOの 以外 に,(U-UO),(U+UO)

が側帯波 として生 じて くる。

ここでUはCut-off周 波数 よ り高い周波数で あ り,

(U-Uo)をCut-off周 波数以下にな るよ うにすれ ば,

この伝送系 を 通過す ることが できる。(U+UO)は 高周

波数 とな るので通過す るこ とはできない。UoをCut-

off周 波数 近 くに とればUは その2倍 の周波数 ま で伝送

され得 るこ とにな る。こ こで(U-UO)の ままではモア

レ縞 のため,こ れ に変調 に用 いた周波数Uoの 格 子 を再

び重 ねる とUと(U-2Uo)と な リー フは元の周波数

に復調 され る。

(U-2Uo)を 除去 す るためには時間走査法 を行 う。

今回われわれは2mm隔 壁厚 さ0.2mmの アル ミチ ュー

ブで平行多孔 コ リメーターを作製 した。 コ リメーター厚

さ5cm,ホ ー-ル数 は1050で,こ のコ リメーターにつ いて

今回 は一次元で実験 を行いCut-off周 波数以上 の高周波

領域 の伝送 について実験 を行 った。 この コリメーターで

は2.5 Lines/cmの 空間 周波数 は通過す るこ とはできない

が,本 法 によって,出 力画像 にこの周波数 の伝送 を確認

す るこ とができた。

藍長のまとめ

日大 ・歯放

篠 田 宏 司

演題36歯 科用X線 装置 のタイ マーの精度 を各社の製

品 について比較検 討 した ものであ る。X線 照射 によ り螢

光板 に発生す るパルス螢 光 を光電増倍管 に受け,さ らに

これ をオ ッシ ロス コープで観 察 し,同 時に記録 した。 こ

の結果 タイマー作動後,一 定強度 のX線 が発生す る迄に

約0.1秒 の遅れが あるとい う。小児な どの短 時間撮影 の

場合は注意す る必要が あろ う。またX線 発生中の波形の

乱れ は,フ ィル ム濃度 の上 に影響 を及 ぼしてい るか との

問 いがあったが,実 際上は気 にな らぬ程度 のもので あろ

うとの事 であった。

演題37実 験示説用 のX線 装置 の試作 である。 この装

置は防護 され た箱 の中でX線 を発生 させ,種 々の物質 の

螢光透視像 を観察 した り,散 乱線 な どの線量測定 の他各

種の実験示説 が可能である。 この装置一式 はキャスター

のっいた専用 台があ り,自 由に移動 できる。現在実験 の

様子はモニ ター ・テ レビでみ るよ うにな っているが,数

人 のグループで 自由に扱 えるようになれば より効果的 と

思われ る。

演題38従 来 よ り試み られていた歯科用X線 テ レビが

いよいよ実用化 をめざして開発 され始めた。本 実験は体

腔 管方式 の線源 を 口腔 内に入 れ,外 部 よ リ撮像管 でX線

像 を観 るものである。X線 は交流 パルスによる超短時間

発生 させ,こ れ に よる像 をスキャ ンコンバーターチュー

ブによって蓄像 させた 口腔 内に線源 を求める ものは他 に

RIの 利用 も考 え られ る し,口 腔外 からの 線源では特殊

なエ ン ドス コープ によって画像 を搬 送 しなければな らな

い。 いずれ の方法 を選ぶ に して も,狭 い口腔内で の電気

的 ・光学的処理 をいかに行 うかが問題 である。現 在 のテ

レビ系はかな り高精度 の映像 をモニターに出せ る うえ,

輝度 の変調や ズー ミング効果 な どが 自由に行 えるので,

フィルム法 に代 る技法 として将来 が期待 され る。

演題39 Lukoszの 変調復調系の超解 像法 をガ ンマカ

メラに応 用 して,帯 域 幅の狭 い,ぼ けの大 きな画像 を よ

り鮮明 にしよ うとい う試 みであ る。今回は一次元の実験

であるが,現 在用い られてい るものの2倍 程度 の解 像力

が えられ るよ うで あ り,さ らに次の段 階での成果が期待

され るもので ある。

パ ノ ラ マ1(40~42)

40.パ ン トモグラフイ理論の考察

Investigation on the Theory of Pantomography

東北歯大・歯放

○菅野忠夫 ・小椋教順 ・照井光治

鈴木陽典

Department of Radiololgy, Tohoku

Dental University

QTadao KANNO, Kyojun OGURA,

Koji TERUI and Yosuke SUZUKI

現在 のorthopantomographyは,い くつ かの欠点 を

もっているが,そ れ ら改善す るためにはパ ン トモグラフ

イの理論 を十 分に理解 す る必要 があ る。

従来 よ りパ ン トモ グラフイの研究 は,多 くの人にな さ

れて きた。そ して,近 年Welander (1974)等 によって,

系統立 った数 学的証 明がな された。 だが,一 般断層撮影

とパ ン トモ グラフイの両者の理論 上の異な り,画 像の異

な りについては,十 分 に論議がな されてない よ うに思わ

れ る。

そこで,パ ン トモグラフイ を中心 に,一 般断層撮影 と

両者 の理論的な違 いにつ いて,幾 何学的 に考察 し,実 験

結果 と比較検討 を行な った。

4.  両者 の理論的 な違 いについて

1) 管球 の回転 中心(TOMOに おいては載面 と回転

中心 が一致す るが,Pantomoに おいてはプ幾何学的 に大

(95)  95

き く離 れている。)

2)  フイル ムの動 き(Pantomoに おいては,自転 的な

動 きを持つ が,TOMOに おいては管球 と連 動す る動 き

のみである。)

3)  Objectを 投影す るX線(TOMOに おいては,管

球 の始動 か ら終 りまで,objectは 絶えず線束 の中の同一

なX線 で投影 され るが,パ ン トモにおいてはobjectを 投

影す るX線 が線束 の中で絶 えず変化す る。)

2.  両者 のボケ像 の違い について

理論的考察結果 か ら,載 面 を中心 に等 しく離れ た内外

側 のobjectの 像は,一 般断層撮影 においてはほぼ同様な

像 になるが,パ ン トモグラフイ において は大 きく異 る。

パ ン トモ グラフイにおいては,objectの 最大投影角度は

狭角断層撮影 のそれ に当てはまるが,像 は後者 と同 じに

はな らない。なぜな ら(3)の 様な画像形成過程の中で,

フイル ムは線束の中の無数のX線 のそれぞれに一致 す る

よ うな速度 で追跡 していき円運 動す るか らであ る。

その結果,内 側の ものにおいてはボケがobjectの 真 の

長 さ(+)の 方向に,外 側 の ものにおい ては(一)方 向

に作用 し,結 果 として,内 側 の ものがかな り大 き く,外

側の ものがかな り小 さく投影 される。

以上 の考 察結果 は,実 験結果 と一致 した。

両者 の違 いについて明 らかになった。

41. 新 しい方法による0.P装 置の断層域の測定

について

Measurement of the Image layer in Ortho-

Pantomographic Machine by New method

沼田医学研究所

沼田久次 ・沼田昭浩 ・沼田正敏

Numata Medical Institute

H. NUMATA, A. NUMATA, M. NUMATA

0.P装 置 のImage layerの 位置 と大 きさを正確 に把

握 してお くこ とは臨床家 に も必要 であ り,将 来O.P装

置 の改 良す る上 にも重要 な ことと思 う。 この問題 につい

ては多数 の報告 がある。

Jungは 多数 の鉄のボールを,Lund及 びManson-

Hingは ネヂ釘 を配列 して之 を撮影 し,そ の像 のボ ケの

調子 によ ってImage layerの 判定 をしてい る。 又我国

において も多 くの報告が あるが,そ の操作は繁雑の よ う

である。私共 は別 の方法 によって一層簡単 に測定す るこ

とを考察 した。実験 の結果興味 ある所見 を得たので ここ

に報告 して諸民 の御教示 を得たい と思 う。

私共が使用す る 装置 のImage layerの 大き さと位置

は既 に製作者 か ら示 され てお る。 そのImage layerを

測定す るに都合 の よい一つの器 具 を作 った。 この実験 の

根本の原理 は,物 体 をWireで 貫通 し,之 を都合 のよい

方向か ら0.P撮 影 を行 うと,Wireの 像はImage layer

に在 る部 分だけボケが少 ない とい う現象 を利用 した もの

であ る。 構造 は19本 の長 さ70mmのWireを 半 円形 で

放 射線状 に配列 し,錘 体 を作 った。錘体 の底面 の直径 は

140mmで ある。 これ を0 .P装 置 に正確 にマークを して

位置づ け して撮影す る。管球 が どの位置 にあって も之 と

対 向す るWireと は一定 の角度 を保つ。 この角度が45度

である と好都合 である。

Filmに は19本 のWireが 略々垂直 に結像 し,各Wire

の一部 はボケていない。その面端 にボ ケのある部分 もで

きる。 ボケのない部分 がImage layerで ある。 この部

分 の上の境 をPと し下際 をΩ とす ると,PはImage la-

yerの 管球側,Ω はFilm側 を現 わす。各Wireの 下

端 を結 ぶ と略々一直線 とな り,こ れを0線 となづけ る。

各WireのPを 結ぶ線 と9を 結んだ線 と間に帯状 の も

のができ る。 これ を馬蹄形 のImage layerの 断 面の展

開図であ る。次に之 を復 元す るのであるが,そ の為 に白

紙 に直径140mmの 半 円を画 き,円 周 に10度 毎 に放射線

状 に線 をひき,円 周 は上記 の0線 に当るので,Film上

の該 当す る線上 の0Q及 びQPの 値 を図上 に印記すれ

ばImage layesの 形 が復元 できる。但 しX線 とWire

との角度 が45。であれ ば,Film上 のPΩ 値 はそ のまま

Image layerの 厚 さの値 とな るが,OQの 値はFilm上

では短縮 してい るので,補 正す る必要が ある。即 ちFilm

上 の09はWireの09を 斜辺 とす る直角二等辺三角

形 の直角 を挾 む辺 の一辺(X)と なっている.故 に求 め

る0Ω=√2×2で 求 め られ る。 次 にWireの 代 りに 網

目1.2mmの 金網 を用いてみたがその像 はWireよ り優

る成績 を得 た。然 し復元 に際 してはWireを も併用す る

必要 があるこ とを認 めた 。以上 で初 回の実験 を終 ったが,

二,三 不審な点が あることを認めたがその究 明は次 の機

会 にゆず る。

同好 の諸氏 の追試 を希望 してや まない次第であ る。

(96)  96

42. フイ ル ム 速 度 とPantomographyの 軌 道 の

変 化

Changes of Image Layers dus to Control

of Film Velocity in Pantomography

東北酋大・歯放

○小椋教順 ・鈴木陽典 ・菅野忠夫

島野達也

Department of Radiology, Tohoku

Dental University

OKyojun OGURA, Yosuke SUZUKI

Tadao KANNO and Tatsuya SHIMANO

Orthopantomographyの 軌道 は,3つ の回転 中心 と

フィル ムの速度 によ りそ の軌道は固定 され てい る。 しか

し,軌 道 は,被 写体 とフィル ム との相対的な速度 によ り

決 まるもので あるか ら,フ ィル ムの移動速度 をコン トロ

ール して希望す る軌道 の位置や形 を決 めるこ とも可能で

ある。 それ によ り個体差 の著 しい臨床 で個人 々の軌道 を

設定 するこ とも,現 在 よ り望 ま しいorthopantomogram

を得 る ことが出来 る。

そ こで,PantomographyのSimulatorを 作 り,フ ィ

ルム速度 を変 えて載面 の 位置 と の 関係 を実験 的に求 め

て,Welanderの 計算値 と比較 した。更に フィルム速度

を変えて得 られ た各載面 の画質 の変化 を調 べた。

実験方法

1.  高精度Simulatorの 製作

実験の精度 を高め,微 少変化 をX線 上 で測定 できるよ

うに以下の構 成に した。

(A)  フィルムおよび被 写体 の移動速度 は2つ のSyn-

cronousmotorを 使い,安 定性 と再現性 を考慮 して,可

変周波数発振器 か らの 短形 波 をPoworampli丘erお よ

びstep up transformerで 増幅 して,100V30Wの 出

力 を得 てSyncronous motorを 回わ し,周 波数 を変え

る ことに よ り回転数 を 変えた。Syncronous motorに

は,optical rotar yencorderを 組 み込 み,こ の出力を

シュ ミッ トトリガー回路 に より波形成形 を行 ない,回 転

数 を表 示 した。

(B)  幾 何学的配置関係 にある,フ ィルムおよび被写

体 回転中心 と第2ス リッ トとの距離 ・被写体 回転 中心 と

被 写体 との距離 は,ノ ギスを取付 け1/20mmの 精度 で設

定,読 み出 しが出来た。

(C)  test chartは0.6mmの 鉛線 を600の 角度で被写

体 ノギス上 に固定 した,

焦 点 ・フ ィル ム問 距 離600mm,焦 点 ・被 写体 回転 中心

問距 離466.2mm,フ ィ ル ム 半 径80.15mm,焦 点1×1

mm第2ス リッ ト幅20mm,フ ィル ムの 線 速 度,6.53~

10.26mm/setす な わ ち駆 動 周 波 数 に して,35~55Hzと

変 えた 。

結 果 と考 察

A.  フ ィル ム線 速 度 を6.53~10.26mm/secま で 変 え

た と き の載 面 の 位 置 は,計 算 値 と ほ ぼ一 致 して い た が,

測 定 値 はX線 斜 入 の問 題 に よ り実 際 の像 で,上 下 的 な 曲

面 を持 って い る こ とが 想 像 で き る よ うな 差 が 現 わ れ て い

た。 フ ィル ム線 速 度8.395の とき被 写 体 回 転 中心 か らの

距 離 は計 算 値 で71.83mm,測 定値 は71.7mmで あ った 。

実 験 の範 囲 内 で は フ ィル ム速 度 を2倍 にす る と載 面 は約

5cm外 側 に位 置 す る こ とが わ か っ た。

B.  フ ィ ル ム 速 度 を 変 え て得 ら れ た 各 載 面 の総 合

MTFは,フ ィル ム線 速 度10.26mm/sec,8.395mm/sec,

6.53mm/sec,の 順 に悪、くな って い た 。

C.  各 載 面 の ズ レのMTFは,2.51ines/mmの とこ

ろ で最 大0.15低 下 して い た。

座長のまとめ

日大 ・歯放

安 藤 正 一

演題40~42と は一連 の内容 であ り,そ の うち40は 既 に

本学会 の総会 でも何回 か扱 われ てきたもので ある。 田中

(鶴見大 ・歯)貴 論 は従来 の発表 とどう違 うか,40の 演

者 の答 えは表現 の違 いである。 これ に対 し神 田(九 大歯

放)は どこが違 う論議 であるか との尋 問があった。演者

の答 としては 「像 の拡大率 につ いては一般 の断層撮影像

と大差がないが,フ ィルムの動 きによる像 の不鋭 さが違

う点であ る」 とした。

42に っいてはオル ソパ ン トモ撮影 の さいに部分的 にフ

ィル ムの送 り速度 を変化 させ ることに よって,そ れ ぞれ

別 の画像 レスポ ンスが えられ るとい う。 このこ とは従来

も判 っていた こ とで あるが,そ の実用化はその本質 を十

分理解 した上 で読像 をす る必要が あるので,実 用化 の点

で疑問が残 ろ う。

41は オル ソパ ン トモ像 の結像域 を知 るため顎の形成 に

沿 った形 のダムミイ に正放線状に金 属線 を多数刺入 し,

それ をX線 像 として解析す る とい うもので,不 鋭部 を結

像域外 と判定す る方法 である とした。唯 しその実効価値

についての説 明はえ られな かった。

神 田:用 語 とし断 層軌道 とい う言葉 は不適で あろ う,

座 長の意見は どうか。

(97)  97

安藤:用 語の統一は必要であ る。今用 い られている言

葉 は器械 メーカーか ら,し ば しば発せ られてい る。 この

分野 に限 らず,新 技術の開発時には用語の混乱は常につ

きまと うので,私 見 もあるが,他 日正 しく秩 序 を立てて

統一 をはか るべ く努力 を約す る。

パ ノ ラ マII(43~45)

43. パノラマ画像の改善(拡 大率の均一化)

Studies on the Improvement of Orthopan-

tomographic Image

(The Equal Enlargement of Image)

吉田製作所

菊池和年 ・林 秀明 ・相田光康

平柄喜章 ・菅谷昭正

Research and Development Division

the Yoshida Dental MFG. Co., LTD.

Yoritoshi KIKUCHI, Hideaki HAYASHI,

Mitsuyasu AIDA, Yoshiaki HIRATSUKA

and Akimasa SUGAYA

パ ノラマ撮 影において,X線 ビー ムが被 写体 を通過す

る速 度 とフィル ム送 り速度 との相関関係 によ り像がむす

ばれ ることは周知で ある。画 質 を改善 す るに あた って拡

大率 を均一化す るとい うことは断層域の正確 さとも関連

し重 要な意味 をもってい る。そのために これ らの点 を検

討 しパ ノラマ装置の内部機構についてま とめてみた。

標 準の歯列弓設定の後 に下記の事項に もとついて機構

の決定がお こなわれた。

(1) 三軸変換機構 にか ける軸 と歯列弓 の位置関係 は障

害陰影,断 層域の幅 に関係す る。

(2) FFDは 変化 しないがFSDが 回転 に 従 がって変

化す るた めにFFDをFSDで わ った値(縦 の 拡大率)

は変化す る。パ ノラマ撮影が拡大撮影 と断層撮影 を組み

合わせた もので あるとい うことか らフィル ム送 り速度 に

影響 をあた える。

(3)(2)  に もとついて送 り機構の 中のおのおのの値 を

決定す るがその送 り機構 について は二つ の方法が ある。

今回実験に使用 した装置(パ ノー ラ8)は 縦の拡大率

(α)は1.20~1.27の 値 をとることが幾何的 に求 め られ近

似 して α=1.24と した。

フィル ム送 りは本装置の場合,軌 道板 といわれ る断層

域決定モデルか ら伝達 コロを介 して正確 に被写体 の各点

におけ る速度に一定の αをかけあわせ ることによ りな さ

れ る。その ときに この αをかけあわせ る操作 には伝達 コ

ロと軌道板 の両方 に組 み こむ ことが可能で ある。

(a)  伝達 コロにおけ る拡大

R2×R4/R1×R3=K

R1=伝 達 コ ロaの 半径(軌 道板側)

R2=伝 達 コ ロbの 半径(フ ィル ム側)

R3=フ ィル ム部 送 りコ ロの半 径

R4=曲 面 カセ ッテの半径

この場合 において軌道板 は標 準の歯列 弓 と同一 の もの

とな る。

(b)軌 道板 における拡大

軌道板 自体 を標準歯列 の α倍 として製 作 し伝達 コロに

よ るK=1と す る方法 であ るが軸 の変換 時において断層

域 のず れが生 じて くるこ とに難 がある。

01軸 か ら02軸 の変換 において

r1=o1か ら歯 列 弓 ま で の距 離

r2=o2か ら歯 列 弓 ま で の距 離

c=軸 の ピツ チ

r2=r1+Cで あ る 。

軌 道 板 は標 準 歯 列 弓 の α倍 で あ る か らo1軸 の場 合 は

αr1で あ り,02軸 の 場 合 は αr2で あ る 。

αr2=α(r1十c)で あ る か ら

αr2-αr1=αcと な りα=1以 外 は軌道板 のガイ ドは一

致 しない。

(a)の 場合 は軌道板 が小 さ くな り機構的 に不備 の点が

あ り(b)の 場合 には上記 の困難 が生 じる。従 がって今回

は二者 を 組み 合 わせ るこ とによ り満足 のい く結果 をえ

た。

44. オルソパン トモ像の鮮鋭度についての考察

On the sharpness of Orthopantomographic image

鶴 見大 ・歯放

五島洋太 ・足立 忠 ・山本 昭

Dept, of Oral Radiology. School of Dental

Medicine, Tsurumi University,

Yota GOSHIMA, Tadashi ADACHI,

and Akira YAMAMOTO

私 たちはこれ迄 にオル ソパ ン トモ グラフィにっいてい

くつ かの報告 を し,ボケ(B)を 式B=S×(R×A/F-1)

で表 わす試 み もした。Sは ス リッ トの幅,Rは ス リッ ト

の速度(担 しsec/cm),Aは 被写体がス リッ トの右 か ら

左 へ抜 けるのに(線 束 が左 か ら右 ヘス リッ トを抜 けるの

に)要 した時 間に,線 束 が実験 的歯列 弓上 をよぎった長

さであ り,撮 影部位 によって変 わる。Fは フィル ムの速

(98)  98

度(但 しsec/cm)を 表わす。

これに よると装置の軌 道 と被 写体 を同形 にして,そ の

位置 を対応 させれば シャープなオル ソパ ン トモ像(以 後

オ ・パ像 と略)が 得 られ,両 者の関係 がズ レた場合 にボ

ケが生ず る。今回は,こ の点をふまえて,軌 道 と被写体

の形状,そ の位置的関係 をい ろい ろと変え ることによっ

て,オ ・パ像 とボケ式 とについて検討 を加 えた。使用 し

た装置はPalomexのType OP-2, Nr.1287,管 電圧

55KVp~85KVp可 変式,管 電流15mA,固 定式であ る。

N軌 道 よ り大きな軌 道をD軌 道,そ れ と同形 の被 写体

をD被 写体 とし,N軌 道 よ り小 さな もの を同 じくC軌

道,C被 写体 とした。

1) 軌 道 と被 写体 の形状 とその位置 的関係 とが一致 し

た時。 この場合,軌 道 と被写体 の大小如何 に か か わ ら

ず,軌 道 と被写体 とが形状 および位置 が一致 した場合 の

オ ・パ像 はシャープ とな り,式(B)か らみれ ばR×A/F

の値 の変動が あま りない とい うことで ある。

2) 軌 道 と被写体 とがズ レた 場合,(特 に 被写体 の前

方部)は,被 写体が前方へ移動 した時,A値 は著明に小

さ くな り,従 ってR×A/Fの 値は紗 し て ボ ケ を生ず

る。また,両 者 がたがいに反 対方向へ増減 す る時にはボ

ケがあ らわれ,今 回のD軌 道C被 写体,C軌 道D被 写体

の場 合がそれに相 当 した。被 写体 側方部において も,こ

の関係は同様であ るが,前 方部ほ ど著 明ではなか った。

それは一 つにはA値 の変動が さほ どない為であ る。

3) 軌 道 と被 写体 とが一致 した場合 のボケの式Bに よ

り求めた シャープなはずのオ ・パ像 に,上 下0.2の 範 囲

の幅が あることが認 め られた。 この点 を考慮 してボケの

式B=±0.2の 幅 を持たせた シャープな被写体 の範 囲を

次の よ うに して求めた。既知のR値,F値 か らA値 を求

め,そ のA値 を もとに描 いた曲線 よ り被写体一回転 中心

問の距離 を得,そ れをシャープな範 囲 として求 めた。 こ

の範 囲は側方部 の被写体 を軌道 か ら外方へ2cm,内 方へ

1cmズ ラして撮影 したオ ・パ像か ら得 られた もの と一

致 した。 これ を 「許容鮮鋭域」 と名づ けた。

4)  軌道 と被写体 とが部分的 に一致 した場合,そ の一

致 した部分 に関 してシャープな像が得 られた。

45. オルソパントモグラム撮影条件の設定

Comparative Data on the orthopantomogra-

phic density between exposure Intensity and the

length of nasion-inion

日大 ・歯 放

鈴木理浩 ・岩田一男 ・佐藤精明

Department of Radiology, Nihon

University school of Dentistry

Masahiro SUZUKI, Kazuo TWAT,

Seimei SATO

目的:普 通,オ ル ソパ ン トモ撮影 の際には,被 写体 が

小児 であるか成人 であるかによって,術 者 の経験 による

判 断でその撮影 条件が設定 されている。

最近,自 動露出 を用いたオル ソパ ン トモ装 置 も開発 さ

れてきてい るが,そ の濃度 レベルの検 出条件 の設定 に難

がある。

そ こで,今 回演者 らは一般 の診査 に適 した濃度分布 を

しめす オル ソパ ン トモ グラムを得 るための,照 射条件 に

つ いて検討 した。

材料 と方法:日 本大学歯科病院放射線部 で,一 般診査

の 目的でオル ソパ ン トモ撮影 をす る際 に,それ ら患者100

名 の頭顔 部の大 き さ,下 顎角幅,両 下顎頭相 当部問,ナ

ジオ ンーイニオ ン問の長 さを測定 した。 これ ら100枚 の

オル ソパ ン トモグラムの うち一定条件下で73枚 を検査の

対象 とし,そ れ ぞれ の下顎第1大 臼歯 の歯冠部,根 尖歯

槽骨部 および皮質骨部 の濃度分布 を測定 した。

オル ソパ ン トモ装置 は,肥 田電気社製,オ ル ソパ ン ト

モN-70,R400,フ ィルムはサクラ,メ ディカル,増 感

紙 はデ ュポ ン ハ イフ.ラス,濃 度計 は,小 西六写真工業

社製 さ くら光電濃度計PD-8を 使 用 した。

ま とめ:一 般 にオル ソパ ン トモ グラムの濃度分布 は,

かな り広い範囲 にある といわれてお り,ま た診 断す る人

の好み,診 断 目的 によって も濃度分布 は異な って くると

思 われ る。 そ こで今回は一般診査 として撮影 された100

症例 の うち,検 討 目的 に適切 と判断 された ものは73症 例

あ り,こ れ ら73枚 のオル ソパ ン トモグラムの下顎第1大

臼歯 の歯冠部,根 尖歯槽骨部 および皮質骨部 の濃度 はそ

れ ぞれ0.45~0.95,0.70~1.15,0.65~1.05で あった。

一方,計 測値 につい ては,下 顎角幅,両 下顎 頭相当部

間お よびナジオンーイニオン間 の長 さの3項 の うち,も

っとも個体 測度 問の レンジが広 かったナジオンーイ ニオ

ン間の長 さを用いて画 質 との対比 をおこな った。 この計

(99)  99

測 値 の範 囲 は,A(14.0cm~15.9cm:=n=12)B(16-0

cm~17.9cm:n=38)お よ びC(18.0cm~19.8cm:n=

23)と3群 に区 別 して扱 った。 この 場 合,A, B, C,

各 群 ご との オ ル ソパ ン トモ グ ラ ム にお け る下 顎 下 縁 皮 質

骨 部 と歯 冠 部 との コ ン トラ ス ト(濃 度 差)は,そ れ ぞ れ

1.5,1.4,1.4,ま た根 尖 歯 槽 骨 部 と歯 冠 部 とで は1.7と

3群 と も同 一 値 で あ った 。

これ らの所 見 を しめ した オル ソパ ン トモ グ ラ ムで は,

特 定 の指 標 と した部 位 間 にお け る コ ン トラ ス トが ほぼ 一

定 して い て 平 均 的 な画 質 の もの で あ る と評 価 して よい と

考 え る。

この よ うな 一 般 診 査 に適 正 と考 えた73例 の照 射条 件 は

次 に し めす とお りで あ った 。

A群: 81.8KVp 15.0mA, B群: 83.2KVp 16.0mA

お よびC群87.9KVP17.0mA

座長のまとめ

城西歯大 ・放

金 井 良 維

演題43,は 軸変換 オル ソパ ン トモ装置 において投 影 さ

れた部分 によって拡 大率 に差 があるのを均一化 し,オ ル

ソパ ン トモ像の どの部分 も同一 の拡大率 で投影 され るよ

うに,装 置 の軌道板 と回転伝 達 コロの双方 につ いて機械

的 な工夫 を試 みている。 これは装置 の構造 上焦 点フ ィル

ム間距離 はつね に一定で あるので,フ ィルム断層域 問の

距離 のみ が拡 大率 に影響す るもの と考 えられ る。3軸 変

換 の円弧 の接 続に よる断層域 とフィルム問距離 を一定 に

保っ こ とは仲 々むつか しい ことではないか と考え られま

す が今後 の成果 を期待 したい と思います。 この演題 に対

しては質 問追加 発言はあ りませんで した。

演題44,は 演者 らが数年前 か ら試 みているオル ソパン

トモ グラフ ィーの基礎 的な研 究,殊 に像 のボケにつ いて

の数式化 による判定 を更にすすめて断層域 と被 写体 との

位 置的な関係か ら生ず るボケについて実験 的に解 明 して

い る。

この演題 に対 して実際の臨床上では特 に前 歯部におい

て被写体 の位置が フ ィ ル ム側 にずれた場合 は写 りに く

く,む しろ管球側 にずれ た場合 の方が よ く写 って くるこ

とを経験 しているが,こ の実験 とは逆 である旨の発言が

あ りま した。 これ は模型 による実験的 な位置づ け と比べ

て生体 での位置づ けの困難 さが ある程度影響 してい るの

ではないか と考 え られ るが更 に基本的 な原 因の究 明が必

要 な問題 であ りま しょう。

演題45,は オル ソパ ン トモグラムにおいて最 も診断 に

適 した濃度分布 を得 るために,被 写体 の大 きさを計測 し

て,3つ の グループに分 け,そ の各 グル ープにつ いての

最適 の照射条件 を見出 してい る。今 回の発表 ではフィル

ム と増感紙の組合せが一通 りのみで あ りま したので,今

後更に組合 せを色 々 と変えてて最適条 件 を見出 していた

だけば非常に有益であ りま しょ う。 この演題 に対 しては

特 に質 問あるいは発言 はあ りませ んで した。

診 断1(46~48)

46. 学生実習で得 られたパノラマX線 写真の分

(抄録未着)

47. 下顎小臼歯群にみられた軸回転について

Axial rotation in the lower premolars

日大 ・歯放

安藤正一 ・相沢幸一 ・三箇善雄

中 島 孝 和 ・真 保 極 ・大 島章 一・

○中村芳樹 ・佐藤昭雄 ・鈴木賢彦

Department of Radiology Nihon University

School of Dentistry

Shoichi ANDO, Koichi AIZAWA,

Yoshio SANKA, Takakazu NAkASHIMA,

Kiwamu SHINBO, Shoichi OSHIMA,

Yoshiki NAKAMURA, Akio SATO,

Yoshihiko SUZUKI

諸言:臨 床上,個 々の歯の位置異常 は,乳 歯群 には ま

れ であるが,永 久歯群 に しばしば見受 け られ るのは周知

の ことである。 もっ とも一般的 に認 め られ るものは転位

や 回転 な どである。 しかしなが ら,そ の原因 については

必ず しも充分 に解 明され ていない。

従 来,そ の成因については,と りわけ萌 出後 の二次的

要 因,す なわち咬合 の異常,萌 出余地 の不足,隣 在歯 の

影響 な どで あろ うと推 測が され てきた。

今 回,私 達 は,10か 年 間にわた って収集 した逐年資料

か ら下顎小 臼歯群 の歯胚 で軸 回転 している例 がかな り多

い とい う事実 を見出 し,こ の よ うな歯 の発育経過 につい

て追跡調査 をすす め,興 味 ある知見 をえた ので ここに報

告す る。

材料 と方法:わ れわれ の研究活動 によって えた10か 年

間約300個 体 の歯 の逐年X線 写真 と,ア ル ギン酸印象 に

よ る石 膏模型 とを材料 として用 いた。な お,対 象児童 の

(100)  100

月齢は63ヵ 月か ら182ヵ 月の範囲で ある。 これ らの資料

の うちか ら,観 察 に適当なτ では386歯 中57,万 では431

歯 中89の 計146歯 の回転歯が あった。

1. 歯 の回転 について

A. 長軸(捻 転)

B. 近 ・遠心軸(唇,舌 側傾斜)

C. 頬,舌 軸(近,遠 心傾斜)

上記の分類 に よるものを今 回は一括 して回転 として取

扱 い,各 調査年度 にっいて歯槽内萌出過 程,萌 出後 に至

る推移 を観 察 した。

結果:1.回 転歯の多数例(4:61%,5・・92%)は,

歯胚 の一次的回転 によるもので あ り,こ のこ とは とくに

5に 顕著 であった。

2.  しか しなが ら骨 中で軸回転 していた例 で あ っ て

も,そ の24%~28%は,萌 出過 程 において修 正 され,正

常 と思 われ る軸方 向で萌 出 した。

3.  萌出時,二 次的 に回転 した例では,萌 出余地 の不

足や隣在歯 の欠損 な どが多 くみ られた。

48. 智 歯 の 発 育 第2報

Developmental behavior in Third Molars

(2nd report)

日大・歯放

○永山隆治 ・岩井一男 ・佐藤裏司

西岡敏雄 ・篠田宏司 ・安藤正一

Department of Radiology, Nihon

University of Dentistry

ORyuji NAGAYAMA, Kazuo IWAI,

Joji SATO, Toshio NISHIOKA,

Koji SHINODA, Shoichi ANDO

は じめに:従 来,智 歯 の発育 にっい ての研究は,臨 床観

察 と口内法X線 写真 とによる ものが大多数 であるが,オ

ル ソパ ン トモグラムでは,従 来十分 な観察 がで きなかっ

た位置 の智歯 にも存在 す ることがみ られる。 そこで演者

らは,オ ル ソパ ン トモ グラムを用 い,精 密 な観察 によっ

て所見 を求 めた。

材料 と方法:主 として,日 本大歯科病院放射線 で診断

の 目的で撮影 されたオル ソパ ン トモグラムを観察 し,そ

れぞれの発育状態 を前 回 と同様な1-6ま でのス コアー

で判 定評 価 した。

観察 した年齢区間は,満6歳 か ら25歳11カ 月 までの20

年間 で,各 年齢区間毎 に男女それぞれ30個 体つ つ,計

1200個 体 のオル ソパ ン トモグラムである。材料 の選択 に

当っては,智 歯以外 に先天性無 歯 のあるものや,濾 胞性

歯 嚢胞な ど歯 の形成 に異常 のある ものは除外 した。

別 に,智 歯 の顎 別お よび体 側別 の出現 型式 と頻度 とを

スコアー1の 出現の見 られな くなった年齢域 の材料 か ら

算出 した。

考察:智 歯 の発育 を演者 らの設定 したス コアーによ っ

て検討 してみる と,満6歳 か ら6歳11カ 月間 の群 につい

ては,男 女 それ ぞれ30,計60個 体 のオル ソパ ン トモグラ

ムではいずれ の智歯 も認 め られない。

次に,各 ス コアー とも分布範 囲が非常 に広 く,最 短 は

男子の8の ス コアー1で3年2カ 月,最 長 は男子 の周 の

スコアー5で11年6カ 月間 にも及んだ。 このよ うに,智

歯 の発育期間は個体問の変動が きわ めて大きい。 これは

歯 の退化 の問題が特 に智歯 で顕著なた めで あると思われ

る。

このため著者 らは男女別,顎 別,体 側別 にそれ ぞれ各

ス コアーの平均年齢 との信頼 限界 を求 めて報告 した。

結論:

1)  智歯の出現率 は男女 ともに側差及 び性差 は認 め ら

れず,顎 別の差のみが認 め られた。

2)  智歯の出現 の最低年齢は,男 子で満7歳,女 子 で

は7歳1カ 月で あった。

3)  智歯 の発育状態 を示す スコアー1は 男子の上顎 智

歯 では9歳11カ 月頃,下 顎で は9歳3カ 月,ま た女子の

上顎 では,11歳1カ 月,下 顎では9歳4カ 月頃に平均値

カミみ ウ)ナ1,た。

座長のまとめ

東歯大・歯放

黒 柳 錦 也

演題46は,学 生実習で得 られたパ ノラマX線 写真 を資

料 として,そ のscreeningと しての意義 を調べた もので

ある。本報告での読影項 目はこれ で良い と思われ るもの

の,口 腔 の診査 は,ま ず 問診,視 診 によ り行われ ること

か ら,正 常人 を対象 とした診査 であって も,視 診で え ら

れなかった所見 がパ ノラマX線 写真 で どのよ うにわ かっ

たかをポイン トに して欲 しか った。 また,デ ンタル フィ

ルムのfull mouth surveyで 写 しえない 部分 をカバ ー一

す るのが,(被 曝の 問題は さておいて)こ の 撮影 法の意

義で あろ うか ら,こ の点について言及すれば,本 法 の意

義 をさらに明確に しえた と思 う。

演題47は,す でに演者 らによ り報告 されてい る小臼歯

群 のX線 学的観察 の一連 の もので,軸 回転 を経時的 に調

べた ものである。 このなかで,回 転歯 の多数例が歯胚の

一次的回転 によるもので あ り,し か も萌 出過程 におい て

(101)  101

修正 され,正 常 と思われ る軸 方向に出て くる ものが多い

と述べ てい る。その よ うな ことが明 らかになったこ とは

大変興味深 いが,こ れが生物学的に どのよ うなこ とを意

味 してい るか の考察が欲 しかった。 なお,岡大.基 放 の岸

先生 か ら,ど の よ うな軸回転が多かったか,そ の傾 向に

っいて質問が あ り,頬 面が近心方 向に向 う同転 が多い と

の回答があ った。

演題48は,前 回の総 会 におけ る報告 に例数 を加 えたも

ので ある。智歯 の発育 な ら び に欠如 につ いては,す で

に報告があ るが,演 者 らはオル ソパ ン トモ像 か ら歯牙の

形成過程 を数字 で表 わ し,そ の頻度分布 と母平均の存 在

範 囲な どを調 べ,智 歯 の発育過程 を明 らか にした。 しか

し,発 育状態 の1~6の 区分 についての説明が不足 して

いたよ うに思 われ る。 また,智 歯の発育に極 めてバ ラツ

キが大 きいこ とは解 ったが,臼 歯 を代表す るもの として

上下顎 の第1大 臼歯 さ らに前歯 を代表す る もの として上

顎 中切歯 な どと比較 して,ど のよ うに異 ってい るかを明

らかにす るこ とによ り,智 歯の特 徴が さらに明確 になる

のではなか ろ うか。

診 断II(49~51)

49. 顎運動の診断と下顎頭のX線 学的検討

(抄録未着)

50. 術後性上顎嚢胞の パン トモグラム所見の解

Analysis of Pantomographic findings of

postoperative maxillary cysts

九州歯大 ・歯放

○大庭 健 ・安蘇健二 ・西岡秀高

江崎陽子

Depameant of Dental Radiology, Kyushu

Dental College.

°Takeshi OHBA, Kenji ASO,

Hidetaka NISHIOKA, Yoko EZAKI

術後性上顎嚢 胞は,1927年 に久保猪之吉教授 に より初

めて報告 された もので あ り,そ の後,数 多 くの症例報告

や成固 に関す る研究がな されてい る。放射線関 係にお い

ても,本 疾患 に対 し各種X線 検査法 の比較 が試 み られ,

文献的 には多軌道断層撮影 の検 出がす ぐれ てい る とい う

報告が多い。 しか しなが ら,実 際臨床的には鼻副鼻腔の

X線 検査法 として のウォー ター氏法の果たす役割 は大 き

く,術 後性上顎嚢胞 の診断 の場合 もウォーター氏法 によ

り確 定診断 されている と言 っても過言で はない。

演 者 らは術 後性上顎嚢胞 が十分 に疑 わ れ た 症例 に対

し,

X線 検査法 として ウォーター氏法 とパ ン トモグラフィー

の併 用 を行 ない,そ の検 出能 の比較 を行な った ところ,

パ ン トモ グラフィーの方 がす ぐれ てい る とい う印象 を得

た。そ こで今 回は術後性上顎嚢胞 のパ ン トモ グラム所見

の把握 の為,少 数例 ではあるがX線 所見 の解析 を行ない

興 味あ る結果 を得 たので報告す る。すなわち,術 後性 上

顎嚢胞 のパ ン トモグラム所見 としては,上 顎洞底部か ら

歯槽骨 にかけて境界明瞭な,辺 縁平滑な単房性 のX線 透

過像 として現 われ る場合が多い と言 える。

51. 顎 骨 の"い わ ゆ る"Keratocyst 74例 の エ

ッ クス 線 的 ・臨 床 病 理 学 的 観 察

Clinicopathological and Roentgenological

Aspects of Odontogenic Keratocyst

(74 cases).

*大 阪 歯 大 ・歯 放

**岐 阜 歯 大 ・歯 放

***岡 山大 ・医基 礎 放

*内 海 潔 ・*○ 吉 永 隆 一 ・**今 井 一 彦

**和 気 和 也 ・***岸 幹 二

*Department of Oral Radiology , Osaka Dental University.**Department of Oral

Radiology, Gifu College of Dentistry.***Department of Fundamental Radiology ,

Medical School of Okayama University. *Kiyoshi UCHINOUMI ,*ORyuichi YOSHINAGA,

Kazuhiko IMAI,**Kazuya WAKE,***Kanji KISHI

顎骨 に発生す る嚢胞の うちには,ま れ に裏装上 皮表層

に角化,錯 角化 を示す ものがあ る。 この様な嚢 胞に対 し,

Philipsen, Pindborgら は,odontogenic keratocystな

る名称 を提言 し今 日では この名称 が広 く用 い られ て来 て

い る。本嚢胞 は,他 の嚢胞 に比べて再発傾向が高 く,病

理腎織 学的 にも,増 殖 傾向 を示 す所 見が示 唆 され る とこ

ろか ら,嚢 胞 と腫瘍 の中間に位 置づけよ うとい う意見 も

あ る。またX線 写真上 において も,多種 多様 な像 を呈す と

い う報告は あるものの,い まだその特徴 が充分 に整理 さ

れていない よ うである。今 回われ われ は,組 織学 的所 見

を基盤 として,角 化,錯 角化 を示す顎嚢 胞を一応,odon-

(102) 102

togenic keratocystの カテ ゴリーに統合 し,こ れまでに

経 験 した74例 の集計観 察を行 った。

これ ら74例 は,原 始性嚢胞28例,含 歯性嚢胞19例,多

発性 嚢胞14例,多 房性嚢 胞12例,残 遺嚢胞1例 であった。

年齢 分布 は,9~82歳 にわた り,20歳 代が もっとも多 く,

平均年齢 は32歳 で あった。 男女 比は,1.6:1で やや男

性 に多か った。

来院時の主訴は,有 痛性 腫脹 がもっとも多 く,無 痛性

腫脹 がそれ につづいていた。初発症状 に気づいてか ら本

学 に来院す るまで の期間は,3カ 月までが大半 を占めて

いたが,根 本的治療 を受 けず に1年 以上 を経過 した もの

が10例 認 められた。

74例 における嚢胞総 数は,総 計108個 で下顎 にやや多

かった。多発性嚢胞患者 には1人 で,6個 の嚢胞 を有 し

ていた ものが2例 認 め られ,平 均1人3.4個 の嚢胞 を有

していた。 また,わ れ われ は,108個 の嚢胞 のX線 写真

像 を次のよ うな3つ のtypeに 分類 した。type 1は,単

胞性 で,円 形,類 円形 のX線 透過像 を示 したもの(56

個)。type 2は,同 じく単胞性 であるが,い わゆる花綱

模 様 を示 した もの(21個)。type 3は,多 房様 のX線 透

過像 を示 した もの(21個)で ある。 これ らの形態 と発現

部位 と の 関係は,上 顎 では2例 を除いてす べ てtype 1

を示 し,下 顎前歯部か ら小 臼歯 部に か け て 生 じた もの

がtype 2を,大 臼歯部 か ら下顎枝 部 にか けて生 じた も

のがtype 3を 示す傾向 にあった。

さ らに術後6カ 月以上の経過観察 ので きた43例,69個

の嚢胞 について再発傾向 を調査 した結果,9個 の嚢胞 に

再 発を認 めた。 また治癒不全 と考 え られ る ものが,7個

の嚢胞 に認 め られ た。 これ ら再発傾 向 と前述 のtype別

との関係 にっ いて調査 をおこなったが,と くに有意差 は

認 め られなかった。

次にわれ われ は,多 発性嚢胞患者14例 において,い わ

ゆ る多発性基 底細胞母斑 症候群 との関係 を調査 した。そ

の結果,14例 中の12例(85%)に 大脳鎌 の石灰化,ト ル

コ鞍の異常,助 骨の異常,両 眼隔離症,軽 度の下顎前 突

症,家 族歴 などの徴候のいずれかを認 め,同 症候群 との

関係が深い ことを強 く示唆 された。

座 長 の ま と め

東 北歯大 ・歯放

島 野 達 也

演題49顎 関節 は,本 来運動 を行 う部位 であるか ら,

その疾患の診 断においては形態 的のみな らず,機 能的な

面での把握 が必要 である。ここでは,顎運動 をある程度客

観的 に認識 できる下顎運動記録装置(M, K, G)を 利

用 して,そ れ と顎 関節 のX線 学的分析 を関連づ けよ うと

してい る。顎 関節 のX線 学 的検討 には,演 者 らが顎 関節

撮 影用 に改良 したパ ノラマX線 撮影装 置が用 い られ,中

心咬合位 か ら最大 開 口位 まで8段 階 の下顎頭最高点 の運

動 の軌跡 が求め られ て居 る。

そ して,単 なる中心 咬合位 と最 大開口位 の2点 の位置

的変化 をみ る方法よ りも,こ れ らの運動途 中の情報 が有

用で あることを示 唆 している。

顎関節の形態 と運 動 との相 関々係 の有無,咬 合運動 的

の雑音 の発現の時点 と運動 との関連,被 曝線 量 について

質疑応答がかわ された。

演題50臨 床的 に術後性上顎 嚢胞 が十分 に 疑 わ れ た

38症 例42病 巣 について,Waters氏 法 とオル ソパ ン トモ

グラム とを併用 し,両 者 の検出能 を検討 の結果,オ ル ソ

パ ン トモグラムがす ぐれ ている としてそ の所見 を分析 し

ている。

本演題 での討論 の一つ は,組 織学 的診 断が附随的意義

しかない本疾 患において,本 疾 患 とした診断 の根拠 であ

り,一 つは病巣 周辺の骨硬 化像 の有無 に関す る ものであ

る。後者 について,飯 沼の骨硬 化像 が多 く認 め られ る と

い う報告 に対 し,演 者は認 め られない傾 向にある とし,、

それ は撮影方向 の差,有 無判定の基準の差 によるもの と

した。川井(阪 大)は,部 位的条 件お よび成 因論 との関

係 におい てこれ を捉え よ うとした。 なお,断 層撮影法 そ

の他 の方法 によって,全 体像 を把握 した上での分析 を今

後 に期待 したい。

演題51本 疾患 が近年注 目され ているのは,一 っは再

発傾 向を高 い といわれ ているこ と,一 つ は系統疾患 との

関連においてであろ う。演者 らは,組 織学的所見 を基盤

に して,角 化 あるいは錯角化傾 向を示す顎骨嚢胞 を一応

Odontogenic Keratocystと して,74例108嚢 胞 について

集 計,分 析 した。

本 演題 に対す る質疑の一つ は,本 疾患 と診断す るX線

所 見の きめ手は何 か とい うことであ り,多 発性,多 房性

のもの,花 綱模様 を呈す るものがX線 的特徴 としてあげ

られ た。そ の二は,Basal Cell Nevus Carcinoma Synd-

romeと の関連 である。多発性所見 を示す14例 中12例 中

に大脳鎌石灰化,ト ル コ鞍,助 骨異常,そ の他の所見が

認 め られ ているが,臨 床 的にNevusあ るいはCarcinoma

は認 め られ ていない とのこ とで ある。本題 に関 しては,

症例 を積 重ねての検討 を期待 したい。

(103)  103

診 断III (52~54)

52.  原 始 嚢 胞 の1例

A case report of primordial cyst

九 歯 大 ・歯 放

*九 歯 大 ・第 一 口腔 外

○ 楊 榮 展 ・陳 昭 榮 ・大 庭 健

*吉 岡 真 一

Department of Dental Radiology Kyushu

Dental College.*The first Department

of Oral Surgery Kyushu Dental College

OR-C YANG, C-Y CHEN, T. OHBA,

and*S. YOSHIOKA

原始嚢胞 は歯胚形成初期 の上皮 を原基 とした嚢胞で あ

り,X線 学的 には歯牙 よ うのX線 不透過像 を呈 さないの

が特徴で ある。そ こで無歯性 濾胞性 嚢胞 ともよばれてい

る。組織学的 には嚢胞壁上皮 に角化層 を有す ることが特

徴で ある。 しか しなが らX線 学的には歯牙 と無 関係 であ

るにもかかわ らず,埋 伏歯 と並存 した症例 の報告 は少 な

くない。それ らのよ うな症例 においては含歯嚢胞 との鑑

別は困難で ある。また本疾 患がx線 学的に多房性 を呈す

場合,歯 性粘液腫,エ ナ メル上皮腫な どとの鑑別 も困難

で ある。

今回はX線 学的に興 味あ る所見 を呈 し,臨 床的 にはエ

ナ メル上皮腫が疑われ,組 織 診によ り原始 嚢胞 と診 断 さ

れた興味 ある1例 を経 験 したので報告す る。

患者 は15歳 の男性 で,主 訴は下顎の腫 脹で あった。X

線所見 は右下顎大 臼歯 か ら左大 臼歯にかけて多房性 の境

界 明瞭 なX線 透過像 を呈 し,そ の中に歯牙の埋伏 も認 め

られた。

53.  下 顎 骨 に 発 生 し たAneurysmal bone

cystの1例

Aneurysmal bone cyst in the mandible:

Report of a Case

*東 京 歯 大 ・歯放

**東 京 歯大 ・口腔 外 科I

***東 京 歯 大 ・病 理II

*黒 柳 錦 也 ・*佐 藤 仁 ・*応 藤 健 三

**大 森 清 弘 ・**山 根 源 之 ・***西 原 和 之

*Department of Dental Radiology, Tokyo

Dental College.**1st Department of Oral

Surgery, Tokyo Dental College.***2nd De-

partment of Pathology, Tokyo Dental College.*Kinya KUROYANAGI

,*Jin SATO, *Kenzo OHTO

,**Kiyohiro OHMORI,*Genyuki YAMANE

,***Kazuyuki NISHIHARA,

本疾患 は,1942年 にJaffe and Lichtensteinが 初 め

て他 の類似 の ものか ら独 立 させた疾病 であ る。顎領域 で

は,1958年 にBernier and Bhaskarが これについて詳

細 に報告 してい る。私 たちの症例 は,31歳 の男性 で,左

側下顎大 臼歯部 の膨 隆を主訴 として来 院 した も の で あ

る。約1年 前 に同部の異常 に気付いた ものの,自 覚症状

がないため放置 していた。

初診時 には,5部 齦頬移行 部よ り区 部にわたる膨 隆を

認 め,口 腔粘膜 は正常,骨 様硬 で波動 を触 れなかった。

X線 診査 によ り,良 性腫 瘍 を思 わせ る骨 吸収像 と骨硬化

像 が認 め られ,辺 縁 は小 さな孤 を画 がき,7が 埋伏 して

いるのがみ られ た。 その他,特 に注 目される所見 として,

下顎管 と下顎孔 の拡大が認 められた。Biopsyで は,褐 色

透 明な内容液 を認 め,得 られた組織片 の病理組織検査 に

よ りlymphangiomaと 診断 され た。

手術後,摘 出物 の病理所見 として,血 液 を満 た し拡張

した多数 の腔 が認 め られ た。 しか し,腔 内面 には内皮細

胞 がな く,血 管壁 の構造 は認 め られ なかった。 このよ う

な所見 か らaneurysmal bone cystと 診断 された。

次 いで,文 献的検索 を行な った ところ,24例 がすで に

報告 され てお り,本 症例 を加 えて25例 を調査 しえた。そ

の結果,男 女別 には差がな く,年 齢別では20歳 代以下に

多いこ とが認 められた。 さらに部位別 で下顎 に多 く,臼

歯部 か ら下顎枝 にかけて よ く発生 し,大 きさでは鶏卵大

の ものが多 かった。X線 所見 ではunilocular,multilo-

cular,honeycombedな どが 同じ頻度でみ られ,特 定の

(104)  104

タイプはないよ うであった。 また,こ れ までの報告例の

うち,後 藤 ら(1971)は 下顎管 と下顎 孔の拡大 を認 め,本

症例で も認 め られた ことか ら,下 顎 に発生 したものでは

ある時期 にこれ らが必ず起 こ り得 るのではなか ろうか。

次いで,本 症の原因 として挙 げ られている外 傷の既往 の

有無 を調べた ところ,3例 に しか認 め られず,こ れが原

因 として考 え られ る根拠が薄弱で はな かろ うか と思われ

た。

したがって,結 論 として,私 たちは本疾患 のX線 像 が

unilocular, multilocular, honeycombedな ど種 々の型

をと りうること,下 顎 に発生 した場 合に下顎 管,下 顎 孔

の拡大が あること,本 症 の原因 として外傷は根拠が薄い

と考 えてい る。

54. Mucoceleと 思 わ れ る1症 例 につ い て

Mucocele of the maxillary sinus

*日本大 ・松戸 ・歯放**臨 床病理学教室

*○ 池 島 厚 ・*鈴木 宏 己 ・**山 本 浩 嗣

*Department of Radiology, Nihon University

School of Dentistry at Matsudo.**Depart-

ment of Clinical Pathology, Nihon Univer-

sity School of Dentistry at Matsudo.

*OAtsushi IKESHIMA ,*Hiromi SUZUKI,

and**Hirotsugu YAMAMOTO

上顎洞粘膜 よ り発生す る 嚢胞は,nonsecreting cyst

およびsecreting cystに 分類 され る。特 に耳鼻咽喉科学

では,副 鼻洞 内に粘液性分泌物 が蓄積 し,副 鼻洞壁 の拡

張 を惹起す る嚢胞疾患 に,hydrocele, mucoceleお よび

pyocelが 列挙 されてい る。

また,口腔 外科領域 では,Petersonが 上顎洞内に発生

す る嚢胞で非歯原性 の もの として,mucocele (retention

type)を 記載 し,Sammartinoら はmucoid retention

cystを 取 り上 げている。

mucoceleの 普通 における発生部位 は前頭洞 と篩骨洞

に見 られ,つ いで上顎洞 とされ,そ の場合単発性 または

多発性 に出現 し,そ のほ とん どが洞 の拡大 を認 める程度

に大き くな ることは稀 とされ ている。 また,一 般症候 は

そ の多 くが無 痛性 であるが,時 に頭重感,目 まい,頬 部

の不快感,し びれ感の ある症例が報告 されてい る。そ し

て,試 験穿刺やX線 写真で偶然発見 され るこ とが多い。

当学部附属歯科病院 に来院 し,ス ク リー ニングの為の

パ ノラマX線 撮 影 を行 な った中で,偶 然発 見 され,そ の

後 の 口内法写真,一 般頭 部X線 写真,お よび断層写真で

multipleのmucoceleと 思われ る一 症例(50歳 女性)

を経験 した ので報告す る。

座 長 の ま と あ

大歯大・歯放

古 跡 養 之 真

演題52エ ナ メル上 皮腫 ときわめて類似 のエ ックス線

写真像 を呈 した巨大な原始嚢胞の1例 報告であ る。 エ ッ

クス線写真では,未 萌出の4を 包含 し,多 房 様像 を示 し

たが,摘 出物 での確認 では各 区画 はたがい に交通 し,帯

黄 白色 の粘稠 な液 で充満 されていた。病理 組織学的 には,

裏 装上皮に錯 角化の認 め られ るいわゆる歯原性角化嚢胞

に属す ると思われ る点 もあ り,総 合的 に判断 して原始嚢

胞 と診断 した と演 者は述 べた。

この演題 については,と くに討議はなか った。

演題53真 性 の嚢胞 と異な りaneurysmal bone cyst

はエ ックス線写真的 には多様 な像 を示すが,演 者は過 去

の報告例 に もさかのぼ り,下 顎孔 と下顎管の拡大像が特

徴 的で あった と述 べた。 報告例 はlymphangiomaの 臨

床診断で顎切除 を行 ってい るが,こ の点について,神 田

(九大 ・歯)は 本疾患 とlymphangiomaと のエ ックス線

写真的な鑑別点 お よびlymphangiomaの 治療方法 とし

ての顎切除 の適否 を問 うたが,演 者お よび黒柳(東歯 大)

は,臨 床診 断はエ ックス線写真像 による ものではな く,

試 験穿刺 とbiopsyに よる ものであ り,ま た治療方法 に

っいては,本 症例 としては,顎 切除 でよかったのではな

か ろ うか と解答 した。

演題54オ ル ソパ ン トモ グラムで左 側上顎結節部 よ り

上顎洞外側壁 に沿 って3っ の嚢 胞が存在 し,一 部に歯槽

骨 の吸収像のみ られた症例 であ る。川合(阪 大 ・歯)は

mucoceleの 発生部位 と性 格か ら考 えて 骨 を吸収す るこ

ととの関連 を問い,神 田(九 大 ・歯)も 重ねて発生部位

についての疑 問を質 した。 これ に対 して演者は,発 生基

部までは不 明で あ る と答 えた。 洞 内に発生す る嚢胞 を

hydrocele, mucoceleと 区別す るこ とについ て,神 田は,

石川(広 大 ・歯)の 業績 を例 に挙 げ,無 造作 にmucocele

と呼び慣 わす ことの非 を述べた。

用語 に関 しては,病 名 に限 らず,ど んな分野において

も,明 らかに区別すべ きは区別す るとい う姿勢が大切で

ある。 しか し,他 方 では本質的 には違 わない こ とをこと

さら言葉 を変えて表現 し,い たず らに混乱 を招い てい る

のみな らず,誤 用す らみ られ る面 もあるので,逆 に整理

統合す ることも必要であろ う。

用語 に真剣 に取組む こ とが,物 事 を厳密に考 える こと

に結 びっ くのではなかろ うか。

(105)  105

診 断IV (55~57)

55. 唾石症約80症 例の単純X線 像における分析

Analysis on the occlusal views of about 80

cases of the sialolithiasis

九大 ・歯放

神 田 重 信

Department of Dental Radiology, Faculty of

Dentistry, Kyushu University

Shigenobu KANDA

顎 下腺 系唾石症 の診断 はその特徴 的な臨床症状 を呈す

る場合 は容易 であるが,確 定診断 は唾石 の存在 を確認す

るこ とで あろ う。その ための一般的な手段は単純X線 撮

影で ある咬合法撮影が用い られ る。 しか し下顎 咬合法 の

常法 である垂直投影やそのわずかの変法 では,前 方嵌頓

の唾石 しか描出 できない。 ワル トン氏管深 部や腺体 内の

唾石 の撮影 は,全 く違 った投影法 を用いなけ れ ば な ら

ず,そ の方法は まだ十分 に確立 されていない。 咬合 フィ

ル ムを咬合 させ,歯 科用X線 撮影 装置によ り顎 下腺体部

を射入 点 とし,後 一前上方 向へ斜投影す る方法 は,E.

C. Stafneの 著書 にも記載が あるが,本 邦 では十分 に活

用 されていない よ うで ある。演者 は この方法 を 「斜 め咬

合法」(仮 称)と 簡 略化 して呼 び,唾 石症 を疑 う患者 で

は,咬 合法 の垂直投影 と本法 の2投 影 を原則 として適用

している。

過去 に取 り扱 った唾石症84例 を分析す ることによ り,

本法 が深部 の唾石 を描 出させ る方法 として非常 に有効で

ある ことが証 明できたので報告 した。症例 は2群 に大別

され,1群 は造影法 を併用 した61症 例で,演 者が東京医

科歯科大学歯科放射線科 で過去10年 間 に取 り扱 った もの

である。他群 は造影法 を行 わず,単 純X線 検査のみの23

例 で,同 様 に過去1年 半 の期間 に取 り扱 った。

嵌頓部位 を表すた めに,顎 下腺系 を4区 分 した。 ワル

トン氏管 開口部 よ り第2小 臼歯 と第1大 臼歯境 界相 当部

までを浅部 とし,第2大 臼歯 と第3大 臼歯境 界相 当部 ま

でを中部,第3大 臼歯 より移行部(ワ ル トン氏管 と腺体

との境界)ま で を深部,そ してその奥 を腺 内 とした。

造影群 において,浅 部 と中部をあわせた前方唾石 の咬

合法 による現 出度 を み る と,7例 中常法投影 では7例

(100%)に 現れ,斜 投影では2例(29%)の みで,大 き

な有意差が あ っ た。 深 部 と腺 内をま とめた後方唾石 で

は,28例 中常法投影 では1例(4%)し か現出 されず,

斜投影 では26例(93%)に 現れ,や は り大 きな有意差が

あ り,後 方唾石 の場合 は斜投影 の利用価値 が十分 に証 明

され た。

非造影群 の23例 を分析す る と,前 方唾石18例 中,常 法

投影 では18例(100%)に 現れ,斜 投影 では9例(50%)で,

大 きな有意差で常法投影が有効で あった。後 方唾石9例

では,常 法投影では0例(0%),斜 投影9例(100%)

で造影群 と同様 に斜 投影の 方が非常な 有 意差 で 有効 だ

った。

以上 をま とめる と,前 方唾石 では常法投影,後 方唾石

では斜投影 が有効で,両 者 の併 用によ り全顎下腺系 にお

ける唾石 の描 出が有効 に行われ る。

56. シ エ ー グ レン症 候 群 の唾 影 像 の 分 析

Sialographic Analysis of Sjogren's Syndrome

医歯大 ・歯 ・歯放

*九大 ・歯放

井 上 照 夫 ・*神 田重 信

Department of Dental Radiology, School of

Dentistry, Tokyo Medical and Dental Uni-

versity.*Department of Dento-Maxillo-Fa-

cial Radiology, Faculty of Dentistry, Kyu-

shu University.

Teruo INOUE, *Shigenobu KANDA

シ ェー グ レ ン症 候 群(SjS)の 唾 影 像 に関 して は,従 来

よ り,い わ ゆ るapPle-tree patternが 定 型 的 と され て

い る。 しか しな が ら,SjS症 例 が発 症 の 当初 よ りこの 定

型 像 を呈 す る こ とは考 え られ ず,事 実,定 型 像 を呈 さな

いSjS症 例 も散 見 され る。 私 共 は,SjSの 唾影 像 は病 変

の 進行 の程 度 に よ り整 理 され うる と考 え,自 験 のSjS症

例 の 唾 影 像 を分析 し,像 か ら推 察 され る耳 下 腺 損 傷 の程

度 に よ り,SlSの 唾 影 像 のstage分 類 を試 み た。 診 断

は,大 略Vanselowら(1963)の 提 唱 した 診 断 基 準 に

従 った。 す な わ ち,彼 等 の3つ のMajor Criteriaに 加

え て,口 唇 小 唾 液 腺 生 検 にて,SjS様 の 変 化 と して,少

な く と も,導 管 周 囲 性 に限 局 性 リンパ 球 集 簇 を認 め る こ

とを,Maj or Criteriaの1っ と し,彼 等 の分 類 で,少

な く とも,possible SjSと 診 断 し えた41症 例 を分析 の 対

象 と した。

唾 影 像 を以 下 の 如 く分 類 した 。

stage I:正 常 範 囲(3例)

stage II:管 系 は 正 常 範 囲。 実 質 系 陰影 は斑 紋 状 な い

しは 顆 粒状 。(9例)

stage III:管 系 は正 常 範 囲 。stage I,或 はIIと 同様

の実 質 系 陰 影 中 に,種 々 の程 度 に類 点状 陰

(106)  106

影 を見 る。(4例)

stage IV:末 梢管系は消失傾向 を示す。実質系陰影 は

消失 し,腺 部 に数多 くの類 点状 陰影 が分布

す る。(22例)

stage V:広 範な破壊 を示す。末梢管系 は大部分消失

し,腺 部 では造影剤 の浸入 を一部 に見 る。

(3例)

罹病期間(SjSを 疑わせ る自覚的症状 発現 か ら耳下腺

造影実施 までの年数),或 は年齢 と,stageの 高低 との問

には,特 に関連 を見 い出 しえなか った。 目,及 び 口腔 の

自覚 的乾燥 症状 を共に訴え る症例群 と,そ の どち らか,

或は どち らも訴 えない症例群 との間 に,各stageの 占め

る割合の差は特 に認 め られなかった。また,rose-bengal

点眼,或 はfluorescein点 眼にて角膜病 変の存 在が確認

され,か つ,口 唇 小唾液腺生検 にて,冒 頭Major Crite

riaのIつ として述べた様な変化が確認 され た症例群 と,

上記 のどち らかが確認 されなか った症例群 とを比較す る

と,前者 におい て高いstageの 唾影像 パターンを有す る

症例 の割合 が大 であった。 さ らに,膠 原病,或 は自己免

疫 の関与 が疑 われ る疾患 を合併 した症例群 と,こ れ らの

合併 のない症例群 とを比較す る と,前 者 に お い て高 い

stageの 唾影像 パ ター ンを有す る症例 の割合 が大であっ

た。

以上の結果 か ら,今 回試み た唾影像パ タ ー ンの分類

は,病 変の広が り,或 は病 変のtypeを,あ る程度反 映

してい ると思われた。今 回の分類 が,stage分 類 として

妥 当か否かは,個 々の症例の経時的な唾影像の変化 を追

及す るとい う手続 きを含めて,更 に検討 を要す る。

57. SjOgren症 候 群 の6例 につ いて

Six+Cases of Slogren's Syndrome

福井県立病院 ・歯

*大阪歯大 ・歯放

三 好 慶 信 ・*古跡 孝 和 ・*清水 谷 公成

Department of Dentistry Fukui Prefectural

Hospital.*Department of Oral Radiology,

Osaka Dental Unirevsity

Yoshinobu MIYOSHI,*Takakazu KOSEKI,

*Kuninari SHIMIZU

Sjogren症 例 群 は,別 名 を"Sicca Syndrome"と い

わ れ るよ うに,身 体 名 所 の粘 膜 の乾 燥 を特 徴 とす る。 こ

れ らは ま た,リ ュ ー マ チ様 関節 炎 を併 う場 合 が多 い。

私 達 は最 近Sjogren症 候 群 と思 わ れ る患 者6名 に っ い

て,血 液 検 査,,Sialography,99nTCO4シ ンチ グ ラ ム,

口唇組織検査 をお こな ったので報告す る。

患者 は33歳 よ り59歳 の中年女性が全て を占め,臨 床的

に,全 部 の患者 に口内乾燥が認 められた。 また半数に耳

下腺 の腫脹 の既往歴 があった。乾燥性角結膜炎は1名 を

除き5名 にあ り,結 膜炎 のない患者で もシヌマテス トで

は,左 右 眼 とも2mmと 陽性 の所見 を示 した。 リューマ

チ様関節炎2名,甲 状腺炎2名 の合併 を認 めた。血液検

査 では,ほ とん どの患者 に貧血が あ り,RAテ ス ト陽性

であ った。血清 蛋白は増加 してお り,血 清分画では,α

グロブ リンの増加 とIgAの 著明な 上昇が認 め られる。

耳下腺のSialographyで は正常像に近 い ものか ら末端

が ほ とんど造影 されていない症例まで,種 々な段 階の像

があ り,典 型的 な とい われ る"branchless-fruit-laden

tree Pattern"を 呈 した ものは3例 で あった。

99nTcO4シ ンチ グラムでは耳下腺 ・顎 下腺 の集 積は多

少認 め られ る症例 もあったが,刺 激 による排泄 はあま り

良好 ではなかった。

病理組織 学的所 見では,腺 房 間へ の円形細胞浸潤,腺

房細胞の萎 縮,消 失な どがあ り,最 も激 しい症例 では腺

房細胞の破 壊がみ られ るもの もあった。

次上の各々の変化が全 て同程 度に存在 す る の で は な

く,Sialographyの 変化 と病理 組織 の炎症の度合 とは必

ず しも一致 をみなか った。 これ らは,口 唇の組織像 に最

も早期 に変化 があ らわれ,つ いで唾影像 として変化 が認

め られ るよ うである。 シンチ グラフィにおけ る明瞭な変

化 として現 われ るのは,こ れ らの症候がかな り進行 して

か らと思 われ る。

症例1  44歳 ♀ 導管系はほぼ正常 な形態 を取 り,比

較 的細管まで造影 されてい るが,腺 房末端 に穎粒状 ほぼ

均一な陰影 がみ られ る°

症例2,52歳 ♀ 大導管の拡大 が著 明であ り,末 梢導

管は全 く造影 されていない,シ ンチ グラフ ィで も集積 は

認 められない。

症例3,59歳 ♀ 導管お よび細管はほぼ正常に近 く造

影 され てお り末梢では不正穎粒状 の陰影 を認 めた。

症例4,35歳 ♀導管 は拡大 し腺房全体 に類点状 陰影 を

認 めた。 シ ンチグラムの耳下腺への集積 は一部認 め られ

る も排泄 は不 良。

症例5,53歳 ♀ 末梢腺房 までほぼ正常 に造影 され て

お り,シ ンチ グラフィで も集積,排 泄 は良好 であ った。

しか し口唇組織像で は,リ ンパ球の浸潤が著明であ り,

腺房 の委縮消失が 中等度認 められた。

症例6,33歳 ♀ 主導管 の拡大 があ り,細 管の途中 よ り

類点状 陰影 が分布 してお りそれ ぞれ の陰影が連続 してい

るもの もみ られ た。

(107)  107

座長のまとあ

阪大 ・歯放

山 田 直 之

演題55~57は 唾液腺 に関係す る話題で ある。

演題55は 唾石症80例 のX線 診査 の際,通 常咬合法 にて

撮影す る方法 では見い出 し得 ない唾石 に対 して演者の言

う咬合型 フィルム を使 用 した後 前斜位 投影 法 と造 影法 と

を併用す ると唾石像 を確実 にとらえられ るとい う内容 で

ある。 日大野井倉先生 より,造 影法 による唾石の押 し込

み はない のかとい う質問がな され,こ れに対 し演者 は十

分注意 し施行すればそれは防げ るし,押 し込 みは現 実に

それ ほど起 こらない とい う返 答が あった。阪大上村先生

か らいわゆ るmucous plaqueの 唾石 の場合,造 影法は

ど うい うmeritが あるか,又 三好先生 か ら造影法 は必 要

か否 かの質問が あった。

一般 に唾石 の確認 のためには,咬 合型 フィルムで垂直

軸方向投影 のみで診査 してい る場合が多い と思 うが,演

者が示 した様に深 部唾石の場 合は後-前 斜位投影法 と造

影法 とを併用 して行 う方が,唾 液腺の唾石 滞留による破

壊 像 を見い出 し得 る点か らも,X線 診査 上 より有効 であ

るとい う印象 を受けた。

演題56~57はSjogren症 候群 の 関する 話題 である。

演題56は41例 の多数例 に渡 るstage分 類で実に要 旨が明

解 で我々唾液腺 造影 をあま り経験 しない者に も良 く理解

で きた内容 であった。演者 の講演内容 では,Stage IIIよ

りVま での 唾影像か らSjogren症 候 群 は明 らかにわか

るとい う内容であ ったが,問 題 なのはStage I,IIで あ

る。 他の 自己免疫疾患並びにAgingと がか らみ この初

期の毅 階では,唾 液腺 造影所見 だけで判断す るのは難 か

しい様な気がす る。演 者 のい うoverlapPing caseの 唾

影 像の分析 を今 後症 例を重ねて切 にお願 い したい。

演題57は 福井県立病 院の三好先生の御講演で あった。

Sjogren症 候群6例 の唾影像 とその 口唇腺 の病理組織 学

的検索 との対 比である。 この6例 の うちいわ ゆる"bra-

nchless fruit-1aden tree pattern"を 示 したのは2例

で あった とい う報告か ら,Sjogren症 候群 の典 型像はパ

ーセンテージからい って もそんな に多 くはない とい う印

象 を受けた。地 方病 院でのいろいろな不利 な条件 を克服

して御話 していただけた演者 等の労苦 に感 謝 したい気持

であ った。

最後 に唾液 腺疾患 に対 しての歯科放射線 科医のアプ ロ

ーチの仕 方に今 後大 きな問題 が含 まれている様 な気 が し

てな らない。やは り口腔 外科,耳 鼻科 な どと協力 し合 い

お互いに納得の行 くシステムを考 え,放 射線科 がイニプ

シブを取 る様 努力 しなけれ ばな らない様 に思 う。

診 断V (58~60)

58. 小唾液腺腫瘍35症 例のX線 写真像について

Roentogenographic changes in 35 cases of

minor salivary grand tumor

大阪歯大 ・歯放

○安 達 泉 ・福 永 健 一 ・田 中義 弘

Department of Oral Radiology, Osaka

Dental University

Oizumi ADACHI, Kenichi FUKUNAGA,

Yoshihiro TANAKA

小唾液腺腫瘍 は,唾 液腺腫瘍 の中で は耳下腺 に次いで

多 く,腫 瘍の発育は比較 的緩慢で上顎,特 に口蓋 に好発

す ると報告 されている。小唾液腺腫瘍 は病理組織学 的に

も多様な像 を呈すが,骨 に変化 の現 われ た場合 に もさま

ざまなX線 写真像 を呈す る。

今回われわれは,昭 和45年 か ら昭和51年 までの過 去7

年間に,大 阪歯科 大学付属病院放射線科 において病理組

織 学的 に小唾液腺腫瘍 と診断 された75症 例 の うち,X線

写真上に変化の認 め られ た35症 例(多 形性腺腫5例,腺

様嚢胞癌7例,粘 表皮癌9例,腺 癌14告)に つ いてX線

写真像 を中心に検討 を加 えた。

多形性 腺腫は全て女性 で あ り,粘 表皮癌 は男女比 で

1:1.25,腺 様嚢胞癌 は1:1.33と やや女性 に多 く,腺

癌 は1:1と 性差 は見 られ なかった。

年齢分布 は,多 形性腺腫18歳 ~65歳 で中間値30歳 と最

も若年者 に多 く,っ い で粘表皮癌 は16歳 ~77歳.中 間値

38歳,腺 様嚢胞癌 は22歳 ~64歳,中 間値51歳,腺 癌36歳

~81歳,中 間値64歳 の順 であった。

発現部位 は多形 性腺 腫は全例上顎 に発現 し,口 蓋後方

部 で歯槽 との移行 部に多かった。粘表皮癌 は上顎 に8例

(88.9%),線 癌 は上顎 に11例(78.6%)と 上顎 に好発 し,

腺様嚢 胞癌 は上顎 に3例,下 顎 に4例 と前3者 に比べ下

顎 に多かった。

顎骨 に変化 の認 められた小唾液腺腫瘍のX線 写真像は

非常 に多彩 な像 を呈す るが,特 徴的X線 写真像 を以下の

4型 に分 類 し,演 者お よび読像歴4年 以上の4名 で判定

した。I型 はシャボ ン泡様 を呈す るもの,II型 は円ない

し類 円形 を示す もの,皿 型は皿状 の骨欠損 を呈 し比較 的

境界 のはっき りしてい るもの,IV型 は不整 形の骨破壊 を

(108)  108

示 し,辺 縁 の不規則な もの とした。そ して3人 以上 の所

見 の一致 した症例 のみ にっいて まとめた。その結果,多

形性腺腫 は全例III型の皿状 の骨吸収像 を示 し,粘 表皮癌

は7例 が1型,2例 がII型 であ りシャボン泡様 の骨変化

を呈す ものが多か った。腺様嚢胞癌 は多様 なX線 写真像

を示 し,1・II型 が各1例,III型2例 でIV型 は1例 であ

った。腺癌では,II型2例,III型1例,IV型8例 と不整

形 の骨破壊像 を呈す ものが多数 を占めた。

なお,腺 様嚢胞癌 の2例 と腺癌 の3例 は,さ まざまな

像 が混在1所 兄 の一致 が得 られ なかった。

59. 原 発 性 副 甲状 腺 機 能 元 進 症(27例)のX線

診 断(特 に 正aminaDuraの 診 断 的評 価 を

中 心 と して)

Radiographic Manifestations of Primary

Hyperprathyroidism (27 Caees)—Diagnostic Estimations of Lamina Dura

*阪大 ・歯放

**東 北大,歯 放

***岩 手 医大 ・歯放

*○ 山 田 直 之 ・**猪 俣 宏史 ・***村 井 竹 雄

*Dept . of Oral Radiology Osaka Univ. Den-

tal School.**Dept. of Dental Radiology

Tohoku Univ. School of Dentistry***Dept.

of D. R. Iwate Med. Univ. School of

Dentistry.*Naoyuki YAMADA,**Hiroshi

INOMATA***Takeo MURAI

1971年 よ り1977年 までに東北大学で診査 し得 た原発性

副 甲状腺機能亢進症 は27例 である。その うち11例(42%)

が骨型 で,14例 が尿路結石型,2例 が不顕 性型で ある。

臨床検査 データを検討 してみ る と,27例 の副 甲状 腺摘出

物 の重量 と上記 の3つ のタイプ を比較す る限 り,骨 型で

は最高37gで4g以 上 の ものが大半 を占め,尿 路結石型,

不顕性型では2.09以 下 であった。 血清Al-P値 では,

骨型11例 の うち10例 が30以 上の値 を取 り,尿 路結石型,

不顕性型 とも全例30以 下 の値 を取 った。又血清Ca値 も

同様 の傾向 を示 した。さて顎骨のLamina Duraは,骨

型 のすべて の症例 に完全消失ない しは部分的消失 を認 め

た。尿路結石型,不 顕性型 に もLamina Duraの 稀薄化

が,そ の半数 に認 め られた。11例 の骨型 の うち,2例 に

Ellisの 言 うfocal patches of sclerosisが 頭蓋骨 に認

め られ,代 償性骨形成促 進の疑いが もたれた。又一例 に

中王骨のBrown,s Tumorを 認 めた。そこで頭蓋骨 の脱

灰の程度,手 指 骨の骨膜下吸収,顎 骨 のLamina Dura

の消失 とを比較検討 した結果,三 者 の問 にはかな りの相

関性 がX線 フィル ム上で確認 された。又数例 の骨 型原発

性副 甲状腺機能充進症 を追跡検討す る と手指骨 の骨膜下

吸収の回復 の方 がLamina Duraの 回復よ りも早 い様 で

あった。 さて顎骨の脱 灰の程度が どの位か,即 ち定量X

線診断 を行 うとい うのが我々放 射線科 医の一つ の目的で

あるが,そ れ を遂行す るにあた り下顎大 臼歯部 の一枚の

Dental Filmよ り,film densityか らlinear atten-

uation coefficientへ の変換 を行 い,そ の部 の骨脱灰度

をパーセ ン トで表現 し得 るのではないか と考え,1つ の

試み を行 って見た。 この試 みが成功す るにはい くつかの

難 かしい問題 を含んでい るが今後 の課 題 として私 達は十

分検討 してみ よ うと考 えてい る。

結語:一 般 にLarnina Duraの 消失は 高度の 骨脱灰

を来 たす全身疾患等 にはX線 診断上価値 がある

ことがわかった。

60.副 甲状腺機能低下症(20例)のX線 診断

Radiographic Manifestations of

Hypoparathyroidism (20 Cases)*阪 大 ・歯放

**東 北大 ・歯放

***岩 手医大 ・歯放

*○ 山 田直 之 ・**猪 俣 宏 史 ・***村 井竹 雄

Dept. of Oral Radiology Osaka Univ. De-

ntal School.**Dept. of Dental Radiology

Tohoku Univ. School of Dentistry.***De-

pt. of Dental Radiology Iwate Medical Univ.

School of Dentistry.

*ONaoyuki YAMADA,**Hiroshi INOMATA,

***Takeo Murai

1971年 よ り1977年 までに東 北大学で診査 し得 た副 甲状

腺機能低下症 は20例 である。そ の うち特発性副 甲状腺機

能低下症が11例(55%),仮 性 副甲状腺機能低下症 が9例

(45%)で ある。臨床検査デー タでは,血 清Caの 値 は特

発性副 甲状腺機能低下症 で5~7mg/dlを 示 し,血 清P

は5~10mg/dlの 値 を示 した。

仮性副 甲状腺機能低下症 の場 合で も同様の傾 向 を示 し

た。顎骨 のLamina Duraの 肥厚 は 全例 に おいて認 め

なかったが,仮 性副 甲状 腺機能亢進症2例 に部分的肥厚

を疑 わせ る所見 を示 した。仮性副 甲状腺機能低下症9例

の うち,5例 には,む しろLamina Duraの 稀薄化ない し

部 分的消失が認 め られた。 これは仮 性副 甲状腺機能低下

(109)  109

症 が続発性副 甲状腺機能亢進症の1っ の疾患であ ること

を考 えると当然の所 見であ り,従 来教科 書並 びに成書 に

記載 されてい るLamina Duraの 肥厚 とい う解釈 は誇張

されていた様に思 われ る。又特発性副 甲状腺機能低下症

11例 中1例 に,仮 性副 甲状腺機能低下症9例 中4例 に,

夫 々永久歯萌 出遅延 を認 めた。 この所見は副 甲状 腺機 能

低下症 に罹患す る時期即 ち発症年齢 が問題 にな って くる

と考 える。 エナ メル質減形成 は,特 発性 の場合11例 中2

例 に,仮 性 の場合9例 中2例 に認め られ,根 の異 常(短

小根)は 仮性 に1例 認 められた。仮性 副甲状腺機 能低 下

症9例 中1例 に,又 特 発性11例 中1例 にPulp Stoneを

認めたが,こ れが この種 の疾患 の際,特 異的所見 だ とす

る報告者 も存在 す るので今後,歯 牙X線 写真 を診査す る

際 十分検討 する必要 があろ う。

頭 蓋骨X線 写真では,Skull-capの 肥厚,骨 脱灰性 の

ス リガラス様変化,他 のX線 写真 では皮下結節 の石灰化

即 ち異所性石灰化な どが,仮 性副 甲状腺機能低下症 の場

合認 め られた。

結語: 副甲状腺機 能低 下症20例 の うち,著 明なlamian

duraの 肥厚 を示 した 例 はなかった。 この種の

疾患の際,永 久歯萌出遅 延の方が,X線 診 断上

有力な根拠 とな りうると思われ る。

座長のまとめ

九歯大 ・放

大 庭 健

演題58,口 蓋部 に発生 した小唾液腺腫瘍36症 例 のX線

像 の分析 の結果 である。小唾液腺腫瘍 によるX線 像 を4

型 に分類 しているが,そ の中でも多形性腺腫 は口蓋部 に

好発 し,そ のX線 像 は圧迫吸収様 の骨辺縁 を呈す と述べ

られ たが興味 を呼 んだ。そ こで,多 形性 腺腫のX線 像 に

つい て更 に突 っ込ん だ討論がな された。(川 井)。 小唾液

腺腫瘍 のX線 像 を骨 の破壊像 だけで分類す るのは危 険で

はない か。 も う少 し詳細な分類が必要ではないか との発

言 もあった(藤 本)。

X線 診 断が単 に存 在診断 に留 まることな く,与 え られ

た数少ない情報で も,そ れ らを詳 細に分析 す ることに よ

り,質 的診断が可能で あれば これ にこした ことはない。

今後 の多 くの症例 の積重 ねによる結果 に期待 したい。

演題59,原 発性副 甲状腺機能亢進症26症 例 についての

報告 であ る。特 にlamina duraをland markに した場

合 の診断的価値 の 有無 にっいて 論 じ ら れ た。lamina

duraの 消失の程 度 と頭 蓋骨,手 指骨 の変化 には相関性

が ある とも述べ られた,手 指骨 の骨膜下吸収 の回復の方

がlamina duraの 同復 よ りも早い とい うことは,吸 収

の方 もlamina duraよ り早い のか。 早 い とすれ ば手指

骨 のcortical boneを 見 た方 がよいのか(神 田)。 また,

信頼性 の高い脱灰度 の表現方法 はない のか(神 田)な ど

の質疑が あった。

原発性副 甲状腺機能亢進症 の場合,lamina duraの 消失

よ りも手指骨 のcortex boneの 吸収 の方が先行す るとの

報告であ るが,歯科放射線 科医 としては,や は りeamina

duraに 注 目すべ きではなかろ うか。

演題60,副 甲状腺機能低 下症20症 例 にっいての報告 で

あ る。 結果 的にはlamina duraか らは何 の報情 も得 ら

れず,歯 牙年齢遅延 の方 がX線 学 的には有 力な手 がか り

になる とのこ とである。 しか しなが ら,lamina duraが

何 らかの情報源 になるのではない か と思考す る努力が窺

われ た。

副 甲状腺機能元進症 に比べ機能低下症 の場合,歯 科領

域 での報告例が少ない為か,又 は質疑応 答の時間が切迫

していた為か積極的な討議 は行 なわれな かった。今後更

に歯科放射線領域 におい ても,本 疾患 を含 めて系続 疾患

が大い に話題 にな ることを期待 したい。

診 断VI(61~63)

61. Ameloblastoma及 びFolliculat cystに

お け る歯 根 吸 収 の観 察

Root resorption by ameloblastomas

and follicular cysts

大阪大 歯 ・歯放

○藤原政男 ・西原平八 ・藤下昌己

上村修三郎 ・淵端 孟

Dept. of Oral Radiology. Osaka Univ.

School of Dentistry

•› Masao FUJIWARA, Heihachi NISHIHARA ,

Masami FUJISHITA, Syuzaburo UEMURA ,

Hajime FUCHIHATA

下顎 に発生 し組織的学的 にAmeloblastomaあ るいは

Follicular cystと 診断 され た症例,そ れぞれ37例 ,21例

につい て病巣 と隣接す る歯 の吸収状態 を観察 した。隣接

歯 の基準 は,(1)咬 合法及びデ ンタル ・斜位 ・パ ノラマ等

二方向の撮影 において,い ずれ の場合 にも病巣部 に歯が

重複投影 されてい ること。(2)Lamina duraの 消失 を認

め ること。以上の二点 とし,こ れに基 いて隣接歯 根吸収

及 びその吸収像(Erosion typeの1型,明 確 な吸収 を

示 し辺縁が鋸 歯状 のII型 に分類)を,レ 線 的に単房性 ・

(110)  110

多 房 性 ・中 間型 の3型 に分 類 され た両 病 変 にっ い て 観 察

した。

結 果:Ameloblastomaで は重 複 歯101歯 中,Lalnina

duraを 認 め る もの19歯(19%),認 め ない も の82歯(81

%)こ の うち歯 根 吸収 は75歯(92%)に 見 られ,吸 収 が

観 察 され な か った の は7歯(8%)に 過 ぎな か った 。 一

方,Follicula r cystで は重 複 歯62歯 中,Lamina dura

を認 め る もの29歯(47%),認 め な い もの33歯(53%),そ

の うち吸 収 は12歯(36%)に 見 られ,認 め な か った の は

21歯(64%)と 高 率 で あ った 。1歯/以 上 に吸 収 の見 られ

た 症 例 はAmeloblastoma 37例 中32例(86%),Follic-

ular cyst 21例 中4例(19%)で あ っ た。 吸 収頻 度 か ら

Ameloblastomaの 高 い 歯 根 吸 収 能 ま たFollicular cyst

で は吸 収 能 が 低 い こ とが 推 察 され るが,Lamira duraを

有 す る歯,Lamina dura消 失 歯 中吸 収 を認 め な い 歯 の

頻 度 の数 値 か ら も,間 接 的 で は あ る が,両 病 変 で の吸 収

能 の高 低 が推 測 され る。

各type間 の吸 収 頻 度 を見 る とAmeloblastoma;単

房 性13例23歯 中12例22歯(92%,96%),多 房 性9例28

歯 中9例27歯(100%,96%),中 間型15例31歯 中11例26

歯(73%,84%),Follicnlar cyst;単 房 性8例19歯 中

2例5歯(25%,26%),多 房 性4例14歯 中2例7歯(50

%,50%)単 房 性9例 は 隣 接 歯 と判 定 され る歯 を認 め な

か った 。Ameloblastomaで は い ず れ も高 率 で あ り,

Follicular cystで は 多 房 性が 高 い 頻 度 を示 した 。

歯 根 吸 収 像 はAmeloblastoma;83吸 収歯 根 中1型28

歯 根,II型55(66%),Follicular cyst;16歯 根 中1型9

歯 根,II型7で あ っ た。

今 回 の観 察 か ら,通 常 の撮 影 法 で も歯 根 吸 収 状 態 を十

分 に確 認 し うる が,丘1m挿 入 の難 易 等 か ら大 き な入 射 角

・で撮 影 した場 合 や転 位 歯 ・傾 斜 歯 で は 吸収 の確 認 が 困難

で あ った。 そ こで,こ の様 な場 合 に,よ り適 確 に吸 収 を

把 握 し うる撮 影 法 を,乾 燥 顕 蓋 に よ り検 討 した。 そ の結

果,ま ず 咬合 法 に よ り,病 巣 との重 複 及 び 頬 舌 的 傾 斜 を

確 認 し,頬 側,舌 側 傾 斜 歯 に対 して は,そ れ ぞれ 下 方 及

び 上 方 か ら歯 軸 に 直 角 に投 影 す る こ とに よ り,明 確 に吸

収 が 観 察 され た 。 舌 側 傾 斜 で は,斜 位 の 利 用 も可 能 で あ

っ た。 従 っ て,両 病 変 に限 らず 他 の 骨 中心 性 病 変 に つ い

て も,歯 根 吸 収 の よ り正 確 な観 察 に は,本 撮 影 法 の利 用

が 必 要 と思 わ れ る。

62. 多房状を呈したエナメル上皮腫と嚢胞のX

線写真的比較検討

A Clinical and Roentgenological Observation

of Ameloblastoma (multilocular type)

and Multilocular Cyst.

大阪歯大 ・歯放

*岐阜歯大 ・歯放学教室

○ 古跡 孝 和 ・内海 潔 ・*今 井 一 彦

Departmeot of Oral Radiology, Osaka Dental

University.*Department of Oral Radiology,

Gifu College of Dentistry

QTakakazu KOSEKI, Kiyoshi UCHINOUMI,*Kazuhiko IMAI

多房様 のX線 透 過像 を呈す る疾患の うち,エ ナメル上皮

腫 と多房性 嚢胞は、その臨床所見 な らびに,X線 写真所見

が極めて類似 してお り,その鑑 別には,し ば しば困難 を生

ず る。そ こで今回われわれは,昭和45年4月 か ら昭和52年

3月 までの過去7年 間に,大 阪歯科 大学付 属病 院に来 院

し,エ ナ メル上皮腫 と診 断 された89症 例 の うち多房様X

線透過像 を呈 した47症 例(53%)と 多房性嚢胞11症 例につ

い て比較検討 を行い若干 のRontgen-signを 得たので報

告す る。

年齢分布 は,エ ナ メル上皮腫 は13歳 ~78歳,多 房性 嚢

胞 は26歳 ~63歳 にわた り,平 均年齢 は,お のおの40歳,

44歳 で多房 性嚢胞 が若干高年齢 を示 した。

性 別では,両 者 とも男性 にやや 多 く,男 女比 は,エ ナ

メル上皮腫1.4:1,多 房性 嚢胞1.8:1で あった。

次にわれわれは,そ のX線 写真 の詳細 な比較検討 を行

った。

項 目は,病 巣辺縁 の様相,compartmentお よびsepta

の形状,骨 膨隆 の有無,骨 皮質の変化,領 域内歯牙 の歯

根吸収 あるいは移動な どで ある。

その結果,多 房 性嚢胞では;境 界明瞭な辺縁 の周辺に

骨硬化帯が 認 め られ,compartmentの 数 は 少な く形 も

大 き くて短形 を呈 し,いわ ゆるsoap bubble appearance,

honeycomb appearanceと 呼ばれ るような所 見は認 め ら

れ なかった。 また,septaは 太 くmildで 直線的に経過

してい る。骨膨隆 に関 して は,骨 皮質 の菲薄化が著明 に

認 め られ る場合 で も,そ れ ほ ど顕著 ではな かった。

それ に対 してエナメル上皮腫 では,境 界 は明瞭 であっ

て も複 雑な弧 線状 の経過 をとり,比 較 的小 さな円形,類

円形 のcompartmentが 数多 く存在 し,い わ ゆるsoap

bubble appearance, honeycomb appearanceを 呈す る

(111)  111

もの も認 め られた。septaは 多房性嚢胞 に比 べてsnarp

で,骨 膨隆 も嚢胞 に比べて著明である。

領域内歯牙については,多 房 性嚢胞 では,そ の50%に,

エナメル上皮腫 では,そ の77%に 歯根 の吸収 を認 めた。

と くに,X線 写真上で病巣 外形に沿 った ような吸 収の形

態 を示 した ものにっいては両者の差 は著明で,エ ナメル

上皮腫では領域内歯牙の48%に それが認 め られたのに対

して多房性 嚢胞ではエナメル上皮腫 の1/4に あたる12%

で った。 歯牙 の移動 はエナメル 上皮腫36症 例 中7症 例

(19.4%)に 認 め られ たが,多 房性嚢胞11症 例 には認 め

られ なかった。

以上 のよ うに,両 者 の問 には若干 の差異 が認 められ る

も の の 共通 の要素 もみ られ るところか ら今後症例 を積

重 ね,さ らに検討 を加 えたい。

63. 上顎癌のX線 像の分析

Radiographical Patterns of the Maxillary

Sinus Carcinomas

日大・歯放

野井倉武憲 ・佐藤裏司 ・橋本光二

木村一之

Department of Radiology, Nihon University

School of Dentistry

Takenori NOIKURA, Joji SATO,

Koji HASHIMOTO & Kazuyuki KIMURA.

目的: 上顎癌(洞 性癌)の 進展 パター ン は 複雑 で あ

り,と くに洞の内上方,鼻 腔側 および後方へ の腫瘍 の浸

潤状態 は視診 な らび に触診 での確認 が困難 なこ とが多 い

ので,と くにX線 像 の詳細 な解析 が重要 である。

今回演者 らは 自家 経験28例 の上顎癌 のX線 像 の所見 を

総合的に分析 して,腫 瘍の上顎骨 浸襲状態 を撮影法別 に

それぞれにおける読影 可能限界が どの よ うで あるか を検

討 した。

材料 と方法: 病理 組織学的 に扁平上皮癌 と診断 された

28症 例で,初 診時 の症状 は頬部腫脹 が最 も多 く54%,頬

部腫脹 と口蓋部腫瘤形成 のみ られ た もの25%,鼻 閉,鼻

出血 のみ られた もの21%で あった。

P-A像,Water像,前 額 断層像 およびOrthopantomo

像 につ いて,異 常陰影 および骨破壊 の状態 などの読影基

準 を定 めて,洞 上,下,側,内,後 壁,筋 骨洞,前 頭洞,

蝶形骨洞,鼻 腔,梨 状孔縁,頬 骨突起 などの各部位 にっ

い て検討 した。

結果: 洞 内にみ られ る異常陰影 につい てはP-A像 で

42%,Water像57%,断 層像46%,Orthopatomo像 で

は6%で あ った 。健 側 との対 比 で は,患 側 〉健 側 はP-A

像50%,Water像61%,断 層 像70%,Orthopantomo像

19%,患 側<健 側 はP-A像18%,Water像7%,断 層

像17%,患 側; 健 側 はP-A像32%,Water像32%,断

層 像13%,Orthopantomo像81%で あ っ た。

骨 破 壊 像 は全 症 例 にみ られ たが,断 層 像 で は 洞外 側 壁

(83%),内 側 壁(75%),梨 状 孔 縁(75%)な ど の 部 位

の破 壊 が著 明 で あ った。

ま た撮 影 法 別 に よ り,各 部位 の病 態 の視 現 性 にか な り

の違 い が み られ た が,と くにOrthopantomo像 で は,

洞 内 の異 常 陰影 と と もに そ の情 報 量 は き わ め て低 か っ

た 。

座長のまとめ

九大歯 ・歯放

神 田 重 信

演題61は エナ メル上皮腫(A)と 濾胞性 歯嚢胞(FC)

とのX線 像 において,病 巣 に隣接 した歯根 の吸収 に着 目

し,両 病変 における違 いを分析 した。対称歯 の選定基準

として,病 巣 に隣 接 し病変透過像 と重複 して写 っている

歯 の中で も白線 が消失 したもの に限定 した のは的 を得て

いる と思 われ る。 このよ うな研究 ではサ ンプル をどの よ

うな基準 で選 ぶかに よ り,結 果 に違 いが生 じ易い か らで

あ る。結果 はAの 方 が十分 な有意差 を も っ て高 かった

(座長 の統計処理 。)更 に病変 のX線 像 を3型 に分 けて,

夫 々における歯根吸収 の頻度 を調べ たが差 がなかった。

しか しなぜ3型 に分 けてみ る必要性が あるのか説明がな

か った。推察す るに,3型 の問 に病巣 の性質 に違いが あ

り,そ れ が歯根 吸収に も差 を生ず るのではないか とい う

期待 が裏 にあるか もしれ ない。 とすれ ば,そ の前にAと

FCに よる吸収頻度 の違 いにつ いて,そ の理 由の考察 を

試 るべきであろ う。次 に歯根吸収像のパ ター ンを2型 に

分 け,投 影方 向による2型 間の移行 の有無 を実験的 に検

討 したが,一応方 向による違い は生 じなか った。しか し2

型 間のパター ンの違 いよ りも,軽 微な吸収が現出 され る

か否 かの確 実性 を検討 するのが先決 のよ うに思われ る。

演題62は サ ンプル として多房状嚢胞像 のみ に絞 ってA

とFCと のX線 像の鑑 別点 を分析 した。隣接歯の吸収頻

度 ではAとFC間 に有意差はなか った(座 長の統計処

理 。)し か し隣接歯 のサ ンプル としての 選 択基準が藤原

氏 と異 るので両者 の比較 はできない。AとFCの 最 大の

鑑別 点は,上 村氏 の質問 に対 して,骨 膨 隆の程度に ある

としたが,共 同研究者 の今井氏はscallopingに おける

sharpnessで あろ うと答 えた,い ずれ にして もなぜその

(112) 112

違 いが生 ずるのか考察 をひ とくさ り欲 しかった。 しかし

両発 表 ともに,AとFCの 困難なX線 鑑別 を進 める上で

要 因 を明かに して くれ たのは,X線 診断学 の分野でone

stepレ ベル の向上がな された と思われ る。

演題63は 各種X線 撮影法 の違 いによ り,洞 性上顎癌 の

腫瘍陰影 が どんな頻度 で現 出す るか,あ るい は骨破壊が

どの部位 に多 く見 られ るかにつ いて分析 した。 しか しサ

ンプル とした上顎癌症例 のstage分 類や,発 生部位の分

類 は行わずすべて上顎癌 として一括 した ところに無理 が

ある と思われ る。上顎癌 とい っ て も 夫々進展度や進展

方向 によってX線 像 は異 って くる。 とくに放 射線 治療 と

の関係で,淵 端氏が指適 した通 り後 方進展 を把握 せねば

な らない。 この点に絞 って撮 影法 による出現度の違い を

出 してもらえば,か な り有意義 とな ろ う。 あるいは最近

頻用 されてい るOrthopantomographyが 他撮 影法 によ

りも有効度 が低 い とい う結果 を野井倉氏 は付言 してい る

が,こ の問題 のみに的 を絞 って細か く分析すれ ば,パ ン

トモの限界 とい うものが鮮明 に打出 され ただろ う。

診 断VI (64~66)

64. Cleidocranial dysostosisの2例 に つ い て

Two case reports of cleidocranial dysostosis

愛 知 学 院 大 ・歯 ・歯放

高 橋 仁 一 ・清 水 康 行 ・加 藤 豊

Dept. of Radiology, School of Dentistry,

Aichigakuin Univ.

Jin-ichiTAKAHASI, Yasuynki SHIMIZU,

Yutaka KATO

Cleidocranial dysostosisと は,鎖 骨 と頭蓋骨 の骨形

成異 常が合併 した先天異常 である。私達 は,こ の症例 を

男女,1例 づっ2例 経験 したのでX線 所見 を中心 に報告

す る。

〔症例1〕 患者 は35歳 の男性 で医 のpericoronitisを

主訴 として,昭 和52年5.月18日 来院す る。既往歴 として

は,約20年 前ヘル ニアの手術 を受 けた以外は,特 に重篤

な疾患 はない。乳児期 よ り小学3年 生位迄 は虚弱で あっ

たがその後 は健康 である。両親は血 族結婚で はな く,出

産時 も正常 である。主訴 によ りX-P撮 影 を行 った結果,

多数 の過剰埋伏歯 を見 たので,本 症 を疑い,そ の他の検

査 を行 って,本 疾患 が判 明 した。

現 在 としては,身 体の発育は,普 通人 に較 べ小 さいが,

その他 は特別 の異 常は認 め られ ない。頭部 に比 し,顔 面

は小 さく,鼻 根 部は 幅広 く,鼻 唇溝 もはっき りしてい

る。両眼距離 は僅 かに大 き く,額 か ら前頭部にかけて正

中に圧痕 を認 める。肩幅は狭 く,前 垂 し,特 に右肩 の鎖

骨部の陥凹が見 られ る。

口腔内所見では,下 顎前歯部は叢生で あり,下 顎 の横

径 は,狭 くV字 型 の歯列弓 を呈す。下顎 に較 べ,上 顎骨

は発育が悪 く反対咬合ではないが著明に願部が前方 に突

き出てい る。開 口状態は2横 指程度で僅 かに小 さい。歯牙

の大 きさは正常であ る。萌出 している歯牙 は65DC

2111CE6787654311125678で あ り

l2/2|3は 歯冠 のみの萌 出である。X-P像 により浬 伏歯

及 び過剰歯 が右上 小臼歯2本831,左 上小臼歯4本,日

後歯1本,1238右 下小 臼歯3本,左 下小臼歯4本,日

後歯1本 と,下 顎8本,上 顎12本 の20本,認 め られ る。

また下顎骨正中部の癒合 不全 はない。

脳頭蓋 は顔面頭蓋 に較べ て大 き く,人 字縫合近 くには,

多 くの挿問骨が ある。頭頂骨か ら前頭骨 にかけて,正 中

部 の骨欠損がみ られ,矢 状縫合は離開 し,開 存す る。前

頭洞 はほ とんど認 めず,上 顎洞 も普通人 に較 べ発達は悪

い。両側 の下顎角 は消失 し,な だらかで丸味 を帯びてい

る。胸部 では,右 側鎖骨 はほぼ中央 で欠損 し,両 骨片は

偽 関節様 を呈 し,胸 骨側 の骨片 は肩峰側 のものよ り上方

に偏 している。左側 には著 明な欠損 は認 め られない。

胸郭 は釣鐘状 で助骨 の走行 は急峻 である。骨盤では恥

骨結合 の離 開は僅 かなが らある。そ の他 四肢 には,著 明

な異常 は認 め られない。

〔症例2〕 後継永久歯萌出遅延 を主訴 として,昭 和51

年12月14日 に来院 した13歳6か 月の女子 である。 口腔 の

X-P像 によ り,乳 歯 の晩期 残存及 び永久歯 の萌出遅延,

それ に伴 う後継氷久歯 の埋伏 を認 め,更 に上顎 に9歯 下

顎 に5歯 の埋伏過剰歯 が見 られ る。未萌出歯数 は過剰歯

を含 め上顎23歯,下 顎19歯,合 計42歯 である。13歳 にな

って も永久歯 は未萌出 で あ る。その他頭蓋骨,骨 胸部,

盤 のX-P像 に より,本 症例 の特徴 的な所見 を認 めた。以

上2例 共,家 系 内には同症例 は見 られな かった。

(113)  113

65. 色素失調症の1例 その口腔所見

A case of Incontinentia Pigmenti

-Oral Manifestations-

臼歯大 ・新潟 歯 ・歯放

前 多一 雄 ・小 坂 井 透 ・前 多 勝

村 山 良雄

Deprtment of Dental Radiology, Nippon

Dental University, Niigata

Kazuo MAEDA, Tooru KOSAKAI,

Masaru MAEDA, Yoshio MURAYAMA

色 素失調症 はBloch (1926)に よって命名 され,Su-

lzberger(1928)に よって詳細な報告がな された疾患で,

生下時或いは生後 間 もな く躯 幹や四肢に紅斑,小 水庖,

小膿疱 など炎症性変化が生 じ,や がてその炎症性変 化は

色 素沈着を残 して消退 して しま うもので女児 に多い。皮

膚以外 の諸器官 に も様 々な異常 を合併す るので,Bloch-

Sulzberger症 候群 ともい う。 これ まで口腔症状 として,

乳歯 と永久歯 の部 分的無 歯症,萌 出遅延,円 錐歯な どが

知 られている。本邦 では本疾患 は産科,小 児科,皮 膚科

での報告 が多 く,歯牙 に対 する記載 は少ない。

演者 らは最 近5歳 女児の色 素失調症 の1例 を経 験 した

ので,そ の 口腔 症状 について報告 した。

主訴は乳歯 の未 萌出で,未 萌 出部 はDCB|BD/DB|ABDE

であった。乳歯 の未萌出遅延があ り,1歳7ケ 月 目に よ

うや く萌出が始ま り最初にA|Aが 萌出 して,そ の3ケ

月後 にはE|CE/ECA|C力 灘 した.こ の萌 出乳歯 の うち

CA|AC|Cは 円錐 歯で,E|E/E| も歯 冠 が倭 小化 し て い

た・X線診査 の線 未萌 出乳歯 のDCB|BD/DB|ABDEは 先

天 的に欠如 して肱 永久歯 では6|16/631|3が 発育 中

であ るが,そ の他 は歯胚 の欠如 がみ られ た。

66. 汎発性鞏皮症のX線 所見

(主として歯顎領域病変について)

Oral Radiographic Manifestations of

Diffuse Scleroderma

大 阪大 ・歯 ・歯放

藤 下 昌 巳

Deprtment of Oral Radiology, Osaka

Uniuersity, Dental School

Masami FNJISHITA

汎発性鞏皮症 は進行 性硬化症 ともい われ,皮 膚 の硬化

を特徴 とし,内 臓 を も侵す原因不明 の疾患 といわれてい

る。 口腔所見 として,一 般 に粘膜及び軟組織 の硬化,萎

縮 を生 じるが,歯 牙及び歯周組織については臨床的 に歯

肉 に炎症症状がな く,ま た歯牙の動揺 もな く,堅 固で あ

るが,X線 的 には歯根膜腔の均一な拡大が特徴 とされて

い る。

今回,わ れ われ は主 として兵庫医科大学に来 院 した患

者25名 にっ き,全 顎歯牙X線 診 査 を行 っ た。性別 は女性

21名,男 性4名 と,女 性 が圧倒 的に多 く,全顎歯牙X線 撮

影 時 の年齢分布は40歳 代 を中心 とし,平 均 年齢 は42.1歳

で あった。

次 に,25症 例につ き鞏皮症によ ると考 え られる歯根膜

腔 の拡大 を詳細 に検討 した結果,X線 的に三つ タイプ1.

歯 根の歯 頸側1/3,II.歯 根1/2,III.歯 根全 周の拡 大に分

け,こ れ を基準 に して,以 下 の点にっ いて調べた。

1. 鞏皮症 における歯根膜腔 の拡 大を呈す症例 の発生

頻度

2.  胸部,食 道,心 臓及 び手足 のX線 写真 につ いて兵

庫 医科大学 で診断判定 した評価 に基 づ く全身所見 の重症

度 と歯根膜腔拡 大にっ いての検討

3.  部位別 にお ける歯根膜腔拡大 の発生頻度 の比較

なお,拡 大 に影響が大 きい と思われ る不良歯 冠補綴物

装着歯及び歯槽骨 の吸収が著明であ る歯 牙は除外 した。

結果,歯 科放射線医4名 中3名 以上が歯根 膜腔の拡大

あ りと判定 した症例 は25例 中12例(48.0%)と 高頻度 で

あった。その他の所 見 として,下 顎下縁 隅角部 あるいは

上行枝部付近の両側性 の顎骨 吸収は25例 中4例 にみ られ

た。X線 的 に全身所 見 を著 明な もの と軽度 な もの とに大

別 し,各 々の歯根膜腔 の拡 大の発生頻度 を比較 したが,

著明な もの11例 中7例(63.6%),軽 度 な もの14例 中5

例(35.7%)と 著明な ものに多 くみ られ たが,相 関性 は

なか った。 さらに部位 を上顎前歯部,臼 歯部,下 顎前歯

部,臼 歯部の4群 に分 け,各 々の歯根膜腔 の拡大 がみ ら

(114)  114

れた歯牙 の発生頻度 の比較 では,上 顎前歯部118本 中30

本(25.4%),臼 歯部138本 中24本(17.4%),下 顎前歯

部121本 中15本(12.4%),臼 歯部111本 中14本(12.6%)

と上顎前歯部 に多 く認 めた。 しか し,前 歯部 と臼歯部,

上 顎 と下顎 との比較ではその差は認 めなか った。なお,

歯 根膜腔 の拡大 のみ られた歯 数は12例 中83本 で,1例 中

平 均約7本 で あった。

今回,歯 根 膜腔の拡大 を三つの タイプ に分 けたが,こ

れは拡大の傾 向を捉 えよ うとした もので,1に ついては

検 討の余地 があ るが,明 き らかな 皿 のタイプは別 とし

て,II並 びにIIか らIIIにかけての拡大 は鞏 皮症に よるも

の と推 測 された。

座 長 の ま とめ

目大松戸 ・歯放

尾 沢 光 久

演題64,高 橋 氏 ら(愛 知学 院大 ・歯放)は,35歳 男子

および13歳4ケ 月の女子 のCleidocranial dysostosis 2

症例 につ いて報告 した。

前者 にあっては,区 の炎症 の加療 によって来院 し,オ

ル ソパ ン トモ によって多数歯 の抱伏歯(上 顎11歯,下 顎10

歯、 を認 め,その後 の診査の結果,鎖 骨奇形及び頭部 の発

育 に比較 して顔面 の縮少感等 を含 めて上記 の判定 をした

ものであ り,後者 にあっては,日 歯放会誌(17巻2号,1977

発行)に 発表 した症例 であ り,同 症例 にあっても上顎23

歯,下 顎19歯 計41歯 の未萌 出を も認 めたもので ある。

共 に家系的な関連性はな く,両 症例 ともに散発性の も

のと考 えるとの ことで あった。 また,セ メン ト質の欠損

等 の所見 については今後検 討す る必 要 あ りとの ことであ

った。

当報告 について阪大 ・歯 の山田氏よ り頭顔 部の形態異

常 について特徴 あるものであるか ら診査のポイ ン トとし

て注意すべ きで あろ う,ま たセメ ン ト質の変化 にっいて

は,こ れ も十分に診査 対照 とな ること,こ のX線 診査 に

対 し,オ ル ソパ ン トモのみでな く,口 内法 フィルム を用

して細な読像 をすべ きで あるとの発言 あり。

演題65,前 多氏 ら(日 歯大 ・新潟歯)は,5歳 の女児

につい て,生 後,右 下腹部 よ り大腿 内側部 にかけて皮膚

発赤胞脹及び小水疱形成 を認 め,約1ケ.月 後,演 題 の色

素失調症 と診断 された症例報告 あ り,特 に我 が国にあ っ

ては産科,小 児科,皮 膚科等 に,そ の報告 が多い(北 村

の報告110症 例)が,口 腔 領域では寺(1975)の 報告 と非

常 に少ない との ことであった。本症 にあ って も萌出歯 は

乳歯上下顎 共9歯,氷 久歯 にあっては上下顎共8歯 の埋

伏状態で他 の歯芽 は認 め られず,萌 出歯 にあっては形態

的に円垂歯様 を示 すな ど種 々の特徴所 見があるこ との報

告 であ り,わ れわれ領域 との関連性 に対 して今後十分な

検討 が必要 の ものの一つ であろ う。

演題66,藤 下 氏 ら(大 阪 ・歯 ・兵庫 医大)は,兵 庫医

大 に来院 した汎発性鞏皮症患者,女 性21名,男 性4名 計

25名(報 告時3名 追加訂 正あ り)に つ いて,X線 写真像

よ り歯根膜腔 の拡大及 び歯槽硬 固板 の肥厚 また は消失 の

頻度等 を全身所見 の程度 との関連性 を検討 した もので,

演者 らは,歯 根膜 の拡大 については,根 長1/3,1/2,全 般

に及ぶ ものの3区 分 に別 け全身所見 と比較 す ると著明な

もの7,軽 度 のもの5と な り,歯 群の発現 部位 を見 ると

上前歯118歯 中30歯 と高い頻度 を示 した。尚前歯,臼 歯

また上 ・下顎の差は認 められなか った。尚4例 に認 め ら

れた下顎 角部 の異常は皮膚硬 化によ る圧迫 による もの と

報 告 した。

三好氏 より,歯 膜腔 の拡 大によ り歯 の動揺 は認 め られ

るのか との質問あ り,演 者 は歯槽硬 固板 の硬化 によ り動

揺 かないのか通例 で あ る が 来院時 には炎症 を併 なって

居 る場合 があ り動 揺 を見 ることあ り,た だ し痛み は少 な

い との返答 あ り。

島野氏 は,歯 の所見 は,1患 者 にどの くらい認 められ

るか との質 問に対 し演者 は全顎的 に検討 した症例 は少な

いが,今 回の12症 例 中,多 い者で12歯,少 ない1歯 ぐら

いで も平均5~6歯 となるであろ うとのこ とで あった。

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