平成27年度 成果報告書 分野・地域を越えた実践的情報教育協 ...

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A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5 平成27年度 成果報告書 enPiT運営委員会 大阪大学、東北大学、筑波大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、 神戸大学、九州大学、九州工業大学、北陸先端科学技術大学院大学、 奈良先端科学技術大学院大学、公立はこだて未来大学、 産業技術大学院大学、慶應義塾大学、情報セキュリティ大学院大学 文部科学省 情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業 分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク 組込みシステム分野 セキュリティ分野 ビジネスアプリケーション分野 クラウドコンピューティング分野 Education Network for Practical Information Technologies

Transcript of 平成27年度 成果報告書 分野・地域を越えた実践的情報教育協 ...

Education Network for Practical Information Technologies

発行:�大阪大学大学院情報科学研究科�enPiT事務局

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-5T E L ▶ 06-6879-4395F A X ▶ 06-6879-4649U R L ▶ http://www.enpit.jp/E-mail ▶ [email protected]

分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク

●平成27年度 成果報告書

enPiT運営委員会

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15

平成27年度 成果報告書

enPiT運営委員会大阪大学、東北大学、筑波大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、神戸大学、九州大学、九州工業大学、北陸先端科学技術大学院大学、

奈良先端科学技術大学院大学、公立はこだて未来大学、産業技術大学院大学、慶應義塾大学、情報セキュリティ大学院大学

文部科学省 情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業

分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク

組込みシステム分野セキュリティ分野 ビジネスアプリケーション分野クラウドコンピューティング分野

Education Network for Practical Information Technologies

reportCvr.indd 1 2016/03/06 12:45

は じ め に

enPiTは、文部科学省が実施する情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク

形成事業「分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク」の略称で、平成24年

度より開始し、今年度で4年目を迎えております。

平成25年度に第一期の修了生が生まれ、平成27年度は第三期生が修了していま

す。はじめの第一期生は事業全体で305名が修了しましたが、第三期生は481名修了

と大幅な増員を達成しています。また、基幹となる大学以外にこの事業に参加いただ

いている大学は47校から96校へ、またいろいろな形でお手伝いいただいている企業

は91から125へと大幅に増えております。

これは、我々一同、いろいろな手段で広報に努め、多くの方々に認知されるに至ると

ともに、enPiTの修了生や関係者が増え、その内容や成果の理解が進んだ結果である

と思っております。

本報告書の中にもありますが、enPiTの効果としては、学生個々の技術レベルの向上

のみならず、社会性や協調性などの向上があります。社会人として他者と一緒になって

共同でソフトウェア開発や、問題解決ができる能力というのは重要であり、学生が卒業

後、社会の中で生きていく上では必須の力です。enPiTでは、複数の大学から集まった

学生がチームを構成し、ソフトウェア開発や仕様作成などのプロジェクトを課していま

す。その中で、彼ら彼女らは、個々の大学の中だけでは得られないいろいろな体験を経

て、大きく成長していきます。

現在、第一期生がすでに社会に出て、いろいろなところで活躍し始めており、その様

子が聞こえ始めています。引き続き、修了生の今後の活躍を追跡していきたいと思って

います。

平成28年度は、enPiTの最終年度にあたります。本年度もこれまで通り修士学生を

中心とした教育事業を確実に推進するとともに、平成29年度以降の継続の形を明らか

にしていく必要があります。また、学部生を中心とした第2期enPiTが計画されており、

それとの連携も考えていく必要があります。本報告を通じ、enPiTの様子をご理解いた

だき、いろいろな面で、ご支援、ご協力、そしてご意見を頂戴できればと思います。

enPiT代表大阪大学大学院情報科学研究科 教授

井上 克郎

第1章 事業の全体概要 1

1.1 本事業の目的 2

1.2 分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク 3

1.3 各分野の概要 4

1.4 目標人材像・達成目標 5

1.5 カリキュラム概要 6

1.6 教育体制 7

1.7 教育実績 9

1.8 教員養成・FD活動 12

1.9 中間評価 14

1.10 産学連携の取り組み 15

1.11 動向調査 16

1.11.1 enPiT受講生の満足度調査… ……… 16 1.11.3 IT系企業のニーズ調査……………… 17

1.11.2 情報系専攻へのニーズ調査………… 16

1.12 普及展開活動 19

1.13 イベント・募集情報 21

1.14 今年度の総括 24

目 次

第2章 実践教育の取り組み状況 25

2.1 クラウドコンピューティング分野 26

2.1.1 取り組みの概要……………………… 26 2.1.5 教育実績…………………………… 32

2.1.2 学習・教育目標… …………………… 26 2.1.6 教員養成・FD活動…………………… 34

2.1.3 教育内容…………………………… 27 2.1.7 来年度のイベント予定・募集情報… 35

2.1.4 実施体制…………………………… 31 2.1.8 まとめ………………………………… 35

2.2 セキュリティ分野 36

2.2.1 取り組みの概要……………………… 36 2.2.5 教育実績…………………………… 42

2.2.2 学習・教育目標… …………………… 36 2.2.6 教員養成・FD活動…………………… 50

2.2.3 教育内容…………………………… 37 2.2.7 来年度のイベント予定・募集情報… 54

2.2.4 実施体制…………………………… 38 2.2.8 まとめ………………………………… 54

2.3 組込みシステム分野 56

2.3.1 取り組みの概要……………………… 56 2.3.5 教育実績…………………………… 60

2.3.2 学習・教育目標… …………………… 56 2.3.6 教員養成・FD活動…………………… 74

2.3.3 教育内容…………………………… 56 2.3.7 来年度のイベント予定・募集情報… 74

2.3.4 実施体制…………………………… 58 2.3.8 まとめ………………………………… 75

2.4 ビジネスアプリケーション分野 76

2.4.1 取り組みの概要……………………… 76 2.4.5 教育実績…………………………… 83

2.4.2 学習・教育目標… …………………… 77 2.4.6 教員養成・FD活動…………………… 89

2.4.3 教育内容…………………………… 77 2.4.7 来年度のイベント予定・募集情報… 90

2.4.4 実施体制…………………………… 80 2.4.8 まとめ………………………………… 91

2.5 分野を越えた実践教育 92

2.5.1 分野横断講義……………………… 92 2.5.2 イノベータ―ワークショップ………… 96

第3章 分野を越えた実践教育ネットワーク形成 99

3.1 運営委員会、幹事会の実施状況 100

3.2 作業部会の活動状況 102

3.2.1 広報戦略WG………………………… 102 3.2.4 教務WG……………………………… 113

3.2.2 FDWG………………………………… 106 3.2.5 女性部会…………………………… 114

3.2.3 評価・産学連携WG… ……………… 110

3.3 全体シンポジウム 116

※本報告書内の実績は平成28年2月時点のものである。

■代表者一覧

事業代表 井上克郎  大阪大学大学院情報科学研究科

分野代表 クラウドコンピューティング分野 楠本真二 大阪大学大学院情報科学研究科

分野代表 セキュリティ分野 後藤厚宏 情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科

分野代表 組込みシステム分野 福田晃 九州大学大学院システム情報科学研究院

分野代表 ビジネスアプリケーション分野 田中二郎 筑波大学システム情報系情報工学域

■enPiT運営委員会

委員長 井上克郎  大阪大学大学院情報科学研究科

委員 クラウドコンピューティング分野 楠本真二 大阪大学大学院情報科学研究科

委員 クラウドコンピューティング分野 平木敬 東京大学大学院情報理工学系研究科

委員 クラウドコンピューティング分野 西崎真也 東京工業大学大学院情報理工学研究科

委員 クラウドコンピューティング分野 上原邦昭 神戸大学大学院システム情報学研究科

委員 クラウドコンピューティング分野 久代紀之 九州工業大学大学院情報工学研究院

委員 セキュリティ分野 曽根秀昭 東北大学大学院情報科学研究科

委員 セキュリティ分野 宮地充子 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科

委員 セキュリティ分野 藤川和利 奈良先端科学技術大学院大学総合情報基盤センター

委員 セキュリティ分野 砂原秀樹 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科

委員 セキュリティ分野 後藤厚宏 情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科

委員 組込みシステム分野 高田広章 名古屋大学大学院情報科学研究科

委員 組込みシステム分野 鵜林尚靖 九州大学大学院システム情報科学研究院

委員 ビジネスアプリケーション分野 田中二郎 筑波大学システム情報系情報工学域

委員 ビジネスアプリケーション分野 大場みち子 公立はこだて未来大学情報アーキテクチャ学科

委員 ビジネスアプリケーション分野 酒森潔 産業技術大学院大学産業技術研究科

委員 全体事務局 粂野文洋 国立情報学研究所/日本工業大学情報工学科

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第1章

事業の全体概要

2 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

高齢化、エネルギー・環境問題、震災からの復旧・復興など

の社会的課題解決、産業における国際競争力強化や新たな

価値、新産業創出等、我が国が取り組むべき課題は山積して

いる。これらの課題解決には情報技術の高度な活用が必須

のものとなっており、情報技術を高度に活用して、社会の具体

的な課題を解決することのできる人材の育成は我が国の極

めて重要な課題となっている。

こうした人材を育成するため、平成24年度に「文部科学省…

情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業」

が開始された。本事業は、複数の大学と産業界による全国的

なネットワークを形成し、実際の課題に基づく課題解決型学

習等の実践的な教育を実施・普及することを目的とした公募

型事業である。公募の結果、「分野・地域を越えた実践的情報

教育協働ネットワーク」(申請代表校:大阪大学)が採択され

た。

情報技術を活用して社会の具体的な課題を解決できる能力を有する優れた情報技術人材の育成強化

実践教育コア

複数の大学と産業界の連携による情報技術人材育成の全国的推進ネットワーク

産学連携による情報技術人材育成のための総合的推進ネットワーク全国の学生、大学、ITベンダー企業、ユーザ企業の参加を促進する連絡調整産学連携による実践的教育実施のためのガイドライン策定情報技術人材育成の海外調査産学連携による実践的教育の実施 など

・受講生(大学院修士課程)・拠点大学・連携大学の学生・拠点大学・連携大学以外の学生・実践教育コアが設ける 一定の基準を満たす学生

産学連携による実践的教育の全国への普及展開

参加大学拠点大学(事務局)

連携大学 連携大学

連携大学

ITベンダー企業ユーザ企業

・高度な技術者やプロダクトマネージャなどが 助言者・指導者として協力・企業の実際の課題に基づく、 実践的教育のテーマの提供

教員が実践教育コアに参加し、学生を指導。実践教育コアにおける取り組みを所属先の大学においても展開

全国の学生

●産学連携により企業の実際の課題に基づく 少人数のチームでの課題解決型学習等の 実践的教育を実施●夏期休暇期間などを利用した集中実習●リモート分散実習 など

1 . 1 本事業の目的

図表1.1.1 事業の全体イメージ

3e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第1章 

事業の全体概要

分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク

(Education…Network…for…Practical…Information…Technologies、

略称enPiT:エンピット)では、クラウドコンピューティング、セ

キュリティ、組込みシステム、ビジネスアプリケーションの4

分野を対象として、各分野の知識領域を幅広く教育するた

めに、それぞれの分野に専門領域を有する全国の15連携大

学の教員や企業の技術者を結集したプログラムとなっている

(図表1.2.1)。

enPiTでは、各分野ともに図表1.2.2にあるような教育プロ

グラムのフレームワークに基づいて実践的教育を行う。

(1)基礎知識学習短期集中合宿や分散PBLを実施する上で必要となる基礎

知識を学ぶ。各分野の連携大学および参加大学の講義や開

発深知(https://devshinchi.jp/)などで公開されている教材

などを利用できる。

(2)短期集中合宿各分野技術に関する講義や演習(基礎知識以外に必要と

筑波大学九州大学

九州工業大学

大阪大学

東京工業大学

東京大学

東北大学

参加大学教員・学生

参加大学

参加大学

参加大学

参加大学教員・学生公的機関

連携企業

参加大学学術団体

学術団体

北陸先端科学技術大学院大学

名古屋大学

情報セキュリティ大学院大学

慶應義塾大学

神戸大学

奈良先端科学技術大学院大学

産業技術大学院大学

公立はこだて未来大学

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

発 表 会

修 了

基礎知識学習短期集中合宿受講のための事前準備

短期集中合宿各分野の講義PBL分散PBLに向けた準備 など

分散PBL連携大学・参加大学の学生が分散環境でPBLを実施

1 . 2 分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク

図表1.2.1 分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク

図表1.2.2 教育プログラムのフレームワーク

4 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

クラウドコンピューティング、セキュリティ、組込みシステ

ム、ビジネスアプリケーションの各分野における取り組み概

要をまとめる。

本分野は、いわゆるビッグデータの分析手法、新しいビジ

ネス分野の創出といった社会の具体的な課題を、クラウド技

クラウドコンピューティング分野

人材・知見協働ネットワーク

クラウドコンピューティング分野

セキュリティ分野

組込みシステム分野

ビジネスアプリケーション分野

連携企業

参加大学

学術団体

教員

学生

公的機関

1 . 3 各分野の概要

術を活用し解決できる人材の育成を目指し、大阪大学、東京

大学、東京工業大学、神戸大学、九州工業大学の5大学が連携

して教育を実施する。クラウド技術の基礎知識を習得した学

生を対象として、短期集中合宿(東日本と西日本でそれぞれ

実施)、分散PBLを通じて、複数人でチームを組み、情報システ

ムをクラウド上で実装し、さらに、モバイル対応、負荷分散・ス

ケーリング、大規模データ解析等を行うことで、クラウド技術

の導入によって可能となる問題解決方法や効果について、プ

ロジェクトを通して体感することを目的とする。

なる項目、最先端技術など)、PBLに向けた準備等を行い、約2

週間程度の集中教育を受ける。

(3)分散PBL分野ごとに分散環境下でのPBLを実施し、終了後は成果発

表会を開催する。

本事業は複数の大学と産業界による全国的なネットワー

クを形成し、実践的な教育を普及させることが目的であるた

め、分野を越えた普及展開の取り組みが極めて重要である。

これまでに15連携大学間での「共同事業契約書」の締結、運

営委員会や幹事会による連携大学間の緊密な情報共有、5つ

の作業部会の運営、広報や産学連携の推進活動を実施して

きた。

その結果、平成25年度ではのべ62の大学と91の企業・団

体による産学連携の人材育成ネットワークとなっていたも

のが、平成26年度は合計96大学と107の企業・団体のネット

ワークとなり、平成27年度には合計111の大学と125の企業・

団体によるネットワークを形成している。

図表1.3.1 4つの分野による実践的情報教育協働ネットワーク

5e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第1章 

事業の全体概要

幅広い産業分野において求められている「実践的なセキュ

リティ技術を習得した人材(実践セキュリティ人材)の育成」

を目指す。

本取り組みでは、5つの連携大学が協力して開講する実践

セキュリティ人材の育成コース(SecCap)によって、幅広いセ

キュリティ分野の最新技術や知識を具体的に体験を通して習

得することができる。暗号をベースとする情報セキュリティ技

術、Webサーバのセキュリティ技術、ネットワークセキュリティ

技術等の技術面から、法制度やリスク管理などの社会科学的

な知識までをカバーする。受講生は、技術系、理論系、社会科

学系の講義や実践演習・PBLから、それぞれが目指すキャリア

パスに沿った割合で、主体的・自主的に調合した学習プログ

ラムを作って受講することができる。

人材育成を進めるだけでなく、その育成ノウハウを、全国

の大学(参加大学)に広める活動を進める。これにより、実践

セキュリティ人材育成の枠組み自体を作り上げることができ、

実践セキュリティ人材育成のすそ野を広げ、我が国全体が必

要とする人材の育成体制を作り上げることができる。

セキュリティ分野

本分野では、「組込みシステム開発技術を活用して産業界

の具体的な課題を解決し、付加価値の高いサイバーフィジカ

本分野では、筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだ

て未来大学の3大学が連携し、各種の先端情報技術を有機

的に活用し、社会情報基盤の中核となるビジネスアプリケー

ション分野の実践的問題解決ができる人材を育成する。事前

の基礎知識学習科目の履修により、ビジネスアプリケーショ

ン分野に関わる情報技術を概観し、各種先端技術を活用した

問題解決ができるための基礎知識を習得し、短期集中合宿

により、演習とPBLを実施することで、基礎知識とスキルを実

践可能なレベルに向上させる。さらに、チームプロジェクトに

よる分散PBLにより、ユーザ企業や地域連携からの実践的な

課題を行うことで、顧客を意識した問題解決能力、マネジメン

ト能力を養成する。

組込みシステム分野

ビジネスアプリケーション分野

分野ごとの目標人材像・達成目標は次の通りである。

分野 クラウドコンピューティング分野 セキュリティ分野 組込みシステム分野 ビジネスアプリケーション分野

目標人材像

クラウド技術を理解し、必要なスキルと知識について他者と議論し、実際のクラウド環境を用いて大規模な処理や効率の良い処理(負荷分散や分散処理等)を提供するアプリケーション・情報システムを開発できる人材。

社会・経済活動の根幹に関わる情報資産および情報流通のセキュリティ対策を、技術面・管理面で牽引できる実践リーダー。

組込みシステム開発技術を活用して産業界の具体的な課題を解決し、付加価値の高いサイバーフィジカルシステム(CPS)の構築による効率の良い社会システムを実現し、エネルギーや環境問題など現在の日本が抱える重要課題に対応できる人材。

進化を続ける先端情報技術や情報インフラを有機的に活用し、潜在的なビジネスニーズや社会ニーズに対する実践的問題解決ができる人材。

達成目標各年度の目標育成学生数

平成25年度:50名平成26年度:70名平成27年度:80名平成28年度:100名

平成25年度:60名平成26年度:80名平成27年度:90名平成28年度:100名

平成25年度:40名平成26年度:60名平成27年度:80名平成28年度:100名

平成25年度:60名平成26年度:70名平成27年度:85名平成28年度:100名

1 . 4 目標人材像・達成目標

ルシステム(CPS)を構築できる人材」を育成することを目標

としている。連携大学にとどまらず、広く全国から参加大学を

募り、九州大学の連合型PBL(Project…Based…Learning)と新し

い産学連携教育手法である名古屋大学のOJL(On…the…Job…

Learning)の2タイプを実施する。両タイプとも問題発見能力

を身に付ける「基本コース」と、管理技術とその運用方法まで

踏み込んだ高度な問題解決能力を身に付ける「発展コース」

を設ける。受講生の指導教員に分散PBLの実施ノウハウを修

得してもらい、補助期間終了後に各大学で継続して実施でき

る体制にする。

図表1.4.1 分野ごとの目標人材像・達成目標

6 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

基礎知識として、クラウドを利用したクラウド上で動作する

アプリケーション開発を行うための、プロジェクト管理手法、

ファシリテーションスキル、開発プロセス、クラウド環境利用

技術を学ぶ。引き続き、チームでのアプリケーション開発PBL

の実施、モバイル対応、負荷分散・スケーリング、大規模デー

タ解析等の応用技術の学習とそれらを応用したアプリケー

ション開発PBLを行う。

■ クラウドコンピューティング分野

1 . 5 カリキュラム概要

実践セキュリティ人材育成に向けて、共通に必要な基礎知

識学習、幅広いセキュリティ分野の最新技術や知識を具体的

に体験を通して習得できる実践演習、および応用力を高める

学習からなるカリキュラムである。技術面では、暗号をベース

とする情報セキュリティ技術、Webサーバのセキュリティ技

術、ネットワークセキュリティ技術から、法制度やリスク管理

などの社会科学的な知識までをカバーする。実践演習では、

ハードウェアを対象としたもの、システムやソフトウェアを対

象としたもの、企業組織のリスク管理を対象としたものなど、

バラエティに富んだ演習コースが用意される。受講生は、技

術系、理論系、社会科学系の講義や実践演習・PBLから、それ

ぞれが目指すキャリアパスに沿った割合で、主体的・自主的

に調合した学習プログラムを作って受講することができる。

■ セキュリティ分野

主に修士1年を対象とした基本コースと修士1・2年を対象

とした発展コースを設ける。

(1)…基礎知識学習は、組込みシステム基礎、ソフトウェア工

学、および各大学で必要とされる科目で構成する。

(2)…短期集中合宿は、分散PBLのキックオフ合宿という位置

付けで、スプリングスクールあるいはサマースクールを

行う。

(3)…分散PBLは、九州大学の連合型PBLと名古屋大学のOJL

のいずれかを選択する。

ビジネスアプリケーション分野に関わる情報技術を概観

し、各種先端技術を活用した問題解決ができるために、基礎

知識を習得するための事前の基礎知識学習、基礎知識学習

で習得した項目に関する演習を実施することで、受講生個人

の基礎項目に関するスキルを実践可能なレベルに向上させ

る短期集中合宿、基礎知識学習、短期集中合宿で得た基盤

技術を基に、PBLプロジェクトを実施する分散PBLで構成され

る。

■ 組込みシステム分野

■ ビジネスアプリケーション分野

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第1章 

事業の全体概要

平成27年度の時点において、15の連携大学に加え、のべ

96大学が参加し、125の企業・団体が助言・指導・テーマ提供

等の立場で協力し、合計111大学と125の企業・団体による産

1 . 6 教育体制

学連携の人材育成ネットワークとなっている。各分野の体制

(平成28年2月現在)を図表1.6.1~4にまとめる。各表内の※

は平成27年度からの新規参加を表している。

図表1.6.1 各分野における教育実施体制(クラウドコンピューティング分野)

■連携大学(5大学)

大阪大学東京大学東京工業大学神戸大学九州工業大学

■参加大学(18大学)

京都産業大学近畿大学九州産業大学慶應義塾大学香川大学※

高知工科大学早稲田大学大阪工業大学長崎県立大学電気通信大学東海大学東京電機大学奈良先端科学技術大学院大学兵庫県立大学明治大学立命館大学和歌山大学お茶の水女子大学※

■連携企業(39社・団体)

Emotion…Intelligence株式会社※

エキサイト株式会社※

グーグル株式会社ヤフー株式会社レッドハット株式会社楽天株式会社株式会社…日立インフォメーションアカデミー株式会社IDCフロンティア※

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ株式会社…SEプラス株式会社ヴァル研究所※

株式会社…エヌ・ティ・ティ・データ・ユニバーシティ※

株式会社オージス総研株式会社コネクトドット株式会社サイバーエージェント株式会社シマンテック※

株式会社 ジュントス株式会社セールスフォース・ドットコム 株式会社ソニックガーデン株式会社ドワンゴ※

株式会社ハウインターナショナル株式会社ピコラボ株式会社フォーマルテック株式会社…フリークアウト※

株式会社リコー株式会社…四季の自然舎

株式会社日立システムズ株式会社日立ソリューションズ株式会社…日立製作所株式会社富士通研究所株式会社野村総合研究所三井住友信託銀行株式会社三菱電機株式会社新日鉄住金ソリューションズ株式会社西日本電信電話株式会社国立情報学研究所日本オラクル株式会社日本マイクロソフト株式会社富士通関西中部ネットテック株式会社※

■参加教員数

101名

図表1.6.2 各分野における教育実施体制(セキュリティ分野)

■連携大学(5大学)

情報セキュリティ大学院大学東北大学北陸先端科学技術大学院大学奈良先端科学技術大学院大学慶應義塾大学

■参加大学(19大学・3校)

東京大学大阪大学京都大学中央大学津田塾大学東京電機大学早稲田大学金沢工業大学九州産業大学宮城大学東北学院大学東北工業大学

お茶の水女子大学※

福井大学※

九州工業大学※

佐賀大学※

大分大学※

秋田県立大学※

東北福祉大学※

■高等専門学校等仙台高等専門学校石川工業高等専門学校情報科学専門学校※

■連携企業(14社)

株式会社インテック※

エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社※

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社株式会社サイバー・ソリューションズ国立研究開発法人産業技術総合研究所一般社団法人…JPCERT…コーディネーションセンター国立研究開発法人情報通信研究機構

デロイト…トーマツ…リスクサービス株式会社※

トレンドマイクロ株式会社日本アイ・ビー・エム株式会社日本電気株式会社日本電信電話株式会社ネットワンシステムズ株式会社※

株式会社日立ソリューションズ東日本※

■参加教員数

70名

※は平成27年度からの新規参加。

※は平成27年度からの新規参加。

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図表1.6.3 各分野における教育実施体制(組込みシステム分野)

図表1.6.4 各分野における教育実施体制(ビジネスアプリケーション分野)

■連携大学(2大学)

九州大学名古屋大学

■参加大学(35大学・2校)

愛知県立大学愛知工業大学岡山県立大学※

関西学院大学関東学院大学岩手大学※

岐阜大学宮崎大学京都大学九州工業大学九州産業大学福山大学※

群馬大学広島市立大学芝浦工業大学信州大学静岡大学早稲田大学大阪大学中京大学中部大学※

東海大学東京工業大学東京電機大学東京都市大学

同志社大学徳島大学南山大学日本大学福井工業大学兵庫県立大学北九州市立大学名城大学立命館大学和歌山大学

■高等専門学校等横浜システム工学院専門学校東海職業能力開発大学校※

■連携企業(43社・団体)

Manycolors株式会社SCSK株式会社アイシン・コムクルーズ株式会社アイシン精機株式会社イーソル株式会社オークマ株式会社オムロン オートモーティブエレクトロニクス株式会社スズキ株式会社ツイスト・ドライブ・テクノロジーズ株式会社トヨタ自動車株式会社パナソニック アドバンストテクノロジー株式会社パナソニック株式会社マツダ株式会社ヤマハ発動機株式会社ルネサス エレクトロニクス株式会社

学校法人赤山学園 九州技術教育専門学校 株式会社 東芝株式会社AISIC※

株式会社NTTデータMSE※

株式会社OTSL株式会社Technical Rockstars※

株式会社 アフレル株式会社ヴィッツ株式会社サニー技研株式会社ジェイテクト株式会社チェンジビジョン株式会社デンソー株式会社 ロジック・リサーチ※

株式会社永和システムマネジメント株式会社東海理化株式会社東陽テクニカ株式会社豊通エレクトロニクス株式会社豊田中央研究所※

京セラ株式会社※

独立行政法人情報処理推進機構東海ソフト株式会社日本電気通信システム株式会社菱電商事株式会社富士ソフト株式会社富士通テン株式会社株式会社豊田自動織機矢崎総業株式会社株式会社アイユート※

■参加教員数

82名

■連携大学(3大学)

筑波大学産業技術大学院大学公立はこだて未来大学

■参加大学(24大学)

お茶の水女子大学愛媛大学茨城大学宇都宮大学岡山県立大学会津大学岩手大学京都産業大学※

群馬大学広島大学埼玉大学山口大学室蘭工業大学千葉大学拓殖大学

津田塾大学東京理科大学同志社大学徳島大学日本工業大学富山大学名古屋工業大学※

琉球大学和歌山大学※

■連携企業(29社・団体)

ニフティ株式会社楽天株式会社株式会社ハイマックス※

株式会社ABEJA株式会社 iD※

株式会社IDCフロンティア※

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ株式会社インタラクティブ・コミュニケーション・デザイン※

株式会社エーピーコミュニケーションズ※

株式会社エスイーシー株式会社 サムシングプレシャス

株式会社ジースタイラス株式会社ジャパンテクニカルソフトウェア株式会社セールスフォース・ドットコム株式会社ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン※

株式会社 日立製作所株式会社富士通ミッションクリティカルシステムズ※

常磐システムエンジニアリング株式会社新日鉄住金ソリューションズ株式会社東京海上日動火災保険株式会社特定非営利活動法人 CeFIL日鉄日立システムエンジニアリング株式会社日本マイクロソフト株式会社日本ユニシス株式会社日本電気株式会社日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェア株式会社函館蔦屋書店株式会社富士ゼロックス株式会社富士通株式会社

■参加教員数

83名

※は平成27年度からの新規参加。

※は平成27年度からの新規参加。

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第1章 

事業の全体概要

各分野の教育実績の概要を記す。

■ クラウドコンピューティング分野

クラウドコンピューティング分野では、いわゆるビッグデー

タの分析手法、新しいビジネス分野の創出といった社会の具

体的な課題を、クラウド技術を活用し解決できる人材の育成

を目的として、5連携大学を中心に、参加大学の教員、連携企

業の専門家の力を結集して、クラウドコンピューティング、プ

ロジェクトマネジメント、ソフトウェア工学について教育・修

得すべき内容を体系的・実践的に取り込んだ教育プログラム

を構築した。

具体的には、4つの教育プログラム(クラウド実践道場、

Cloud…Bauhaus、Cloud…Spiral、Cloud…Q9)を実施し、98名(う

ち46名が参加大学からの受講生)の修了生を得た。

短期集中合宿は、東日本の東京大学と東京工業大学、西日

本の大阪大学、神戸大学、九州工業大学でそれぞれ合同で実

施した。各教育プログラムでは、実際にクラウドを学生が構築

する、受講生チームがアプリケーション開発を要求分析から

クラウド環境上への実装まで自力で実施する、クラウドを活

用したビジネスモデルを提案するなどの特色のあるPBLが実

施された。また、ハイブリッド人材として、Cloud…Q9(九州工業

大学)が主でセキュリティ分野が従の学生を1名、SecCapが

主でCloud…Q9が従の学生を1名受け入れた。また、分野内で

のFDの活動として、教材開発や授業の実施についてのワー

キングを開催した。

■ セキュリティ分野

セキュリティ分野では、幅広い産業分野において求めら

れている実践的なセキュリティ技術を習得した人材(実践セ

キュリティ人材)の育成を目指し、平成25年度から5つの連携

大学が協力してSecCapコースを開講し、平成27年度もさら

に改善と拡充を進めた。SecCapコースは、基礎力を養成でき

る共通科目と基礎科目、実践力を養成する約20種類の演習、

応用力を高める先進科目からなり、技術面では、暗号をベー

スとする情報セキュリティ技術、Webサーバのセキュリティ

技術、ネットワークセキュリティ技術といった技術的な知識

から、法制度やリスク管理などの社会科学的な知識までをカ

バーしている。平成27年度において本取り組みに参加した教

員数は、連携大学、参加大学で70名である。

平成27年度も引き続きハイブリッド人材育成に向けた入

門講座を設置し、本SecCapコースが重点を置く実践的な技

術演習を文系出身や情報系でない学生が受講しやすくする

ために情報セキュリティ大学院大学、慶應義塾大学の2拠点

1 . 7 教育実績

で開講した。また、東北大学では演習科目「ネットワークセ

キュリティ実践」を非情報系の学生が受講しやすい講座内容

とし、新規に参加大学に加わった2校から非情報系の学部生

を受け入れた。

また、我が国トップレベルの関連組織・企業と専門家諸氏

にSecCapコースの講義や演習の講師として、実際に起こっ

ているインシデントの詳細な解説や、実データに基づいた

セキュリティ分析演習に協力いただいた。また、企業のSOC

(Security…Operation…Center)やNOC(Network…Operation…

Center)の見学、また、自治体にてBCPの取り組み体制を見学

させていただく等、受講生に貴重な学外演習の機会を提供

いただいた。平成27年度の連携企業および研究機関は14組

織であるが、他の組織からも多数のセキュリティエキスパー

トに協力をいただいた。

平成27年度SecCapコースは、5連携大学と参加大学のう

ち14校(うち、5大学は平成27年度新規参加)から129名の学

生がSecCap修了認定を目指して参加した。SecCapコースで

は、共通科目・基礎科目、実践演習、先進科目のそれぞれに

おいて所定の単位数を取得できた学生に、年度末の分野シ

ンポジウムにおいて、SecCap修了認定証を授与している。平

成27年度は、113名の学生が、SecCap修了認定を取得した。

SecCap修了認定を取得できた学生は、実践セキュリティ人材

として実社会での活躍が期待できる。

また、SecCapコースの修了認定を目指さずに一部の演習

や講義を受講する学生や、聴講生としての学部生、高専生お

よび専門学校生の受け入れも積極的に行った。平成27年度

は学部生や高専生等を参加対象とする大学や高等専門学校

等は計8校となった(うち、3校が平成27年度新規参加)。若い

学生には大学院生と一緒に演習に参加し、議論を行うなど、

大変良い刺激になったようだ。

■ 組込みシステム分野

組込みシステム分野では、問題発見能力を身に付ける「基

本コース」と、管理技術とその運用方法まで踏み込んだ高度

な問題解決能力を身に付ける「発展コース」を設けている。平

成26年度は「ライトウェイトコース」を新設し、組込み技術体

験学生のすそ野拡大、ハイブリッド人材の養成、さらに参加

大学の増加が図れた。また、九州大学PEARLの基本コースの

実施時期を、参加大学の学年歴と適合させるために、8月~

翌年3月から、発展コースと同じ4月~10月に変更した。その

結果、参加大学の修士生の95%以上が修了することができる

ようになった。

組込みシステム分野全体では、修士生142名(学部生等67

名も加えると209名、うちハイブリッド人材は16名)の受講生

10 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

を受け入れた。九州大学PEARLはコンテストチャレンジ型と

事業企画/技術開発型の12件のテーマに加えて、平成26年度

からオープン参加型テーマとしてETロボコンの2テーマを加

えた全14件のテーマを実施した。名古屋大学OJLは、43件の

実践的な開発テーマを実施した。

短期集中合宿については、九州大学は5月にスプリングス

クールを8日、8月~10月にサマースクールをのべ7日実施し

た。名古屋大学は、昨年度末の3月に3日、8月~9月に10日、12

月に2日間の合宿を開催した。

修了生数は、組込みシステム分野全体で修士生が135名で

あり、今年度の目標80名を確実に超えている。

分野間の交流については、共通スキル分野のファシリテー

ションスキルをクラウドコンピューティング分野、ビジネスア

プリケーション分野に提供し、逆にセキュリティ分野からハイ

ブリッド人材育成のために「ハードウェア・セキュリティ入門」

を実施した。

情報処理学会との協働についてはESSロボットチャレンジ

にて7チームが発表し、分野の活動を講演し、組込みシステム

シンポジウム2015の10周年記念パネル討論会には連携大

学・参加大学の教員がモデレータやパネリストとして参加し

た。

ETロボコンには2チームが参加し、デベロッパー部門アド

バンストクラス競技部門参加チームが第1位に輝いた。

今年度末の組込みシステム分野は、2連携大学と日本全国

(北海道は除く)に広がる35参加大学という構成となった。

最終年度に向けて、参加大学をさらに増やすべく活動を進め

ている。

■ ビジネスアプリケーション分野

ビジネスアプリケーション分野には本年度、連携大学であ

る筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて未来大学を

はじめ、室蘭工業大学、岩手大学、会津大学、富山大学、茨城

大学、群馬大学、宇都宮大学、千葉大学、お茶の水女子大学、

拓殖大学、東京理科大学、埼玉大学、津田塾大学、日本工業大

学、名古屋工業大学、京都産業大学、同志社大学、和歌山大

学、広島大学、岡山県立大学、徳島大学、愛媛大学、山口大学、

琉球大学の24大学から総計83名の教員がそれぞれのプログ

ラムに参加していただいた。さらに、29にのぼる企業および

団体からのご参加をいただき、運営を手助けしていただい

た。また、九州工業大学などが来年度以降の参加を検討して

いる。

本分野の本年度の育成学生数の目標は85名である。これ

に対して受講条件として、情報系学部レベル基礎教育を習得

していること、情報系の大学院に在籍していること、情報系企

業の実務経験を有していること、のいずれかが満たされてい

ることを要求し、さらに、分野で指定する基礎知識を短期集

中合宿までに事前に習得しておくことを条件とし、短期集中

合宿開始前に前提知識の習得状況審査を行った結果、本年

度は審査に合格した160名が短期集中合宿を受講し、各大学

で成果発表会を実施した。その内訳は、筑波大学52名、茨城

大学5名、愛媛大学8名、お茶の水女子大学3名、京都産業大

学1名、埼玉大学4名、拓殖大学1名、千葉大学3名、徳島大学2

名、富山大学4名、名古屋工業大学3名、山口大学5名、公立は

こだて未来大学12名、会津大学8名、同志社大学2名、室蘭工

業大学7名、産業技術大学院大学19名、琉球大学4名、社会人

17名となっている。筑波大学50名、茨城大学5名、愛媛大学8

名、お茶の水女子大学3名、京都産業大学1名、拓殖大学1名、

千葉大学3名、富山大学4名、山口大学5名、公立はこだて未

来大学13名、会津大学7名、同志社大学2名、室蘭工業大学7

名、産業技術大学院大学13名、琉球大学3名、社会人10名の

計135名、さらに学部生2名(和歌山大学)が分散PBLを受講、

各連携大学での成果発表会を経て本年度全課程を修了し、

enPiT修了証を授与された。本分野の総括として、来年度にむ

けての指針を議論するため、平成28年2月26日にビジネスア

プリケーション分野のワークショップを筑波大学東京キャン

パスで開催した。

なお、ハイブリッド人材の育成準備状況としては、本年度よ

り連携大学から2名のハイブリッド人材が参画しており、来年

度以降もより多くのご参加をいただけるように準備を進めて

いる。また、ハイブリッド人材ではないが、幅広い分野への教

育を目的として産業技術大学院大学を中心に社会人への門

戸も広く開いている。

また、本年度は昨年度に引き続き、筑波大学を拠点にア

ジャイル研修Ⅰ、Ⅱを実施した。これらアジャイル研修は、ク

ラウドコンピューティング分野の大阪大学Cloud Spiralでの

「スクラム講習」の講義教材をベースに、連携大学の産業技

術大学院大学から永瀬美穂氏に全面的にご協力いただきな

がら実施した。

■ 分野を越えた実践教育

各分野で実施されている講義・演習の中には、他の分野の

学生にとっても非常に有意義と考えられるものもある。そのよ

うな教育を分野横断的に展開するため、平成25年度より分野

横断講義を実施している。平成27年度は、平成26年度同様次

の2種類に分類し、分野横断講義を実施した。なお、平成25年

度は、A、B合わせて3種類4講義、平成26年度は7種類11講

義、平成27年度は10種類12講義と実績を伸ばしている。

A 分野によらず必要な汎用的内容の講義B 各分野の特任教員によって提供される特色ある講義

11e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第1章 

事業の全体概要

A分野によらず必要な汎用的内容の講義●ファシリテーションスキル組込みシステム分野

→クラウドコンピューティング分野実施日時 ……平成27年4月24日実施場所 ……大阪大学受講生 …8大学:41名

●ソフトウェア開発のためのドキュメンテーション入門組込みシステム分野

→ビジネスアプリケーション分野実施日時 ……平成27年8月18日実施場所 ……筑波大学受講生 …13大学:93名

●ファシリテーションスキル組込みシステム分野

→ビジネスアプリケーション分野実施日時 ……平成27年8月21日実施場所 ……公立はこだて未来大学受講生 …4大学:32名

●プレゼンテーションスキルクラウドコンピューティング分野

→ビジネスアプリケーション分野実施日時 ……平成27年8月21日実施場所 ……筑波大学受講生 …13大学:92名

●ICT分野の研究開発におけるロジカルシンキングとロジカルライティングの活用ビジネスアプリケーション分野

→セキュリティ分野実施日時 ……平成27年11月30日実施場所 ……情報セキュリティ大学院大学より配信受講生 …5大学:16名

B各分野の特任教員によって提供される特色ある講義…●アジャイルソフトウェア開発

ビジネスアプリケーション分野

→クラウドコンピューティング分野実施日時 ……平成27年5月25日実施場所 ……九州工業大学受講生 …2大学:20名

●最新情報セキュリティ理論と応用システム編セキュリティ分野

→ビジネスアプリケーション分野実施日時 ……平成27年8月26日

実施場所 ……筑波大学受講生 …9大学:56名

●クラウドエクストラクラウドコンピューティング分野

→ビジネスアプリケーション分野実施日時 ……平成27年8月28日実施場所 ……筑波大学受講生 …9大学:56名

●ハードウェアセキュリティ入門セキュリティ分野

→組込みシステム分野実施日時 ……平成27年10月6日実施場所 ……九州大学(遠隔受信)受講生 …1大学:19名

●クラウドエクストラクラウドコンピューティング分野

→セキュリティ分野実施日時 ……平成27年11月13日実施場所 ……奈良先端科学技術大学院大学より配信受講生 …2大学:11名

…●ビジネスアプリケーションのためのデータサイエンス入門ビジネスアプリケーション分野

→クラウドコンピューティング分野実施日時 ……平成27年12月9日実施場所 ……九州工業大学受講生 …2大学:15名

●スクラム開発入門ビジネスアプリケーション分野

→クラウドコンピューティング分野実施日時 ……平成27年5月13日実施場所 ……東京工業大学受講生 …1大学:16名

なお、これら以外にも「ネットワークセキュリティ」(セキュリ

ティ分野→クラウドコンピューティング分野)はアーカイブ配

信による受講生の自習として実施し、また、「分散PBL」(クラウ

ドコンピューティング分野とビジネスアプリケーション分野)

をテレビ会議システムによって共同で実施するなどの取り組

みも行われた。

12 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

1 . 8 教員養成・FD活動

各分野における教員養成・FD活動について、その概要を記

す。

■ クラウドコンピューティング分野

FDWG幹事校である東京大学を中心とし、enPiT全体、分

野、各連携大学において教員養成・FD活動を実施し、500人弱

(のべ人数)の教員が参加した。また、参加大学教員や企業

の非常勤教員と連携し、クラウドコンピューティングの基礎

から応用にわたる教材や演習課題・PBL課題の開発、改善を

行った。また、88件の公開講義を設定し、それぞれの講義を

見学することにより、各トピックスや実践教育のノウハウ・教

育方法を学んだ。さらに、補助期間終了後の円滑な継続のた

めに、予習用ビデオ教材・e-learning教材の開発を進めてい

る。

次に、各連携大学における特徴的な取り組みを述べる。東

京大学では、クラウド教育に関する教員向け特別講義(3回)、

実践教育に関するFD講演会・FD特別講義を実施し、教員の

スキルの向上と実践教育への理解を深めた。東京工業大学

では、8月末に教員2名がNEC Telecom Software Philippines

に派遣され、受講生3名とともに同社で行っている開発研修

の一部へ参加し、国際コミュニケーションを含めて、現地リ

サーチからアプリ実装までの指導法を学んでいる。大阪大

学・神戸大学では、FDワークショップや講義の実施を通じた

参加大学・連携大学教員との意見交換等を29回実施し、実践

教育に関するノウハウや教育手法の共有および講義内容の

改善・評価を行った。九州工業大学ではクラウド教育ノウハウ

の蓄積のために、クラウドの基礎を学べる教材のパッケージ

(ビデオ教材・反転教育ツール)の開発を進めている。

今年度の修了生数や参加教員数等の実績を図表1.7.1にまとめる。

分野 クラウドコンピューティング分野 セキュリティ分野 組込みシステム分野 ビジネス

アプリケーション分野 合計

修了生数 98名 113名 135名 135名 481名

参加教員数 101名 70名 82名 83名 336名

参加大学数連携大学15校を除く

18 19 35 24 96

連携企業・団体数 39 14 43 29 125

(参考)平成27年度の目標育成学生数 80名 90名 80名 85名 335名

図表1.7.1 今年度の教育実績および参加実績

■ セキュリティ分野

セキュリティ分野では今年度も継続して講義や演習によ

る理解度向上の程度と受講生から見た難易度を把握するた

め、各講義や演習でアンケートを実施し、講師へのフィード

バックを行う等、講義・演習の改善を図った。

東北大学開講の「ネットワークセキュリティ実践」では、セ

キュリティ分野の参加校である秋田県立大学、仙台高等専門

学校、参加校候補の東北電子専門学校、また、ハイブリッド

人材育成の取り組みとして学部生が受講する東北大学経済

学部の教員参加のもとで学生による成果発表会を開催し、セ

キュリティ教育の講義、演習実施方法や成果について理解を

深め、情報共有を行った。

また、分野横断講義として、組込みシステム分野に対し、セ

キュリティ分野の演習科目である「ハードウェアセキュリティ

演習」(3日間・15コマ相当)の内容を組込みシステム分野向

けの入門編「ハードウェアセキュリティ入門」として3時間の

講義に改編し、実施した。本講義では、ハードウェアの動作に

応じて機器から漏えいするサイドチャネル情報により、情報

漏えいが生じる事例、およびそのメカニズムについて詳説

するとともに、今後IoTなどの普及によりますます需要が高ま

ると予想される組込みシステムにおけるハードウェアセキュ

リティ対策の重要性について講義し、組込みシステム分野

の学生とともに教員2名が受講された。またビジネスアプリ

ケーション分野に対しても、セキュリティ分野の先進科目であ

る「最新情報セキュリティ理論と応用」の公開鍵認証基盤の

内容を入門用に2時間半に編集して提供し、ビジネスアプリ

ケーション分野の学生とともに教員2名が受講された。

13e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第1章 

事業の全体概要

■ 組込みシステム分野

連携大学間で教育コンテンツ・カリキュラムを共有して実

施するために講師を派遣して、他大学の教員を育成した。ま

た、企業からの講師派遣をスムーズに行うことを可能にする

ため、教育コンテンツ・カリキュラムを企業内教育に提供し、

企業における実務経験者に対してenPiTの紹介と講師人材の

育成を兼ねて実施した。

九州大学PEARL基本コースのPBLでは、教員だけでなく基

本コースを修了した学生を次年度に、教員の補助としてPBL

における学生の指導・アドバイスを行うTAとして活動しても

らっている。TAとしての育成指導をより的確に行うため、本

年度より「インストラクションスキル授業(2コマ)」と「ファシリ

テーションスキル授業(3コマ)」を九州大学受講生19名に対

して実施した。

名古屋大学のOJLでは、学生指導で使用する週報のフォー

マットや、ガントチャートやプロセスフロー図のツールを、教

員間で共有してOJLでの指導品質を保つようにした。OJLで学

生指導を行う名古屋大学のPM(Project…Manager)は、参加大

学の教員と共同で学生を指導しており、相互にOJLの指導方

法を研鑽している。さらに、成果発表会において、OJLに参加

する教員が一堂に会し、相互に指導方法を学びあった。

■ ビジネスアプリケーション分野

ビジネスアプリケーション分野でのFD活動は次の通りであ

る。

■平成27年2月19日に産業技術大学院大学にて、ビジネスア

プリケーション分野のenPiT関連教員を中心にenPiTでの

PBL教育についてのライトニングトークを開催した。参加教

員は嵯峨智、渡辺知恵美、木塚あゆみ、永瀬美穂、中鉢欣

秀、吉岡弘隆の6名で各教員が各々5分程度教育方針につ

いての発表を行い、各30分程度の議論を行った。

■平成27年2月28日に開催されたRegional…Scrum…Gathering…

Tokyo…2015(http://2015.scrumgatheringtokyo.org/)にて

「大学でのIT教育におけるアジャイル開発の取り組み」と

いうセッションを企画し、enPiTにおけるアジャイル開発の

導入事例および経験談やノウハウについて発表した。発表

者とその内容は次の通り。

オーガナイザ:中鉢欣秀(産業技術大学院大学)、永瀬美穂

(産業技術大学院大学)

…●産業技術大学院大学におけるモダンなソフトウェア開発

者育成:中鉢欣秀(産業技術大学院大学)

…●公立はこだて未来大学におけるデザイン志向を取り入

れたPBL教育:木塚あゆみ(公立はこだて未来大学)

…●筑波大学でのプロダクトディスカバリ演習:嵯峨智(筑波

大学)

…●enPiT…Cloud分野におけるチーム開発教育の取り組み:

森本千佳子(東京工業大学)

…●スクラム開発を取り入れたPBLで教員と学生が学んだこ

と:渡辺知恵美(筑波大学)、今川裕士(筑波大学enPiT受

講生)

■平成27年9月9日から11日にかけてファカルティディベロッ

プメント合宿を公立はこだて未来大学にて開催した。原田

騎郎氏を講師に招き、アジャイル型のソフトウェア開発方

法論として産業界に普及しつつある「Scrum」の本質の学

習と、PBLへの応用について考えるワークショップを実施し

た。

■平成27年9月1日から3日にかけて開催された教育システム

情報学会にて「実践的情報教育の手法と適用事例」という

セッションを企画し、enPiT等でのPBLによる課題解決型実

践教育について次の発表を行った。

…●PBLにおけるポートフォリオ活用による学習支援の試

み:雲井尚人、富永敦子、伊藤恵(公立はこだて未来大

学)

…●アジャイル開発の本質理解とグローバル人材育成のた

めのPBL教育:中鉢欣秀(産業技術大学院大学)

…●筑波大学におけるプロダクトディスカバリの実践:嵯峨

智、渡辺知恵美、河辺徹、三末和男、北川博之、田中二郎

(筑波大学)

14 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

平成26年度の成果報告書で報告した通り、enPiTの2年間

の取り組みに対する中間評価を「情報技術人材育成のため

の実践教育ネットワーク形成事業委員会」より受け、平成27

年3月に評価結果が公表されている。

中間評価結果としては、A判定(これまでの取り組みを継続

することによって、当初の事業目的を達成することが可能と判

断される。)であった。評価コメントは、次の通りである。

「当初の目標を上回る参加大学・受講生を得られ、本事業

の目標でもある代表校・連携大学を中心とした全国的な産学

協働のネットワークの構築拡大が着実に進んでいる。関係大

学同士の連携も密なものとなっており、PROGテスト等により

教育効果の検証を行いその結果を反映させることで、PBL等

のカリキュラムも学生にとって魅力的なものとなるよう努め

ている点も評価できる。

全体としては、当初目標を上回る成果を上げていることが

認められ、これまでの取り組みを継続することによって事業

目的を達成することが可能と判断し、評価区分はAとした。

今後は、実践教育の質の向上や支援終了後を見据えて、本

取り組みの定着と普及を図ることが必要である。加えて、情報

を利活用する企業の参加や、第三者評価組織への産業界有

識者の参画など、産業界との一層の連携強化も必要である。

上記の点については、早急に具体的な対応について検討

し、取り組むことが求められる。」

また、今後改善が期待される点を、全国的なネットワーク

形成、組織・体制の構築、大学間の役割分担、実践教育の内

容・実施方法・手段・指導体制、大学・企業等との協力、実践教

育を行う分野、実践教育の規模、他大学の学生・社会人の受

け入れ、他大学の教員の協力・FDの推進・成果の普及、当初

1 . 9 中間評価

目標の達成状況、第三者評価組織とPDCAサイクル、支援終

了後を見据えた取り組み等に対してまとめられている。

具体的な対応が指摘された「本取り組みの定着と普及」と

「産業界との一層の連携強化」に対して、平成27年度は次の

取り組みを行った。前者に対しては、幹事会、各種WG活動を

通じて、より多くの参加大学の勧誘やe-learning教材の充実

に向けた、FD活動の推進による実践的教育を実施できる教

員の育成等、さまざまな取り組みを行った。後者については、

評価・産学連携WGが主体となり、「学」と「産」で行われている

「実践教育の事例」の共有を通じて、「学」と「産」の教育に関

するズレの解消、それぞれで実施している教育内容の改善を

目的としたIT実践教育会議2015を開催した。会議は、独立行

政法人情報処理推進機構(IPA)、ベンダー企業、ユーザ企業

代表者とenPiT関連教員が参加し、平成27年11月25日に国立

情報学研究所で行われた。

また、ユーザ企業との連携強化を目的として、一般社団法

人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が主催し、平成

28年1月29日に開催された「JUAS…FUTURE…ASPECT…2016…ワク

ワクする未来へ~さがそう!…私のハピネス!」において、「パネ

ルディスカッション…大学院での学び/気付きの成果がワクワ

クする未来を呼び起こす~社会人のセンスがその可能性を

拡げられるか~」を実施した。パネルディスカッションでは、

各分野の今年度修了生がパネリストとして、何を学び、どのよ

うに社会へ関わっていきたいかを発表し、聴講者(主にユー

ザ企業のエンジニア)と活発な議論・意見交換を行った。

平成28年度も、中間評価の結果を踏まえて改善を行い、本

事業を推進していく次第である。

15e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第1章 

事業の全体概要

enPiTに求められている実践的教育を実現するために、各

分野において大学と企業等との連携が精力的に実施されて

いる。平成27年度は、これらの各分野の取り組みに加え、産業

界と分野横断的な交流を実施し、enPiTの取り組みをより広

く産業界に認知していただくことを目的とした会合を開催し

た。その概要を次に記す。

(1)IT実践教育会議2015独立行政法人情報処理推進機構(IPA)および一般社団法

人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の協力のもと、

enPiTの実践教育と産業界で実施されている実践教育の事例

を共有し、意見交換を行う会合を開催した。プログラムは図

表1.10.1の通りである。意見交換の内容については3.2.3節を

参照のこと。

1 . 10 産学連携の取り組み

13:00~

13:05

オープニング 

enPiT代表 大阪大学 井上克郎

13:05~

13:15

enPiT全体説明

大阪大学 春名修介

13:15~

14:15

enPiTにおける実践教育事例報告

●クラウドコンピューティング分野

 大阪大学…春名修介

●セキュリティ分野

 奈良先端科学技術大学院大学 猪俣敦夫

●組込みシステム分野

 東海大学 渡辺晴美

●ビジネスアプリケーション分野

 筑波大学 渡辺知恵美

14:15~

14:40enPiTにおける実践力評価手法の報告

14:40~

14:50休憩

14:50~

16:10

企業における教育と評価事例報告

①株式会社…日立製作所…情報・通信システム社

②楽天株式会社

③オリックス・システム株式会社

④株式会社インテリジェンスビジネスソリュー

ションズ

16:10~

16:55意見交換(45分)

16:55~

17:00クロージング

日時 ……平成27年11月25日 13:00~17:00会場 ……国立情報学研究所20階(2009/2010)

(2)JUASFUTUREASPECT2016への参画一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)

主催のイベントJUAS…FUTURE…ASPECT…2016において、enPiT

受講生がその実践教育体験を発表するパネルディスカッショ

ンを開催した。

■パネルディスカッション大学院での学び/気付きの成果がワクワクする未来を呼

び起こす~社会人のセンスがその可能性を拡げられるか~

●クラウドコンピューティング分野

神戸大学大学院システム情報学研究科

計算科学専攻 

博士課程前期1年 林亜梨沙

●セキュリティ分野

東北大学大学院情報科学研究科

応用情報科学専攻…曽根・水木研究室

博士課程前期1年 齋藤愛

●組込みシステム分野

名古屋大学大学院情報科学研究科

情報システム学専攻 

博士課程前期2年 小川真彩高

●ビジネスアプリケーション分野

筑波大学大学院システム情報工学研究科

コンピュータサイエンス専攻

博士課程前期1年 髙田崚介

モデレータ:

大阪大学大学院情報科学研究科

特任教授 春名修介

図表1.10.1 IT実践教育会議2015 プログラム

16 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

今後の研究・学習のモチベーションが高まった

IT関連の仕事の魅力が理解できた

将来本当に必要な実力がついた

IT関連の仕事に就きたいという気持ちが強まった

他大学の学生と切磋琢磨することができた

レベルの高い演習を体験することができた

合宿などによって普段と異なる経験ができた

自校では学べない実践的な内容を学ぶことができた

強くそう思うどちらともいえない

ある程度そう思うあまりそう思わない

0 20 40 60 80 100

50.6 36.0

37.2 34.7

29.3 47.3

28.5 38.1

21.8 39.7

21.3 54.8

20.1 49.8

16.3 49.4

(単位:%)(N = 239)

平成27年2月から3月にかけて、平成26年度にenPiTを受講

した学生に対する満足度調査を行った。enPiT事業としては

第二期の学生になる。その結果239名から回答があり次のこ

とが分かった。

1.… …平成27年度も半数以上の学生が「enPiTは非常に有益

だった」と回答し、「ある程度有益」という回答を含めると

9割以上が「有益だった」と回答があった。昨年度同様、

enPiT受講生の満足度は非常に高いことが判明した。

2.… …平成26年度は「プログラムに関する事前の情報や説明が

少なかったこと」を課題と感じる学生が多かったが、この

傾向は平成27年度にやや改善された。

3.… ……「学習・研究との両立が難しいこと」はenPiT受講時の大き

な課題となっているが、平成27年度はそのように感じた

学生がやや増加した。また、受講前にそう感じた学生は

1 . 11 動向調査

enPiT受講生の満足度調査1 .11 .1 半数を超えた。

4.… …平成27年度、新たにenPiTの受講によって「IT関連の仕事

に就きたいという気持ちが強まった」かを尋ねたところ、

約6割の学生が「そう思う」と回答。「IT関連の仕事の魅力

が理解できた」学生も約7割に上った(図表1.11.1)。

情報系専攻へのニーズ調査1 .11 . 2

国内の大学院の情報系専攻(249専攻)に対して、PBLをは

じめとする実践教育の普及状況や課題のほか、enPiTに対す

るニーズの把握等を目的として、平成27年5月にアンケート調

査を実施した。具体的には、次の項目を調査した。

※同様の調査は、平成26年5月、および平成25年2月にも行っている。

●実践教育の実施状況●実践教育の重視度●実践教育の充実化の必要性に対する認識

図表1.11.1 enPiTに参加した成果

17e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第1章 

事業の全体概要

何らかの形で参画しているまったく知らない

内容をある程度知っている無回答

名前は聞いたことがある

0 20 40 60 80 100

25.4 20.5 27.6

29.3 17.1 17.9

25.2 17.8 29.9

(単位:%)

平成25年度(N = 107)

平成26年度(N = 123)

平成27年度(N = 185)

非常に関心があるあまり関心はない

ある程度関心がある無回答

多少は関心がある

0 20 40 60 80 100

平成25年度(N = 107)

平成26年度(N = 123)

平成27年度(N = 185) 23.8 34.1 30.8

29.3 18.7 33.3

23.4 22.4 45.8

(単位:%)

図表1.11.2 情報系専攻におけるenPiTの認知度

図表1.11.3 情報系専攻におけるenPiTへの学生参加の関心度

●実践教育の実施に関する課題●enPiTの認知度●enPiTへの学生の派遣に対する関心度等

調査の結果、185件(回答率74.3%)の回答があり、次のこと

が分かった。

…●enPiTの認知率は、過去3年間の調査の中で最も高い

73.5%を達成し、enPiTは情報系専攻の間で広く浸透したと

いえる(図表1.11.2を参照)。

…●enPiTへの学生の派遣に対して関心を持つ専攻は、enPiT

非参加校にも拡大し、enPiTの有効性が広く知られるように

なった成果が表れていると考えられる(図表1.11.3)。

…●実践教育を今後さらに充実化したいという意向が、情報系

専攻の中で全体的に上昇しており、enPiTのような実践教

育を重視する取り組みが継続された成果といえる。

…●実践教育の重要性に対する認識の拡大を受け、enPiT非参

加校でも、産業界での実務経験を有する教員の採用や実

践性の高い教育を実施した教員を高く評価する動きが広

がっている。

本調査の詳細は、enPiTのWebサイト(http://www.enpit.

jp/)のpublicationsのページから「H27年度実践教育に関す

る大学向けアンケート調査結果」というタイトルで公開してい

る。

IT系企業のニーズ調査1 .11 . 3

enPiT修了生の受け入れ先となる可能性があるITベンダー

もしくはユーザ企業1,000社の人事部門・新卒採用部門に対

して、情報系出身者に対する印象のほか、enPiTの認知度や

enPiTの教育内容に対する印象等を尋ねるアンケート調査

を平成26年11月に実施した。具体的には、次の項目を調査し

た。

※同様の調査を、平成28年2月にも行っている。

●新卒採用時に重視する点●情報系専攻者に対する期待●情報系大学院での実践教育に対する関心●enPiTの認知度/認知経路●enPiTの教育内容等に対する印象・意見●enPiT修了生の採用についての興味

18 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

図表1.11.4 情報系修士卒の人材に特に重点的に学んでおいてほしい分野

IT企業1960年代以前(N = 29)IT企業1970~80年代(N = 46)IT企業1990年代以降(N = 33)ユーザ企業1950年代以前(N = 29)ユーザ企業1960年代以降(N = 12)

無回答

その他

サービスマネジメント(運用設計、システム監査等)

経営戦略(ITマネジメント、法務・倫理等)

システム戦略(業務プロセス、システム化計画等)

プロジェクトマネジメント

コンピュータシステム(デバイス、OS、ミドルウェア等)

ビジネススキル(ロジカルシンキング、プレゼン等)

開発技術(開発プロセス、要件定義、方式設計等)

技術要素(データベース、ネットワーク、セキュリティ等)

基礎理論(プログラミング、アルゴリズム等)

58.6

66.762.1

81.878.3

50.044.8

72.760.9

62.1

41.744.845.545.7

34.5

33.334.5

30.328.3

48.3

0.031.0

36.437.0

17.2

33.317.2

12.128.3

17.2

0.010.3

6.48.7

6.9

8.33.4

0.00.0

6.9

0.03.4

3.02.2

0.0

0.00.00.00.0

6.9

0.010.3

0.00.0

3.4

(単位:%)

●enPiTに対する期待や要望

調査の結果、149件(回答率14.9%)の回答があり、次のこと

が分かった。

●enPiT修了生が自社の人材ニーズを満たせるかを尋ねた

設問では、約8割の企業が「そう思う」と回答し、enPiT修了

生は多様な層の企業のニーズを満たすことが可能である

ことが分かった。

●実践教育の取り組みを企業は比較的高く評価し、特に従業

員規模の大きなIT企業ほど、enPiTの教育内容の新規性と

先端性を高く評価していることが判明した。

●伝統的な大企業よりも、小規模なIT企業や新興IT企業の方

が情報系修士卒に対して明確で具体的なニーズを有して

いることが分かった。具体的には、図表1.11.4にある通り、

創業年代別では、1990年代以降の新しい企業で「技術要

素」と回答した割合が高いことが分かった。

本調査の詳細は、enPiTのWebサイト(http://www.enpit.

jp/)のpublicationsのページから「H26年度実践教育に関す

る企業向け調査」というタイトルで公開している。

19e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第1章 

事業の全体概要

本事業の教育ネットワークを全国のより多くの大学・企業・

団体に広げるために、イベント開催や広報等のさまざまな普

及展開活動を実施してきた。主な活動は次の通りである。

(1)全体イベントの開催enPiT第1回シンポジウム

日時 平成25年3月15日 13:30~17:00場所 千里阪急ホテル

enPiT第2回シンポジウム日時 平成26年1月30日 10:00~17:00場所 慶應義塾大学 日吉キャンパス

… 協生館(藤原洋記念ホール)

enPiT第3回シンポジウム日時 平成27年1月27日 10:00~17:10場所 名古屋大学

… 東山キャンパス理学南館1階(坂田・平田ホール)

enPiT第4回シンポジウム日時 平成28年1月26日 10:00~17:00場所 つくば国際会議場

平成27年度に開催された第4回シンポジウムの詳細につ

いては第3章を参照のこと。第4回より前のシンポジウムの詳

細については平成25年度成果報告書および平成26年度成果

報告書を参照のこと。

各分野においてもさまざまな成果報告会やワークショップ

が開催されている。その詳細については第2章を参照のこと。

(2)報道発表、学会等でのプロジェクト紹介報道機関による紹介記事等(平成27年2月以降)を次にま

とめる。

…●「サイバー対策…大学発」(朝日新聞:平成27年12月26日朝

刊)

…●「九州大学実践的ICT教育シンポジウム」(日刊電波新聞:

平成27年3月19日)

…●「はこだて未来大におけるenPiT活動紹介」(函館のコミュ

ニティラジオ局「FMいるか」:平成27年8月13日)

…●「はこだて未来大のenPiT授業の紹介」(函館のコミュニ

ティラジオ局「FMいるか」:平成27年8月19日)

…●「はこだて未来大のenPiTの取り組み」(北海道新聞:平成

27年10月2日朝刊)

…●「enPiTのコロコロプラグ」(マイナビ…Web…Designing…の7

1 . 12 普及展開活動

月号IoT記事:平成27年7月)

…●ビジネスアプリケーション分野…筑波大学…チーム「さわり

隊」によって開発された「PoiPet」がMashup…Awards…11に

て学生部門賞を受賞…(平成27年11月)

…●「筑波大学におけるenPiT活動紹介」(つくばで開局してい

るラジオ「ラジオつくば」:平成27年12月)

…●「enPiT筑波大ワークショップの紹介」(常陽新聞、平成27年

12月15日朝刊)

学会等でのプロジェクト紹介やプロジェクトを通しての研

究発表は次の通りである。

…●櫻井浩子:Scrum…Master2…への道ーCloud…Spiralの取

組みー、第29回OACISシンポジウム「ICT産学連携フェア

2015」、平成27年2月

…●井上克郎:分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネッ

トワークenPiTの狙いと現状、地方における実践的人材育

成、第14回情報科学技術フォーラム(FIT2015)、平成27年9

…●井上克郎:分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネット

ワークenPiTの現状と今後、平成27年度理工系情報学科・

専攻協議会…研究会、平成27年7月

…●森本千佳子:東工大のPBLの取り組みと大学院における

PBL教育の課題、PMI(Project…Management…Institute)日本

支部…教育委員会、平成27年5月

…●森本千佳子:東京工業大学の実践的IT人材育成の取り組

み、情報サービス産業協会(JISA)、平成27年8月

…●Ch ikako … Mor imoto , … A … S tudy … fo r … S t ruc tu re … o f…

Communication… Skill… -… The…Difference… Between… IT…

Students…and…Non-IT…Students…–,…ICEPS2015,…2015.8.

…●Atsuhiro…Goto:”Cyber-Security… Education…and… IPSJ…

Information…Processing…Society…of… Japan”,…KIISE(the…

Korean… Inst i tute… of … Information… Scient ists … and…

Engineers),2015.12

…●Masato…Yamanouchi,…et…al.:…“A…remote…security…exercise…

system… for… beginners… considering… scalability… and…

simplicity",…ACDT2016,…2016.1

…●後藤厚宏:重要インフラ等のセキュリティへの取組みと人

材育成、IoTセキュリティウィークin…沖縄…2015シンポジウ

ム、平成27年12月

…●砂原秀樹:我が国のサイバーセキュリティ研究と人材育

成、日本学術会議公開シンポジウム「サイバーセキュリティ

と実践人材育成」、平成27年11月

…●若月里香:情報セキュリティ大学院大学におけるデジタル

フォレンジック演習、デジタル・フォレンジック研究会…DF人

20 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

材育成…分科会、平成27年6月

…●森直彦他:enPiT-Securityの教育プログラム、学会誌「安全

工学」…情報セキュリティ特集号…vol.54…No.6(平成27年)

…●猪俣敦夫:サイバーセキュリティ入門-私たちを取り巻く光

と闇-、共立出版、平成28年2月

…●砂原秀樹:慶應義塾大学における事例紹介:イノベーター

ワークショップ、情報処理推進機構、第2回高度IT人材育成

産学連絡会、平成27年7月

…●福田晃:enPiT組込みシステム分野九州大学事業の紹介、

AXIES2015大学ICT推進協議会、平成27年12月

…●高田広章:enPiT組込みシステム分野 名古屋大学事業の

紹介、AXIES2015大学ICT推進協議会、平成27年12月

…●毛利幸雄:enPiTにおけるファシリテーションスキル授業の

実施と評価、日本ソフトウェア科学会第32回大会、平成27

年9月

…●毛利幸雄:enPiT「分野・地域を越えた実践的情報教育協働

ネットワーク」におけるファシリテーションスキル授業の実

践報告(実施・評価・効果)、FORCE2015ソフトウェア信頼性

研究会、平成27年11月

…●細合晋太郎:自律走行ロボットを用いたIoT開発PBLに向け

た教材開発、情報処理学会…ESS2015、平成27年10月

…●細合晋太郎:enPiT…emb/PEARL:…ロボットIoTシステムを題

材としたPBL教材、第29回…SEA教育ワークショップ2015、平

成27年10月

…●大木遼太他:スマートフォンとクラウドを利用したインタ

ラクティブディスプレイシステムの提案.…インタラクション

2015、平成27年3月

…●Satoshi…Saga,…et…al.:…AR-Technology-Based…Locationing…

System…for…Interactive…Content.…HCI…International…2015.1…

…●渡辺知恵美他:顧客経験マップを利用したポスター案内ア

プリの顧客行動分析、第7回データ工学と情報マネジメン

トに関するフォーラム(DEIM2015)、平成27年3月

…●嵯峨智他:筑波大学におけるプロダクトディスカバリーの

実践、教育システム情報学会、平成27年9月

…●嵯峨智他:筑波大学におけるプロダクトディスカバリーの

事例紹介とその評価、日本ソフトウェア科学会全国大会、

平成27年9月

…●渡辺知恵美他:システム開発系PBL教育での組織的メンタ

リングのための情報共有、研究報告ドキュメントコミュニ

ケーション(DC)、平成27年12月

…●永瀬美穂:enPiTの紹介、QCon…Tokyo…2015…Conference.…

平成27年4月

…●永瀬美穂:enPiTの紹介、ハッカーズチャンプルー2015カン

ファレンス、平成27年6月

…●土屋陽介:レゴマインドストームを利用した慢性的な小児

患者のためのサポートシステム、第33回日本ロボット学会

学術講演会、平成27年9月

…●Yosuke… Tsuchiya:… Robot… Services…Development…by…

International…Collaborative…PBL…(Project…Based…Learning)…

with…Universities…in…Three…Countries,……SII2015,…2015.12

…●大場みち子:情報デザイン手法を用いた高度ICT人材育成

教育プログラムの開発、情報処理推進機構、第2回高度IT

人材育成産学連絡会、平成27年7月

さらに、本教育ネットワークを研究コミュニティとしても発

展させてゆくために、平成26年度に日本ソフトウェア科学会

に研究会(実践的IT教育研究会:略称rePiT、レピット)が発足

している。これまでに日本ソフトウェア科学会全国大会での

rePiTセッション、研究会のシンポジウムとしてrePiTシンポジ

ウムを開催している。平成27年度のrePiTシンポジウムは次の

プログラムで開催された。

日時 平成28年2月15日 13:00~16:30場所 慶應義塾大学 日吉キャンパス

プログラム 基調講演 「実践的IT教育とAI」

公立はこだて未来大学 システム情報科学部 

教授 平田圭二

講演…「ハイブリッド人材育成:イノベーターワークショッ

プ」

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科

特任助教 佐藤千尋

パネルディスカッション

「連携ネットワークによる学部教育とは」

座長 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科

教授 砂原秀樹

(3)他省庁との連携活動等関係官庁、学会、団体等との連携活動は次の通りである。

…●内閣官房…サイバーセキュリティ戦略本部…普及啓発・人材

育成専門調査会への参加(委員:後藤厚宏)

…●内閣府:情報セキュリティ社会推進協議会…産学官人材育

成WGへの参加(田中英彦、後藤厚宏、曽根秀昭、篠田陽

一、猪俣敦夫)

…●ETNET(一般社団法人…情報処理学会)におけるenPiT組込

みセッションの設置や研究発表(平成24年~)

…●CeFIL連携企業からの講師人材派遣や、受講生へのCeFIL

連携企業へのインターンシップ派遣協力(平成24年~)

…●文部科学省グローバルアントレプレナー育成促進事業

(EDGEプログラム)の東京工業大学における教育プログ

ラム(チーム思考越境型アントレプレナー育成プログラム:

略称…CBEC)と連携

(4)広報活動広報戦略WGと各分野の関係者、国立情報学研究所GRACE

センターが中心となり、Webサイト・Twitter・Facebook等で

の情報発信、ポスター・パンフレット(英語版も含む)の配布、

ニュースレターやメールマガジンの発行等の広報活動を

21e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第1章 

事業の全体概要各分野のイベントや参加募集情報の概要は次の通りであ

る。

1 . 13 イベント・募集情報

■ クラウドコンピューティング分野

■イベント

クラウド東日本

平成27年度

東京大学クラウド実践工房テーマ発表会(平成27年10月16日、東京大学弥生キャンパス)成果報告会(平成28年1月8日、東京大学弥生キャンパス)冬合宿(平成28年2月17日~19日、東京大学弥生キャンパス)教員向け特別講義「Amazon…Web…Servicesを用いたクラウドシステムアーキテクチャ設計入門」(平成27年8月3日~7日、東京大学弥生キャンパス)教員向け特別講義「Amazon…Web…Servicesを用いたクラウドシステムアーキテクチャ設計入門」(平成27年8月3日~7日、国立情報学研究所)教員向け特別講義「クラウドを活用したモバイルアプリケーション開発実習」(平成28年1月29日、国立情報学研究所)実践教育に関する…FD…講演会(平成28年2月10日、東京大学本郷キャンパス)

東京工業大学中間発表会(平成27年7月22日)グローバルシステム開発研修(平成27年8月30日~9月12日)夏合宿(平成27年9月28日~30日)成果物発表会(平成27年11月25日)成果展覧会(平成27年12月15日~16日)

平成28年度

東京大学クラウド実践工房テーマ発表会(平成28年10月頃)クラウド実践工房成果報告会(平成29年1月頃)冬合宿(平成29年2月頃)

東京工業大学中間発表会(平成28年7月頃)成果物発表会(平成28年11月頃)成果展覧会(平成28年12月頃)

クラウド西日本

平成27年度

大阪大学・神戸大学合宿成果報告会(平成27年8月21日、大阪大学中之島センター)AWSセミナー「Amazon…Web…Servicesで学ぶクラウドの最先端」(平成27年8月31日、立命館大学エポック21)分散PBL課題1成果報告会(平成27年10月16日、大阪大学中之島センター)「データを用いたサービスプランニングワークショップ」(平成27年10月30日、楽天大阪支社)分散PBL課題2成果報告会(平成27年11月13日、大阪大学中之島センター)分散PBL課題3成果報告会(平成27年11月27日、大阪大学中之島センター)分散PBL全体成果報告会(平成27年12月4日、大阪大学中之島センター)教材作成・ワークショップ等のFD活動28回九州工業大学分散PBL成果報告会(平成28年2月3日、Rudies…Cafe)

平成28年度

大阪大学・神戸大学合宿、分散PBLの成果報告会(平成28年8月・10月・11月・12月頃)教材作成・ワークショップ等のFD活動(3回程度実施予定)九州工業大学分散PBL成果報告会(平成29年1月頃)

■募集情報大阪大学・神戸大学募集時期 … 平成28年4月募集対象 … 修士1年、社会人可定員 … 最大35名

応募方法 … …連携・参加大学教務・大学院係に申込書を提出問い合わせ先 … Cloud…Spiral事務局

… E-mail…▶…[email protected]

東京大学平成28年4月、研究科の全体ガイダンスに合わせ説明会を開

催する。問い合わせ先 … 東京大学 enPiT事務局

… TEL…▶…03-5841-4110

… E-mail…▶…[email protected]

行った。広報戦略WGの活動については第3章を参照のこと。

また、各分野でもさまざまな広報活動を実施している。

22 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

■ セキュリティ分野

平成27年度

連携大学・参加大学でのガイダンス(平成27年4月)セキュリティ分野運営委員会(平成27年8月を除く毎月)連携企業ワークショップとインターンシップガイダンス実施(平成27年5月)アドバイザー委員による実践演習視察とフィードバック(平成27年7月~9月)連携大学5拠点での分野シンポジウム・修了認定式(平成28年3月)アドバイザー委員会(平成28年3月)

平成28年度

連携大学・参加大学でのガイダンス(平成28年4月)セキュリティ分野運営委員会(平成28年8月を除く毎月)連携企業ワークショップとインターンシップガイダンス実施(平成28年4月~5月)アドバイザー委員による実践演習視察とフィードバック(平成28年6月~12月)連携大学5拠点での分野シンポジウム・修了認定式(平成29年3月)アドバイザー委員会(平成29年3月)

■イベント

■募集情報各連携大学で平成28年4月上旬に募集ガイダンスを実施。

演習によっては事前選考が行われる場合があるため、本

募集に応募する際は早めに担当教員に相談をする必要があ

る。詳細はWebサイトにて公開。Webサイト … http://www.seccap.jp/

実践セキュリティ人材育成コース(SecCap)は主として修

士1年生の受講を想定し、通年のプログラムとして実施する。

各連携大学におけるSecCapコースの修了要件など運営全

般についての問い合わせ先は各大学のSecCap担当まで。

■ 組込みシステム分野

■イベント

九州大学PEARLでは、平成28年度の第1弾であるスプリン

グスクールを平成28年4月23日~30日(予定)で企画検討中

である。名古屋大学OJLでは、平成28年7月1日(予定)に事業

運営委員会を開催し、基本コースのテーマと受講生を承認す

る。夏期の短期合宿は、平成28年8月22日~26日と9月5日~

9日の2週間を計画している。各種イベントの予定・確定情報

は、随時、Webサイトに掲示し、メール連絡網の方々にお知ら

せしていく。

■募集情報参加大学・学生の募集時期は、平成28年度の九州大学

PEARLは、ライトウェイトコース、基本コース、発展コース、い

平成27年度

九州大学PEARLスプリングスクール(平成27年5月9日~16日、九州大学伊都キャンパス・東海大学高輪キャンパス)九州大学PEARLサマースクール前半(平成27年8月22日~29日、東海大学高輪キャンパス)名古屋大学OJLサマースクール前半…with…SWEST16(平成27年8月24日~26日、名古屋大学東山キャンパスおよび、8月27日~28日、岐阜県下呂市)名古屋大学OJLサマースクール後半(平成27年9月7日~11日、名古屋大学東山キャンパス)九州大学PEARLサマースクール後半(平成27年10月20日~22日、早稲田大学グリーン・コンピューティング研究機構)名古屋大学OJL発展コース成果発表会(平成27年12月7日~8日)九州大学enPiT-Emb成果発表会(平成28年2月23日)名古屋大学OJL基本コース成果発表/次期発展コース合宿(平成28年2月29日~3月2日)

平成28年度

九州大学PEARLスプリングスクール(4月23日~30日[予定])名古屋大学OJLサマースクール(8月~9月)九州大学PEARLサマースクール(8月22日~26日、9月5日~9日の2週間[予定])組込みシステム教育シンポジウム(平成28年10月~平成29年3月)最終成果の公表

東京工業大学募集時期 … 平成28年4月募集対象 … 修士1年、社会人可定員 … 最大25名

応募方法 … …連携・参加大学教務・大学院係、関連研究室に申

込書を提出、研究科オリエンテーションにて説

明、配布問い合わせ先 … …Cloud…Bauhaus事務局…

E-mail…▶…[email protected]……

URL…▶…http://www.itpro.titech.ac.jp

九州工業大学募集時期 … 平成28年4月募集対象 … 修士1年定員 … 最大15名

応募方法 … …九州工業大学情報工学部大学院係に申込書を提

出問い合わせ先 … Cloud…Q9事務局

… E-mail…▶…[email protected]

問い合わせ先 … …情報セキュリティ大学院大学…E-mail…▶…[email protected]

東北大学…E-mail…▶…[email protected]

北陸先端科学技術大学院大学…E-mail…▶…[email protected]

奈良先端科学技術大学院大学…E-mail…▶…[email protected]

慶應義塾大学…E-mail…▶…[email protected]

23e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第1章 

事業の全体概要

■ ビジネスアプリケーション分野

平成27年度

筑波大学enPiT-BizAppワークショップ(平成27年12月)筑波大学enPiT分散PBL成果発表会(平成28年2月)産業技術大学院大学分散PBL成果発表会(平成28年2月)公立はこだて未来大学分散PBL成果発表会(平成27年12月)第3回ビジネスアプリケーション分野ワークショップ(平成28年2月)

平成28年度

筑波大学enPiT-BizAppワークショップ(平成28年12月)筑波大学enPiT分散PBL成果発表会(平成29年2月)産業技術大学院大学分散PBL成果発表会(平成29年2月)公立はこだて未来大学分散PBL成果発表会(平成28年12月)第4回ビジネスアプリケーション分野ワークショップ(平成29年2月)

毎年度 ビジネスアプリケーション分野ワークショップ

■イベント

■募集情報連携大学、参加予定大学を含め、情報系の大学院に在籍し

ている大学院学生、情報系の学部レベルの基礎教育を習得

している受講希望者、情報系企業における実務経験を有する

受講希望者を対象とし、受講生募集を平成28年3月~4月頃

に行う予定である。

応募者には、指定する基礎知識を必要に応じて短期集中

合宿までに学習してもらい、前提知識の習得状況の審査に合

格することで、短期集中合宿への参加および分散PBLの受講

を認める(定員を超えた場合はさらに選抜を行う)。なお、前

提知識の習得状況の確認は、連携大学学生については指定

科目の履修実績により、その他の受講希望者については指定

科目と同等の内容の履修実績によって行う。

●平成28年4月~5月 受講生決定、受講者説明会実施

●平成28年6月 短期集中合宿参加のための前提知識習得

状況審査

募集案内や参加・応募方法など詳細は、Webサイトにて公

開する。

ずれも平成28年2月から短期集中合宿(スプリングスクール、

4月)開始前までである。平成28年度の名古屋大学OJLへの受

講生の募集時期は、基本コースは平成28年5月~6月、ライト

ウェイトコースは平成28年7月~8月、発展コースは平成28年

1月~2月である。Webサイト … http://emb.enpit.jp/問い合わせ先 …九州大学PEARL… TEL…▶…092-802-3864

… E-mail…▶…[email protected]

… 名古屋大学OJL… TEL…▶…052-789-4228

… E-mail…▶…[email protected]

Webサイト … http://bizapp.enpit.jp/問い合わせ先 …筑波大学大学院システム情報工学研究科

コンピュータサイエンス専攻事務室enPiT担当

TEL…▶…029-853-4991

E-mail…▶…[email protected]

産業技術大学院大学産業技術大学院大学内 enPiT事務局

TEL…▶…03-3472-7833

E-mail…▶…[email protected]

公立はこだて未来大学公立はこだて未来大学内 enPiT事務局

TEL…▶…0138-34-6411

E-mail…▶…[email protected]

24 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

enPiTは、平成24年度より事業を開始し、本年度は、第三期

生を輩出した。

各分野では、これまでに実施した結果得られた知見や受

講生・教員、並びに、外部評価委員会等からのコメントに基

づき、教育プログラムの改善を進め、より洗練された授業、演

習、PBL等を行い、多くの学生に対して、実践的な情報教育を

実施できた。

当初計画では、4分野合計335名の学生の育成を目標とし

ていたが、480名を超える修了生を輩出することができた。ま

た、参加大学は96校、そしていろいろ協力をいただいている

企業や組織は125にもなっており、平成26年度よりも増加し

ている。

さらに、4分野間の連携である分野横断講義やカリキュラ

ム関係資料の蓄積整備も推進した。分野横断講義としては、

ロジカルシンキングやファシリテーション等の分野共通とし

て必要な汎用的内容の講義や特任教員によって提供される

各分野の特色ある講義を提供している。

例年通り、順調に事業を進めることができているのは、各

大学の先生方のご尽力によるものが非常に大きい。特に若

手の特任教員が中心になって、積極的に広報し、授業、演習、

PBLの設計を行って、実際にそれらを主導して学生を牽引し

ていった。学生もそれらの教育に手応えを感じており、アン

ケート等では、満足度が非常に高い。

また、企業や外部団体の方々からは、非常勤講師や演習課

題の指導、発表会でのコメント、さらに本事業全体への助言

など、多岐にわたり非常に多くのご支援を引き続きいただい

ている。このような支援は、本事業を継続的に、また、効果的

に進めるためには不可欠であったと思われる。

来年も引き続き、最終年度の目標の修了生400名を達成す

る予定である。これまで参加がなかった大学に対しても、積

極的に情報提供を行い、enPiTの魅力を理解してもらって、学

生参加を促していく予定である。中間評価では指摘を受けた

が、徐々に情報技術の利活用を行ういわゆるユーザ企業の

参画も増えてきており、連携企業の約3分の1はユーザ企業と

なっている。今後もより多く参画していただき、ユーザの視点

でシステムやアプリケーション開発が行える人材の育成を推

進したい。

また、いわゆるハイブリッド人材(非情報系知識や人文系

知識を背景として持つ人材)に対する実践的情報教育の試行

も継続している。近年求められている、さまざまな分野におい

て情報技術を利用したイノベーションを起こすことができる

人材の育成に応えるためのものであり、平成28年度も、ハイ

ブリッド人材に対する教育を進めていく予定である。

現在、本年度enPiTを修了した学生にとっては、その後の進

路を考える重要な時期になっている。修了生のその後の活躍

は、enPiTの大きな成果指標である。その就職活動にenPiTの

ブランドが有効に働くことを強く期待する。

平成28年度は、enPiTの最終年度になっている。最終目標

の実現と平成29年度以降の継続的な実施に向けて、活動を

推進していく所存である。

最後に、enPiTに関わりご協力いただいた大学、企業、組織

団体の方々、そして文部科学省に深く感謝する。

1 . 14 今年度の総括

A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章

実践教育の取り組み状況

26 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

2 .1 クラウドコンピューティング分野

取り組みの概要2 .1 .1

クラウドコンピューティング分野は、いわゆるビッグデータ

の分析手法、新しいビジネス分野の創出といった社会の具体

的な課題を、クラウド技術を活用し解決できる人材の育成を

目標としている。

その目標を実現するために、本分野の連携大学である大

阪大学、東京大学、東京工業大学、神戸大学、九州工業大学で

は、具体的な育成ポリシーとして、「クラウド技術を理解し、必

要なスキルと知識について他者と議論し、実際のクラウド環

境を用いて大規模な処理や効率の良い処理を提供するアプ

リケーション・情報システム開発ができる人材育成」を目指

す。

具体的には、クラウドコンピューティング技術やプロジェク

トマネジメント等の実践的なソフトウェア開発技術を有する

連携企業の専門家、ソフトウェア工学の分野において最新の

研究を進めている連携大学、参加大学の専門家の力を結集

することにより、クラウドコンピューティング、プロジェクトマ

ネジメント、ソフトウェア工学について教育・修得すべき内容

を体系的・実践的に取り込んだ教育プログラムを構築した。

また、本教育プログラムでは、情報技術を利活用して新しい

ものやサービスを生み出すという視点も重視されていること

を鑑み、企業の実務家講師によるクラウドシステムの事例を

ビジネス面を含め紹介する講義やクラウドシステムの利活用

をする際に必須な知識として、ロジカルシンキングやクリエイ

ティブシンキング等の演習を重視した。

本プロジェクトのフレームワークである基礎知識学習、短

期集中合宿、分散PBLの3つの内容に従った教育が博士課程

前期の1年間で実施できるように教育プログラムを設計し

た。基礎知識学習では、短期集中合宿を行う上で必要となる

クラウドコンピューティング、プロジェクトマネジメント、ソフ

トウェア工学に関する技術を習得し、短期集中合宿では複数

の学生がチームを組み、アプリケーション開発のPBLやクラウ

ドコンピューティングに関する応用技術を学ぶ。最後に、分散

PBLにおいて、クラウドならではの特徴を備えたアプリケー

ションの開発、クラウドを利用したビジネスモデル提案等を

行う。なお、短期集中合宿は、東日本(東京大学、東京工業大

学)と西日本(大阪大学、神戸大学、九州工業大学)でそれぞ

れ実施した。

育成目標は、最終(平成28)年度で100名(うち30名は連携

大学以外の学生)であり、東日本、西日本でそれぞれ50名(う

ち30名は連携大学以外の学生)である。平成27年度は、修了

生数98名(うち41名が参加大学、5名が社会人)であった。

また、分野内で教材作成やFD等のワークショップを開催

し、クラウドコンピューティングに関する教育の普及を目指す

とともに、本分野で開発するクラウドコンピューティングに関

する教材コンテンツは、連携諸機関を通じて、広く一般に公開

して、利用の促進を目指す。

学習・教育目標2 .1 . 2

2.1.1節で述べた通り、本分野では「いわゆるビッグデータ

の分析手法、新しいビジネス分野の創出といった社会の具体

的な課題を、クラウド技術を活用し解決できる人材」の育成

を目標としている。この目標を実現するために、基礎知識学

習、短期集中合宿、分散PBLでは、次のような方針でカリキュ

ラムを設計している。

(1)基礎知識学習受講生がクラウド技術を理解し、必要なスキルと知識につ

いて他者と議論し、実際のIaaS環境を用いて大規模な処理や

効率の良い処理を提供するアプリケーション・情報システム

開発の準備ができるようになることを目的として、次のような

項目を学習する。クラウド概要とデスクトップ仮想化技術、ク

ラウドソフトウェア開発プロセス、ファシリテーションスキル、

要求分析、UML、プレゼンテーションスキル、SQLとNoSQL、

Webアプリケーション開発、ソフトウェアテスト、IaaS概要、ク

ラウドアプリケーション開発支援環境。

(2)短期集中合宿チーム開発を行う上で必要となる、プロジェクトマネジメン

ト、ソフトウェア開発技術を学んだ上で、クラウド環境を利用

したアプリケーション開発を複数人から構成されるチームで

実施する。また、負荷分散、大規模データ処理等、クラウドに

関する発展的な内容やクラウドコンピューティングに関する

最新事例についても学ぶ。

27e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

(3)分散PBL基礎知識学習、短期集中合宿で得た知識をもとに、チーム

でアプリケーション・情報システムの分散開発、クラウドを利

用したビジネスモデル提案等を実施する。

カリキュラムを通して、国立情報学研究所のedubase

Cloudや連携大学で導入したプライベートクラウド環境を利

用する。

クラウドコンピューティング分野全体としての達成目標は、

最終年度で、育成学生数100名(うち連携大学以外の学生数

30名)、参加大学数10校、FDへの参加教員数20名である。

教育内容2 .1 . 3

2.1.2節で述べた学習・教育目標に基づいて、各連携大学で

実施したカリキュラムについて述べる。

大阪大学/神戸大学

教育プログラム名称をCloud Spiral(Cloud Specialist

Program Initiative for Reality-based Advanced Learning)と

名付け、教育コースを大阪大学で起ち上げ、神戸大学、参加

大学の教員、連携企業と協働して実施する。また、短期集中合

宿は九州工業大学の受講生も参加した。

コースは次の5科目で構成される。

●●クラウド開発基礎(1学期、2単位)

●●クラウド基礎PBL(1学期、1単位)

●●クラウド開発応用(1学期、1単位)

●●クラウド発展PBL(2学期、2単位)

●●クラウド開発演習(通年、2単位)

実施した教育プログラムのスケジュールを図表2.1.1に示す。

(1)基礎知識学習受講生がクラウド技術を理解し、必要なスキルと知識につ

いて他者と議論し、実際のIaaS環境を用いて大規模な処理や

効率の良い処理を提供するアプリケーション・情報システム

開発の準備ができるようになることを目的として、次のような

項目を学習する。クラウド概要とデスクトップ仮想化技術、ク

ラウドソフトウェア開発プロセス、ファシリテーションスキル、

要求分析、UML、Scrum、チケット駆動開発とプロジェクト管

理、プレゼンテーションスキル、SQLとNoSQL、Webアプリ

ケーション開発、ソフトウェアテスト、IaaS概要とCloudStack、

クラウドアプリケーション開発支援環境。

(2)短期集中合宿複数人でチームを組み、アプリケーション・情報システムを

クラウド上で実装する。また、分散PBLで使うモバイル用Web

アプリケーション、Hadoop/MapReduceを用いたビッグデー

タ処理等について学ぶ。

(3)分散PBL基礎知識、短期集中合宿で得た知識をもとに、チームで次

の3課題を行う。

●クラウドを活用したビジネスの創出(2週間)

●Webアプリケーション開発コンペ(4週間)

●ビッグデータに基づくコンビニ経営戦略(2週間)

クラウド開発基礎、クラウド開発演習(1学期分)が基礎知

識学習に、クラウド基礎PBLとクラウド開発応用が短期集中合

宿に、クラウド発展PBLとクラウド開発演習(2学期分)が分散

PBLに、それぞれ対応する。

授業は、主に大阪大学中之島センターで隔週に行う。

日程 講義内容 対応

4月17日オリエンテーション

基礎知識学習

クラウド概要とクラウドソフトウェア開発プロセス

4月24日 ファシリテーションスキル

5月8日プレゼンテーションスキル

UMLを用いたユースケース駆動開発

5月22日UMLを用いたユースケース駆動開発

SQLとNoSQL

6月5日

SQLとNoSQL

Webアプリケーション開発~JavaScript、DWR、Java、MongoDB~

6月19日

Webアプリケーション開発~JavaScript、DWR、Java、MongoDB~

ソフトウェアテスト

7月3日ソフトウェアテスト

Scrum

7月10日

Scrumとチケット駆動開発実践(PBL)

ソフトウェア開発プロセスとDoDおよび仕様書の読み方

7月24日継続的チーム開発手法

継続的チーム開発演習

8月17日 Webアプリケーション開発準備

短期集中合宿

8月18日 Webアプリケーション開発

8月19日 Webアプリケーション開発

8月20日 Webアプリケーション開発

8月21日 開発全体の振り返り

8月31日AWSハンズオン・クラウドを利用した大規模データ処理

9月1日 サーバサイドアプリ開発

9月2日 クラウド活用のためのWebアプリ構築

9月3日 クラウドを活用したビジネス創出

10月~11月ビッグデータに基づく戦略立案・意思決定、クラウドを活用したWebアプリケーションの開発、クラウドビジネス創出

分散PBL12月4日 最終成果報告会

図表2.1.1● 平成27年度 Cloud●Spiralスケジュール

28 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

東京大学

クラウド教育コースは次の7科目および短期集中合宿で構

成される。

●●クラウドコンピューティング基礎論クラウドコンピューティングに必要な基礎的な知識を学

ぶ。データセンターネットワークに起因する問題をとりあげ、

原因特定までのアプローチ、解決方法について実用・学術両

面から解説、演習を通じてデータセンターにおける問題を体

得する。夏学期2セメスター週1回、合計30時間の講義。

●●Webプログラミング言語クラウドコンピューティングの基盤となるソフトウェアは、

JavaやRubyといった比較的新しい言語で書かれていること

が多い。これらの言語のデザインやそこに組み込まれている

言語機構を学ぶ。また、それらの言語による並列分散システ

ムを構築するためのフレームワークや、その背後にあるソフ

トウェア工学的な考え方を学ぶ。夏学期2セメスター週1回、

合計30時間の講義。

●●クラウド基盤構築Linuxとオープンソースソフトウェア(OpenStack)を利用し

た、IaaS(Infrastructure as a Service)クラウド基盤構築技術

を講義する。前提となるサーバ/ネットワーク技術について

の基礎的な解説と演習を実施した上で、実際のクラウド環境

の構築へと進む。技術要素を根本から理解し、要求に応じた

最適なクラウドのアーキテクチャを選択・構築する能力を獲

得することを目標とする。夏学期2セメスター週1回、合計30

時間の講義。

●●分散システム基礎とクラウドでの活用クラウドによるPBLの前提となるクラウドAPIを扱う。本講義

とクラウドアプリケーション開発演習は国立情報学研究所で

実施される。夏休み期間の集中講義、合計15時間の講義。

●●クラウドアプリケーション開発演習Hadoopプラットフォーム上でMapReduce等を用いて大規

模データの分散処理を行うアプリケーション開発のグループ

演習。「プログラミングコンテスト」形式で、グループ間で競い

合う。企業から講演・審査員等で協力を受ける。夏休み期間中

の集中講義、合計30時間。

●●クラウドを創るPBL(ソフトウェア・クラウド開発実践Ⅰ)部品レベルからクラウド構築を行い、受講生がグループを

作り、クラスタコンピュータの製作、基盤ソフトウェアの実装、

クラウド管理ソフトウェアの実装から、相互結合用のスイッチ

設定、セキュリティ設定までを学ぶ。夏学期2セメスター週1

回、合計30時間の講義。

●●クラウド実践道場(ソフトウェア・クラウド開発実践Ⅱ)少人数(7名まで)のグループでクラウドアプリケーションを

開発する。社会の中の問題点や課題を自ら発見し、それを解

決するクラウドソフトウェア・サービスを自ら考案・提案し、実

現するPBL(Problem/Project-Based Learning)型演習を通じ

て通常の講義や演習では得られない実践的な力を身につけ

る。複数人のチームで、プロジェクト体制および目標の設定、

実施計画、プロジェクトの実施を行う。秋学期2セメスター合

計30時間の演習。

●●短期集中合宿合宿は夏季および冬季の2回実施、このうち夏季は東京工

業大学と共同で実施した(東京工業大学の項を参照)。

冬季合宿は企業インターンなどで夏季合宿の参加が困難

な学生や本学の講義に参加が困難な他大学の学生に配慮し

て実施しているものである。合宿ではクラウドサービスを受

講生自身で部品レベルから構築することで、クラウドコン

ピューティングを支えるクラスタコンピューティング、基盤ソフ

トウェア技術、ならびに必要なセキュリティ知識を習得する。

本合宿の内容は夏学期に実施しているクラウドを創るPBLの

パッケージ化を視野に入れて実施した。2泊3日の合宿および

事前講義、合計16時間の演習。

東京工業大学

図表2.1.2に今年度のスケジュールを示す。

教育プログラム名を「Cloud Bauhaus」とし、学術的知識、

工学的技術、産業人的視点の獲得をねらいとした、基礎科目

群(4科目)、基盤ソフトウェア科目群(5科目)、ソフトウェア工

学科目群(5科目)、ソフトウェア開発科目群(14科目)を実施。

本事業でのコース中のクラウド科目や分散PBLは次の6科目

である。

前期 基礎知識学習分散PBLシステム開発プロジェクト基礎

夏休み

グローバルシステム開発研修(8月30日~9月12日)※

プレ合宿(9月13日~14日、16日~18日、24日~25日):クラウドアプリケーション開発演習、クラウドシステム基礎夏合宿(9月28日~30日):チーム開発集中演習

分散PBL(前期フォローアップ)

後期 基礎知識学習分散PBLシステム開発プロジェクト・クラウド応用

春休み冬合宿(2月15日~17日)System Development International Project (2月15日~18日、22日)

※グローバルシステム開発研修は試行科目

図表2.1.2● 平成27年度 Cloud●Bauhausスケジュール

29e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

●●システム開発プロジェクト基礎(前学期、2単位)

●●システム開発プロジェクト・クラウド応用(後学期、2単位)

●●クラウドシステム基礎(前学期、夏季短期集中合宿、1単位)

●●クラウドアプリケーション開発演習(前学期、夏季短期集中合宿、2単位)

●●チーム開発集中演習(前学期、夏季短期集中合宿、2単位)

●●System●Development●International●Project(後学期、集中開発演習、2単位)

このうち、2.1.2節で述べた方針に従うと次の内容となる。

(1)基礎知識学習ソフトウェア開発に必要なソフトウェア工学技術を学習す

るとともに、クラウド技術の基礎、活用法を学習する。具体的

には次の項目を学習する。要求分析、設計、プログラミング言

語、実装技術、テストデバッグ技法、検証技術、Webコン

ピューティング、分散処理技術、Hadoop、ビッグデータの分散

処理技術。これらを含む科目は、東京工業大学および国立情

報学研究所で開講する。

分散PBLを含めて、科目は次のような群に分類されている。

●基礎科目群プログラム理論、ソフトウェア論理学、分散アルゴリズム

論、計算機アーキテクチャ特論

●基盤ソフトウェア科目群オペレーティングシステム特論、ハイパフォーマンスコン

ピューティング、分散システム構成論、実践的並列コンピュー

ティング、クラウドコンピューティングと並列処理

●ソフトウェア工学科目群ソフトウェア設計論、情報セキュリティ特論、ソフトウェア工

学特論、プログラミング特論、ソフトウェアプロジェクトマネジ

メントと品質管理

●ソフトウェア開発科目群ソフトウェア開発演習、システム検証基礎演習、システム開

発プロジェクト基礎、システム開発プロジェクト・クラウド応

用、ソフトウェアテスト演習、チーム開発集中演習、System

Development International Project、他情報理工学インター

ンシップ等

(2)短期集中合宿クラウド技術の実践法に焦点をあて、演習を通して実践的

な大規模データの分散処理技術を習得した。短期集中合宿

には、国立情報学研究所で行ったものと、三浦海岸で行った

ものとがある。国立情報学研究所では、三浦海岸での合宿

(以下、夏合宿)に必要な知識や技術を事前に収集して教え

込むプレ合宿を実施している。プレ合宿では、国立情報学研

究所が構築、運用している教育用クラウドを演習用環境とし

て活用し、実際の事例を中心とした題材を活用することで、受

講生は、実践的な分散処理アプリケーション開発を体験し

た。その具体的な内容は次の通りである。

●●クラウドアプリケーション開発演習9月13日~14日、16日~18日 2単位(東京工業大学と電気

通信大学のみ)

Hadoop、MapReduceなどのクラウドコンピューティングで

ビッグデータを利用した開発。

国立情報学研究所で開催、東京工業大学、東京大学、電気

通信大学、慶應義塾大学から受講。

●●クラウドシステム基礎9月24日~25日 1単位

信頼性や一貫性などを考慮した分散システムの構築法

チーム開発演習。

●●チーム開発集中演習9月28日~30日 2単位

超上流工程に焦点をあて、ペルソナを用いた要求分析を

実施、ユーザ企業に対し、デモを交えたシステム提案を行っ

た。使用した方法論は、実際に企業で使用されているExテー

ブル法およびPRePモデル法で、株式会社 日立製作所から実

践者を講師として招聘し、手法の講義やチーム指導も担当教

員と協力して行った。さらに、企業講演(ワイクル株式会社、株

式会社アカリク)も実施、アジャイル開発方法論および企業で

の適応事例、並びにコンピュータサービス提供者としての心

構えを学習した。東京大学および参加大学からの受講生との

混成チームを編成し、チームビルディングおよびコミュニ

ケーションスキルを習得した。ユーザ企業である株式会社 四

季の自然舎から成果物およびプレゼンテーションについて評

価を行ってもらい、学生へのフィードバックを行った。また、開

発セッションでは、簡単なクラウドシステムの実装演習も行

なった。

なお、2月には、クラウド実装に焦点をあてた冬合宿を東京

図表2.1.3● ユーザニーズを検討(東京工業大学夏合宿)

30 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

大学と合同で実施した。夏合宿の様子を図表2.1.3、図表2.1.4

に示す。

(3)分散PBL基礎知識学習、短期集中合宿で得た知識を応用し、チーム

でAndroid/サーバアプリケーション・情報システムを分散開

発した。分散PBLに相当する科目は、「システム開発プロジェク

ト基礎」、「システム開発プロジェクト・クラウド応用」であり、

「システム開発プロジェクト基礎」は後期より開始される「シス

テム開発プロジェクト・クラウド応用」で実装する情報システ

ムの顧客開発・要求分析に主に着目した内容で、デザイン思

考や要求獲得プロセスのノウハウ習得を目的とする。後期の

「システム開発プロジェクト・クラウド応用」ではシステム構築

段階のプロジェクト管理手法やシステム開発に必要なソフト

ウェア工学の基礎に関してプロジェクト開発を通して習得す

ることを目的とする。両科目では、受講生はチームを組み、デ

ザイン思考、顧客開発、要求分析、プロジェクトの計画、設計、

実装、テスト、ドキュメント作成など、総合的な指導を受けつ

つ、系統的なソフトウェア開発の実践面への適用を習得し

た。両科目を通じて、特にシステムの社会的価値について深

く議論することで、ユーザ視点とシステムのあり方を習得し

た。分野横断授業として、ビジネスアプリケーション分野から

講師を招き、実践的なアジャイル開発についても学習した。

実施中、Logbar Inc.、株式会社オリィ研究所からの企業講演

を行った。7月22日中間発表会、11月25日成果物発表会(デモ

を含む)を経て、12月15日~16日の2日間、東京工業大学百年

記念館で成果展覧会を開催、開発プロセスと開発システムに

ついて展示とプレゼンテーションを実施、97名(うち22名が

企業、3名が他大学教員)の来場者があり、有意義なフィード

バックを得た。企業の来場者からは実践的な内容であると評

価 を い た だ い た 。成 果 発 表 会と成 果 展 覧 会 の 模 様 は

Ustreamで配信し、来場できない人にも様子がわかるように

した。成果発表会で8名、成果展覧会で10名が視聴した。図表

2.1.5、図表2.1.6に成果展覧会の様子を示す。

1月13日、20日に開発プロセスを振り返って自己評価を行う

個人発表会を開催した。Facebookで発表結果の報告を行

い、800を超えるアクセスと企業の方から現場での振り返りに

「遜色のない振り返り内容である」とのコメントを得た。

(4)グローバル教育平成27年の試行として、8月30日~9月12日にフィリピンにて

「グローバルシステム開発研修」を実施した。参加者を学内公

募し、enPiT受講生の3名が選抜された。研修前半ではグロー

バルコミュニケーションの学習を目的として、1日10時間の英

語によるコミュニケーション学習を行った。具体的にはディ

ベート、プレゼンテーション、ロールプレイング等を行った。後

半では現地の日系企業(NEC Telecom Software Philippines)

の協力を得て、現地エンジニア6名、フィリピン国立大学セブ

校の学生6名と混成チームによるシステム開発研修を実施し

た。開発テーマは「Innovative service for foreign tourists in

Cebu using android application」で、デザイン思考とリーン

キャンバスを用い、ユーザリサーチ、要求分析、仮説設定、プ

ロトタイプ作成、仮説検証を経て、ビジネスモデルのプレゼン

テーションを行った。

また、2月に「System Development International Project」

(2月15日~18日、22日開催、2単位)として、留学生と日本人学

生の英語による混成ミニPBLを実施した。学生は、クラウドシ

ステムの社会的価値に焦点をあて、ビジネスダイナミクスと

図表2.1.4● ITサービスの提案プレゼンテーション● ● (東京工業大学夏合宿)

図表2.1.5● 成果展覧会での発表の様子(東京工業大学) 図表2.1.6● 成果展覧会での発表風景(東京工業大学)

31e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

ソフトウェアライフサイクルについてPBLを活用しながら学ん

だ。分散PBL参加の学生にも参加してもらい、彼らの成果物を

ユーザ要件と開発プロセスの観点から分析し、システムの

サービス価値について討議、発表を行った。

九州工業大学

教育プログラムをCloud Q9(Qは九州、9は野球のチーム

ワークの象徴であるナインを表す)と名付け、九州工業大学

において教育コースを設ける。短期集中合宿は、大阪大学・

神戸大学によるCloud Spiralに合流して実施する。

コースは次のように3段階6科目で構成される。

(1)基礎知識学習●●クラウド開発型プロジェクト(前期、3単位)

システム開発プロセス、システムモデリング、Scrumとチ

ケット駆動開発、Webアプリケーション技術など、クラウド上

でのシステム開発に必要な知識とスキルを講義と演習で学

ぶ。

●●OSと仮想化特論(前期、2単位)

仮想マシンの作成やカーネル再構築、システムコールの作

成、カーネルモジュールの作成や仮想マシンの操作に至るま

で、クラウドに係るOSと仮想化の原理を講義と演習で学ぶ。

●●プロジェクトマネジメント特論(前期集中、2単位)

プロジェクトマネジメントの手法について、要求分析や

WBSから各種マネジメント技法、さらにはクリティカルチェー

ンプロジェクトマネジメント手法に至るまでを講義と演習で

学ぶ。

なお、これら3科目によって、Cloud Spiral(大阪大学・神戸

大学)の前期で行われている基礎知識学習とほぼ同様の内

容をカバーし、夏季の短期集中合宿での合同実施を可能にし

ている。

(2)短期集中合宿●●クラウド基礎PBL(前期[夏期集中、大阪大学開講]、1単位)

●●クラウド開発応用(前期[夏期集中、大阪大学開講]、1単位)

これらの2科目は、Cloud Spiralと合同で実施しており、内

容、実施期間とも同一である。

(3)分散PBL●●クラウド発展プロジェクト(後期、3単位)

基礎知識学習、短期集中合宿で得た知識をもとに、次の形

式で分散PBLを実施する。一部の学生はCloud Spiralの分散

PBLに合流し、発表会まで含めた完全な形で参加する。

それ以外の学生は、Cloud Q9独自のPBLとして、クラウドの

特徴を活かしたシステム(サービス)をチーム開発する。

Cloud Q9独自のPBLについても、産業界の協力を得て、発

表会を実施する。

実施体制2 .1 . 4

クラウドコンピューティング分野運営委員会を、各連携大

学の代表者から構成した。運営委員会では、教育プログラム

の内容、参加大学・連携企業の勧誘、修了認定方法、短期集中

合宿の実施等について議論した。平成27年度は4回実施し

た。

次に、各教育プログラムの実施体制についてまとめる。

大阪大学/神戸大学

連携大学である大阪大学、神戸大学の教員と参加大学、連

携企業の実務家教員が中心となり、図表2.1.1に示したプログ

ラムを実施した。参加大学として、奈良先端科学技術大学院

大学、和歌山大学、高知工科大学、大阪工業大学、京都産業大

学、立命館大学、兵庫県立大学、近畿大学が参画した。また、

連携企業として、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ、株式会社

オージス総研、株式会社 日立製作所、株式会社日立ソリュー

ションズ、株式会社 日立インフォメーションアカデミー、西日

本電信電話株式会社、ヤフー株式会社、株式会社コネクトドッ

ト、三井住友信託銀行株式会社、三菱電機株式会社、富士通

関西中部ネットテック株式会社、楽天株式会社が参画した。

上記、連携大学、参加大学、連携企業の代表者からなる

Cloud Spiral運営委員会を4回開催した。

東京大学

東京大学18名、および国立情報学研究所3名、連携企業か

らなる教員でプログラムを実施した。また、連携企業として、

株式会社ピコラボ、レッドハット株式会社、楽天株式会社、ヤ

フー株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社フ

リークアウト、株式会社富士通研究所、グーグル株式会社、日

本マイクロソフト株式会社、エキサイト株式会社、株式会社ド

ワンゴ、株式会社 SEプラスが参画した。情報理工学系研究科

6専攻の教員で構成される運営委員会を開催した。

本学では学生のセキュリティ分野の受講意欲が高いことか

ら、平成25年度よりセキュリティ分野の受講説明会を4月に開

催している。加えて平成26年度は情報セキュリティ大学院大

学との単位互換を本格的に開始してきた。平成27年度は受

講説明会の段階で単位互換制度を示し、受講意欲の維持を

図った。

東京工業大学

実施研究科である情報理工学研究科のうち、計算工学専攻

と数理計算科学専攻の専任教員8名と特任教員2名で運営委

32 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

員会を構成し、カリキュラムや実施状況のチェックや改善を

検討した。運営委員会は毎月1回、計11回開催した。教育の実

施状況は図表2.1.2の通りである。短期集中合宿では、3名の

教員からなる合宿WGを組織し、担当教員で内容を検討し、実

施した。特に夏合宿、冬合宿は、東京大学との共同開催であ

るため、東京大学の担当WGと内容を協議検討した。参加大

学は早稲田大学、電気通信大学、東京電機大学、東海大学、明

治大学、慶應義塾大学、香川大学、お茶の水女子大学であり、

先方教員とは夏合宿について情報や意見交換を行った。連

携企業・団体としての参画は株式会社 エヌ・ティ・ティ・データ

・ユニバーシティ、新日鉄住金ソリューションズ株式会社、株

式会社フォーマルテック、日本マイクロソフト株式会社、国立

情報学研究所、株式会社 四季の自然舎、株式会社リコー、株

式会社野村総合研究所、株式会社ソニックガーデン、株式会

社 日立製作所、株式会社ヴァル研究所で、非常勤講師の派

遣、合宿・成果報告会での講演や学生の作品・活動の評価、教

育内容の助言などを行った。

企業からの分散PBL、夏合宿での講演者の選定、その講演

内容については、企業とつながりの深い特任教員を中心に策

定し、運営委員会で検討した。結果的に、学生には企業の経

営管理から最先端の実践的クラウド技術まで、幅広い情報や

知識が提供できた。

九州工業大学

本年度より参加大学として学生を派遣いただいた九州産

業大学の教員を加え、Cloud Spiralおよび連携企業の実務家

教員とCloud Q9教員が教育を担当した。また、長崎県立大学

の教員らと今後の教育連携について打ち合わせを行ってい

る。連携企業として、Emotion Intelligence株式会社、日本オラ

クル株式会社、株式会社セールスフォース・ドットコム、楽天

株式会社、株式会社日立システムズ、株式会社IDCフロンティ

ア、株式会社 ジュントス、株式会社ハウインターナショナル、

株式会社シマンテックが参画した(図表2.1.7)。

教育実績2 .1 . 5

大阪大学/神戸大学

連携大学・参加大学から41名の博士課程前期1年が受講

し、39名が修了した。39名の内訳は、大阪大学11名、神戸大学

5名、奈良先端科学技術大学院大学7名、和歌山大学3名、高

知工科大学2名、大阪工業大学3名、京都産業大学4名、立命

館大学3名、兵庫県立大学1名である。また、九州工業大学か

ら短期集中合宿に5名が、分散PBLに1名が、それぞれ参加した

(図表2.1.8)。

また、短期集中合宿の一環として、平成27年8月31日に

AWSセミナー「Amazon Web Servicesで学ぶクラウドの最先

端」を立命館大学にて開催し、61名の参加があった(図表

2.1.9)。

さらに、分散PBLの一環として、平成27年10月30日に、連携

企業である楽天株式会社の協力で、「データを用いたサービ

スプランニングワークショップ」を楽天株式会社 大阪支社に

て開催し、47名の参加があった(図表2.1.10)。

図表2.1.7● 連携企業の実務家講師による授業

図表2.1.8● 西日本短期集中合宿の様子 図表2.1.9● セミナーの様子

33e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

東京大学

情報理工学研究科(6専攻)の博士課程前期1年を中心にプ

ログラムを受講し、16名が修了した。前半(夏学期)分のPBL

の受講/修了生は43名であり、最終的には半数弱の受講生

がPBLを修了している。

夏季集中講義・合宿は国立情報学研究所、東京工業大学と

共同で実施した。夏季集中合宿には東京大学から2名が参

加、全員が修了した。参加希望者からは企業インターンとの

重複を理由とする辞退が多く見られる。

冬季集中合宿には8名が参加した。本学に加え、お茶の水

女子大学、神戸大学、兵庫県立大学、津田塾大学、東京電機大

学の学生が参加した。

東京工業大学

東京工業大学および参加大学からは合計40名が参加し、う

ち1名が学部4年であった。本学からの修士1年の参加者は17

名であり、平成28年度には、修士課程修了見込みである。参

加大学からは、早稲田大学2名、電気通信大学5名、東京電機

大学2名、東海大学4名、明治大学1名、慶應義塾大学1名、お

茶の水女子大学2名、香川大学1名で合計18名であった。社会

人は、新日鉄住金ソリューションズ株式会社2名、株式会社

ヴァル研究所1名で、彼らは学生に混ざってチームに参加し

た。プレ合宿、夏合宿については他大学との単位互換協定に

基づいて参加大学の学生に単位を出した。

九州工業大学

本年度は、参加大学学生を含む5名の博士課程前期1年が

コースを受講し、4名が修了した(図表2.1.11)。分散PBLにお

いて、1名の学生はCloud SpiralのPBLに参加した。

参加大学学生を含む学生(4名)は次のテーマでのPBLを

行った(図表2.1.12)。

●●Cloud●HubCloudを活用したライフログ収集システムで、ユーザが許

可したあらゆるデータを自動的に記録し、ライフログとして

記憶し、簡単に振り返ることを可能とした。

本成果は、平成28年1月26日につくば国際会議場にて開催

された第4回enPiTシンポジウムにてクラウドコンピューティ

ング分野の活動報告として報告し、さらに2月3日に地域(本学

の所在する飯塚市)のIT交流会であるe-ZUKA Tech Nightに

おいて、e-ZUKA Tech Evening「Cloud Q9最終成果発表会」と

して発表した。発表には、IT企業関係者(株式会社セールス

フォース・ドットコム)、他大学教員、他大学学生、九州工業大

学のコース以外の学生等も参加した。

図表2.1.10● ワークショップの様子

図表2.1.11● 参加大学学生を交えた● ● 「クラウド開発型プロジェクト」の実習の様子

図表2.1.12● 参加大学学生を交えた● ● 「クラウド発展型PBL」の実習の様子

34 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

教員養成・FD活動2 .1 . 6

教育プログラムで開講する授業への参加や教材作成・

FDWGの取り組みを通じて、教材作成のノウハウ、クラウドコ

ンピューティングに関する講義内容や演習方法、企業の実務

家教員による実践的内容を学ぶ仕組みを構築する。また、教

育内容についてのワークショップを実施し、連携大学・参加

大学教員と知見の共有を図る。最終的には、作成した教材を

パッケージ化し、同等の内容を他大学でも実施できるような

仕組みを作った上で、参加大学の教員が所属する大学で本

分野に関係する講義を起ち上げて、補助期間終了後も継続し

て教育が実施できることを目指す。

上記方針に基づいて、各連携大学では次の取り組みを行っ

た。

大阪大学/神戸大学

今年度は大阪大学/神戸大学の教員以外に5大学6名の

参加大学教員と連携し、教材・演習開発および講義の実施を

行った。昨年度に続いて、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ、株

式会社オージス総研等複数の連携企業における実務家教員

が非常勤講師等として採用され、一部講義・演習を担当した。

昨年度に実施された実務家教員による講義の一部について

は、今年度から大阪大学教員が参加大学教員と連携して引き

継ぎを行い、大学教員による講義として実施された。

ワークショップ・講義の実施を通じた参加大学・連携大学

教員との意見交換等を29回実施し、参加者ののべ人数は369

名であった。ビジネスアプリケーション分野や組込みシステ

ム分野など他分野連携大学との講義見学を通じた意見交換

を4回実施し、ノウハウ、教育手法の共有および講義内容の改

善・評価を行った。教材開発においては講義資料・演習資料

だけでなく、他大学・他分野でも展開可能な教員向けマニュ

アルを含む整備を行った。今年度もアジャイル開発に関する

講義資料一式をビジネスアプリケーション分野の筑波大学

に提供し、実施されている。

また、その他の講義についても複数の参加大学および連

携企業において利用されている。

東京大学

●●IaaS、SaaS、PaaSの3種類のクラウドサービスそれぞれにつ

いて、構築からサービス提供までを取り扱う演習課題を開

発した。開発した演習課題を通常のPBL演習に加えて冬合

宿でも試行し、改善すべき点などのフィードバックを得た。

●●グループ開発PBLに若手教員がメンターとして参加し、ソフ

トウェア開発における実践教育の指導方法、教育手法の習

熟を進めている。複数のメンターが学生グループを指導す

るシステムとすることで、他の教員の指導手法に触れる機

会を提供している。

●●本学の平木教授が主査となっているFDWGがとりまとめ

た、講義・演習アンケートを実施した。

●●夏合宿を東京工業大学と連携して行うことで、相互の大学

の講義内容の理解、異なる教育手法の習熟を行った。

●●教職員が最新のクラウド技術を学ぶ特別講義を実施した。

8月には「Amazon Web Servicesを用いたクラウドシステム

アーキテクチャ設計入門」を実施、7名の教員が参加した。1

月には「クラウドを活用したモバイルアプリケーション開発

実習」を実施、8名の教員が参加した。

●●FD講演会として「医学教育における最近の動向:プロセス

重視からアウトカム基盤型教育への変化」を実施18名の

教員が参加、実践教育に対する教職員の理解を深めること

ができた。

東京工業大学

●●夏合宿、成果報告会などで実施した企業の講演時には、教

員が参加するようにし、現場でのノウハウを吸収し、担当講

義に反映するように指導している。

●●5月13日に産業技術大学院大学から教員を招き、スクラム

開発の講義を開催し、アジャイル開発に関する教授法を学

んだ。

●●夏合宿では、教員も参加し、株式会社 日立製作所からの講

師による実際の開発法の講義やチーム指導法を学んだ。

●●学内のイノベーション教育プログラムに教員も参加し、デ

ザイン思考に関する教授法を学んだ。

●●8月30日~9月12日に教員2名をNEC Telecom Software

Philippinesに派遣し、東京工業大学で実施している超上流

工程のPBLについて指導法を展開した。

●●独自のアンケートを学生に実施し、その結果に応じて改善

策を議論し、実施する体制をとっている。

九州工業大学

●●九州工業大学・他大学教員、産業界からの講師が、同一の

講義に参加し、講義スキルを共有することで、FDを効果的

に進めることができた。

●●PBLのレビュアーとして、産業界の第一線で活躍する技術

者に参画いただき、現場ニーズおよび実務遂行プロセス

等のノウハウを大学教員が吸収し、担当講義に反映するよ

うに指導している。

●●クラウド教育ノウハウの蓄積のために、クラウドの基礎を

学べる教材のパッケージ(ビデオ教材・反転教育ツール)

の開発を進めている。

●●長崎県立大学の教員らと教育連携に関して今年度から打

ち合わせを行っている。

●●今年度株式会社シマンテックとクラウド分野における特に

セキュリティ教育に関して技術的な議論を行った。

35e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

来年度のイベント予定・募集情報2 .1 . 7

大阪大学/神戸大学

来年度も、図表2.1.1に示す内容とほぼ同じスケジュール

で、実施する予定である。大阪大学で授業を開講し、大阪大学

と神戸大学の教員を中心として、参加大学、連携企業の非常

勤講師・招聘教員が講義を行う。

連携大学、参加大学、連携企業のメンバーから構成される

Cloud Spiral運営委員会を4回開催する予定である。また、教

材作成・FDWGを継続して実施し、クラウドコンピューティン

グ分野内、分野間での情報交換、教材作成を実施し、教員養

成の活動を推進する。

平成28年3月末から4月初旬にかけて、受講生募集を行う

予定である。Cloud SpiralのWebサイト、連携大学・参加大学

内でのガイダンス等を通じて募集する。

問い合わせ先

大阪大学内 Cloud Spiral事務局

E-mail ▶ [email protected]

URL ▶ http://cloud-spiral.enpit.jp/

東京大学

平成28年度も、先に述べた平成27年度とほぼ同じスケ

ジュールで実施する予定である。演習・講義は東京大学、国立

情報学研究所、連携企業の教員で行う。また、運営委員会は

年2回開催する予定である。

受講生募集は、平成28年4月に行う予定である。本学学

生に向けては、新入生ガイダンス、およびクラウド実践道場

Webサイトを通じて募集する。参加大学内に向けてはそれぞ

れの大学の教員を通じて募集を行う。

セキュリティ分野の受講希望者に対しては、本学の受講生

募集と同時期に募集・説明会を開催する予定である。

問い合わせ先

東京大学内 enPiT事務局

E-mail ▶ [email protected]

TEL ▶ 03-5841-4110

東京工業大学

来年度も図表2.1.2に示すスケジュールに準じて実施する

予定である。運営委員会も毎月実施する。今年度の企業講演

の学生のフィードバックをもとに、講演者と密接に連携し、

その内容について検討を行うとともに、今年度と同様のスケ

ジュールで実施する。今年度の経験をもとに教材作成を推進

するとともにFD活動をより推進する。

平成28年3月末より受講生募集を行う予定である。

問い合わせ先

東京工業大学内 Cloud Bauhaus事務局

E-mail ▶ [email protected]

URL ▶ http://www.itpro.titech.ac.jp

九州工業大学

来年度も、本年と同スケジュールで実施する予定である。

クラウド技術に併せ、セキュリティ技術の習得を希望する

学生等の学生の志向の多様性に対応するため、履修要件の

一部変更を行う予定である。

内容については、連携企業の意見等も積極的に取り入れ、

今年度の内容をさらに発展させる。また、学部教育への展開

のため、小型組込みボードやビジュアルプログラミング環境

を用いた簡易なCloud構築関連技術の教材開発を進めてお

り、これら教材を基礎知識学習およびCloud Camp(正規講

義以外に実施しているオープン講座)にて試行する予定であ

る。受講生募集については、平成27年8月および平成28年4月

に、大学院入学予定学生に対する本コースの説明会を実施

するとともに、参加大学においても、平成28年3月末に説明会

を実施し、受講生募集を行う。

問い合わせ先

九州工業大学内 Cloud Q9事務局

E-mail ▶ [email protected]

URL ▶ http://www.iizuka.kyutech.ac.jp/graduate/cloud-q9

まとめ2 .1 . 8

平成27年度はクラウドコンピューティング分野として、98名

が修了した。また、分野として1名のハイブリッド人材学生を

受け入れた。授業アンケートの結果、受講生からの評価は非

常に高く、来年度以降も内容を改善して、実施していく。

今後も参加大学(と参加大学からの受講生)や連携企業

(特に利活用企業)の勧誘を継続する。ハイブリッド人材学

生の受け入れも積極的に行う。短期集中合宿も東日本(東京

大学、東京工業大学)と西日本(大阪大学、神戸大学、九州工

業大学)で継続して実施する予定である。成果報告会の共同

実施、一部の授業の相互交換等を分野内の連携として今後

検討していく。

36 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

取り組みの概要2 . 2 .1

近年の社会生活、産業、行政のすべてにおいて、情報セキュ

リティの必要性は高まる一方である。一般市民への普及啓発

活動が重要であると同時に、高いセキュリティレベルを有す

る人材育成が必須である。

我が国では、次の3つの層のすべてにおいて人材育成が急

務である。最上位層においては、少数の世界的トップレベル

の人材(トップガン)を発掘すること、第2層においては、産業

界や学術分野で、セキュリティ技術開発や研究を進めるセ

キュリティエキスパートを育成すること、第3層においては、今

回の事業が目指す、幅広いIT分野や組織運営においてセキュ

リティ実践力を持って社会や産業をリードする人材(実践セ

キュリティ人材)を育成することが求められている。

実践セキュリティ人材は、

●●IT産業(製造系)において、セキュリティ要求レベルの高い

プロダクト開発に携わるIT技術者(セキュリティエキスパー

トと相談しながらシステム開発ができる人)

●●幅広いIT利用企業(ユーザ企業)のIT部門において、セキュ

リティベンダーやセキュリティコンサルタントと協力して、

自社のセキュリティシステムを構築できる技術者

●●CIO、CISOといった組織のセキュリティ経営を担う経営者

●●IT技術者を育成する教育機関(大学、専門学校など)の教

育者

として期待される人材である。また、このような人材育成は、

「IT技術+セキュリティ技術」という意味でのマルチスペシャ

リスト人材の育成を目指していると言える。

実践セキュリティ人材の育成は、広く社会生活全般に関わ

る産業、行政、教育の分野におけるリーダー的人材の厚みを

増すことにもつながる。その結果、我が国全体の安心・安全レ

ベルの向上がもたらされる。また、実践セキュリティ人材は、

その上位レベルにあたるセキュリティエキスパート人材の

ベースであり、我が国のみならずグローバルに活躍するセ

キュリティエキスパート人材育成につながる。

本取り組みは、5つの連携大学が協力して実践セキュリティ

人材の育成コースを用意し、人材育成を進めるだけでなく、

その育成ノウハウを、全国の大学(参加大学)に広める活動を

進める。実践セキュリティ人材育成の枠組み自体を作り上げ

ることにより、実践セキュリティ人材育成のすそ野が広がり、

我が国全体が必要とする人材の育成体制を作り上げることが

できると考える。

学習・教育目標2 . 2 . 2

本事業を通して育成する実践セキュリティ人材は、実社会

における実業経験を重ねることにより、情報セキュリティ・エ

ンジニア、情報セキュリティ・マネージャ等の情報セキュリ

ティ実践リーダーとなるマルチタレント人材になることを理

想とする。これらの人材は最高情報セキュリティ責任者

(CISO:Chief Information Security Officer)および実際に対

策を立案し、その実行を指示する情報セキュリティ担当者

(CISO補佐)としての活躍が期待される。

本事業のセキュリティ分野では、5つの連携大学が中心と

なり、平成25年度は65名、平成26年度は84名、平成27年度は

113名が修了認定を取得した。現時点で参加大学は、大学院

修士コースの学生を参加対象とする14校、学部生を対象とす

る5校で合計19校である。平成27年度の新規参加大学は福井

大学、九州工業大学、大分大学、佐賀大学、お茶の水女子大

学、東北福祉大学、秋田県立大学の7校、また、高等専門学校・

専門学校として、情報科学専門学校が加わり3校となり、順調

に人材育成の連携が広がっている。この取り組みでは、

“SecCap”と呼ぶ特別の履修コースを設け、その修了認定であ

る「SecCap修了認定」を学生が目指すことにより、受講生の意

識づけを高める(2.2.3節参照)。

平成29年度以降、連携大学や参加大学が主体的に人材育

成を継続できるようにするために、本履修コースを指導でき

る教員を育成する取り組みも進んでいる。実践演習を複数大

学で開講できるように実践演習をパッケージ化し移転するエ

クスポートも進み、今年度は、3つの演習モジュールが2校以

上で行われた。本事業では、次世代においてセキュリティ分

野の教育プログラムを開発し、牽引するリーダー格教員を連

携大学で各1名、そのリーダーのもと、教育プログラムを実施

する教員または候補者を連携大学で各3~5名程度育成する

ことを目指す。この教員養成は、参加大学にも広げており、順

調に進んでいる。

2 . 2 セキュリティ分野

37e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

教育内容2 . 2 . 3

セキュリティ分野では、5連携大学(情報セキュリティ大学

院大学、東北大学、北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端

科学技術大学院大学、慶應義塾大学)が中心となり、社会・経

済活動の根幹に関わる情報資産および情報流通のセキュリ

ティ対策を、技術面・管理面で牽引できる実践リーダーの育

成を目指す。

5連携大学が共同で提供する実践セキュリティ人材育成

コース(SecCapコース)では、幅広いセキュリティ分野の最新

技術や知識を具体的な体験を通して習得することができる。

SecCapコースは、基礎力を高める共通科目、短期集中型演習

として実施する理論系、技術系、社会科学系の実践演習、およ

び演習後にさらなる応用力を高める先進科目の組み合わせ

からなり、情報セキュリティにおける理論・技術・制度と法律・

組織マネジメントをカバーできる「幅」と、基礎知識・実践演

習・応用知識にわたる「深さ」を備えている(図表2.2.1)。

実践演習では、ハードウェアを対象としたもの、システムや

ソフトウェアを対象としたもの、企業組織のリスク管理を対象

としたものなど、バラエティに富んだ演習コースを用意してい

る。受講生は、理論系、技術系、社会科学系の講義や実践演

習・PBLから、それぞれが目指すキャリアパスに沿った割合

で、主体的・自主的に調合した学習プログラムを作って受講

することができる(図表2.2.2)。

SecCapコースでは、基礎知識学習のための共通科目「情

報セキュリティ運用リテラシー」(必修科目)、各大学で開講さ

れている既存の科目の中から選定した「所属大学指定科目」、

実践演習(実践セキュリティ演習・PBL等)、および応用学習の

ための先進科目(応用知識等)の所定単位を修了した学生に

は、実践セキュリティ人材の入り口に立てたことを示す称号

「SecCap修了認定」を与える(図表2.2.3)。

平成27年度は、昨年度の実施状況を踏まえ、次のような取

り組みを行った。

●●演習の他大学提供に向けたパッケージ化と小型化昨年度より他大学への提供に向け、東北大学の「ハード

ウェアセキュリティ演習」、奈良先端科学技術大学院大学の

「セキュリティPBL演習A(無線LANセキュリティ演習)」、「セ

キュリティPBL演習B(システム攻撃・防御演習)」をパッケージ

化し、他連携大学に提供を開始した。今年度も引き続き、

「ハードウェアセキュリティ演習」は奈良先端科学技術大学院

大学でも開講し、また、「セキュリティPBL演習A(無線LANセ

キュリティ演習)」、「セキュリティPBL演習B(システム攻撃・防

御演習)」は、慶應義塾大学、九州産業大学でも各大学の教員

が担当して実施された。「セキュリティPBL演習A、B」は奈良先

端科学技術大学院大学、慶應義塾大学で同時開催し、成果報

図表2.2.1● 幅広いセキュリティ人材ニーズに対応するカリキュラム

共通科目: 情報セキュリティ運用リテラシー 基礎科目: 所属大学指定科目(各大学)

基礎知識学習

先進科目

理論系 最新情報セキュリティ理論と応用

技術系 情報セキュリティ技術特論先進ネットワークセキュリティ技術

社会科学系 セキュア社会基盤論情報セキュリティ法務経営論

その他の活動

セキュリティ分野シンポジウム

企業インターンシップ

交流ワークショップ

演習

理論系 情報セキュリティ演習

社会科学系 インシデント対応とCSIRT基礎演習組織経営とセキュリティマネジメント演習事業継続マネジメント演習

技術系 セキュリティ基礎演習ネットワークセキュリティ技術演習Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習デジタルフォレンジック演習Capture The Flag(CTF)入門と実践演習無線LANセキュリティ演習システム攻撃・防御演習システム侵入・解析演習リスクマネジメント演習インシデント体験演習IT危機管理演習ハードウェアセキュリティ演習ネットワークセキュリティ実践

38 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

告会は関東拠点、関西拠点、九州拠点の3拠点をテレビ会議

システムでつなぎ実施した。

また、「ハードウェアセキュリティ演習」については分野横

断講義としても組込みシステム分野向けの入門編「ハード

ウェアセキュリティ入門」として3時間の講義に改編し、実施し

た。(2.2.6節参照)

図表2.2.3● SecCap修了認定

図表2.2.2● 幅広いセキュリティ人材ニーズに対応するカリキュラム

理論系演習

技術系演習

技術系演習

社会系演習

技術系演習

技術系演習

社会系演習

社会系演習

技術系演習

成果報告シンポジウム

基礎力 実践力 応用力

春学期 夏休み期間中心 秋学期

共通科目(2単位)(情報セキュリティ運用リテラシー)

基礎科目(2単位)(所属大学指定科目から選択)

基礎科目(2単位)(所属大学指定科目から選択)

先進科目(理論系事後学習)

先進科目(技術系事後学習)

先進科目(社会科学系事後学習)

or

or

受講生が目指すキャリアパスに向けて、技術系、理論系、社会科学系の実践演習を主体的に選択

●情報セキュリティ演習

●セキュリティ基礎演習●ネットワークセキュリティ技術演習●Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習●デジタルフォレンジック演習●Capture The Flag(CTF)入門と実践演習●無線LANセキュリティ演習●システム攻撃・防御演習●システム侵入・解析演習

●リスクマネジメント演習●インシデント体験演習●IT危機管理演習●ハードウェアセキュリティ演習●ネットワークセキュリティ実践

●インシデント対応とCSIRT基礎演習●組織経営とセキュリティマネジメント演習●事業継続マネジメント演習

■SecCap修了認定(SecCap6)共通科目(2単位)+

実践演習(2単位)+

先進科目(2単位)(先進科目のかわりに実践演習も可)+

基礎科目(4単位以上)

■SecCap10:セキュリティスペシャリスト認定

上記に加え、

実践演習と先進科目で4単位以上

実施体制2 . 2 . 4

(1)セキュリティ分野の実施体制(図表2.2.4)

5連携大学が中心となり、特徴ある多彩な実践セキュリティ

演習とその基礎力と応用力を高める科目からなる実践セキュ

リティ人材育成コース(SecCapコース)を用意している。

SecCapコースの科目や演習については、我が国のセキュリ

ティ関連事業をリードする連携企業と共同で演習教材を開発

し、実際の講義や演習指導にも講師として参画いただくこと

により、産業界や社会生活の現場で求められる実践セキュリ

ティ人材育成が可能なものになっている。また、学生のイン

ターンシップの受け入れについても支援いただいている。

(2)連携大学と参加大学

SecCapコースに向けて、平成24年度から5連携大学間での

単位互換協定を締結している。これにより、SecCapコースとし

て5連携大学が分担して開講する基礎知識学習、実践演習、

応用学習の講義と演習を、相互に履修できる体制とした。特

に、コース認定の必修講義である共通科目は、奈良先端科学

技術大学院大学と情報セキュリティ大学院大学および北陸

39e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

理論系演習

実践演習

社会科学系演習

技術系演習

応用学習

基礎知識学習

●参加大学院●参加校(学部・高等専門学校等)■連携企業

宮城大学秋田県立大学

東北学院大学

東北工業大学

東北福祉大学

仙台高等専門学校

早稲田大学

中央大学

東京電機大学

情報科学専門学校

九州産業大学

津田塾大学

福井大学

東北大学

京都大学

大阪大学

石川工業高等専門学校

東京大学

北陸先端科学技術大学院大学

九州工業大学

佐賀大学

大分大学

金沢工業大学

情報セキュリティ大学院大学

お茶の水女子大学

慶應義塾大学

奈良先端科学技術大学院大学

■トレンドマイクロ ■産業技術総合研究所

■日立ソリューションズ東日本

■サイバー・ソリューションズ

■ネットワンシステムズ

■NTTアドバンステクノロジ

■デロイト トーマツ リスクサービス

■インテック

■JPCERTコーディネーションセンター

■日本アイ・ビー・エム

■日本電信電話■日本電気

■情報通信研究機構 (NICT)

■NTTコミュニ ケーションズ

図表2.2.4● 連携企業、参加大学と共同の実施体制

先端科学技術大学院大学でも開講し、それぞれ遠隔講義シ

ステムにて配信している。他連携大学および参加大学の学生

は、他科目の履修状況に合わせて選択して受講できる。

参加大学については、各連携大学がホスト役となり、

SecCapコースを参加大学の学生に提供する体制とした。ホス

ト役の連携大学は、適宜、参加大学と(既存または新規の)単

位互換協定等を結び、参加大学の学生がSecCapコースの

(一部の)講義や演習を受講できるようにするとともに、参加

大学の学生の履修管理やコース認定について支援した。

平成26年度から、大学院研究科だけでなく、大学の学部お

よび高等専門学校を受け入れ、SecCapコースの(一部の)講

義や演習を提供しており、大学院の単位取得をベースとする

SecCapコースの修了認定に加え、学部生や高専生からの聴

講生を対象とした修了認定(Associate SecCap認定)を設け

るなど、意欲ある学生の受け入れ体制を整えている。

平成27年度は新たに参加大学7校、専門学校1校が加わり、

参加大学は計19校、高等専門学校・専門学校は計3校となり、

さらに幅広い人材育成の推進に取り組んでいる。

(3)セキュリティ分野運営委員会

5連携大学の担当教員とスタッフによるセキュリティ分野運

営委員会を構成し、SecCapコースの基本設計、コースの修了

認定の考え方のとりまとめ、および単位互換協定に基づく学

生の相互受講の履修管理を行う。

(4)セキュリティ分野の有識者会議(アドバイザー委員会)

セキュリティ分野の人材育成の進め方についてアドバイス

をいただくための有識者会議を設置した。委員は次の6名の

方である。

近澤武(独立行政法人情報処理推進機構)

富永哲欣(日本電信電話株式会社)

江崎浩(東京大学 大学院情報理工学系研究科)

花田経子(岡崎女子大学子ども教育学部)

下村正洋(NPO日本ネットワークセキュリティ協会)

田中俊昭(株式会社KDDI研究所)

40 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

図表2.2.5● 東北大学での演習・講義の様子

平成27年度も、次のセキュリティ実践演習および講義をア

ドバイザー委員に視察いただき、進め方などについて具体的

なアドバイスや貴重なコメントを頂戴した。

●●ネットワークセキュリティ技術演習(I-01)開講大学 情報セキュリティ大学院大学視察日 8月2日視察者 下村正洋(NPO日本ネットワークセキュリティ協会

/enPiT-Securityアドバイザー委員)

●●Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習(I-02)開講大学 情報セキュリティ大学院大学視察日 8月16日視察者 下村正洋(NPO日本ネットワークセキュリティ協会

/enPiT-Securityアドバイザー委員)

●●デジタルフォレンジック演習(I-03)開講大学 情報セキュリティ大学院大学視察日 9月6日視察者 下村正洋(NPO日本ネットワークセキュリティ協会

/enPiT-Securityアドバイザー委員)

●●最新情報セキュリティ理論と応用(先進科目)および情報セキュリティ演習(J-01)開講大学 北陸先端科学技術大学院大学視察日 7月10日視察者 近澤武(独立行政法人情報処理推進機構/enPiT-

Securityアドバイザー委員)

ハードウェアセキュリティ演習の実施風景

分野横断講義ハードウェアセキュリティ入門の実施風景

ネットワークセキュリティ実践の実施風景

41e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

(5)東北大学の実施体制

東北大学では、ハイブリッド人材育成への先行取り組みと

して、東北学院大学工学部、宮城大学、東北工業大学、仙台高

等専門学校、そして平成27年度新たに秋田県立大学、東北福

祉大学が加わり、計6校が参加校として、本SecCapコースに参

加している。

実践演習として開講する「ハードウェアセキュリティ演習」

に関しては、連携大学である情報セキュリティ大学院大学、慶

應義塾大学、参加校である早稲田大学の学生に対しても提供

を行った。また、分野横断講義として、組込みシステム分野に

対し、セキュリティ分野の演習科目である「ハードウェアセ

キュリティ演習」の内容を組込みシステム分野向けの入門編

「ハードウェアセキュリティ入門」に改編し、提供した。さらに、

本事業が終了した後も、実践的なセキュリティ演習を継続さ

せるため、昨年度まで、株式会社仙台ソフトウェアセンター

(NAViS)および株式会社サイバー・ソリューションズより支援

を受けて実施していた「ネットワークセキュリティ実践」(PBL

演習)を本学のみで実施可能なカリキュラムに刷新するとと

もに、本演習を参加校にも展開するため、参加校の教員にFD

を実施した。(図表2.2.5)

(6)奈良先端科学技術大学院大学の実施体制

奈良先端科学技術大学院大学では、大阪大学大学院情報

科学研究科、京都大学大学院情報学研究科が平成27年度の

参加大学としてSecCapコースに参加した。また、平成26年度

に引き続き東北大学で実施されているハードウェアセキュリ

ティ演習を正式に本学の演習の一つとして実施した。平成28

年度以降の参加大学として複数の大学・高等専門学校と調整

を進めているところである。

SecCapコースの講義と演習については、コースの共通必

修科目である基礎学習講義(情報セキュリティ運用リテラ

シーⅠ、Ⅱ)を他連携大学や参加大学に提供するとともに、演

習の一部(情報セキュリティPBL演習A、B、G)を大阪大学と共

同で実施した。このうち情報セキュリティPBL演習A、Bについ

ては、慶應義塾大学と同時開催し、関東拠点、関西拠点、九州

拠点の3拠点をテレビ会議システムでつないだ成果発表会で

相互に意見交換を行った。奈良先端科学技術大学院大学拠

点の多くの学生は、演習科目と先進科目の一部として北陸先

端科学技術大学院大学提供の情報セキュリティ演習と最新

情報セキュリティ理論と応用を履修する。

奈良先端科学技術大学院大学が連携する企業は、一般社

団法人 JPCERT コーディネーションセンター(JPCERT/CC)、

NTTコミュニケーションズ株式会社、国立研究開発法人情報

通信研究機構(NICT)である。JPCERT/CCおよびNTTコミュニ

ケーションズ株式会社の協力により情報セキュリティPBL演

習Cを実施し、NICTサイバー攻撃検証研究室およびテスト

ベッド研究開発推進センターの特別協賛を得て、情報セキュ

リティPBL演習Dを実施した。

(7)北陸先端科学技術大学院大学の実施体制

北陸先端科学技術大学院大学では、情報セキュリティの理

論と応用の両面から、情報セキュリティ技術の本質を理解す

る人材を育成することに焦点をあてる。平成25年度から開講

している座学講義である「最新情報セキュリティ理論と応用」

および短期集中合宿型の演習「情報セキュリティ演習」と、平

成26年度から開講しているSecCapコースの共通必修科目で

ある基礎学習講義「情報セキュリティ運用リテラシー」を実施

し、暗号理論からネットワークセキュリティまでの幅広い内容

について、数理の理解や実装・実験を通じて体系的な知識・

技術の修得を目指した。

参加大学として新たに福井大学が加わり、昨年加わった金

沢工業大学および石川工業高等専門学校と合わせて充実し

た北陸からの参加大学体制となっている。平成27年度は、福

井大学1名、金沢工業大学1名および石川工業高等専門学校

10名(専攻科4名、本科6名)を受け入れた。石川工業高等専

門学校10名は、学部・高等専門学校等からの受講生のために

設けた修了認定(Associate SecCap認定)を目指し受講して

いる。本学においては、新たにSecCapコース受講生以外の学

生に対してもすそ野を広げ、SecCapコースの一部の講義受

講を受け入れた。

最終年度の平成28年度には、連携大学および参加大学で

30名程度の参加を想定した課題提出閲覧システムおよび演

習環境を完成させる予定である。

なお、協力いただいている企業は、インテル株式会社およ

びトレンドマイクロ株式会社であり、近年の技術動向を踏ま

え、実用的な情報セキュリティ技術を取り入れた教材の開発

に向けてのアドバイスを受けている。

(8)慶應義塾大学の実施体制

慶應義塾大学では、平成27年度より参加大学として九州工

業大学、大分大学、佐賀大学およびお茶の水女子大学が参加

した。今後さらに広く参加大学の拡充を目指している。また、

講義として「情報セキュリティ技術特論」を開講し、セキュリ

ティに関する基本的な知識と応用力の獲得を目指した。本講

義については13拠点に配信するとともにアーカイブし、オン

デマンド受講を可能とした。演習に関しては、奈良先端科学

技術大学院大学、一般社団法人 JPCERT コーディネーション

センター(JPCERT/CC)、NTTコミュニケーションズ株式会社と

連携し、リスクマネジメント演習の一部としてマルウェア解析

技術の習得に関する演習、非情報系学生を対象とした基礎

演習、奈良先端科学技術大学院大学・大阪大学が中心となっ

て開発した演習を慶應義塾大学へエクスポート(移転)し、慶

應義塾大学で同演習の実施を行った。また移転した演習は

今年度遠隔でも実施可能な演習システムへ改良し、九州産業

42 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

大学でも同時開講した。また、オープンソース関連の組織と

連携し、新しい価値観に基づく社会におけるセキュリティの

確保について学ぶ場を設けた。具体的には、オープンソース

関連コミュニティと連携し、技術的側面だけでなく、セキュリ

ティに関する認知の向上や社会システムとしてのセキュリ

ティ保全モデルの構築を学び、新しい環境でのセキュリティ

について学生に理解させる。

また、連携企業等と積極的に議論を行い、本コース修了生

のキャリアパスについて検討を行った。情報セキュリティ実践

力を有する学生を積極的に生み出すと同時に、それを受け入

れ活用する社会基盤の実現を目指し、複数の企業と議論を進

めている。

(9)情報セキュリティ大学院大学の実施体制

情報セキュリティ大学院大学では、主に、首都圏にある参

加大学のハブとして、必修科目や演習の他、既設の講義につ

いても他連携大学や単位互換協定等を締結している参加大

学に提供している。平成27年度は、参加大学から、東京大学、

中央大学、早稲田大学、東京電機大学、津田塾大学、お茶の水

女子大学の学生を受け入れた。また、新たに情報科学専門学

校より一部受講生を受け入れた。

SecCapコースの共通必修科目である基礎学習講義(情報

セキュリティ運用リテラシー)については、社会人学生および

他大学からの履修を考慮して前期と後期の土曜日に開講し

た。また、分野横断的に、多くの学生が受講しやすくするた

め、講義をビデオ録画し、オンデマンドで講義を受講できるよ

うにした。

夏季に開講した集中型の実践セキュリティ演習では、技術

系の実践演習4モジュール、社会科学系の演習3モジュール

(各1単位相当・約22時間)を実施した。平成26年度に実施し

た際の実施状況、受講生アンケートおよびアドバイザー委員

等の意見を反映して、演習内容の充実を図った。また、前述7

演習に加え、ハイブリッド人材育成に向けて、非情報理工系

の学生(経営、経済、社会学などの出身)向けの入門的演習を

実施した。

日本電信電話株式会社、日本アイ・ビー・エム株式会社、

NTTアドバンステクノロジ株式会社、ネットワンシステムズ株

式会社に連携企業として参画いただき、夏季に開講する集中

型の実践セキュリティ演習(ネットワークセキュリティ技術演

習、Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習、デジタル

フォレンジック演習)と、後期開講の先進科目(応用学習)であ

る先進ネットワークセキュリティ技術の実践的な教材開発や

演習指導、企業見学等に協力いただいた。

教育実績2 . 2 . 5

(1)基礎力を鍛える共通科目と基礎科目

情報セキュリティ・エンジニアとして身に付けるべきセキュ

リティ技術の基礎力として、OS、ソフトウェア、ネットワークな

どのセキュアな構成技術、およびマルウェア対策に関する広

範な知識・技術を習得する。

このために本事業で新たに用意した連携大学の共通科目

とともに、各連携大学および参加大学のネットワーク関連、お

よびセキュリティ関連科目を基礎科目(所属大学指定科目)と

して活用している。

図表2.2.6は、平成27年度SecCapコースの5連携大学共有

時間割である。共通科目(情報セキュリティ運用リテラシー)

は、奈良先端科学技術大学院大学が金曜日に、情報セキュリ

ティ大学院大学が土曜日に、北陸先端科学技術大学院大学

は前期火曜日(後期は奈良先端科学技術大学院大学と共通)

に開講し、講義の遠隔配信を行うことにより、連携大学(情報

セキュリティ大学院大学、東北大学、北陸先端科学技術大学

院大学、奈良先端科学技術大学院大学、慶應義塾大学)と参

加大学(東京大学、中央大学、京都大学、大阪大学、九州産業

大学、津田塾大学、早稲田大学、東京電機大学、金沢工業大

学、福井大学、九州工業大学、佐賀大学、大分大学、お茶の水

女子大学)および石川工業高等専門学校の学生が受講した。

43e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

図表2.2.6● 平成27年度 SecCap共有時間割

曜日 科目名 担当教員 区分 開設大学(研究科) 学期・期間 時間帯 遠隔

有無 受講生所属大学

火情報セキュリティ運用リテラシー

宮地・布田+オムニバス

共通必修

(C)

北陸先端科学技術大学院大学

4/17(*)、4/21、4/24(*)、4/28、5/1(*)、5/8(*)、5/12、5/19、[(*)は金曜、後期は金曜]

有北 陸 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大学、金沢工業大学、福井大学、石川工業高等専門学校

水情報セキュリティ法務経営論

樋地・金谷・小野

先進・選択

東北大学 後期16:20~

17:50有

東北大学、情報セキュリティ大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学

特設講義(先進ネットワークセキュリティ技術)

後藤・佐藤先進・選択

情報セキュリティ大学院大学

後期18:20~

21:30無

情報セキュリティ大学院大学、東京大学、中央大学、早稲田大学、東京電機大学、お茶の水女子大学

特設講義(セキュア社会基盤論)

湯淺他先進・選択

情報セキュリティ大学院大学

後期18:20~

21:30無

情報セキュリティ大学院大学、慶應義塾大学、東京大学、早稲田大学

情報セキュリティ運用リテラシーⅠ

山口・藤川・奥田・猪俣他

共通必修

(B)

奈良先端科学技術大学院大学

前期:4/17、5/8、5/15、5/22

13:40~16:50

奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大学、慶應義塾大学、大阪大学、京都大学、九州産業大学、佐賀大学、大分大学、九州工業大学

情報セキュリティ運用リテラシーⅡ

山口・藤川・猪俣+オムニバス

共通必修

(B)

奈良先端科学技術大学院大学

後期:10/30、11/27、12/4、1/15

13:40~16:50

奈 良 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大学、慶應義塾大学、大阪大学、京都大学、九州産業大学、佐賀大学、大分大学、九州工業大学

情報セキュリティ運用リテラシー

宮地・布田他

共通必修

(C)

北陸先端科学技術大学院大学

後期:10/30、11/27、12/4、1/15[前期は火曜]

13:40~16:50

有北 陸 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大学、金沢工業大学、福井大学、石川工業高等専門学校

最新情報セキュリティ理論と応用(※1)

宮地・布田・面・蘇

先進・選択

北陸先端科学技術大学院大学

6/5、6/19、7/3、7/10、7/17、7/24、7/31、8/7、8/21、8/28、9/4、9/12、9/18、9/25

13:30~16:40

北 陸 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大学、奈良先端科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、金沢工業大学、福井大学、石川工業高等専門学校

情報セキュリティ技術特論

砂原・山内+オムニバス

先進・選択

慶應義塾大学(KMD)

4/24、10/9、10/16、11/13、11/20、12/11、12/18、1/8

13:40~16:50

慶應義塾大学、情報セキュリティ大学院大学、東北大学、奈良先端科学技術大学院大学、大阪大学、津田塾大学、九州産業大学、佐賀大学、九州工業大学、お茶の水女子大学

情報セキュリティ演習宮地・布田・面・陳・蘇・田中

演習・選択

北陸先端科学技術大学院大学

5/29、6/5、6/12、6/19、6/26、7/3、7/10、7/24

[合宿]9/12~9/13

有(5/29~

7/24)

北 陸 先 端 科 学 技 術 大 学 院 大学、奈良先端科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、金沢工業大学、福井大学、石川工業高等専門学校

土特設講義

(情報セキュリティ運用リテラシーⅠ・Ⅱ)

後藤共通必修

(A)

情報セキュリティ大学院大学

前期:4/11、4/18、4/25、5/2、7/18 13:00~

16:10有

情報セキュリティ大学院大学、東北大学、慶應義塾大学、東京大学、中央大学、早稲田大学、東京電機大学、津田塾大学、お茶の水女子大学

後期:10/10、10/24、11/7

(※1)「最新情報セキュリティ理論と応用」は「情報セキュリティ演習」を履修していることを受講条件とする。

44 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

図表2.2.7● 平成27年度 SecCap実践演習の実施状況

設置大学院 No. 科目名 実践演習モジュール名 日程 受講生所属大学 登録

数 開催場所

情報セキュリティ大学院大学

I-00

特設実習(セキュリティ実践Ⅰ)および特設実習

(セキュリティ実践Ⅱ)

セキュリティ技術入門講座

7/23~7/24 慶應義塾大学、東京大学、中央大学 7情報セキュリティ大学院大学

I-01ネットワークセキュリティ技術演習

7/25、7/26、8/1、8/2

情報セキュリティ大学院大学、東北大学、慶應義塾大学、東京大学、中央大学、津田塾大学、早稲田大学、東京電機大学、お茶の水女子大学

51情報セキュリティ大学院大学

I-02Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習

8/15、8/16、8/22、8/23

情報セキュリティ大学院大学、東北大学、慶應義塾大学、東京大学、中央大学、津田塾大学、早稲田大学、お茶の水女子大学、情報科学専門学校

48情報セキュリティ大学院大学

I-03デジタルフォレンジック演習

8/29、8/30、9/5、9/6

情報セキュリティ大学院大学、東北大学、慶應義塾大学、東京大学、中央大学、早稲田大学、お茶の水女子大学、情報科学専門学校

39情報セキュリティ大学院大学

I-04Capture The Flag

(CTF)入門と実践演習

8/8~8/9情報セキュリティ大学院大学、東北大学、慶應義塾大学、東京大学、中央大学、早稲田大学、お茶の水女子大学

40情報セキュリティ大学院大学 他

I-05インシデント対応とCSIRT基礎演習

8/4、8/5、8/6、8/7、8/11、8/12、8/13

情報セキュリティ大学院大学、慶應義塾大学、東京大学、早稲田大学

18情報セキュリティ大学院大学 他

I-06組織経営とセキュリティマネジメント演習

8/25、8/26、8/27、8/28、9/1、9/2、9/3

情報セキュリティ大学院大学、東京大学、中央大学、早稲田大学、東京電機大学、

13情報セキュリティ大学院大学 他

I-07事業継続マネジメント演習

8/28、9/5、9/19、9/26

情報セキュリティ大学院大学、お茶の水女子大学

7情報セキュリティ大学院大学

奈良先端科学技術大学院大学

N-01セキュリティPBL演習A

無線LANセキュリティ演習 

6/6~6/7

奈良先端科学技術大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、福井大学、Mahidol大学、Kasetsart大学

33 大阪大学

N-02セキュリティPBL演習B

システム攻撃・防御演習

6/27~6/28

奈良先端科学技術大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、福井大学、東京大学、Mahidol大学、Kasetsart大学

33 大阪大学

N-03セキュリティPBL演習C

リスクマネジメント演習

8/31~9/3

奈良先端科学技術大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、慶應義塾大学、大阪大学、京都大学、九州産業大学、福井大学

28東京地区(企業・研究所等)

N-04セキュリティPBL演習D

インシデント体験演習

9/14~9/16

奈良先端科学技術大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、九州工業大学、福井大学、東京大学、東京電機大学

26NICT北陸StarBED技術センター

N-05セキュリティPBL演習E

IT危機管理演習 9/8~9/10

奈良先端科学技術大学院大学、慶應義塾大学、大阪大学、京都大学、九州産業大学、大分大学、九州工業大学、福井大学

30奈良先端科学技術大学院大学

N-06セキュリティPBL演習F

ハードウェアセキュリティ演習

9/28~9/30

奈良先端科学技術大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、九州産業大学、九州工業大学、福井大学、東京大学、東京電機大学

22奈良先端科学技術大学院大学

N-07セキュリティPBL演習G

システム侵入・解析演習

10/31~11/1

奈良先端科学技術大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、慶應義塾大学、大阪大学、京都大学、九州産業大学、大分大学、九州工業大学、福井大学、東京電機大学

30 大阪大学

北陸先端科学技術大学院大学

J-01情報セキュリティ演習

5/29、6/5、6/12、6/19、6/26、7/3、7/10、7/24

[合宿]9/12~9/13

北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端科学技術大学院大学、金沢工業大学、福井大学、大阪大学、京都大学、石川工業高等専門学校

32北陸先端科学技術大学院大学

45e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

(2)実践力を高める実践セキュリティ演習

産業界が求めるマルチタレント型のセキュリティ人材育成

に向けて、図表2.2.7に示すように、セキュリティ分野全体で約

20のセキュリティ実践演習モジュールを用意した。実践演習

モジュールは、理論系演習、技術系演習、社会科学系演習な

ど、技術主体から社会科学主体まで、幅広いセキュリティ実践

力をカバーするものであり、受講生は、所属大学の方針に従

い、複数の演習モジュールを選択して受講できる形で実施し

た。また、ハイブリッド人材育成に向けて、非情報理工系の学

生(経営、経済、社会学などの出身)向けの入門的演習2コー

スを、慶應義塾大学と情報セキュリティ大学院大学で実施した

(図表2.2.8)。演習の開講時期は8月から9月の夏季休暇期間

を中心に配置したが、指導講師や連携企業の都合などによ

り、一部は後期(10月以降)の開講となった。そのような演習

については、週末(土曜日、日曜日)を活用することにより、他

の講義との重複を避けるように努めた。

設置大学院 No. 科目名 実践演習モジュール名 日程 受講生所属大学 登録

数 開催場所

東北大学

T-01ハードウェアセキュリティ演習

9/7~9/9東北大学、慶應義塾大学、情報セキュリティ大学院大学、早稲田大学

17 東北大学

T-02ネットワークセキュリティ実践

10/31、11/15、11/28、12/5、12/12、12/19、12/23

東北大学、秋田県立大学、宮城大学、東北福祉大学、東北工業大学、東北学院大学、仙台高等専門学校

30 東北大学

慶應義塾大学

K-00セキュリティ基礎演習

5/23~5/24 慶應義塾大学、お茶の水女子大学 9 慶應義塾大学

K-01セキュリティPBL演習A

無線LANセキュリティ演習

6/6~6/7慶應義塾大学、東京大学、九州産業大学、佐賀大学、大分大学、九州工業大学、津田塾大学、お茶の水女子大学

33慶應義塾大学・九州産業大学

K-02セキュリティPBL演習B

システム攻撃・防御演習

6/27~6/28

慶應義塾大学、東北大学、東京大学、九州産業大学、佐賀大学、大分大学、九州工業大学、津田塾大学、お茶の水女子大学

34慶應義塾大学・九州産業大学

K-03セキュリティPBL演習H

CTF実践演習 後期 慶應義塾大学 5 慶應義塾大学

図表2.2.8● 入門的演習コース(セキュリティ基礎演習)の様子

46 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

し、演習の要所要所でそれを参照することで、報告フェーズの

取り組みへの意識づけを高めた。これには、解析や検査の見

通しを与え、議論の活性化を促す効果もあった。

攻撃手法、ログ解析、ネットワークセキュリティ検査による

脆弱性の発見、発見された脆弱性への対応、報告を一連で学

ぶことにより、サーバの運用管理に必要な知識・技術の基礎

を身に付けることができた。

平成27年度は、情報セキュリティ大学院大学、東北大学、慶

應義塾大学、東京大学、中央大学、早稲田大学、東京電機大

学、津田塾大学、お茶の水女子大学から51名の学生が参加し

た(図表2.2.9、図表2.2.10)。

●●システム攻撃・防御演習(N-02・K-02技術系)脆弱性のあるシステムをインターネットに接続した場合、

どのように攻撃されるのか、攻撃に対してどのように防御す

るのか等について理解する演習である。具体的には、システ

ムの攻撃によく利用される脆弱性や攻撃の原理、防御技術に

ついて概観し、実際の攻撃ツールを解析し、その原理を学ぶ。

最終的に、実験結果をもとに安全なシステム運用の手法につ

いてグループごとに議論、考察した。

平成27年度は、N-02には、奈良先端科学技術大学院大学、

北陸先端科学技術大学院大学、福井大学、大阪大学、京都大

学、東京大学の学生が参加し、K-02には、慶應義塾大学、東北

大学、東京大学、九州産業大学、佐賀大学、大分大学、九州工

業大学、津田塾大学、お茶の水女子大学の学生が参加した。

図表2.2.9● ネットワークセキュリティ技術演習の様子

図表2.2.10● 実践演習環境の例● ● (I-01ネットワークセキュリティ技術演習)

各受講生に4台の仮想マシン(VM)を割り当て

ポートスキャン検査脆弱性検査DoS検査

NW-Client作業用クライアント

VMware vSphere Client受講生用端末(物理ノートPC)

NW-NessusNessusサーバ

検査対象サーバ (それぞれに様々な脆弱性が存在する)

NW-Server1(unix)

NW-Server2(unix)

次は演習モジュール例である。

●●ネットワークセキュリティ技術演習(I-01技術系)演習のねらいは、Webサーバ等のサーバの設置・運用に際

して必要となる、基礎的なセキュリティ技術を習得することで

ある。具体的には、現実に起きている攻撃手法と防御策に関

するデモを交えた解説、攻撃を受けたWebサーバのログ解

析演習、ネットワークセキュリティ検査演習(検査ツールを利

用したポートスキャン検査演習や脆弱性検査演習)と検査結

果報告書の作成、脆弱性への対策演習などを実施した。

今年度は、昨年度の実施状況を踏まえ、報告フェーズの充

実を図った。特に社会人経験のない学生は、報告書の作成や

その伝達について、内容や重要性がイメージし難く、消極的

な傾向にある。今年度は、報告書のひな型をあらかじめ用意

各自が演習に取り組む

グループ討議

発表

47e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

●●ハードウェアセキュリティ演習(T-01・N-06技術系)情報通信機器などのハードウェアから情報漏えいが生じる

メカニズムを学び、実験を通して物理的セキュリティに関す

る問題に対する理解を深め、ハードウェアセキュリティ対策の

重要性を学ぶ演習である。特に、計測を伴う演習を通して、暗

号アルゴリズムを実装したハードウェアの動作中に生じる副

次的な情報(サイドチャネル情報)を利用して秘密情報を奪

うサイドチャネル解析とその対策の基本概念を学ぶことがで

きる。

平成27年度は、T-01には、東北大学、慶應義塾大学、情報セ

キュリティ大学院大学、早稲田大学の学生と、慶應義塾大学

の教員が参加し、N-06には、奈良先端科学技術大学院大学、

北陸先端科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、福井大

学、東京大学、東京電機大学、九州工業大学、九州産業大学の

学生が参加した(図表2.2.11)。

●●情報セキュリティ演習(J-01理論系)暗号アルゴリズムの組み合わせにより、どのように暗号プ

ロトコルを実現するかを解説し、実際に、最新情報セキュリ

ティ理論で数式処理ソフトウェアMathematicaを用いて実装

した暗号アルゴリズムを用いて、各種暗号プロトコルの実装

を行う。さらに、RFIDタグや携帯端末、VANETなどのさまざま

なアプリケーションで脚光を浴びている楕円曲線暗号につい

て解説するとともに、最新情報セキュリティ理論で実装した

暗号アルゴリズムを用いて、実際に楕円曲線暗号の実装も行

図表2.2.11● ハードウェアセキュリティ演習(N-06)の様子

図表2.2.12● 情報セキュリティ演習(J-01)の様子

う。遠隔講義用システムを利用した講義配信を行うとともに、

e-Learningシステムを用いて学生とのインタラクションを密

に行い、課題の理解を深める。また、新PBL型グループワーク

システムを用いたグループワークを行い、情報セキュリティ

の理論学習を促進する。

平成27年度は、北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端

科学技術大学院大学、大阪大学、京都大学、福井大学、金沢工

業大学、石川工業高等専門学校の32名の学生が受講、参加し

た(図表2.2.12)。

チームで演習取り組み講義の聴講

TAからのアドバイス チーム発表

48 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

図表2.2.13● インシデント対応とCSIRT基礎演習(I-05)の様子

●●インシデント対応とCSIRT基礎演習(I-05社会科学系)セキュリティインシデント対応の基本的なプロセス、およ

び対応時に用いられる技術について、解説と演習を通して習

得した。また、組織内でのインシデント対応組織(CSIRT)の起

ち上げと運用、およびCSIRT連携の進め方についてケースス

タディを通して学んだ。

具体的には、リスク評価とセキュリティ対策、インシデント

の影響と優先度評価、インシデントハンドリングプロセスの

整備、インシデント対応のコスト試算、インシデント対応ロー

ルプレイングを演習として実際に行うことで、企業におけるイ

ンシデント対応に必要な知識・技術の基礎と、思考過程を身

に付けることができた。

またNTTコムセキュリティ株式会社のSOC(Secur i ty

Operation Center)を訪問し、セキュリティ対応の最前線の現

場で、どのような技術を用いて、どのような対応を行っている

か等を直接見聞きすることで、実践力を強化することができ

た。

平成27年度は、情報セキュリティ大学院大学、慶應義塾大

学、東京大学、早稲田大学から18名の学生が参加した(図表

2.2.13)。

(3)応用力を高める先進科目

共通科目・基礎科目と実践セキュリティ演習で養った実践

力を補強し、応用力を身に付ける統合的学習科目である。平

成27年度は次の5科目を実施した。それぞれ開講大学以外の

連携大学や参加大学からの受講生があった。

●●理論系:最新情報セキュリティ理論と応用開講 北陸先端科学技術大学院大学受講 北陸先端科学技術大学院大学、奈良先端科学

技術大学院大学、大阪大学、京都大学、福井大

学、金沢工業大学、石川工業高等専門学校

●●技術系:先進ネットワークセキュリティ技術開講 情報セキュリティ大学院大学受講 情報セキュリティ大学院大学、東京大学、中央

大学、早稲田大学、東京電機大学、お茶の水女

子大学

●●技術系:情報セキュリティ技術特論開講 慶應義塾大学受講 慶應義塾大学、情報セキュリティ大学院大学、

東北大学、奈良先端科学技術大学院大学、大阪

大学、津田塾大学、九州産業大学、佐賀大学、九

州工業大学、お茶の水女子大学

●●社会科学系:セキュア社会基盤論開講 情報セキュリティ大学院大学受講 情報セキュリティ大学院大学、慶應義塾大学、

東京大学、早稲田大学

●●社会科学系:情報セキュリティ法務経営論開講 東北大学受講 東北大学、情報セキュリティ大学院大学、北陸

先端科学技術大学院大学

次は先進科目の学習例である。

●●先進ネットワークセキュリティ技術実社会での活動事例をベースに、実践セキュリティ演習に

て体験的に習得したネットワークセキュリティ技術の実社会

での役割と今後の技術展望や課題について学ぶことにより、

先進ネットワークセキュリティ技術について理解し応用力を

深めた。実社会での事例としては、企業組織や官庁・自治体の

内部で活動するネットワークセキュリティ事故対応チーム

(CSIRT)と、セキュリティベンダー等が提供するセキュリティ

オペレーションセンター(SOC)サービスを取り上げ、社会に

おける役割と今後の課題について学んだ。さらに、イベント

分析の実践演習や、インシデント対応の現場(日本アイ・

グループワーク

質疑応答

49e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

図表2.2.14● 平成27年度の先進講義の例:先進ネットワークセキュリティ技術

講義 課題に取り組む受講生たち

イベント分析 SecCap4大学混成チームによる発表

ビー・エム株式会社箱崎事業所)見学および実務者の体験談

を通して知見を深めることができた。本科目の最終課題で

は、CSIRTチームとしての情報分析業務に取り組み、受講生が

作成した分析レポートを最終日に発表して成果を確認した

(図表2.2.14、図表2.2.15)。

(4)CTFとインターンシップ

本教育プログラムでは、産業界の人材ニーズと育成プログ

ラムのマッチングを強化するために、前述の実践セキュリ

ティ演習や講義を連携企業・連携組織と共同で開発し実施し

た。学生間・社会人(企業)間の人的ネットワーキングを醸成

するために、セキュリティ実践力の腕試しの場としてCTF

(Capture The Flag)への積極的な参加と企業インターンシッ

図表2.2.15● 先進ネットワークセキュリティ技術の講義風景 図表2.2.16● MWS●Cup●2015参戦の様子

10/8セキュリティインシデントの最新事情 (株式会社サイバーディフェンス研究所 名和氏)

企業のセキュリティ事情と新しい対策について (株式会社インターネットイニシアティブ 齋藤氏)

10/22自動車向け組込みシステムのセキュリティ (株式会社デンソー 林氏)

国内大規模サイバー攻撃事例と今後望まれる対応力 (デロイト トーマツ サイバーセキュリティ先端研究所 岩井氏)

11/5バイオメトリック認証技術 (株式会社富士通研究所 安部氏)

情報通信インフラの危機管理におけるサイバー攻撃対策 (東日本電信電話株式会社 大森氏)

11/19 SOC監視・分析技術(1) (日本アイ・ビー・エム株式会社 窪田氏)

12/3 SOC監視・分析技術(2)とIBM SOC見学 (日本アイ・ビー・エム株式会社 窪田氏)

12/17 NTT-CERTの取り組み: CSIRTの概要と情報収集分析業務 (NTTセキュアプラットフォーム研究所 植田氏、小倉氏、神谷氏)

1/21サイバー攻撃の現状 (株式会社ラック 伊東氏)

NTT-CERTの取り組み: 情報分析課題の発表 (NTTセキュアプラットフォーム研究所 小倉氏、神谷氏)

2/4 重要インフラ/IoTセキュリティにおけるガイドラインおよび対策技術の最新動向 (マカフィー株式会社 佐々木氏)

50 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

プを推奨した。

CTFについては、実践セキュリティ演習(I-04 Capture The

Flag(CTF)入門と実践演習、N-04情報セキュリティPBL演習

D)の一環として、MWSカップ(平成27年10月)などのCTFイベ

ントに学生チームとして参戦した(図表2.2.16)。

企業インターンシップについては、NPO日本ネットワーク

セキュリティ協会(JNSA)の人材育成検討会主催の「産学情

報セキュリティ人材育成交流会~インターンシップに向けて

~」(5月9日)を共催する形で、連携企業とのインターンシップ

ガイダンスを実施した。また、演習T-02ネットワークセキュリ

ティ実践は、株式会社サイバー・ソリューションズの協力を得

て、インターンシップとして実施した。

(5)enPiT-Securityシンポジウム(平成28年3月7日開催)

本シンポジウムは、年度の締めくくりとして、連携大学、参加

大学のSecCapコース修了生、関連教員とスタッフ、連携企業

のサポートメンバーが一堂に会し、1年間の実績を確認しあ

う場である。5連携大学を遠隔会議システムで相互接続した

分 散 開 催 の 形 式をとった 。また 、シンポジウムの 場で、

SecCap修了生の認定式を行った。

アドバイザー委員には5拠点のいずれかに出席していただ

き、シンポジウムの視察の後、アドバイザー委員会を開催し

て、平成27年度の実績と平成28年度の計画についてアドバイ

スとご意見をいただいた。

図表2.2.17● 講義・演習アンケートの実施例

(1)受講生アンケートと講義・演習へのフィードバック

セキュリティ分野では今年度も継続して講義や演習による

理解度向上の程度と受講生から見た難易度を把握するた

め、各講義や演習でアンケートを実施した。アンケート結果

は、講師にフィードバックするとともに、講義・演習中の受講

生の様子を踏まえて分析し、講義・演習の改善を図った。前の

講義・演習のアンケート分析結果は、次の講義・演習の改善

に活かされ、講義・演習の内容、実施方法をブラッシュアップ

することができた。また、来年度の講義・演習の改善にも活か

されている。(図表2.2.17はデジタルフォレンジック演習(I-03)

のアンケート)。

(2)演習を通じた教員のFD

東北大学では、企業講師によるインターンシップ型講義で

あるネットワークセキュリティ実践への参加を念頭にenPiT空

白県である秋田県、山形県の大学の新規開拓を行い、平成27

年度は秋田県立大学が新規参加した。

また、講義の最終日に開催した成果発表会には参加大学、

高等専門学校の他、参加校候補である地元専門学校の教員

が参加し学生のプレゼンに対する評価に加わるとともに、講

義、演習実施方法や成果について理解を深め、相互に情報を

共有した。

教員養成・FD活動2 . 2 . 6

51e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

図表2.2.18● Black●Hat●Europe●2015

●●ネットワークセキュリティ実践 成果発表会開催日 平成27年12月23日

外部参加教員 脇山俊一郎(仙台高等専門学校)

猿田和樹(秋田県立大学)

石垣政裕(東北大学経済学研究科)

竹村健司(東北電子専門学校)

(3)他分野への講義の提供

分野横断講義として、組込みシステム分野に対し、セキュリ

ティ分野の演習科目である「ハードウェアセキュリティ演習」

(3日間・15コマ相当)の内容を組込みシステム分野向けの入

門編「ハードウェアセキュリティ入門」として3時間の講義に改

編し、実施した。本講義では、ハードウェアの動作に応じて機

器から漏えいするサイドチャネル情報により、情報漏えいが

生じる事例、そのメカニズムについて詳説するとともに、今後

IoTなどの普及により、ますます需要が高まると予想される組

込みシステムにおけるハードウェアセキュリティ対策の重要

性について講義し、組込みシステム分野の学生19名および教

員2名が受講された。

ビジネスアプリケーション分野に対しては、北陸先端科学

技術大学院大学よりセキュリティ分野の先進科目である「最

新情報セキュリティ理論と応用」の公開鍵認証基盤の内容を

「最新情報セキュリティ理論と応用システム編~公開鍵認証

基盤~」として、入門用に2時間半に編集して提供した。

本講義では、公開鍵認証基盤の必要性や利用場面、認証局

システムや証明書発行/管理について解説するとともに、最近

の 公 開 鍵 認 証 基 盤 の 攻 撃 事 例として、認 証 局 へ の 攻 撃

(DigiNotar)、SSLの実装に対する攻撃(Heartbleed)につい

て講義し、ビジネスアプリケーション分野の学生35名程度お

よび教員2名が受講された。

(4)海外視察:米国

enPiTセキュリティ分野(SecCap)における活動の紹介およ

び最新のハッキング技術の調査を目的として、アムステルダム

(オランダ)で開催されたBlack Hat Europe 2015に参加した。

Black Hatは、毎年8月ラスベガスにて開催される世界最大の

セキュリティ、ハッキングに関する国際会議である。いわゆる

アカデミックな国際会議とは異なり、業界で優れた技術を持

つスピーカーによる講演と、実践的なハンズオンが開催され

るというユニークな会議であり、その欧州版であるBlack Hat

Europeは、毎年秋に欧州で開催されている。今年度は特に、

自動車や制御システムに関するセキュリティの話題が主流で

あったが、例年同様にWebシステムやモバイル環境における

脆弱性についても多数報告がなされた。Androidスマート

フォンに潜むバグを利用した攻撃やその対応策については、

我々が開発している演習プログラムにも応用できるものとし

て、講演者らと深いディスカッションもあわせて実施した。ま

た、Webに存在するサイバー犯罪の最新事例として、さまざ

まなidentityのブラックマーケットにおけるビジネスモデルな

ど、講義でも取り組んでいる法律や監査などにも適用できる

話など有用な情報を多数得ることができた。しかしながら、内

容については実際に適用可能な攻撃でもあり、そのまま演習

に取り込むことは危険である。今後どのような形で攻撃技術

およびその対策手法を教えていくかが我々のプログラムにお

ける重要な課題である。

52 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

(5)会議・学会等での取り組み紹介

会議・学会等において、enPiT-Securityの取り組み内容や得

られた知見を紹介、共有した。意見交換の場を得られる機会

もあり、他大学で実施されている実践教育の内容や課題、企

業が求めている人材や人材育成の課題について伺うことも

でき、良い機会となった。

●●韓国の学会(KIISE)での基調講演KIISE(the Korean Institute of Information Scientists and

Engineers)開催日 平成27年12月18日開催場所 平昌(韓国)講演者 後藤厚宏(情報セキュリティ大学院大学 教授)

基調講演「Cyber-Security Education and IPSJ Information

Processing Society of Japan」において、enPiT-Securityの

取り組みを紹介した。

図表2.2.20● ACDT2016での発表

●●国際会議(ACDT2016)での発表ACDT(Asian Conference on Defense Technology) 2016 開催日 平成28年1月21日~23日開催場所 Chaing Mai, Thailand発表者 山内正人(慶應義塾大学 特任助教)

SecCap演習の実施から得られた知見を発表した。

Masato Yamanouchi, Kozue Nojiri, Hideki Sunahara, “A

remote security exercise system for beginners

considering scalability and simplicity", ACDT2016, Jan,

2016.

●●IoTセキュリティウィークin沖縄2015シンポジウム開催日 平成27年12月15日開催場所 沖縄県立博物館・美術館3階講堂講演者 後藤厚宏(情報セキュリティ大学院大学 教授)

講演「重要インフラ等のセキュリティへの取組みと人材育

成」において、enPiT、SecCapの取り組みを紹介した。

●●日本学術会議公開シンポジウム●「サイバーセキュリティと実践人材育成」

開催日 平成27年11月2日開催場所 日本学術会議講堂講演者 砂原秀樹(慶應義塾大学 教授)

講演「我が国のサイバーセキュリティ研究と人材育成」にお

いて、enPiT、SecCapの取り組みを紹介した。

●●デジタル・フォレンジック研究会●DF人材育成●分科会第12期●第1回開催日 平成27年6月22日開催場所 東京都南部労政会館 第6会議室発表者 若月里香(情報セキュリティ大学院大学 特任助

手)

enPiTの一環として平成26年度から開講した「デジタルフォ

レンジック演習」の取り組みを紹介し、教育環境や教育内

容について、意見交換を行った。

図表2.2.19● KIISE基調講演でSecCapを紹介

53e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

(6)論文・著書での取り組み紹介

論文・著書において、enPiT-Securityの取り組み内容や得ら

れた知見を紹介、共有した。

●●学会誌「安全工学」●情報セキュリティ特集号●●vol.54●No.6(2015)論文掲載発行 平成27年12月著者 森直彦(情報セキュリティ大学院大学 客員教

授)他

大学院におけるセキュリティ人材育成に関する課題と、そ

れらの課題への対応を、具体的な演習の実施状況を踏ま

えて示した。

●●著書「サイバーセキュリティ入門-私たちを取り巻く光と闇-」(共立出版)

発行 平成28年2月著者 猪俣敦夫(奈良先端科学技術大学院大学 准教

授)

著書内において、セキュリティ人材育成の取り組みとして

enPiT、SecCapを紹介した。

(7)産業界・官公庁への活動紹介

産業界・官公庁が主催する調査会・WGにおいて、enPiT-

Securityの取り組み内容や得られた知見を紹介し、人材育成

に関する議論を行った。

●●内閣官房●サイバーセキュリティ戦略本部●普及啓発・人材育成専門調査会 第1回会合開催日 平成27年12月14日開催場所 内閣府委員 後藤厚宏(情報セキュリティ大学院大学 教授)

人材育成に関する今後の課題と産学官連携について発

表・議論を行った。

●●情報セキュリティ社会推進協議会●●産学官人材育成WG(第1回)開催日 平成27年12月7日開催場所 内閣府参加者 田中英彦(情報セキュリティ大学院大学 学長

教授)

後藤厚宏(情報セキュリティ大学院大学 教授)

曽根秀昭(東北大学 教授)

篠田陽一(北陸先端科学技術大学院大学 教

授)

猪俣敦夫(奈良先端科学技術大学院大学 准教

授)

enPiT-Securityの取り組みの紹介、および、人材育成に関す

る議論を行った。

また、実践セキュリティ人材を必要とする産業界や官公庁

からSecCapコースの演習を視察いただき、本取り組みの理

解を深めていただくと同時に、貴重なコメントを頂戴した。

●●Webアプリケーション検査と脆弱性対策演習(I-02)視察日 8月16日、23日視察者 島岡・稲垣(セコム株式会社)

●●デジタルフォレンジック演習(I-03)視察日 8月29日、30日視察者 島岡・稲垣(セコム株式会社)、岩井(デロイト

トーマツ サイバーセキュリティ先端研究所)、武

末・白濱(デロイト トーマツ リスクサービス株

式会社)、神納・田島(三菱重工業株式会社)他

●●セキュリティPBL演習C(リスクマネジメント演習)(N-03)視察日 8月31日~9月3日視察者 総務省、経済産業省、トレンドマイクロ株式会

社、NTTコミュニケーションズ株式会社、株式会

社ラック

(他 多数の見学者があった) 

54 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

来年度のイベント予定

●●連携企業ワークショップと●インターンシップガイダンスの実施平成28年4月~5月

NPO日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)主催の人材

交流会に参画する形で、連携企業とのインターンシップガイ

ダンスを実施する。受講生が企業の人材ニーズに直に接する

場を通して、実践的なセキュリティ技術への取り組み意識を

高めてもらうことがねらいである。

●●実践演習の改善に向けたワークショップ平成28年10月~12月

連携大学、参加大学、連携企業のメンバーにより、実践演習

のさらなる改良・改善について検討するワークショップであ

る。このワークショップのアウトプットに従い、各連携大学は

実践演習の追加開発や改良を進める。

各連携大学の募集情報

●●東北大学東北大学では、平成28年度の新入生オリエンテーション(4

月3日)で資料配付を行い、資料に記載された日時(4月上旬)

にガイダンスを実施する予定である。前期および通年科目に

ついては4月中旬が履修登録期限の予定である。後期科目に

ついては10月中旬が履修登録期限の予定である。なお、夏季

に実施する集中型演習については、演習科目によっては演習

機材の制約から定員があるため、必要に応じて事前選考をす

る可能性がある。

詳細は、本学のWebサイトでアナウンスする。Webサイト ●http://www.esprit.is.tohoku.ac.jp/問い合わせ先 ●E-mail ▶ [email protected]

●●奈良先端科学技術大学院大学奈良先端科学技術大学院大学では、新入生ガイダンス時

(4月第1週)において募集案内を行い、受講希望者は、応募書

類に記載し選考面談の上決定する。なお、4月の第2週までに

選考面談を実施し、受講生を決定する予定である。Webサイト ●http://www.seccap.jp/naist/問い合わせ先 ●E-mail ▶ [email protected]

●●北陸先端科学技術大学院大学北陸先端科学技術大学院大学では、情報科学研究科入学

生に対して3月に本分野のパンフレットを送付するとともに、

新入生ガイダンス時(4月第1週)において募集案内を行い、

受講希望者を積極的に募る。受講希望者は、4月第2週まで

に、スクリーニングテストおよび選考面談によって決定する。

Webサイト ●http://www.jaist.ac.jp/問い合わせ先 ●E-mail ▶ [email protected]

●●慶應義塾大学慶應義塾大学では、理工学研究科、政策・メディア研究科、

メディアデザイン研究科の学生に対して、4月の第1週に実施

されるガイダンスにおいて説明会と募集案内を行い、積極的

に受講希望者を募る。受講希望者は、意欲のある学生を積極

的に受け入れる。なお、応募多数の場合は書類選考を行う。Webサイト ●http://www.st.keio.ac.jp/

http://www.sfc.keio.ac.jp/gsmg/

http://www.kmd.keio.ac.jp/jp/問い合わせ先 ●E-mail ▶ [email protected]

●●情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ大学院大学では、平成28年度の新入生オ

リエンテーション(4月6日)にあわせてガイダンスを実施する

予定である。なお、夏季に実施する集中型演習については、

演習科目によっては演習機材の制約から定員があるため、必

要に応じて事前選考をする可能性がある。詳細は、本学の

Webサイトでアナウンスする。Webサイト ●http://www.iisec.ac.jp/問い合わせ先 ●E-mail ▶ [email protected]

まとめ2 . 2 . 8

セキュリティ分野では、幅広い産業分野において求められ

ている実践的なセキュリティ技術を習得した人材(実践セ

キュリティ人材)の育成を目指し、平成25年度から5つの連携

大学が協力してSecCapコースを開講した。SecCapコースは、

基礎力を養成できる共通科目と基礎科目、実践力を養成する

約20種類の演習、応用力を高める先進科目からなり、情報セ

キュリティにおける理論・技術・制度と法律・組織マネジメン

トをカバーできる「幅」と、基礎知識・実践演習・応用知識にわ

たる「深さ」を備えている。

SecCapコースの講義や演習の指導には、我が国トップレ

ベルのセキュリティ関連組織・企業と専門家諸氏に協力いた

だくことができた。実際に起こっているインシデントの詳細な

解説や、実データに基づいたセキュリティ分析演習は、受講

生にとって大変貴重な機会であり、講義や演習後の受講アン

ケートでも高く評価されていた。

平成27年度は、5連携大学および参加大学のうち14大学か

ら129名の学生が、本SecCapコースの修了を目指し、登録し

た。SecCapコースでは、共通科目・基礎科目、実践演習、先進

科目のそれぞれにおいて所定の単位数を取得できた学生

に、年度末の分野シンポジウムにおいて、SecCap修了認定証

を授与する。平成27年度は、113名の学生が、SecCap修了認

定を取得した。

平成27年度のSecCapコースのカリキュラムについては、

来年度のイベント予定・募集情報2 . 2 . 7

55e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

セキュリティ分野のアドバイザー委員の方々にご視察いただ

いたほか、セキュリティ人材を求める企業や官公庁の方々に

も紹介した。総じて、SecCapコースの講義と演習は、セキュリ

ティ実践力の養成につながるものとして高く評価され、特に

企業関係からは、SecCapコースの講義や演習を大学院生だ

けでなく、企業や官公庁へも提供して欲しいとの声が多く聞

かれた。

東北大学ではハイブリッド人材育成への取り組みとして、

開講科目であるネットワークセキュリティ実践を文系など非

情報系の学生が受講しやすい講座内容とした上で対象を全

学部学科に拡大し参加大学の新規開拓を行った。平成27年

度は東北福祉大学(総合マネジメント学部)、東北大学(経済

学部)からの新規参加があり、いずれも非情報系の学部生の

受け入れを行った。

参加した非情報系の学生からは「講座の内容としては文系

でも理解できるレベルであり、文系学生にとっても有意義で

ある(経済学部学生)」など好意的な声が聞かれた。

セキュリティ分野では、平成28年度以降に向けて、SecCap

コースのさらなる拡充と幅広い展開を進める予定である。講

義科目や演習科目は、平成27年度に実施した受講生アンケー

トの分析に沿って次のような拡充を行う。

①オンデマンド受講:SecCapコースとしての必修科目である共通科目は、平成

27年度も3拠点開講し、それぞれ他の連携大学・参加大学へ

遠隔配信した。また、共通科目に加え、慶應義塾大学「情報セ

キュリティ技術特論」もオンデマンド受講が可能となった。来

年度も全国の大学院生や学部生等に、より多くの受講機会を

提供できるよう準備を進める。

②演習への入門コースの提供:情報系の学生だけでなく、文系の学生等、非情報系の学生

が、SecCapコースを受講しやすくするために、平成27年度も

技術演習の入門コースを開講した。また、ハイブリッド人材の

育成に向けて、MOOC等を活用して、基礎知識についても事

前に準備できる環境を整えた。

③演習の拡充:平成27年度に実施した演習のそれぞれの内容を改良・拡

充するとともに、来年度もハードウェアセキュリティ演習、無

線LANセキュリティ演習、システム攻撃・防御演習を複数大学

で開講する。また、来年度はさらにシステム侵入・解析演習も

複数大学で開講し、学生の受講機会を増やす。

④分野横断の講義と演習:平成27年度受講したクラウドコンピューティング分野やビ

ジネスアプリケーション分野の講義を来年度も受講させてい

ただくとともに、セキュリティ分野の講義も引き続き他分野の

学生にも積極的に提供する予定である。

今年度は、組込みシステム分野に対し「ハードウェアセキュ

リティ演習」(3日間・15コマ相当)の内容を組込みシステム分

野向けの入門編「ハードウェアセキュリティ入門」として3時間

の講義に改編し、実施した。また、ビジネスアプリケーション

分野へは、北陸先端科学技術大学院大学より「最新情報セ

キュリティ理論と応用」の公開鍵認証基盤の内容を入門用に

編集して提供した。

平成25年度は、5連携大学に加え、連携大学のいずれかと

の既存の単位互換協定に基づいて、4つの参加大学から受講

生を受け入れる形でスタートし、平成26年度は、参加大学を

さらに広げ、また、新たに学部・高等専門学校等を対象に

Associate SecCap認定を設け、学部・高等専門学校からの受

講生を受け入れた。

平成27年度は学部生を対象とする大学も含め参加大学が

19校となり、学部、高等専門学校および専門学校も含め、来

年度はさらに拡大する予定である。

FD活動については、平成27年度、5連携大学の教員が継続

的に相互に連絡をとりつつカリキュラムを実施したほか、東

北大学開講の「ネットワークセキュリティ実践」(PBL演習)に

おいて今年度より参加校として加わった大学や高等専門学

校等の教員へのFDを実施した。

平成28年度は、前述の演習拠点を増やす活動、および、そ

れぞれの演習の指導を複数大学の教員が担当する場をさら

に増やし、教員側も体験を通して講義や演習の指導能力の向

上を目指す。

56 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

取り組みの概要2 . 3 .1

エネルギーや環境問題など現在の日本が抱える重要課題

に対応するには、スマートグリッドやスマートホームに代表

されるサイバーフィジカルシステム(CPS)による効率のよい

社会システムの実現が必要となる。CPSの開発では、組込みシ

ステムは重要な位置を占め、その品質の確保が従来以上に

重要となっている。

品質(特にディペンダビリティ)の高いものづくりは技術論

だけではなく、考え方(姿勢)が重要であるが、大学の通常の

講義で教育するのは困難であり、PBLを通じた実践的教育が

必要となる。本分野では、「組込みシステム開発技術を活用し

て産業界の具体的な課題を解決し、付加価値の高いサイ

バーフィジカルシステムを構築できる人材」を育成することを

目標としている。この目標を実現するために、連携大学にとど

まらず、広く全国から参加大学を募り、九州大学の連合型PBL

(Project Based Learning)と新しい産学連携教育手法である

名古屋大学のOJL(On the Job Learning)の2タイプを実施

し、組込みシステム分野の実践教育ネットワークを構築する。

連合型PBLでは、一般社団法人 情報処理学会 組込みシス

テムシンポジウム(ESS)ロボットチャレンジのテーマに加え

て、平成27年度からは、全国規模で実施されている一般社団

法人 組込みシステム技術協会が主催するETソフトウェアデ

ザインロボットコンテスト(愛称:ETロボコン)の競技テーマ

を共通課題としており、制御、機体、各種センサー、組込みソフ

トウェアを利活用することが求められる。また、画像認識を用

いた位置の把握など受講生がさまざまな工夫を行うことがで

きる教材にもなっている。情報の利活用教育に適した教材と

言える。

OJLでは、産業界から求められる開発課題に対して、学生、

教員、プロジェクトマネージャ(PM)、企業の管理者がチーム

を作り取り組む。企業の開発課題を大学で長期間実施するこ

とをねらいとしており、企業の課題を情報の利活用により解

決する教育そのものである。

補助期間終了後も引き続き、本事業の成果に基づいた教

材開発(教科書の出版など)や若手教員の育成に取り組む。

また、事業継続ための施策として、単位互換制度の整備、大学

のカリキュラムへの組み込み、修了認定証の企業への認知度

向上を実施する。また、受講生の指導教員に分散PBLの実施

ノウハウを修得してもらい、補助期間終了後に、連合型PBLや

OJLを各大学で継続して実施する。

学習・教育目標2 . 3 . 2

2.3.3節に示すように、組込みシステム分野では、基本コース

(対象:主に修士1年)と発展コース(対象:修士1・2年)を設け

る。短期集中合宿と分散PBLの2つを修了した修士課程の学

生を育成学生とし、その育成学生数の達成目標を図表2.3.1の

ように設定した。

なお、実際には学部生も受講するので、育成した学部生数

も参考値として集計・報告する。

教育内容2 . 3 . 3

分散PBLとして、連合型PBLと新しい産学連携教育手法であ

るOJLの2タイプを設けた。両タイプとも基本コース(対象:主

に修士1年)と発展コース(対象:修士1・2年)を設けた。基本

コースは、問題発見能力を身に付けるコースである。発展

コースは、基本コースからの単なる延長ではなく、管理技術と

その運用方法まで踏み込んだ高度な問題解決能力を身に付

けるコースである。基本コース修了に相当する能力を身に付

けていれば、基本コースを受講していない学生も発展コース

を受講してよい(図表2.3.2)。

基礎知識学習の授業は、参加大学では用意できないこと

が考えられる。用意できない場合は連携大学(九州大学、名

古屋大学)からその授業を配信した。

短期集中合宿は、複数拠点で同時開催することも考える。

2 . 3 組込みシステム分野

平成25年度

平成26年度

平成27年度

平成28年度 合計

修了生数40

(30)60

(50)80

(70)100

(90)280

(240)

参加大学数

― ― ― ―15~20

大学

FD参加教員数

― ― ― ―30~40

( )内は連携大学以外で内数

図表2.3.1 組込みシステム分野の学習・教育目標

57e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

例えば、九州大学連合型PBLの場合は、参加大学がすでに九

州、四国、近畿から関東にまで広がっている。そのためスプリ

ングスクールは、九州大学に全参加大学が集結するのではな

く、九州大学と首都圏の大学の2拠点で同時開催した。

短期集中合宿後の分散PBLでは、問題発見から問題解決ま

でをプロジェクトとして取り組み、組込みシステム技術の実践

力を養成した。

分散PBLの終了時は成果発表会を実施した。2.3.5節で詳述

するが、学会と連携した成果発表会も企画した。

【教材】整備を進めている教材は、次の通りである。

●ディペンダビリティ技術、センサー・ネットワーク技術、モデ

ルベース開発・検証技術、HW/SW協調開発技術等の組込

みシステム開発に関する基礎および発展的な内容

●分散PBLの指導方法や進め方

●ソフトウェア開発技術、プロジェクトマネジメント手法、開

発支援ツールの利用法

●文書作成技術、プロジェクト実施時のコミュニケーション技

九州大学では、次の教材を準備し、連合型PBLにおける

キックオフに位置付けるスプリングスクール、サマースクール

で使用した。

●キックオフ・オリエンテーション教材

●PBL演習課題・開発環境・開発技術の解説教材

●プロジェクトマネジメント教材

名古屋大学では、受講生の事前教育用に、大学院情報科学

研究科で前期に開講している次の2講座を整備し、配信した。

●ソフトウェア工学特論

●システムプログラム特論

OJLのキックオフに位置付ける夏期の短期集中合宿では、

次の教材を使用した。

●OJL概論

●組込み概論

●組込みプログラミング基礎教材

●プロジェクト管理教材(開発プロセスと品質、プロセスフ

ローダイアグラム、予実管理)

●プロジェクト・コミュニケーション教材

●文書作成技術教材

前述の組込みシステム分野の教材データは、平成26年9月

からenPiT関係者に限定公開している。開発した教材データ

と教育実績資料等は、九州大学データ共有システムに蓄積

し、随時閲覧可能となっている。

その他に、昨年度同様に、名古屋大学で実施している社会

人技術者向けの公開講座を、組込みシステム分野だけでなく

他分野の学生が受講できるようにした。

図表2.3.2 組込みシステム分野の教育内容

※「授業科目名」および「単位数」は、連携大学(九州大学・名古屋大学)、参加大学、各々のカリキュラムに準拠する。

分類 授業科目名 概要等

基礎知識学習

組込みシステム基礎ディペンダビリティ技術、センサー・ネットワーク技術、モデルベース開発・検証技術、HW/SW協調開発技術等の組込みシステム開発に関する基礎について学ぶ。

ソフトウェア工学分散PBLを実施する上で必要なソフトウェア開発技術やプロジェクトマネジメント手法について学ぶ。開発支援ツールの利用やモデルベース開発の基礎についても学ぶ。

任意 各大学で必要とされる科目。

短期集中合宿

基本コースキックオフ

基本コースの分散PBL(組込みシステム開発総合演習)のキックオフ合宿。基本コースの学生が組込みシステム開発と分散PBLの実施に必要なスキルを学ぶ。1週間程度をめどに、自主的に学生が運営し、学生がハードウェアからソフトウェアまでの幅広い一連の開発プロセスを実際に体験する機会にする。

発展コースキックオフ発展コースの分散PBL(組込みシステム開発総合演習)のキックオフ合宿。参加大学の指導教員、PM、発展コースの学生が参加し、分散PBLの指導方法や進め方についてFDを行う。

分散PBL

組込みシステム開発総合演習基本コース

基礎知識、短期集中合宿で得た知識をもとに、チームで組込みシステムを開発する。

組込みシステム開発総合演習発展コース

基本コース修了者が開発可能なレベルの組込みシステムを、技術および実用の両面から、より実践的な組込みシステムへ発展させる開発方法について学ぶ。

基本・発展のいずれのコースも、連合型PBLとOJLの2タイプから一つを選択する。連合型PBLでは、ESSロボットチャレンジのテーマもしくはETロボコンのテーマを共通課題とする。この課題では、制御、機体、各種センサー、組込みソフトウェアを利活用することが求められる。また、画像認識を用いた位置の把握など受講生がさまざまな工夫を行うことができる教材にもなっている。情報の利活用教育に適した教材と言える。OJLでは、産業界から求められる開発課題に対して、学生、教員、PM、企業の管理者がチームを作り取り組む。企業の開発課題を大学で長期間実施することをねらいとしており、企業の課題を情報の利活用により解決する教育そのものである。

58 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

実施体制2 . 3 . 4

(1)連携大学

組込みシステム分野の連携大学は九州大学と名古屋大学

の2校である。推進体制は、上部組織として組込みシステム分

野運営委員会(九州大学、名古屋大学の教員で構成)を設置

し、平成25年度は11月、1月、3月の3回、平成26年度は5月、7

月、9月、11月、1月、3月の6回、平成27年度は5月、7月、9月、11

月、1月、3月の6回打ち合わせを実施した。組込みシステム分

野運営委員会の下にサブとして九州大学、名古屋大学各々の

事業運営委員会を設置した。さらにその下には、カリキュラム

策定、教材開発、FD、教務、広報などのWGを設けた。

●九州大学九州大学は、大学院システム情報科学府情報知能工学専

攻社会情報システム工学コースQITO(Kyushu University

Information Communication Technology Architect

Education Program)の中に、サイバーフィジカルシステム人

材育成プログラムPEARL(Practical information Education

collaboration network Against Research fields and

Localities)を新設し、本事業に取り組んだ。事業運営委員会

はPEARL運営委員会と称し、学内教員と参加大学の教員、企

業等のアドバイザーで構成される。平成24年度5名であった

学内教員を平成25年4月から10名に増員し、平成25年度13名

であった学外委員もオブザーバー(委員候補の委員会出席

者)も含め平成26年度は22名、平成27年度は23名まで増員し

た。平成24年度は12月、2月の2回、平成25年度は4月、6月、9

月、12月、2月の5回、平成26年度は4月、8月、1月の3回、平成

27年度は4月に1回の打ち合わせを実施した。これ以降の打

ち合わせはチャットによるオンラインで随時行い、体制固め

と教材開発・広報等を実施してきた。

●名古屋大学名古屋大学は、大学院情報科学研究科が本事業に取り組

む。各専攻から教員1名が参加する事業実施委員会と、参加

大学を含むOJL実施担当者からなるOJL実施担当者会議を設

けた。さらに、それらの上位に参加大学の代表者と企業のア

ドバイザリ委員を含む事業運営委員会を設置し、実施体制を

整備した。アドバイザリ委員は、アイシン精機株式会社、株式

会社デンソー、トヨタ自動車株式会社、富士ソフト株式会社の

4社から1名ずつにご協力をいただいた。

平成27年度は、7月2日に第1回の事業運営委員会を開催

し、OJL基本コースのテーマと受講生を承認した。さらに、3月

1日に第2回の事業運営委員会を開催し、受講生の修了認定

を行うとともに、平成28年度OJL発展コースのテーマと受講

生を承認した。

企業1大学A

企業2大学B 修士課程の学生

教員 PM 管理者

国際標準

企業の技術者(オプション)

OJLテーマ

一般公開

OJLプロジェクト開発成果

開発成果

指導

指導 指導

開発成果

幹事大学

図表2.3.3 OJLフレーム

59e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

(2)参加大学、連携企業、団体

組込みシステム分野の参加大学は、平成24年度の18大学、

平成25年度の25大学、平成26年度の31大学から平成27年度

は35大学に増加した。その他、横浜システム工学院専門学校

と東海職業能力開発大学校が九州大学PEARLに参加した。企

業および技術アドバイザー・教育アドバイザーの参画は、平

成24年度の17社、平成25年度の32社、平成26年度の38社か

ら平成27年度は43社・団体に増加した。その他、ESSロボット

チャレンジのサポート企業など、我が国を代表する組込みシ

ステム関係の企業が、スプリングスクールとサマースクール

で参画した。

大学教員と連携企業等のアドバイザーの役割としては、九

州大学PEARLの連合型PBLでは、指導教員と外部アドバイザー

(企業の技術アドバイザー・教育アドバイザーや他大学の教

員)が共同して指導にあたる。

名古屋大学のOJLは、図表2.3.3に示すフレームで実施し、

大学教員と企業の管理者とPMが学生を指導する。大学教員

は学生とのペアで参加し、学生の技術的な指導にあたる。さ

らに、OJLテーマを提供する連携企業からは管理者が参加し、

学生の発表に対してコメントを加えるなどして、企業が要求

する水準を具体的に示し指導にあたる。

OJLの大きな特徴は、各OJLプロジェクトに専任のPMを置

くことである。PMは、学生に対して、OJLテーマにおける開発

を、一つの開発プロジェクトとして位置付け、開発を自己管理

するように指導する。これにより、学生は、すでに学習したソフ

トウェア工学の開発プロセスに関する知識を、実際の開発に

対して実践することを体験する。

連合型PBL、OJL、いずれにおいても、連携企業からの参加

者は、短期集中合宿におけるFDやPBL発表会の場で、実践的

な側面から大学に対してアドバイスを行う。

(3)学内教員の活用

学内教員の活用方法については、先導的ITスペシャリスト

育成推進事業に従事し、PBLやOJLに関する経験を有する学

内教員を指導教員として活用する。その際に、若手教員を優

先的に指導教員に登用し、教材開発(教科書の出版など)の

主担当とする。プロジェクト管理の経験がない若手教員に対

しては、FDを行いプロジェクト管理の実務能力を養成する。

(4)外部人材の活用とその知見の定着、継続体制作り

■外部人材の活用九州大学PEARLの連合型PBLに参加する各大学は、参加

チーム単位でESSロボットチャレンジもしくはETロボコンのど

ちらかのテーマを採用し、学会の有識者から全面的なバック

アップを得た。各参加大学は、可能な限り本事業に参加し、参

加大学の指導教員が本事業全体の教材開発にも従事した。

各連携企業も、技術アドバイザーとして本事業に参加した。

OJLでは、プロジェクト管理の経験を持つPMを配置するた

めに、企業での開発経験者を専任で雇用した。さらに、企業

の技術者が、開発者として参加することも歓迎している。企業

の技術者と一緒に仕事をすることは学生にとっても有益であ

る。

■外部人材の知見を定着させるための施策短期集中合宿では、指導教員、PM、発展コースの学生、企

業からのアドバイザーなどが参加し、分散PBLの指導方法や

進め方についてFDを行った。学内教員、参加大学の指導教員

は、外部の人材(企業からのアドバイザーや学会関係者)との

交流の場を得ることができ、そこで得た知見を次のPBLやOJL

の指導に活かすことができた。

成果発表会や組込みシステム教育シンポジウムは、参加大

学や連携企業だけでなく、広く外部に公開し、外部の参加者

からのフィードバックを活かす場となった。

短期集中合宿でのFDや対外シンポジウムを通じて得た知

見を指導教員が持ち帰り、補助期間終了後に、各大学で実施

するPBLやOJLで活かす。

PBLやFDの知見を蓄積、共有し、次の4項目を行うことで事

業期間終了後も活動を継続できるような体制の構築を推進

する。

●教材の共有:本事業の成果に基づいた教材の公開(教科

書として出版予定)

●単位互換制度の整備:他大学からも単位取得できる仕組

●学会との連携:情報処理学会との合同イベントの継続

●OJLの継続:OJLを継続して実施できるよう、企業に費用負

担を働きかける

60 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

教育実績2 . 3 . 5

組込みシステム分野では、基本コース(対象:主に修士1年)

と発展コース(対象:修士1・2年)を設けている。平成27年度

は、組込み技術体験学生のすそ野拡大、ハイブリッド人材の

養成、さらに参加大学数の増加を目的に、平成26年度に新設

したライトウェイトコースを継続した。

九州大学

九州大学PEARLの連合型PBLは、「情報処理学会のESSロ

ボットチャレンジを目指し、複数の大学が連合してPBLを実

施」してきたが、平成27年度からはこれに加えて「ETロボコン

を目指すPBLを実施」する大学が加わった。ESSロボットチャ

レンジの実行委員会と密に連携し、一般社団法人 情報処理

学会 組込みシステム研究会の後援で、図表2.3.4に示す日程

で実施した。昨年度と同様に、基本コースの実施時期は、発展

コースと同じ4月~10月に変更し、基本コースと発展コースを

合同で実施した。基本コースの実施時期を変更した結果、参

加大学の修士生の95%以上が最後まで受講・修了することが

できるようになった。

このPEARLの基本・発展コースは、5月のスプリングスクー

ルでキックオフし、その後の分散PBLを経て、8月~10月のサ

マースクールで成果発表を行う。11月以降は、学会発表に

チャレンジし、翌年2月には有志による成果発表会も企画予

定という1年間のコースとなった。ETロボコン参加大学の

チームは、スプリングスクールやサマースクールにも一部参

加し、成果発表として9月から10月に各地区で開催される競

技会に出場した。1チームが地区大会にて優勝を飾った。

九州大学PEARLの基本・発展コースは、5月9日~16日のス

プリングスクールでキックオフした。プログラムは図表2.3.5に

示すように、土曜日から次週の土曜日までの8日間とした。最

初の土曜・日曜の2日間は、九州大学伊都キャンパスと東海大

学高輪キャンパスの2拠点をTV会議システムで結んで同時開

催した。今年度はその2日間をキックオフとし、各自の学校に

戻って5日間ミニ分散PBLを行い、次の土曜日に複数拠点を結

んだTV会議で成果発表会を行った。昨年度と同様に、キック

オフ・分散PBL・成果発表会がセットになったので、スプリング

スクールのみ受講する「春合宿コース」をライトウェイトコー

スとして受講生を募集した。スプリングスクールの参加者数

は学生109名、教員・アドバイザー13名の計122名であった。

教材はiRobot社の教育用ロボットCreate2と制御ボードと

してRaspberry Piを用いた。

本教材ではCPSの基本的な習得を目標としており、基本的

な組込みシステムの操作方法に加え、実環境で動作するロ

ボット制御や無線ネットワーク通信を用いた遠隔制御につい

て学ぶことができる。

スプリングスクールでの演習課題として、120cm×80cmの

長方形の外周を、ロボットに載せたペットボトルおよび長方

形の角に置いたペットボトルを倒さないように一周するソフ

トウェアの開発を課した。

演習課題を通して組込みボードからロボットを制御する基

本的な方法を学ぶとともに、正確に進む、曲がるといったロ

ボット制御の習得を目的としている。

8日目には6拠点(九州大学、東海大学、東京電機大学(東京

千住キャンパス・千葉ニュータウンキャンパス)、信州大学、広

島市立大学)をTV会議システムでつなぎ成果発表会を実施

し、各チームが工夫した点、苦労した点、走行動画、走行タイ

ムの発表を行った。(図表2.3.6)。

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月平成28年

2月 3月

基礎知識学習

キックオフ

分散PBL学生募集 成果発表会

PEARLライトウェイトコース

PEARL基本コース発展コース

3月平成27年

春合宿コース

5/9~16スプリングスクール

8/22~29サマースクール

前半(中間発表会)

10/21~23サマースクール

後半(ESS2015)

2/23成果発表

3/24~25国内学会発表

(ETNET2016)

図表2.3.4 九州大学PEARLの平成27年度実施日程

61e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

名称・場所 月日 時 間 内 容 コース

キックオフ

九州大学伊都キャンパスウエスト2号館

506号室&

東海大学高輪キャンパス

4号館1階4103教室

5/9

9:00~9:30 オリエンテーション 久住憲嗣(九州大学)

春合宿コースキックオフ

9:30~10:30 組込みシステムの現状と開発技術の特性  久保秋真((株)チェンジビジョン)

10:50~12:00 ターゲット紹介 細合晋太郎(九州大学)

13:00~14:30 ファシリテーションスキル紹介 毛利幸雄(九州大学)

14:40~15:30 Scrumによるプロジェクトマネジメント 細合晋太郎(九州大学)

15:30~16:00 要求記述と管理 二上貴夫((株)東洋テクニカ)

16:00~17:00 システム開発方法論(1) 久住憲嗣(九州大学)

17:00~19:00 懇親会

5/10

9:00~12:00 システム開発方法論(2) 久住憲嗣(九州大学)

13:00~16:00 制御プログラム製作のための実験計画 三輪昌史(徳島大学)

16:10~17:00 実践力・研究力のためのPBLで養う問題発見・解決力 元木誠(関東学院大学)

ミニ分散PBL5/11~15 各チームごとに計画に従い、ミニ分散PBLを実施 春合宿コース

分散PBL5/13 18:00~20:00 進捗報告(5分/チーム)&質問タイム[Skype]

成果発表会

TV会議5/16

9:00~12:00 発表会(15分/チーム)春合宿コース成果発表会13:00~14:00

14:20~16:00 学生提案&チームビルディング

福岡会場:九州大学の遠隔授業風景東京会場:東海大学の遠隔授業風景

ロボットのハードウェア性能調査の演習 6拠点TV会議の成果発表会

図表2.3.5 九州大学PEARLスプリングスクールのプログラム

図表2.3.6 九州大学PEARLスプリングスクールの模様

62 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

スプリングスクール終了後の分散PBLでは、サマースクー

ル後半で実施されるESSロボットチャレンジで実施される競

技に向けて演習課題に取り組んだ。(図表2.3.7)

演習課題は大きくスマートモバイルロボット競技とアドバ

ンス競技に分けられ、スマートモバイルロボット競技では、コ

ンパルソリ部門とベーシック部門の両方を課している。

コンパルソリ部門は、ベーシック部門に必要な基本的なロ

ボットの制御の正確さを競う競技となっており、コンパルソリ

部門から取り組むことで必要な知識や技術の習得を段階的

に行える。

平成27年度のコンパルソリ部門では、基本的なロボットの

制御を評価する課題1、2に加え、課題3にてIoTを意識した外

部デバイスとの自律的な通信を行った。

ベーシック部門では、昨年度同様にロボットを2台使用して

もよく、時間制限内でのゴミの収集量と稼働状況のWeb表示

を競い合った。競技会で2台使ったチームは2チームあった。

そのうち1チームが2位に入賞した。アドバンス競技(希望者

のみ)は、ロボットを使った新たなサービスを提案する発表

を行った。平成27年度のアドバンス競技の参加チーム数は1

チームだった。

前半は8月22日~23日に東海大学高輪キャンパスにて、3

つの講義と学生企画セッション、ワークショップを実施した

(図表2.3.8)。

①講演1:ロボットの制御(沖俊任准教授、福山大学)では、情

報系の学生が多いため、ロボット制御に必要となる制御工

学やメカトロニクスについてご講演いただいた。

②講演2:文脈指向プログラミングの研究(紙名哲生講師、立

命館大学)では、ロボットソフトウェアのアドバンスな事例

として、環境・状況に応じて処理を切り替える文脈指向プロ

グラミングについて研究的な立ち位置からご講演いただ

いた。

③講演3:論文のススメ(岸知二教授、早稲田大学)では、PBL

と研究を並行して行うことが多い学生に対し、研究の作り

方、進め方、論文の書き方などさまざまなアドバイスをい

ただいた。

④学生企画では、ESSロボットチャレンジを共通課題としてい

る学生間で、課題やPBLの進め方などさまざまな話題で

ディスカッションを行った。

⑤ワークショップでは、他大学の教員がコーディネーターとな

り、演習課題を通して研究を見据えた議論を行った。(図表

2.3.9)

各大学に戻って8月24日から28日までの分散PBL実施後、8

月29日skypeによるサマースクール前半の成果発表会を行っ

た。

後半は10月21日~23日の一般社団法人 情報処理学会 組

込みシステム研究会が主催する組込みシステムシンポジウム

2015(ESS2015)の中で、成果発表会を行った。サマースクー

ルの参加者数は前半・後半合計で学生83名、教員・アドバイ

ザー30名の計113名であった。

図表2.3.7 競技会での演習課題

スマートモバイルロボット競技・競技ハードウェア:iRobotCreate2を使用

・コンパルソリ部門

課題1: 3メートル先の地点まで2回往復走行する。(前進後退のみ転回は必要としない)その地点とスタート地点との誤差を評価する。

課題2: フィールド上に示した50cm四方の範囲からはみ出さずに、180度超信地旋回を反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回り、反時計回りと走行。実行は1回。課題終了時の目標角度からのずれを評価。

課題3: ゴミ排出器と接続しゴミを排出させる。接続状況などを画面に表示すること。ゴミ排出器にWiFiで指令が出たかを評価する。

評価: 各課題の評価の最高点の合計点をコンパルソリ部門の評点とする。

・ベーシック部門

課題: 規定の時間内に環境内を自律的に動作し、その過程において地図を作成。ロボットは最大2台使用することができる。いずれかのロボットが環境中に配置されているドッキングステーションで停止したことをもって、課題終了。なお、ドッキングステーションへの到達は充電モードへ切り替わったことにより判定。課題終了後に可視化した地図を審判が判定することとする。

評価: ①地図の完成度、②地図の数値情報の提示、③規定時間内ゴール

アドバンス競技1台以上のiRobotCreate2、その他を使用

課題: チャレンジャー提案型の競技。チャレンジャーの自由な発想により新たなサービスを創出し、提案サービスのプロトタイプについて、発表およびデモ(各々15分程度)を行う。

評価: ①サービス観点、②工学観点、③プロジェクトマネジメント観点

63e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

図表2.3.8 九州大学PEARLサマースクールのプログラム

サマースクール前半

東海大学高輪キャンパス

8/22

10:00~10:15 オープニング・ワークショップの進め方

総合司会: 久住憲嗣(九州大学)

ワークショップ・アドバイザ: 久保秋真(チェンジビジョン) 渡辺晴美(東海大学) 汐月哲夫(東京電機大学) 三輪昌史(徳島大学) 細合晋太郎(九州大学)

10:15~12:00 中間報告会(10分×10チーム)→プロジェクトの進捗を報告する

13:00~14:30 講演1 「ロボットの制御」 沖俊任(福山大学)

15:00~16:30 講演2 「文脈指向プログラミングの研究」 紙名哲生(立命館大学)

17:00~19:00 情報交流会

8/23

9:00~12:00 学生企画セッション

13:00~14:30 講演3 「論文のススメ」 岸知二(早稲田大学)

15:00~16:00 ワークショップ(他大学教員とのディスカッション)

16:30~17:30 ワークショップ(チーム内ディスカッションと資料のまとめ)

分散PBL8/24~

8/289:00~9:40 PBL実施

8/29 13:00~16:00 サマースクール(前半)成果発表会(skype)

サマースクール後半

早稲田大学グリーン・コンピュー

ティング研究機構

10/21

◆ロボットチャレンジ:デモセッション (会場:1F) 総合司会: 久住憲嗣(九州大学)競技進行: 久保秋真(チェンジビジョン)競技審判: 小倉信彦(東京都市大学) 三輪昌史(徳島大学)競技タイマー係: 細合晋太郎(九州大学)

9:00~14:00 コース設営、チューニング

14:00~16:00コンパルソリ部門 競技会(10分×7チーム)

16:00~18:00 ベーシック部門 競技会(10分×7チーム)

18:00~18:30 アドバンス競技 競技会(15分×1チーム)

10/22

9:30~10:30 基調講演「IoT時代のパーソナルデータの利活用と保護」 佐藤一郎(国立情報学研究所)

10:40~14:40 ESS2015研究発表:アプリケーション・組込み開発環境

14:50~16:20 enPiT-Emb PBL成果発表会 総合司会:久住憲嗣(九州大学)

16:30~18:00

ロボットチャレンジ企画セッション総合司会: 細合晋太郎(九州大学)

・ベーシック部門参加の選抜チームによる競技デモ

・アドバンス部門の発表

18:10~21:00 スポンサー講演・ポスター展示・情報交換会

10/23

9:20~12:30 ESS2015 研究発表 省電力・リアルタイム・最適化

13:30~17:10

ESS2015 10周年記念企画パネル コーディネーター:渡辺晴美(東海大学)・「これからの10年-岐路に立つ日本の学会活動」

パネラ:鵜林尚靖(九州大学)、吉村健太郎(日立)、高瀬英希(京都大学)・「スマートロボットの実現に向けて」

パネラ:鈴木尚志(コギトマキナ)、三輪昌史(徳島大学)、元木誠(関東学院大学)、久住憲嗣(九州大学)

64 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

10月21日のESS2015ロボットチャレンジの競技会では、九

州大学、東海大学、東京電機大学(東京千住キャンパス・千葉

ニュータウンキャンパス)、芝浦工業大学(豊洲キャンパス)、

東京都市大学、関東学院大学、広島市立大学、横浜システム

工学院専門学校の8チームが出場し、PBL成果を競い合った

(図表2.3.9)。採点基準に基づく競技審判の評価により、競技

終了後に各チームの順位が発表された。

新規の課題であったので、予想外の展開も見られたが、見

学チームのメンバーも興味深く注視していた。10月22日のポ

スター展示では、スマートモバイル競技7チームがポスター

発表を行った。

10月22日の分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネット

ワーク組込みシステム分野PBL成果報告セッションでは、名古

屋大学、関東学院大学、東海大学、京都大学、北九州市立大学

の6チームがPBL成果発表を行った。

九州大学PEARLと密に連携しているESSの10周年企画とし

て22日には基調講演「IoT時代のパーソナルデータの利活用

と保護」佐藤一郎(国立情報学研究所)が企画され、23日に

は、ESSロボットチャレンジの運営サポーターである若手・ベ

テラン教員が「これからの10年−岐路に立つ日本の学会活

動」と「スマートロボットの実現に向けて」の2つのテーマで

10周年記念パネルセッションが企画された(図表2.3.10)。

前述したように、平成26年度から「春合宿コース」を新設

し、平成27年度も参加者が多く集まった。また、「基本・発展

コース」ではESSロボットチャレンジ競技会やETロボコンに向

けたコンテストチャレンジ型テーマだけでなく、事業企画/技

術開発型テーマでの参加も受け入れた。後者は学生一人の

チームや、複数大学にまたがるチームでの参加も募り、より広

範で多様な連合型PBLを目指すものである。図表2.3.11は成

果発表会での14チームのPBLテーマである。非情報系のハイ

ブリッド人材は2チームで、修士1年9名、学部4年2名であっ

た。複数大学にまたがるチームとしては、東海大学と徳島大

学で構成した1チームが生まれた。

来年度の九州大学PEARLは、今年度と同様の日程で基本・

発展コース、春合宿コースを実施する計画である。また、サ

マースクール前半のみ受講する夏合宿コースを追加募集す

ることも計画している。ただし、修士2年・学部4年の採用選考

開始が6月に変更されることを踏まえ、サマースクールの実施

日程を工夫することが重要課題と考えている。

スマートモバイル競技コンパルソリ部門の競技会

学生企画によるワークショップの模様 スマートモバイル競技ベーシック部門の競技会

enPiT-EmbPBL成果報告セッション

図表2.3.9 九州大学PEARLサマースクールの模様

65e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

ESS2015でのパネルセッション1 ESS2015でのパネルセッション2

図表2.3.10 ESS10周年記念企画の開催

図表2.3.11 九州大学PEARL PBLテーマ一覧

№ PBLテーマ チーム名(所属)・チーム人数

春合宿コース 1 速さと精度を求めて

参加チーム数:18参加大学:九州大学、関東学院大学、芝浦工業大学、東海大学、東京電機大学、東京都市大学、信州大学109名(M1:67、M2:4、B3:4 B4:34)

コンテストチャレンジ型

基本・発展コース

1 Pythonを用いたCreate2の制御方法ソガとユカイなナカマたち(関東学院大学)7名

(M1:1、M2:1、B4:5)

2リスクマネジメントを用いた自動掃除ロボット開発プロジェクト

芝浦Navi(芝浦工業大学)9名(M2:2、B4:7)

3COPによるロボット開発におけるレイヤアクティベイトモデルの適応

かみ☆じょう(東海大学・徳島大学)16名(M1:4、M2:6、B3:2、B4:4)【H】

4 ゴミの優先度を考慮したiRobotの走行 TDC(東京電機大学)5名(M1:1、B4:4)

5 チケット駆動開発による現代制御理論の実装電 大 ロ ボ メカ( 東 京 電 機 大 学 )7 名( M 1 : 4 、M2:1、:B4:2)【H】

6 プロジェクトマネジメントを活用した開発 ふわっと(東京都市大学)9名(B3:7、B4:2)

7マッピングを用いた掃除ロボットによる自動掃除の実現

HCU(広島市立大学)3名(M1:3)【H】

8スマートモバイルロボットiRobot Create2の走行と掃除の基本性能を引出すソフトウエアの開発

YSE_RoboChale15(横浜システム工学院専門学校)5名(C2:5)

9 ETロボコン・デベロッパー部門プライマリークラス高木研の愉快な仲間たち(京都大学)4名(M1:1、M2:3)【H】

10 ETロボコン・デベロッパー部門アドバンストクラスYSEdesire15(横浜システム工学院専門学校)3名

(C2:3)

11 ルンバでGO! Team MAKK(九州大学)4名(M1:4)

事業企画・技術開発型

12 GUTARA MORGEN Team AST(九州大学)5名(M1:5)

13 October octopus~大学内案内システム~ タコの世界展(九州大学)5名(M1:5)

14 かえるんルンバ 俺達がんばルンバ(九州大学)5名(M1:5)

【H】:ハイブリッド人材

66 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

名古屋大学

名古屋大学で行うOJLは、企業が関連する開発テーマを用

いて、開発プロジェクトを起ち上げ、プロジェクト管理を体験

させながら学生を育成することに特徴がある。平成27年度

は、図表2.3.12に示す日程で実施した。OJLは、基本コースと

発展コースで構成されており、基本コースの受講生は主に修

士課程の1年生を、発展コースは2年生を想定している。発展

コースは、基本コースの修了者を対象として、より高度な水準

の教育を行う。

基本コースの参加募集は、5月から6月にかけてWebサイト

を用いて実施した。参加を希望する学生は、自身の指導教員

の許可を得た上で、申し込みを行った。

OJLテーマは、複数の大学から学生を公募するテーマだけ

ではなく、各参加大学が個別にテーマを設定して当該参加大

学の学生のみを割り当てるテーマがある。

これらのテーマと受講生は、7月2日に実施した事業運営委

図表2.3.12 名古屋大学OJLの平成27年度実施日程

図表2.3.13 名古屋大学OJL基本コーステーマ一覧

合宿B’9/7~11

4月平成27年

5月 6月3月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月平成28年

2月 3月

OJLの実施

成果発表会、OJL修了認定

参加申込

基礎教育(必要に応じて受講)

合宿A 合宿B8/24~28 9/7~11

基本コース主に修士1年を対象

ライトウェイトコース主にハイブリッド人材を対象

OJLの実施

合宿D12/7~8

合宿C

継続確認

3/4~6

発展コース 主に修士2年を対象

成果発表会、OJL修了認定

OJLテーマ名称 B4 M1

3軸加速度センサを用いた生体動態解析 1

AndroidアプリによりCANデータの送受信 4 2

CAN対応のファジングツールの開発 2

Car Accessシステムに対してDos攻撃をするプログラムの開発

1

C言語リバースモデリングツールの開発 1

MDD用モデルエディタの拡張 1

mruby用汎用入出力ライブラリの設計と開発に関する研究

1

NoSQLを利用した複数視点による移動物体位置管理システムの提案

1

Raspberry Pi / Arduino を用いた IoT アプリケーションの開発

1 3

RoboCar 1/10 による車載ソフトウェアプラットホームの実証実験

1

RoboCar 1/10 の制御アプリケーションの機能拡張 1

Roombaのゴミ収集の可視化 1

RTOSでのmrubyの動作検証と評価に対する研究 1

TECS機能拡張開発 1

コーディングチェッカーによる生産性向上の検証 1

OJLテーマ名称 B4 M1

センサ誤差を含む動作解析データに対する尤度推定法に関する研究

1

ディザマトリクス生成プログラムの検討 1

デジタルペンによるドローイングの特徴解析 1

ドローンの遠隔操作に関する研究 1

ハードウェア処理による画像認識システムの高速化 1

ハードウェア設計への記号モデル検査の適用支援環境の開発

1

ラッパーライブラリとDSLを用いたコーディング規約の記述性向上

1

下水管路内調査のための画像処理による解析と三次元復元に関する研究

1

個人の嗜好に基づく電子広告提示システムに関する研究 1

車載向け仮想マシン対応パーティションOSの開発 1

組込みプログラミング教材の開発 1

組込みむけ仮想化環境におけるOS間の影響評価 1

耐タンパLSIの車載セキュリティーへの応用 2

動力学シミュレータを用いた自動走行時における搭乗者の心理実験

2

67e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

員会で承認された。最終的には、図表2.3.13に示す29のOJL

テーマに、それぞれ学生が割り当てられた。

OJL基本コースは10月からの後期に実施するが、OJLに申

し込みを行う学生は、参加する上で必要な基礎的科目を前期

に履修することが求められていた。例えば、名古屋大学の学

生は、上期に開講される「システムプログラム特論(2単位)」と

「ソフトウェア工学特論(2単位)」の履修が求められた。なお、

この2科目は、参加大学から希望があれば、TV会議システムで

配信した。

OJLの受講生は、8月24日~28日と、9月7日~11日の合計2

週間にわたり実施した短期集中合宿への参加が求められた

(図表2.3.14)。

合宿では、基本コースの学生に対して、OJLの実施に必要

な基礎知識およびスキルの習得と、開発チームで行う自律走

行車を制御するモデルベース開発実習、さらに計画書の作

成、社会人も参加する組込みシステム技術に関するサマー

ワークショップへの参加、小規模な組込みシステム開発PBL

図表2.3.14 名古屋大学OJLサマースクールのプログラム

合宿A

8月24日

13:00 14:15 オリエンテーション

14:15 14:45 組込み基礎

15:00 17:00 技術文書の書き方

17:00 18:30 交流会

8月25日

9:00 10:30 管理ツール実習

10:30 11:30 テーマの分析

12:30 17:00 プロジェクト計画作成

8月26日9:00 11:30 プロジェクト計画作成

12:30 17:00 プロジェクト計画発表

8月27日 SWEST参加

8月28日 SWEST参加

合宿B

9月7日13:00 14:00 オリエンテーション

14:00 17:00 Python入門

9月8日

9:00 10:15 Python入門

10:30 11:30 Linux入門

12:30 17:00 PythonによるiRobot Create制御開発

9月9日

9:00 11:30 PythonによるiRobot Create制御

12:30 14:55 iRobot Create競技

15:00 17:00 OJL発展コース成果発表会

9月10日 9:00 17:00 iRobot Create制御 応用編開発

9月11日

9:00 11:30 iRobot Create競技

12:30 13:45 成果発表会

14:00 16:00 講演:ロボットのいる暮らし(太田氏)

16:00 17:00 クロージング

図表2.3.15 合宿の様子

68 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

を通じた基礎的な開発力の育成などを行った。この合宿にお

いて、九州大学の教員も協力をした。

なお、9月7日~11日は、情報技術系以外の大学院生を対象

としたライトウェイトコースを併設して開催した。このコース

には、機械学系と建築学系の学生5名と、医療系の社会人1名

が参加した。彼らに、基本コースの学生が行う演習課題を与

え、教員が個別に指導をした。

この合宿には、基本コースの学生35名とライトウェイトコー

ス5名と発展コースの学生6名が参加した。都合により参加で

きなかった基本コースの学生に対しては、後日にPMが個別

に指導を行った。

9月7日~11日に実施した後半の合宿では、学生は改めて

文書作成やコミュニケーション技術に関する講義と演習を受

けた後、プロジェクト計画書の作成が求められた。具体的に

は、OJLで行う開発を一つのプロジェクトと見なし、OJL基本

コースの終了までの期間内に作成する成果物を定義した。つ

まり、学生は、単にプログラムを実装するだけではなく、OJL

に参画する教員や企業関係者の要求を踏まえて開発対象を

明確にした要求仕様書を作成することや、要求仕様に従い設

計を実施した結果としての設計書を作成することなどが求め

られた。

その後に、学生はそれらの成果物をどのようなスケジュー

ルに従い開発するかをガントチャートで記述することが求め

られた。なお、ガントチャートは、OJLの進捗状況に応じて、適

宜改訂することが指示された。

なお、ライトウェイトコースの受講生は、前述の夏合宿の一

部に参加した。修士2年2名、修士1年1名、学部4年5名、計8名

のうち、修士2年1名を除く7名がハイブリッド人材であった。

彼らは3名~4名でチームを作り、設計書を書きながら自律走

行車を制御するモデルベース開発を行うことが求められた。

合宿の8月25日~27日の前半と9月8日~9日の後半でチーム

メンバーを入れ替え、設計書のみを引き継いで開発を行う経

験をした。

10月から始まったOJLでは、学生は、設計書の作成やプロ

グラムの実装だけではなく、プロジェクト管理を実践的に学

習した。具体的には、学生は週報を作成し、週に1回の割合で

PMと打ち合わせを行うことが求められた。

図表2.3.16に、週報の書式を示す。週報には、これまでの1

週間の実績とこれからの1週間の予定を記入する。学生は週

報をPMへ提出し、PMと週例ミーティングを行う。

PMが遠隔地の異なる大学に所属する学生と週例ミーティ

ングを行う場合は、WebEX(Webを使用した会議システム)も

しくはTV会議システムを用いて実施した。週報などのファイ

ルは、SVNを用いて学生とPMの引き渡しをした。1回のミー

ティング時間は、テーマや報告内容により異なるが、おおむ

ね1時間程度であった。

PMは、学生の進捗状況を確認し、抱えている課題を認識

し、必要なアドバイスを実施するとともに、PMコメント欄に記

入して週報を返却した。進捗が当初の計画通りに進んでいな

い場合には、計画の見直しを学生とともに行い、ガントチャー

トの改訂を指示した。

学生は、スケジュール改訂の体験を通じ、自らの生産性を

認識し、妥当なスケジュールを見積もる実践力を養う。なお、

生産性に関心を持たせるために、学生は、1週間で作成した

プログラムや開発文書などの分量と、それに要した時間を週

報に記録することが求められている。

PMは必要に応じて、学生が作成する要求仕様書や設計書

などの開発文書を精査し、技術的な内容や書き方を具体的

に指導した。また、学生が使用する開発環境の調査を行った

場合には、調査結果を記録するように求めた。

図表2.3.16 週報の書式

69e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

このように、OJLでは、プログラム実装のみを行うことを許

さず、開発プロセスに従い、要求定義や設計などを行うことが

求められている。そして、各アクティビティにおける成果物とし

ての開発文書の作成が求められている。その上で、ガント

チャートを用いて、スケジュールの自己管理を行うように習慣

づけられる。

さらに学生は、月に1回の割合で、OJLテーマに参画する連

携企業の方と指導教員に対して、月例報告を行うことが求め

られた。学生は、参加者から、進捗状況や技術的な内容につ

いての指導を受けた。月例報告会の時間はテーマごとに異な

るが、おおむね1時間~2時間程度であった。

OJL発展コースは、平成27年3月4日~6日の名古屋大学東

山キャンパスでの短期集中合宿でキックオフした。当合宿で

は、平成26年度基本コースの成果発表を行うとともに、発展

コースのプロジェクト計画作成や、就職活動に向けての面接

練習を実施した。この合宿には、25名の学生が出席した。

OJL発展コースは、平成27年度の上期に、14テーマが実施

された(図表2.3.17)。

発展コースの指導内容は、基本コースのそれと同様であ

る。ただし、PMが学生に要求する水準を高めている。さらに、

一部の学生に対しては、修士論文の作成をプロジェクトに設

定して、修士論文の提出までのガントチャートを作成するよう

に指導した。つまり、修士論文研究の全体に対してプロジェク

ト管理を実践するように求めた。プロジェクト管理の実践的

な能力は、単にシステムの開発だけではなく、研究論文の作

成までを含み発揮されるべきであり、OJLを通してさまざまな

問題解決を行う実践力を養成する。

来年度の名古屋大学OJLは、基本コースと発展コースを図

表2.3.18に示すように実施する。発展コースは、より高い水準

での実践力を養成するために、その受講生は、基本コースの

修了者から希望する者を選考する。なお、発展コースの合宿

時期は、修士2年の就職活動の状況を踏まえて変更をする場

合がある。

【まとめ】組込みシステム分野の連携大学間の横断活動は、2カ月に

1回の頻度で開催している組込みシステム分野運営委員会で

の打ち合わせに基づ いて、短期集中合宿への講師派遣、

ESS2015でのenPiT-Embセッション企画、組込み技術とネット

ワークに関するワークショップETNET2016での組込みシステ

ム分野修了生の発表などを行った。来年度も教員・アドバイ

ザーの分野内、分野間の交流も図りながら、学生教育の場、

図表2.3.17 名古屋大学OJL基本コーステーマ一覧

図表2.3.18 名古屋大学OJLの平成28年度計画日程

テーマ名称

耐タンパLSIの車載セキュリティーへの応用

制御アルゴリズムのメニーコア向け最適化

車両周辺環境とドライバ状態を考慮した自動車運転モデルの検討

車載制御アプリケーションのマルチコア向けのアーキテクチャ及び評価環境実現

車載Ethernet通信プロトコルスタックの開発

自律移動ロボット制御システム向け省電力指向ソフトウェアプラットフォーム

カメラで観測する物体の3次元位置算出

カスタマイズ可能なコーディングチェッカによるセキュアコーディング

RoboCar 1/10 による車載ソフトウェアプラットホームの実証実験

NFCカードを用いた入退,勤怠管理システム

mRubyベースのロボット制御プラットホームの開発

ETロボコン(グループH)

ETロボコン(グループC)

※非公開の1件は未掲載。

合宿B’9/5~9

4月平成28年

5月 6月3月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月平成29年

2月 3月

OJLの実施

成果発表会、OJL修了認定

参加申込

基礎教育(必要に応じて受講)

合宿A 合宿B8/22~26 9/5~9

基本コース主に修士1年を対象

ライトウェイトコース主にハイブリッド人材を対象

OJLの実施継続確認

発展コース 主に修士2年を対象

成果発表会、OJL修了認定合宿C2/29~3/2

合宿D9/7~9

70 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

教員FDの場を広げていく。

組込みシステム分野の平成27年度の受講生数と修了生数

を図表2.3.19に示す。受講生数は平成25年度の92名、平成26

年度の120名から平成27年度142名に、修了生数は平成25年

度の65名、平成26年度の114名から平成27年度は135名に増

加し、今年度目標の80名を超えた。なお、学部生等も加えると

受講209名、修了187名であった。ハイブリッド人材の修了は

修士12名と学部2名であった。

発展コースは、就職活動を行う修士2年を主な対象とする。

また、参加大学から多数の学部4年も受講生に含まれる。来

年度は、修士2年・学部4年の採用選考開始が6月に変更さ

れ、就活スケジュールが再度大きく変わるので、適切に状況

を確認しながら、合宿や成果発表会などのスケジュールを工

夫することが重要課題と考えている。なぜならば、今年度末の

組込みシステム分野は、2連携大学と日本全国(北海道・東北

地方は除く)に広がっている35参加大学という構成となった。

参加大学の受講生が修士生だけなら67%以上を占め、学部

等の学生も含めると77%を超えるのが特徴である。来年度も

参加大学数を増加させていくので、この比率はさらに高く

なっていくからである。

学会発表等の成果一覧

●平成27年度(1)福田 晃,”enPiT組込みシステム分野九州大学事業の紹

介”,AXIES2015大学ICT推進協議会,平成27年12月

(2)高田 広章,”enPiT組込みシステム分野 名古屋大学事

業の紹介.”,AXIES2015大学ICT推進協議会,Dec.2015

(3)毛利 幸雄,細合 晋太郎,鵜林 尚靖,福田 晃 ,”enPiTにおけ

るファシリテーションスキル授業の実践と評価について”,日

本ソフトウェア科学会第32回大会rePiTセッション,Sep.2015

(4)毛利 幸雄 ,”enPiTにおけるファシリテーションスキル授業

の実践報告(実施・評価・効果)”,ソフトウェア信頼性研究会第

11回ワークショップ,Nov.2015

(5)細合 晋太郎,石田 繁巳,亀井 靖高,鵜林 尚靖,福

田 晃, "自律走行ロボットを用いたIoT開発PBLに向けた

教 材 開 発 " , 情 報 処 理 学 会 組 込 みシステムシンポジウム

2015(ESS2015),http://www.ipsj.or.jp/kenkyukai/event/

s-ess2015.html

(6)細合 晋太郎, "enPiT Emb/PEARL: ロボットIoTシステムを

題材としたPBL教材",第29回SEA教育ワークショップ2015,

平成25年度 平成26年度 平成27年度 平成28年度

受講 修了 受講 修了 受講 修了 受講 修了

受講・修了生数

修士

組込みシステム分野合計 92 65 120 114 142 135

【目標】 【40】 【60】 【80】 【100】

内ハイブリッド 9 8 14 12

連携大学 22 22 45 44 46 43

【目標】 【10】 【10】 【10】 【10】

参加大学 70 43 75 70 96 92

【目標】 【30】 【50】 【70】 【90】

他(学部・博士・専門学校) 96 45 65 43 67 52

内ハイブリッド 9 9 2 2

基本コース修士 63 44 58 57 70 68

他 43 18 49 31 45 39

発展コース修士 29 21 48 45 35 35

他 53 27 0 0 2 2

ライトウェイトコース修士 14 12 37 32

他 16 12 20 11

参加大学数 27 31 35

連携企業数 32 38 43

図表2.3.19 組込みシステム分野の受講生数・修了生数

71e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

http://www.sea.jp/SIGEDU/2015_29th_ws_rpt.pdf

(7)分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク

組込みシステム分野,"分野・地域を越えた実践的情報教育

協働ネットワーク組込みシステム分野(enPiT-EMB)Project

Based Learning 成果報告,"組込みシステムシンポジウム

2015(ESS2015),早稲田大学グリーン・コンピューティング・シ

ステム研究開発センター,Oct.2015.

(7-1)小川 真彩高,"OJLによる車載制御向けマルチコアプロ

グラミングフレームワークの開発."

(7-2)松尾 牧人,"除草ロボットに用いる画像処理のシステム

開発."

(7-3)谷 祐輔,"ETロボコン参加によるチーム開発の実践."

(7-4)森谷 大輔,"コンテキスト指向プログラミングにおけるア

クティベイトモデルの考察."

(7-5)中尾 美月,"掃除機ロボットのための強化学習による追

従動作とランドマーク検出."

(7-6)林康平, 長澤慶平, 砂川幸伸, 中村恭太, 仲久保正人,"ス

マートモバイルロボットiRobotCreate2の走行と掃除の基本

性能を引き出すソフトウェアの開発."

(7-7)小山 裕昭,吉田 海鈴,岡崎 裕輝, 奥村 亮一,曽我 健

太,田中 大希,中尾 美月,元木 誠,"自己位置推定法と複数の

行動ルールを用いた掃引方法の提案."

(7-8)小泉 雄大, 節家 淳, 中山 敬基,"マッピングを用いた掃

除ロボットによる自動掃除の実現."

(7-9)宇佐神絵理,Maher Aljehani,池田幸恵,石井瞭,君野

敬佑,久貝洋介,長谷川駿,八木陽平,重吉 勇哉,"SysMLを

用いた自動掃除ロボット開発プロジェクト."

(7-10)上條弘貴, 小川英理, 森谷大輔, 折田亮, 中里裕也, 小

田切洸貴, 藤田勇也, 疋田一貴, 渡辺晴美,"COPによるロボッ

ト開発におけるレイヤアクティベイトモデルの適応."

(7-11)山﨑 翔,岩﨑 千春,大坪 聖,紫合 治,"ゴミの優先度を

考慮したiRobotの走行."

(7-12)奥屋大樹,尾本貴亮,北川祐也,鍬塚茂幸,針口拓也,

濱田秀平,渡辺吉城,汐月哲夫,"チケット駆動開発による現代

制御理論の実装."

(8)本多一樹,"車載ネットワーク向けTCP/IPプロトコルスタッ

クの開発.",組み技術とネットワークに関するワークショップ

(ETNET2016),福江文化会館/勤労福祉センター,Mar.2016.

(9)奥村潤,浦本竜,佐野隼輔,"kintoneとArduinoを用いた低

コスト在庫管理IoTシステムの開発.",組み技術とネットワーク

に関するワークショップ(ETNET2016),福江文化会館/勤労

福祉センター,Mar.2016.

(10)渡辺 晴美 , 久住 憲嗣 , 三輪 昌史 , 元木 誠 , 小倉 信彦,

久保秋 真 , 細合 晋太郎 , 菅谷 みどり , 紫合 治 ,“ESSロボッ

トチャレンジ2015”, 組込みシステムシンポジウム2015論文

集,2015,112-116 (2015-10-14) .

(11)渡辺 晴美 , 久住 憲嗣,”スマートロボットの実現に向けて

~ソフトウェア・ハードウェアの課題を探る~”,組込みシステ

ムシンポジウム2015論文集,2015,111 - 111 (2015-10-14).

(12)H. Watanabe,I.Tanigawa, M.Sugaya, N.Ogura and

K.Hisazumi,”A Development of Educational Robot

Software for Master's Course Students”, Proceedings of

the Workshop on 2015 Workshop on Embedded and

Cyber-Physical Systems Education (WESE), ESWEEK 2015,

Oct.2015.

(13)小川 英理, 森谷 大輔, 渡辺 晴美,”コンテキスト指向プロ

グラミングのためのレイヤアクティベイトモデルの考察”, 組

込みシステムシンポジウム2015論文集,2015,pp.133 - 134

(2015-10-14).

(14)上條 弘貴, 渡辺 晴美,”ロボット開発によるコンテキスト

指向プログラミング言語の評価”,組込みシステムシンポジウ

ム2015論文集,2015,pp.141-142 (2015-10-14).

(15)森谷 大輔, 小川 英理, 上條 弘貴, 渡辺 晴美,” コンテキ

スト指向プログラミングのためのレイヤ相互作用図の考察”,

知能ソフトウェア工学研究会 (KBSE) , Mar.2016.

(16)谷川郁太, 小倉信彦, 菅谷みどり, 渡辺晴美, 久住憲嗣,

福田晃,”組込みソフトウェア開発のためのコンテキスト指向

モデリング言語のための考察”,知能ソフトウェア工学研究会

(KBSE) , Mar.2016

(17)上條弘貴, 森谷大輔, 小川英理, 渡辺晴美,”C#のための

コンテキスト指向プログラミングとStrategyパターンの比較”,

第108回プログラミング研究会 (PRO-2015-5), Feb.2016

●平成26年度(1)大迫 周平, 亀井 靖高, 細合 晋太郎, 加藤 公敬, 石塚 昭

彦, 坂口 和敏, 川高 美由紀, 森田 昌嗣, 鵜林 尚靖, 福田 晃,

"PBLにおけるデザイン思考適用の効果と課題," 情処学研報

2014-SE-184(2), pp.1-7, 日立研究所(勝田地区), May 2014.

(2)細合 晋太郎, 石田 繁巳, 亀井 靖高, 大迫 周平, 井垣 宏, 鵜

林 尚靖, 福田 晃, "IoTシステムを題材としたPBLの導入提案,"

情処学研報 2014-SE-185(7), pp.1-6, 富良野文化会館, July

2014.

(3)Shaymaa E. Sorour, Tsunenori Mine, Kazumasa Goda

and Sachio Hirokawa, "Prediction of Students' Grades

based on Free-style Comments Data," Proc. the 13th Int.

Conf. on Web-based Learning (ICWL2014), LNCS 8613,

p.142, Tallinn, Estonia, Aug. 2014.

(4)野田 夏子, 細合 晋太郎, "モデル駆動で開発しよう―実適

用における課題と先端技術 ," ソフトウェアエンジニアリング

シンポジウム2014論文集, pp.217-217, 芝浦工業大学芝浦

キャンパス, Sep. 2014.

(5)細合 晋太郎, 石田 繁巳, 亀井 靖高, 大迫 周平, 井垣 宏, 鵜

林 尚靖, 福田 晃, "IoTを題材としたPBLの実施と分析," 日本ソ

フトウェア科学会第31回大会(平成26年度)(JSSST2014)講

演論文集, rePiT1-3, 名古屋大学東山キャンパス, Sep. 2014.

(6)舘 伸幸, 山本 雅基, 吉田 則裕, 高嶋 博之, 海上 智昭, 安藤

友樹, 松原 豊, 本田 晋也, 高田 広章, "OJLによる実践的組込

みシステム教育," 日本ソフトウェア科学会第31回大会(平成

72 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

26年度)(JSSST2014)講演論文集, rePiT2-1, 名古屋大学東山

キャンパス, Sep. 2014.

(7)大迫 周平, 孔 維強, 亀井 靖高, 細合 晋太郎, 石田 繁巳,

鵜林 尚靖, 福田 晃, "テキストマイニングによるPBL発表会評

価アンケート傾向分析," 日本ソフトウェア科学会第31回大会

(平成26年度)(JSSST2014)講演論文集, rePiT4-2, 名古屋大

学東山キャンパス, Sep. 2014.

(8)井垣 宏, 奥田 剛, 細合 晋太郎, 早瀬 康裕, "続・ソフトウェ

ア工学の共通問題:2.PBLと共通問題~成功事例と失敗事例

による共通問題の形成~," 情報処理, Vol.55, No.10, pp.1064-

1068, Oct. 2014.

(9)分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク組

込みシステム分野, "分野・地域を越えた実践的情報教育協働

ネットワーク組込みシステム分野(enPiT-EMB) Project-Based

Learning成果報告," 組込みシステムシンポジウム2014, 国立

オリンピック記念青少年総合センター, Oct. 2014.

(9-1)久住 憲嗣, "enPiT概要説明."

(9-2)吉橋 忠政, "プロジェクトマネジメント的観点から見た

反省."

(9-3)松田 大樹, 田頭 幸宏, 中村 貴史, "自律移動ロボットの

自己位置推定の精度向上."

(9-4)谷川 郁太, 渡辺 晴美, "コンテキスト指向プログラミン

グ実現に向けたプログラム実行時書き換えフレームワーク

の研究に至った経緯."

(9-5)青山 慎二, 高 赫, 佐伯 良光, 張 暁龍, 中里 一幾, 山﨑

友貴, 久住 憲嗣, "不確定要素を含んだ組込みシステム開発

のリスク管理手法の評価."

(9-6)福崎 雄生, "公共空間におけるWi-Fiパケット人流認識シ

ステム."

(9-7)奥山 尚平, "車載ソフトウェアプラットフォームとモバイ

ル端末のシステム連携."

(9-8)李 奕驍, "RTOSをベースとしたMindstorms EV3用開発

プラットフォーム."

(9-9)菅谷 みどり, 近藤 隆路, 高瀬 英希, 細合 晋太郎,柳 美由

貴, "パネル: ESSロボットチャレンジ10周年:10年を振り返り、

今後を語ろう."

(10)渡辺 晴美, 久住 憲嗣, 三輪 昌史, 元木 誠, 小倉 信彦,

久保秋 真, 細合 晋太郎, 菅谷 みどり, 紫合 治, "ESSロボット

チャレンジ2014," 組込みシステムシンポジウム2014論文集,

pp.134-139, 国立オリンピック記念青少年総合センター, Oct.

2014.

(11)"ロボットチャレンジポスター概要," 組込みシステムシン

ポジウム2014論文集, pp.140-142, 国立オリンピック記念青

少年総合センター, Oct. 2014.

(12)高瀬英希, 細合晋太郎, 岡山 直樹, 喜多 真琴, 後藤 文康,

谷口 一徹, 長濱 みほ, 星野 利夫, 宮崎 秀俊, "若手組込み技

術者を対象とした教育実習LED-Camp2の実施速報" 組込み

システムシンポジウム2014論文集, pp.151-152, 国立オリン

ピック記念青少年総合センター, Oct. 2014.

(13)松原 豊, 安藤 友樹, 吉田 則裕, 舘 伸幸, 高嶋 博之, 山本

雅基, 本田 晋也, 高田 広章, "enPiT-Emb名古屋大学事業:OJL

(On the Job Learning)を中心とした実践的産学連携教育,"

組込みシステムシンポジウム2014論文集, pp.161-161, 国立

オリンピック記念青少年総合センター, Oct. 2014.

(14)大迫 周平, 亀井 靖高, 細合 晋太郎, 石田 繁巳, 鵜林 尚

靖, 福田 晃, "テキストマイニングを用いた価値創造教育カリ

キュラムの効果分析," 情処学研報 2014-SE-186(8), pp.1-8,

大阪大学吹田キャンパス, Nov. 2014.

(15)Ikuta Tanigawa, Harumi Watanabe, Midori Sugaya

and Kenji Hisazumi, "A Case Study: How to Find and Reify

a Research Theme on Project Based Learning for Master's

Course Education," Proc. Software Engineering Education

Workshop (SEEW2014), LNCS 8613, Jeju, Korea, Dec. 2014.

(16)久住 憲嗣, 渡辺 晴美, "分野を超えたものづくりと教育

−組込みシステム開発教育のためのロボットチャレンジ−:

0.編集にあたって," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.50-52, Jan.

2015.

(17)二上 貴夫, "分野を超えたものづくりと教育 −組込みシ

ステム開発教育のためのロボットチャレンジ−:1.MDD/ESS

ロボットチャレンジの原点 −コンテスト継続の原動力−," 情

報処理, Vol.56, No.1, pp.53-55, Jan. 2015.

(18)福田 晃, "分野を超えたものづくりと教育 −組込みシス

テム開発教育のためのロボットチャレンジ−:2.大学におけ

る実践的教育へのチャレンジ −開かれた教育への挑戦−,"

情報処理, Vol.56, No.1, pp.56-57, Jan. 2015.

(19)久住 憲嗣, "分野を超えたものづくりと教育 −組込み

システム開発教育のためのロボットチャレンジ−:3.ロボッ

トチャレンジを用いた分野・地域を超えたProject-Based

Learning," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.58-61, Jan. 2015.

(20)久住 憲嗣, 渡辺 晴美, "分野を超えたものづくりと教育

−組込みシステム開発教育のためのロボットチャレンジ−:

4.組込みシステムのためのモデル駆動開発技術 −共通問題

から新しい技術へのチャレンジ−," 情報処理, Vol.56, No.1,

pp.62-64, Jan. 2015.

(21)小倉 信彦, 久保秋 真, "分野を超えたものづくりと教育

−組込みシステム開発教育のためのロボットチャレンジ−:

5.組込みシステムの共通問題:飛行船システム競技 −工学

教育の基礎である計測から考察する−," 情報処理, Vol.56,

No.1, pp.65-67, Jan. 2015.

(22)三輪 昌史, "分野を超えたものづくりと教育 −組込みシ

ステム開発教育のためのロボットチャレンジ−:6.制御工学

から見たソフトウェア −ロボット製作における制御とソフト

ウェア−," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.68-70, Jan. 2015.

(23)元木 誠, "分野を超えたものづくりと教育 −組込みシス

テム開発教育のためのロボットチャレンジ−:7.ロボットチャ

レンジ課題を用いた機械学習応用教育," 情報処理, Vol.56,

No.1, pp.71-73, Jan. 2015.

(24)菅谷 みどり, 谷田川 ルミ, 杉本 徹, "分野を超えたものづ

73e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

くりと教育 −組込みシステム開発教育のためのロボットチャ

レンジ−:8.ロボットPBLを学部導入教材として活用する −

授業における事例報告−," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.74-76,

Jan. 2015.

(25)香山 瑞恵, "分野を超えたものづくりと教育 −組込みシ

ステム開発教育のためのロボットチャレンジ−:9.小型飛行

船を使った初等中等教育向け情報教育 −情報の符号化を体

験的に学習する教材:Letʼs Go! Magical Spoons−," 情報処

理, Vol.56, No.1, pp.77-79, Jan. 2015.

(26)細合 晋太郎, 大山 将城, "分野を超えたものづくりと教育

−組込みシステム開発教育のためのロボットチャレンジ−:

10.ESSロボットチャレンジ10周年座談会 −参加者OBと10年

を振り返る−," 情報処理, Vol.56, No.1, pp.80-83, Jan. 2015.

(27)渡辺 晴美, "分野を超えたものづくりと教育 −組込みシ

ステム開発教育のためのロボットチャレンジ−:11.速報 −

ESSロボットチャレンジ2014を終えて−," 情報処理, Vol.56,

No.1, pp.84-85, Jan. 2015.

(28)中井 将貴, 松原 豊, 高田 広章, 山口 晃広, "データスト

リーム管理システムのための動作検証環境," 組み技術とネッ

トワークに関するワークショップ(ETNET2015),奄美市社会福

祉協議会, Mar. 2015.

(29)成瀬 有美, 石川 拓也, 安積 卓也, 大山 博司, 高田 広章,

"組込みコンポーネントシステムの呼び出しフロー解析ツー

ルの開発," 組み技術とネットワークに関するワークショップ

(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会, Mar. 2015.

(30)谷川 郁太, 渡辺 晴美, "コンテキスト指向フレームワー

クContextCSによる掃除機開発," 組み技術とネットワークに

関するワークショップ(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会,

Mar. 2015.

(31)等々力 拓也, 小倉 信彦, 渡辺 晴美, "状態遷移モデル記

述言語stmcを用いた組込みソフトウェアのためのモデルレ

ベルデバッグツールの開発," 組み技術とネットワークに関す

るワークショップ(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会, Mar.

2015.

(32)信田 圭哉, 高嶋 博之, "ATK2 OSを搭載したRoboCar

1/10向け自動ブレーキシステムと,Android端末連携システ

ムの開発," 組み技術とネットワークに関するワークショップ

(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会, Mar. 2015.

(33)中山 悟, 菅谷 みどり, 中野 美由紀, "RLS:分散ロボットシ

ステムのデータ収集プラットフォーム," 組み技術とネットワー

クに関するワークショップ(ETNET2015),奄美市社会福祉協

議会, Mar. 2015.

(34)山崎 友貴(九州大学), "プロジェクト開発の不確定要素

が及ぼす影響分析," 組み技術とネットワークに関するワーク

ショップ(ETNET2015),奄美市社会福祉協議会, Mar. 2015.

●平成25年度(1)亀井 靖高, 細合 晋太郎, 大迫 周平, 川高 美由紀, 西川 忠

行, 鵜林 尚靖, 福田 晃, "PBLにおける発想法とロジカルシン

キングの導入事例," 情報学研報 2013-SE-181(4), pp.1-6, 和

歌山県立情報交流センター, July 2013.

(2)細合 晋太郎, 亀井 靖高, 大迫 周平, 井垣 宏, 鵜林 尚

靖, 福田 晃, "PBLへのDaaS開発環境の導入事例," 信学技報

SS2013-30, Vol.113, No.159, pp.103-108, 北海道立道民活動

センター, July 2013.

(3)岸 知二, 細合 晋太郎, "ソフトウェア工学の共通問題:1.

ソフトウェア工学の共通問題とは," 情報処理, Vol.54, No.9,

pp.878-881, Sep. 2013.

(4)久住 憲嗣, 細合 晋太郎, 渡辺 晴美, 元木 誠, 小倉 信

彦, 三輪 昌史, 孔 維強, 築添 明, 鵜林 尚靖, 福田 晃, "コン

テストチャレンジ型組込みシステム開発PBLカリキュラム

の開発," 日本ソフトウェア科学会第30回大会(平成25年度)

(JSSST2013)講演論文集, rePiT-8, 東京大学本郷キャンパス,

Sep. 2013.

(5)鵜林 尚靖, "チュートリアル:モデル駆動開発とドメイン特

化言語," 組込みシステムシンポジウム2013論文集, pp.2-2,

国立オリンピック記念青少年総合センター, Oct. 2013.

(6)高田 広章, "基調講演:実践的組込みシステム技術者の育

成に向けて~大学側からの問題提起~," 組込みシステムシ

ンポジウム2013論文集, pp.6-6, 国立オリンピック記念青少年

総合センター, Oct. 2013.

(7)分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク組

込みシステム分野, "分野・地域を越えた実践的情報教育協働

ネットワーク組込みシステム分野(enPiT-EMB) Project-Based

Learning成果報告," 組込みシステムシンポジウム2013論

文集, pp.55-56, 国立オリンピック記念青少年総合センター,

Oct. 2013.

(7-1)久住 憲嗣, "enPiT概要説明."

(7-2)日下 和也, 石田 良介, 高 原, 馬 立東, "プロジェクトが抱

えるあいまいさを考慮したシステム開発."

(7-3)谷川 郁太, 井熊 悠介, 佐塚 洋右, 福山 祐哉, 山崎 大輔,

松永 卓也, 中元 一輝, 奥原 将一郎, 邵 楠, 川村 峰大, 安倍 昌

輝, 渡辺 晴美, "派生開発によるマップ作成システムの開発."

(7-4)大橋 孝輔, 本田 晋也, 舘 伸幸, 高田 広章, "OJL成果報

告−マルチコア向け組込みリアルタイムシステムの省電力機

構−."

(7-5)松本 江里佳, 島田 秀輝, 佐藤 健哉, 山本 雅基, "OJL

(On The Job Learning)による安全運転支援のためのLocal

Dynamic Map(LDM)データの効率的伝送方式の検討."

(7-6)渡辺 晴美, 小倉 信彦, 久保秋 真,福田 浩章, 三輪 昌史,

元木 誠, "パネル: ESSロボットチャレンジ 2013分野を超えた

ものづくり."

(8)渡辺 晴美, 元木 誠, 久住 憲嗣, 三輪 昌史, 小倉 信彦, 久

保秋 真, 細合 晋太郎, 福田 浩章, 紫合 治, "ESSロボットチャレ

ンジ2013," 組込みシステムシンポジウム2013論文集, pp.81-

86, 国立オリンピック記念青少年総合センター, Oct. 2013.

(9)山本 雅基, 上野 新滋, 舘 伸幸, 二上 貴夫, 古屋 栄彦, "パ

ネル:進化する組込み技術の育成手法," 組込みシステムシン

74 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

教員養成・FD活動2 . 3 . 6

組込みシステム分野の若手教員の育成方針は、「参加大学

の指導教員も分散PBLに参加し、実践的教育のノウハウを修

得し各大学に持ち帰り、補助期間終了後に、連合型PBLやOJL

を各大学で継続して実施できる体制にする」ことである。

九州大学PEARLでは、学生が参加する短期集中合宿(スプ

リングスクール・サマースクール)、PBL成果発表会などのイ

ベントの各種連絡事項は、必ず指導教員を通じて学生に伝え

た。指導教員は学生に帯同してイベントに参加し、教授方法

の見学のみならず、教員間の情報交換、新たな企画の意見交

換などで交流を深めていた。

カリキュラム策定、教材開発のWGメンバーは、短期集中

合宿の開催準備では、毎週1回以上のペースで打ち合わせを

行っている。WGの打ち合わせやPEARL運営委員会では、合宿

終了後の振り返りと来年度に向けた議論を行っている。その

議論の中で、機械、ロボット、ソフトウェア工学などの専門が

異なる教員同士で、お互いに見学し合ってきた教授方法につ

いて意見交換していることは有意義である。

若手教員のFDの場としては、連携大学間で教育コンテン

ツ・カリキュラムを共有して実施するために講師を派遣して、

他大学の教員を育成した。また、企業からの講師派遣をス

ムーズに行うことを可能にするため、教育コンテンツ・カリ

キュラムを企業内教育に提供し、企業における実務経験者に

対してenPiTの紹介と講師人材の育成を兼ねて実施した。

九州大学PEARL基礎コースのPBLでは、教員だけでなく基

礎コースを修了した受講生を次年度に、教員の補助として連

合型PBLにおける学生の指導・アドバイス行うTAとして活動

している。TAとしての育成指導をより的確に行うため、今年度

より「インストラクションスキル授業(2コマ)」と「ファシリテー

ションスキル授業(3コマ)」を九州大学受講生19名に対して

実施した。

名古屋大学OJLにおいて、PMは、学生に対して実践的な指

導を行うので、プロジェクト管理を実際の開発現場で行った

経験があることが望ましい。名古屋大学では、企業において

プロジェクト管理の経験がある者が中心になりPMを担当し

た。週報やプロジェクト管理ツールのマネジメントツールを

導入し、OJLの指導水準の維持に努めた。学内および参加大

学の若手教員に対しては、定期的なミーティングやOJL発表

会などを通じてFD活動を行った。

さらに、教員は他分野での分散PBLの授業見学や、学生の

発表会やソフトウェア科学会の実践教育研究会などへの参

加を通じて、実践的な教育手法に関するFDを実施した。

来年度のイベント予定・募集情報2 . 3 . 7

(1)来年度のイベント組込みシステム分野では、今年度と同様、情報処理学会の

組込みシステム研究会の後援のもと、短期集中合宿(スプリ

ポジウム2013論文集, pp.153-153, 国立オリンピック記念青

少年総合センター, Oct. 2013.

(10)"ロボットチャレンジポスター概要," 組込みシステムシン

ポジウム2013論文集, pp.154-157, 国立オリンピック記念青

少年総合センター, Oct. 2013.

(11)松原 豊, 舘 伸幸, 高嶋 博之, 山本 雅基, 本田 晋也, 高田

広章, "ポスター論文:enPiT-Emb名古屋大学事業:OJL(On

the Job Learning)を中心とした実践的産学連携教育," 組込

みシステムシンポジウム2013論文集, pp.168-168, 国立オリ

ンピック記念青少年総合センター, Oct. 2013.

(12)大迫 周平, 亀井 靖高, 細合 晋太郎, 加藤 公敬, 石塚 昭

彦, 坂口 和敏, 川高 美由紀, 森田 昌嗣, 鵜林 尚靖, 福田 晃,

"PBLにおけるデザイン思考の導入事例," 情処学研報 2013-

SE-182(22), pp.1-7, ITビジネスプラザ武蔵, Oct. 2013.

(13)舘 伸幸, 山本 雅基, 高嶋 博之, 松原 豊, 本田 晋也, 高田

広章, "enPiT-Emb(名古屋大学) OJLによる実践的組込みシス

テム教育," 組込み技術とネットワークに関するワークショップ

(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(31), pp.1-6, 沖縄

県ICT文化ホール, Mar. 2014.

(14)大橋 孝輔, 本田 晋也, 舘 伸幸, 高田 広章, "マルチコア向

けリアルタイムOSにおける省電力機構," 組込み技術とネット

ワークに関するワークショップ(ETNET2014), 情処学研報

2014-EMB-32(32), pp.1-6, 沖縄県ICT文化ホール, Mar. 2014.

(15)Yixiao Li, Takuya Ishikawa, Yutaka Matsubara and

Hiroaki Takada, "An RTOS-based Platform for LEGO

Mindstorms EV3," 組込み技術とネットワークに関するワーク

ショップ(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(33), pp.1-

6, 沖縄県ICT文化ホール, Mar. 2014.

(16)久住 憲嗣, 細合 晋太郎, 渡辺 晴美, 元木 誠, 小倉 信

彦, 三輪 昌史, 孔 維強, 築添 明, 鵜林 尚靖, 福田 晃, "コン

テストを活用した連合型Project Based Learningカリキュ

ラム," 組込み技術とネットワークに関するワークショップ

(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(34), pp.1-6, 沖縄

県ICT文化ホール, Mar. 2014.

(17)谷川 郁太, 小倉 信彦, 菅谷 みどり, 渡辺 晴美, "組込み

ソフトウェアプロトタイプ開発のためのプログラム動的書

き換え," 組込み技術とネットワークに関するワークショップ

(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(35), pp.1-5, 沖縄

県ICT文化ホール, Mar. 2014.

(18)高瀬 英希, 細合 晋太郎, 安藤 友樹, 尾鷲 幸代, 川上 達

也, 舘 伸幸, 星野 利夫, 松原 豊, 赤山 聖子, 久住 憲嗣, 高田

広章, "若手組込み技術者を対象とした短期合宿LED-Camp1

実施報告," 組込み技術とネットワークに関するワークショップ

(ETNET2014), 情処学研報 2014-EMB-32(36), pp.1-6, 沖縄

県ICT文化ホール, Mar. 2014.

75e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

ングスクール・サマースクール)、分散PBL成果発表会、シンポ

ジウムでのenPiT-Embセッション、などを開催する予定であ

る。

九州大学PEARLでは、来年度の第1弾であるスプリングス

クールを4月23日~30日(予定)で企画検討中である。参加大

学との日程調整で、期間が前後にシフトする可能性は残って

いる。

名古屋大学OJLでは、7月1日(予定)に事業運営委員会を開

催し、基本コースのテーマと受講生を承認する。夏期の短期

合宿は、8月22日~26日と、9月5日~9日の2週間を計画してい

る。イベントの開催日程の確定情報は、enPiT-EmbのWebサ

イトに掲示する。

今回の事業は、全国の大学が連携して組込みシステム技術

の実践的人材を育てるネットワークを作ることが目的である

ため、連携大学にとどまらず、広く全国から参加大学を募り、

その学生に対して分散PBLを実施する。開発テーマと連携企

業のリストを公開し、全国の大学から、それに参加したい学

生を募る。その際に、指導教員も一緒に参加することを条件

とする。組込みシステム技術に関して勉学・研究している、ま

たは取り組もうとしているすべての学生が対象になる。

「短期集中合宿(スプリングスクール・サマースクール)に

参加」、「分散PBLを受講」、「成果発表会で発表」の3つに対す

る評価結果に基づき、修了証を出す。

(2)募集情報参加大学・受講生の募集時期は、平成28年度の九州大学

PEARLは、ライトウェイトコース、基本コース、発展コース、い

ずれも2月から短期集中合宿(スプリングスクール、4月~5月)

開始前までである。平成28年度の名古屋大学OJLへの受講生

の募集時期は、基本コースは5月~6月、発展コースは平成28

年1月~2月である。ライトウェイトコースは7月~8月の予定

である。

問い合わせ先

組込みシステム分野全体および九州大学PEARL

九州大学大学院システム情報科学府情報知能工学専攻

社会情報システム工学コース QITO PEARLプロジェクト

〒819-0395

福岡市西区元岡744番地 ウエスト2号館 508号室

TEL ▶ 092-802-3864 FAX ▶ 092-802-3865

E-mail ▶ [email protected]

URL ▶ http://www.qito.kyushu-u.ac.jp/project/PEARL

名古屋大学OJL

名古屋大学大学院情報科学研究科 

附属組込みシステム研究センター

〒464-8601

名古屋市千種区不老町 NIC 508

TEL ▶ 052-789-4228 FAX ▶ 052-789-4237

E-mail ▶ [email protected]

URL ▶ http://emb.enpit.jp/ojl/index.html

まとめ2 . 3 . 8

今年度は、参加大学を31から35大学に、連携企業を38から

43社・団体に増加させ、一般社団法人 情報処理学会 組込み

システム研究会の後援を得た学生・教員の学会発表も17件と

なり、全国的な協働ネットワークの構築の基盤ができた。

ライトウェイトコースを継続し、組込み技術体験学生のす

そ野拡大、ハイブリッド人材の養成、さらに参加大学数の増

加が図れた。修士生142名(学部生等67名も加えると209名)

の受講生を受け入れ、九州大学PEARLはコンテストチャレン

ジ型と事業企画/技術開発型の14件のテーマを、名古屋大学

OJLは43件の実践的な開発テーマを実施した。

基本・発展コースのキックオフの位置付けで実施した短期

集中合宿については、九州大学は5月にスプリングスクール

を8日、8月~10月にサマースクールをのべ7日、名古屋大学

は昨年度末の3月にスプリングスクールを3日、8月~9月にサ

マースクールをのべ10日、それぞれ開催した。各合宿の講義・

演習・成果発表での講師は、連携大学間で交流するだけでな

く、参加大学・連携企業からも招いた。

修了生数は修士生が135名であり、今年度の目標80名を超

えた。

ハイブリッド人材も修士生12名、学部生2名が修了した。

PEARLでは、情報系の学生に単にソフトウェアのプログラミ

ング技術だけでなく、ソフトウェアを組み込むハードウェアの

機構や機能面の知識を学習してもらうために、3つのハイブ

リッド授業を実施した。①スプリングスクールでは徳島大学

三輪昌史准教授によるハードウェア視点での「制御プログラ

ム製作のための実験計画」の講義を行った。また、②サマー

スクールでは福山大学沖俊任准教授による「ロボットの制

御」の講義を行った。10月には、③分野横断講義としてセキュ

リティ分野の東北大学本間尚文准教授による「ハードウェア

セキュリティ入門」の講義を行った。

OJLでは先に紹介したライトウェイトコースを併設した。

来年度は最終年度でもあり、教員・アドバイザーの分野内・

分野間の交流をさらに図りながら、カリキュラム・教材の整備

とe-Learning化の推進、遠隔授業の拡充により、全国的な協

働ネットワークの構築をより一層推し進めていく。発展コース

の受講生には基本コースの学生指導やセッション企画など

の役割も与え、学部生の受講も継続して受け入れ、ハイブリッ

ド人材の育成にも取り組み、組込みシステム分野教育のすそ

野・ネットワークを広げていく。なお、学生の就活スケジュー

ルが来年度も大きく変わるので、大学ごとの就活状況を適切

に確認しながら、合宿や成果発表会などのスケジュールを工

夫する。

76 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

取り組みの概要2 . 4 .1

ビジネスアプリケーション分野は、進化を続ける先端情報

技術や情報インフラを有機的に活用し、潜在的なビジネス

ニーズや社会ニーズに対する実践的問題解決ができる人材

の育成を目指す。図表2.4.1に概要を示す。

図表2.4.1 ビジネスアプリケーション分野の学習・教育目標

2 . 4 ビジネスアプリケーション分野

基礎知識学習、短期集中合宿、分散PBLでは、先端情報技

術の習得のみではなく、問題解決のための情報技術の適用

と利活用の側面も重視した教育を行っている。具体的には、

連携大学や参加大学教員に加えて、連携企業や組織からの

実務経験者を招聘し、実務的な視点からの講義・演習を実施

する他、PBL課題設定においても、社会の実問題を捉えるよう

ビジネスニーズ・ 社会ニーズ双方を見据えた問題解決先端情報技術・

情報インフラ

進化を続ける先端情報技術や情報インフラを有機的に活用し、潜在的なビジネスニーズや社会ニーズに対する実践的問題解決ができる人材の育成

ビジネスアプリケーション分野

習得知識をもとにPBLを実施

3. 分散PBL

中間報告会成果報告会教育検討会

2. 短期集中合宿

サマースクール3拠点開催

講義演習

ミニPBL

各参加校での事前学習

ソフトウェア工学分野、ビジネスアプリケーション開発に関する基礎科目

1. 基礎知識学習筑波大学産業技術大学院大学公立はこだて未来大学室蘭工業大学岩手大学会津大学富山大学茨城大学群馬大学

宇都宮大学千葉大学お茶の水女子大学拓殖大学東京理科大学埼玉大学津田塾大学日本工業大学名古屋工業大学

京都産業大学同志社大学和歌山大学広島大学岡山県立大学徳島大学愛媛大学山口大学琉球大学

[3連携大学+参加大学]

ビジネスアプリケーション特論 講義(1週間)

プロジェクト管理、企画、情報デザイン、Webアプリ発展の歴史楽天株式会社のAPIを使用したWebアプリケーション開発

ビジネスアプリケーション演習(1週間)

Ruby on Railsを用いた演習、楽天株式会社のAPIを用いたプログラム開発

産業技術大学院大学

ビジネスアプリケーション開発基礎演習

チームでビジネスアプリケーションを分散開発(開発環境の構築、開発プロセス、アイデア出し、プロジェクトマネジメントなど)

ビジネス・サービスデザイン実践①人間中心のデザインの考え方と設計方法、問題発見、発想、企画②ファシリテーションの考え方、コンセンサスを導くスキル

公立はこだて未来大学

午前(9:30~12:15) ビジネスアプリケーションの 最新トピックに関する講義

ライトウェイトコース (1週間)

スタンダードコース (2週間)

情報デザイン、エスノグラフィ、ロジカルシンキング、データ分析、セキュリティ技術、 クラウド技術、プレゼン技術、ドキュメンテーション技術、アジャイル手法とスクラム

午後(13:30~16:16) ミニPBLシステム開発企画書、要件定義、仕様策定、開発計画等を演習指導を交えて作成最終日には成果報告会を開催

筑波大学

日本各地から

参加楽天

サマースクール

77e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

な課題設定を行っている。また、先端技術のみでなく、ユー

ザーセンタードデザインを指向した問題分析・情報デザイン

力に関する講義・演習も設定している。

これらによって、学生が自主的に問題を発見し、取り組むこ

とができる機会を提供し、創造的なソリューションを発案する

能力や、潜在的な顧客に対してソリューションを提案する能

力を強化する。また、ワークショップ、PBL発表会などで、活動

の成果を自ら発信する機会を設定する。

学習・教育目標2 . 4 . 2

ビジネスアプリケーション分野は、すでに述べたように、進

化を続ける先端情報技術や情報インフラを有機的に活用し、

潜在的なビジネスニーズや社会ニーズに対する実践的問題

解決ができる人材を育成することを目指している。実践的問

題解決とは「現実の問題を正しく捉え、最新の情報通信技術

を適切に選択することで、真のソリューションを創り出すこと」

であり、このためには、次世代社会情報基盤を成す先進要素

技術を十分理解し、複合的かつ俯瞰的にそれらを適用するこ

とで顧客要求を満足する解を示す能力が必要となる。さら

に、人間中心のユーザーセンタードデザインによるトータル

なデザイン能力も重要である。本分野は、要求分析・設計・実

装等の開発力に加えて、情報デザイン力、問題発見・解決力

等も加味した教育を行い、将来的にビジネスイノベーション

を創出し得る人材が輩出できることを目指す。

本分野における年度ごとの受講生数(主として博士課程前

期学生)の目標は、平成25年度60名、平成26年度70名、平成

27年度85名、平成28年度100名と設定している。なお、産業技

術大学院大学拠点では、10名以上の社会人学生の参加を想

定している。

また、筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて未来

大学の3連携大学で、平成27年度はのべ約30名の大学教員

の参画を予定していた。実際には、室蘭工業大学、岩手大学、

会津大学、富山大学、茨城大学、群馬大学、宇都宮大学、千葉

大学、お茶の水女子大学、拓殖大学、東京理科大学、埼玉大

学、津田塾大学、日本工業大学、名古屋工業大学、京都産業大

学、同志社大学、和歌山大学、広島大学、岡山県立大学、徳島

大学、愛媛大学、山口大学、琉球大学の24大学から総計83名

の教員がそれぞれのプログラムに参加していただいた。さら

に、29にのぼる企業および団体からのご参加をいただき、運

営を手助けしていただいた。また、九州工業大学などが来年

度以降の参加を検討している。

教育内容2 . 4 . 3

(1)基礎知識学習科目

●●ソフトウェア開発工学(筑波大学) 4.0単位

要求分析に基づいたソフトウェア設計、ソフトウェア開発に

おけるライフサイクルや工程、および標準化の考え方を講義

し、UMLによるオブジェクト指向設計およびシステム開発の

工程とそのプロセスの改善について実習を通して学ぶ。

●●オープンシステム工学(筑波大学) 2.0単位

オープンな規格に基づいた相互運用性が求められるオー

プンシステムを設計、構成するための基盤ソフトウェア技術

について講義する。

●●組込みシステム論(筑波大学) 3.0単位

組込みシステムについて、まずその全体像を俯瞰したの

ち、携帯電話や自動車といった典型的な製品における技術要

素、開発プロセスや設計技法などの開発技法について、実例

とともに学習する。

●●サービス指向システム開発(筑波大学) 2.0単位

サービス指向アーキテクチャ(SOA)の概念を学ぶととも

に、Webサービス等を利用して、SOAに基づくシステム開発

の実習を行う。

●●最新IT動向に関する特別講義(筑波大学) 2.0単位

ITが社会におよぼすインパクト、最先端技術の開発動向、

革新的なIT活用戦略等の各種事例について、産業界から幅広

い講師陣を招聘し、各社のトレンドの捉え方、読み方を交えて

講義する。

●●組込みプログラム開発(筑波大学) 3.0単位

モバイル端末に搭載された機能と既存のサーバインフラ、

そして、組込みシステムを統合したシステムについて、問題提

起から解決策の提案、システムの設計・開発までを行える総

合力を持った人材を育成する。

●●サービスサイエンス特論(産業技術大学院大学) 2.0単位

情報システムをベースとしたビジネスの観点において、①

ユーザの行動を分析し、②価値と市場を創造し、③実際に

サービスを提供するための実現手法を開発することが重要

78 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

となる。サービス提供者が満足するのではなく、顧客が満足

する姿を目標としたサービスや市場がのぞまれる。そこで、本

講義においては、序盤において近年注目を集めているサービ

スと消費者行動、サービスサイエンス、サービスエコノミク

ス、サービスマーケティング、サービスエンジニアリングにつ

いて扱う。中盤においては、市場を創造するための各種戦略

として、ブルーオーシャン戦略やホワイトスペース戦略を紹

介する。終盤においては、市場や組織がうまく働いているか

を評価するダイナミクスモデルに基づくシミュレーション技

法について解説する。また、具体的な市場として、旅行業界に

関わる現状を紹介する。

●データインテリジェンス特論(産業技術大学院大学) 2.0単位

業務データを用いて素早い意思決定を行うためのBI

(Business Intelligence)は、大容量で多様なデータを対象にDI

(Data Intelligence)へとさらなる発展を遂げようとしている。

本講義では、このようなニーズに応えるために、大容量で多

様なデータを対象にした統計解析やデータマイニングから

の知識獲得技術について、体系的な説明を行うことを目的と

する。特にデータマイニング技術に関しては、技術内容の提

示だけでなく、マイニングツールを実際に動作させることが

可能な演習を施すことにより、講義により得た知識に従った

動作原理と具体的な動作状況を実際に確認できるようにす

る。

●ユビキタスプラットフォーム特論(産業技術大学院大学) 2.0単位

大規模システムや基幹システムの開発分野と同等に、ス

マートフォンに代表されるモバイルシステムをはじめとした

組込みシステム分野は、ソフトウェア産業の重要な一角を占

め、従事する情報アーキテクトも増えている。近年では、ロ

ボットや自動運転などでも注目されている。本講義では、組込

みシステム分野で用いられるソフトウェアプラットフォーム技

術、背景となる要件、実システム例、業界動向を論じる。具体

的には、組込み各種OSとディバイスドライバ、周辺機器技術、

スマートフォンのアプリケーション技術や携帯電話、ロボット

等と業界動向を学ぶ。

●情報システム構築プロジェクトマネジメント論(産業技術大学院大学) 2.0単位

情報システム構築におけるプロジェクト管理の進め方を、

独立行政法人情報処理推進機構が発行している「高度情報

化人材育成標準カリキュラム プロジェクトマネージャ」を基

準に学習する。授業では、体系化された情報システム構築プ

ロジェクトのカリキュラムでプロジェクト管理の知識を網羅的

に整理しながら、実務事例の紹介を多く取り入れて具体的な

プロジェクト計画や管理の方法を指導する。また、演習などを

通してプロジェクト管理の知識をどのように実務に適用する

か考えていくことで、知識と実践力の橋渡しを実現することを

方針とする。

●情報システム特論(産業技術大学院大学) 2.0単位

ITは仕事のしかたを変える力を持っている。BPR(Business

Process Reengineering)は経営に大きなインパクトをもたら

す。仕事のしかたを変えるために、どこに目をつければ良い

か、どのようにアプローチすれば良いか、どのような論理で相

手を説得すれば良いかを実践できるようにする。ITは縦割り

に なりが ち な 組 織 の 中 で 、組 織 横 断 的 に 横 串 を 刺 す

Capabilityを持っている。情報の統合化と組織(企業)をまた

がる業務プロセスがBPRにとって極めて重要であることを指

摘する。情報の統合化の例として部品表を取り上げ、代表的

な業務プロセスとしてSCM(Supply Chain Management)と

CRM(Customer Relationship Management)を取り上げる。

ITによるビジネスプロセス・マネジメントで何が可能かを知

り、情報戦略コンサルタントとして必要な視点やスキルを身

に付ける。

●情報ビジネス特別講義(産業技術大学院大学) 2.0単位

組織における組織構築、組織運営、組織継続について学習

する。授業では、組織管理の知識を網羅的に整理しながら、

組織マネジメントの方法を紹介する。また、事例発表研究な

どを通して組織管理の制度の光と影を考えていくことで、知

識の定着を図り、社会人としての基礎的なビジネス知識基盤

を得ることを方針とする。

●ネットワークシステム特別講義(産業技術大学院大学) 2.0単位

本講義では、各種ネットワークサービスを提供するサーバ

の構築手法および管理手法について解説する。ここでは、

Unix系およびWindows系サーバシステムについて、両者を

比較しながら解説することにより、共通する基本的な機能を

理解させるとともに、それぞれの特徴を明確にしていく。

●コミュニケーション技術特論(産業技術大学院大学) 2.0単位

ビジネスの現場では、報告書や提案書、仕様書などのド

キュメントによって、さまざまな情報を関係者に伝達する必

要がある。その際、ドキュメントの品質が低いと、本当に必要

な情報が相手に伝わっていなかったり、間違った情報が伝

わってしまったりして、仕事の生産性に大きな影響が出てしま

う。また、仕事や研究において、たとえ素晴らしい成果を挙げ

たとしても、それをちゃんと相手に伝えることができなければ

その成果は正しく評価されない。「伝えたい情報をいかにし

て伝えるか、そして誤解なく理解してもらえるか」というスキ

ルはビジネスパーソンとして必要最低限持っておくべきスキ

79e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

ルと言える。

本講義ではドキュメントも情報伝達(コミュニケーション)

の一つの手段として捉え、ドキュメントおよび、プレゼンテー

ションによるコミュニケーションについて、演習を行いながら

その作成技術を身に付けていく。

●オブジェクト指向開発特論(産業技術大学院大学) 2.0単位

オブジェクト指向によるソフトウェア開発の上流工程(要求

分析と設計)での基礎力と応用力を育成する。まず、要求分析

と設計の共通言語として普及が進んでいるUMLの基礎を学

習し、業務モデリングの演習課題を通じて、分析モデリングの

基礎力を付ける。次に、これまでの分析・設計の先人の知恵

の集積であるアナリシスパターンやデザインパターンの考え

方を理解し、より高度な分析・設計の能力を育成する。デザイ

ンパターンについては、主要なデザインパターンを学習し、こ

れらのデザインパターンを利用したJavaプログラムの作成を

体験する。またオープンソースのJavaプログラムを教材とし

て、デザインパターンがどのように使われているかを研究す

る。これらの学習を通じてソースコードの解読、リファクタリン

グの能力を育成する。

●ICTデザイン通論(公立はこだて未来大学) 2.0単位

本学教員および学外のICTシステム設計分野の複数の専門

家が連携して、最先端の技術動向や実践的な技術について

オムニバス形式で講義および演習を行う。本講義を通じて受

講生は実践的な技術の一端や技術者が経験する実際上の問

題と課題を理解し、総合的な判断力を養う。

●e-learningを用いた基礎知識習得(公立はこだて未来大学) 0単位(自習)

既存のe-learning教材を用いて、Javaプログラミング、アル

ゴリズム、UML、Linux、ネットワーク技術、クラウドコンピュー

ティング、システム開発、プロジェクトマネジメントなどに関す

る基礎的な知識の習得と、Javaプログラミング演習教材を用

いたプログラミングスキルアップを行う。

(2)短期集中合宿科目

●モバイルサービスソフトウェア開発(筑波大学) 2.0単位

ソフトウェア開発の基本的なプラクティスとして、アプリ

ケーションとサーバ、クラウドといった情報インフラの利用手

法、ユーザの周辺環境を捉えるサービスアプリケーションの

ためのプログラム開発手法を、演習を交えて習得する。さら

に、ビジネスアプリケーションフィールドの基盤となる技術に

ついてオムニバス形式で幅広く学ぶ。

●ビジネスアプリケーション総合開発演習(筑波大学) 2.0単位

ビジネスアプリケーションの開発課題を自ら考え、問題解

決能力を持ち、製品として世に送り出すまでに考えるべきこと

を実践的に学び、ビジネスフィールドにおける製品開発手法

について演習を通じて習得する。さらに、ビジネスアプリケー

ションフィールドの基盤となる技術についてオムニバス形式

で幅広く学ぶ。

●プロジェクト実践ワークショップ(筑波大学) 2.0単位

高度なICTを基礎とした諸問題の解決を目指して、正しく問

題設定を行い、その問題解決のための研究開発プロジェクト

の自主的な企画・運営を行う基礎的能力を講義と演習で習得

する。さらに、ビジネスアプリケーションフィールドの基盤とな

る技術についてオムニバス形式で幅広く学ぶ。

●アジャイル開発手法特論(産業技術大学院大学) 2.0単位

近年のビジネス環境の変化の速さは、重厚長大な長期計

画を陳腐化させ、ビジネスモデルやプロジェクト計画の有効

期間を縮める一方である。このような状況に対応する必要か

ら、変化する要求に対応しながらビジネスに柔軟に沿うこと

で価値を生み出す、アジャイルなソフトウェア開発の手法が

脚光を浴びている。この授業では、アジャイルソフトウェア開

発手法の一つであるScrumと、アジリティの高いソフトウェア

開発を行うために必要不可欠となるモダンな技術要素につ

いての基礎知識を習得する。

本科目ではさらに分散PBLを実施するにあたって必要とな

るプロジェクト管理、企画、情報デザイン、Webアプリケーショ

ンの歴史・背景の知識を取得した上で、分散PBLのチーム編

成、PBLテーマ検討、計画策定をミニPBLとして実施する。最終

成果物としてはPBL開発計画書を作成する。

●コラボレイティブ開発特論(産業技術大学院大学) 2.0単位

この授業では次のことについて学び、チームによるソフト

ウェア開発プロジェクトを円滑に実施するために不可欠な各

種のツールや基礎的なプログラミングを学ぶ。

①開発環境とプログラミング言語Ruby

②リモートリポジトリ(GitHub)、テスト自動化、継続的インテ

グレーション、PaaS(Platform as a Service)を利用したソフ

トウェア開発の基礎

③前述を活用するための自己組織的なチームワーク

●ビジネスサービスデザイン実践(公立はこだて未来大学) 2.0単位

人間中心のデザインの考え方とその設計方法を理解する。

単に人間とシステムとの接点だけではなく、それを利用す

80 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

るユーザとして本当に利用する価値があり、使って満足でき

るシステムとはどういうものかを理解する。また、そのための

実践的な設計のプロセスを演習にて設計する。

●ビジネスアプリケーション開発基礎演習(公立はこだて未来大学) 2.0単位

ビジネスアプリケーション開発のための基礎を学ぶ。チー

ムを編成し、基本例題に基づいて、開発環境の構築から開発

プロセス、プロジェクトマネジメントなどのビジネスアプリ

ケーション開発を一通り学習する。

(3)分散PBL科目

●PBL型システム開発B(筑波大学) 4.5単位

実践的なシステム開発を、プロジェクト計画、要件定義から

外部設計工程までのモデル開発技術等を用いて、PBL形式で

遂行する。

●イニシアティブプロジェクトⅠ(筑波大学) 2.0単位

「プロジェクト実践ワークショップ」と連携することで、高度

なICTを基礎とした諸問題の解決を目指して正しく問題設定

を行い、その問題解決のための研究開発プロジェクトの自主

的な企画・運営を行う基礎的能力を実践的に習得する。

●イニシアティブプロジェクトⅡ(筑波大学) 2.0単位

「イニシアティブプロジェクトⅠ」に引き続き、高度なICTを

基礎とした諸問題の解決を目指して正しく問題設定を行い、

その問題解決のための研究開発プロジェクトの自主的な企

画・運営を行う基礎的能力を実践的に習得する。

●ビジネスアプリケーション特別演習(産業技術大学院大学) 2.0単位

演習は楽天株式会社のAPIを利用したビジネスアプリケー

ションをアジャイル手法で開発するスクラムチームと、海外の

要求に対してグローバルな提案・開発を行うグローバルチー

ムに分けて実施される。

スクラムチームは、アジャイル開発手法であるScrumを

使って、Webアプリケーション分野の新しい製品やサービス

の企画立案から、プロトタイプ開発によるアーキテクチャ

ベースラインの確立、インクリメンタルな機能強化開発、運

用・保守までを実践する。具体的なテーマとしては、楽天株式

会社のWebアプリケーション開発用のAPIを利用し、実用レ

ベルの製品・サービスの開発と運用を経験する。

一方、グローバルなビジネスへの対応力も求められ、海外

へのビジネスアプリケーションの提案力を高めることも重要

なテーマである。そこで、ブルネイやベトナムの大学と協力し

ながら、ロボットとインターネットを活用したサービスアプリ

ケーションを開発する。ミニPBLでは、遠隔会議によりそれぞ

れの国の文化や特徴を活かしたロボットサービスのアイデア

を考案し、要求仕様書としてまとめる。分散PBLでは、その要

求仕様書を基に実機(ロボット)を使ったアプリケーション開

発を協同で行う。

●PBL型システム開発演習(公立はこだて未来大学) 2.0単位

ビジネスアプリケーションをテーマとしたシステム開発を、

想定するユーザへの参与観察を行いながら、イテレーション

型開発やアジャイル開発などの手法を用いてPBL形式で遂行

する。

実施体制2 . 4 . 4

ビジネスアプリケーション分野は、筑波大学、産業技術大

学院大学、公立はこだて未来大学の3校を連携大学とし、室蘭

工業大学、岩手大学、会津大学、富山大学、茨城大学、群馬大

学、宇都宮大学、千葉大学、お茶の水女子大学、拓殖大学、東

京理科大学、埼玉大学、津田塾大学、日本工業大学、名古屋工

業大学、京都産業大学、同志社大学、広島大学、和歌山大学、

岡山県立大学、徳島大学、愛媛大学、山口大学、琉球大学の

24大学を参加大学として運営にあたった。

本分野の連携大学、参加大学、連携企業・団体をその役割

とともに次に示す。

(1)連携大学

●筑波大学ビジネスアプリケーション分野の統括:

分野活動の全体統括、参加大学の取りまとめ、各種管理業

務、分野イベントの統括等。

つくば・東京地区の短期集中合宿(基礎知識学習を含む)、分散PBLの実施:

筑波大学学生の他、本州・四国・九州を中心とした参加大

学学生を主な対象とする。

特定非営利活動法人 CeFILならびに連携企業・団体との連

携窓口。

●産業技術大学院大学つくば・東京地区の短期集中合宿(基礎知識学習を含む)、分散PBLの実施:

産業技術大学院大学学生の他、本州・四国・九州・沖縄を中

心とした参加大学学生を主な対象とする。

産業技術大学院大学運営諮問会議等の各種連携企業・団

体との連携窓口。

81e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

●公立はこだて未来大学函館地区の短期集中合宿(基礎知識学習を含む)、分散PBLの実施:

公立はこだて未来大学学生の他、北海道および東北・関西

を中心とした参加大学学生を主な対象とする。

公立はこだて未来大学サポート企業等の各種連携企業・

団体との連携窓口。

(2)参加大学、連携企業、団体

●参加大学(24大学)室蘭工業大学、岩手大学、会津大学、富山大学、茨城大学、

群馬大学、宇都宮大学、千葉大学、お茶の水女子大学、拓殖大

学、東京理科大学、埼玉大学、津田塾大学、日本工業大学、名

古屋工業大学、京都産業大学、同志社大学、広島大学、和歌山

大学、岡山県立大学、徳島大学、愛媛大学、山口大学、琉球大

学の計24大学を参加大学として実施。

●連携企業(29社) ■筑波大学が連携窓口となる企業(12社):特定非営利活動法人 CeFIL

特定非営利活動法人 CeFILを窓口とするCeFIL連携企業

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

新日鉄住金ソリューションズ株式会社

東京海上日動火災保険株式会社

日本電気株式会社

日本ユニシス株式会社

株式会社 日立製作所

富士通株式会社

日本マイクロソフト株式会社

富士ゼロックス株式会社

株式会社IDCフロンティア

株式会社エーピーコミュニケーションズ

■産業技術大学院大学が連携窓口となる企業(2社):楽天株式会社

株式会社セールスフォース・ドットコム

ビジネスアプリケーション分野代表

産業技術大学院大学 公立はこだて未来大学筑波大学

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ新日鉄住金ソリューションズ株式会社東京海上日動火災保険株式会社日本電気株式会社日本ユニシス株式会社株式会社 日立製作所富士通株式会社日本マイクロソフト株式会社

拓殖大学

楽天株式会社

株式会社セールスフォース・ドットコム

琉球大学 室蘭工業大学

会津大学

株式会社ジャパンテクニカルソフトウェア

株式会社エスイーシー

常磐システムエンジニアリング株式会社

株式会社ハイマックス

株式会社 iD

株式会社富士通ミッションクリティカルシステムズ

日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェア株式会社

日鉄日立システムエンジニアリング株式会社

株式会社インタラクティブ・コミュニケーション・デザイン

株式会社 サムシングプレシャス

ニフティ株式会社

株式会社ABEJA

株式会社ジースタイラス

新日鉄住金ソリューションズ株式会社

函館蔦屋書店株式会社

株式会社ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン

同志社大学岩手大学

富山大学

茨城大学

群馬大学

宇都宮大学

千葉大学

お茶の水女子大学

拓殖大学

東京理科大学

埼玉大学

特定非営利活動法人 CeFIL

CeFILを窓口とするCeFIL連携企業

津田塾大学

日本工業大学

名古屋工業大学

京都産業大学

広島大学

和歌山大学

岡山県立大学

徳島大学

愛媛大学

山口大学

富士ゼロックス株式会社

株式会社IDCフロンティア

株式会社エーピーコミュニケーションズ

図表2.4.2 ビジネスアプリケーション分野実施体制

82 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

■公立はこだて未来大学が連携窓口となる企業(16社):株式会社ジャパンテクニカルソフトウェア

株式会社エスイーシー

常磐システムエンジニアリング株式会社

株式会社ハイマックス

株式会社 iD

株式会社富士通ミッションクリティカルシステムズ

日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェア株式会社

日鉄日立システムエンジニアリング株式会社

株式会社インタラクティブ・コミュニケーション・デザイン

株式会社 サムシングプレシャス

ニフティ株式会社

株式会社ABEJA

株式会社ジースタイラス

新日鉄住金ソリューションズ株式会社

函館蔦屋書店株式会社

株式会社ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン

これらの企業からは、基礎知識学習科目での非常勤講師

や分散PBL、短期集中合宿におけるゲストスピーカーを派遣

していただき、助言・指導を受けるとともに、教育検討会や

ワークショップにおいてカリキュラムや実施体制等に関する

評価やコメントをいただいた。

次に、連携大学の学内教員と外部人材の活用やその知見

について次に示す。

(3)学内教員の活用

学内教員は専任教員と協力して、本事業に関わる講義・演

習等の準備および実施を行う。また、分野運営委員会や各種

WGへの参画、教材開発におけるテキスト作成、および、実習

課題等の素材用のプログラム・ハードウェア作成も担当する。

さらに、各種報告書のとりまとめや参加大学の募集およびそ

れらの窓口を担当するとともに、広報のための素材の作成や

広報活動を行う。その他、事前学習のためのビデオ教材の開

発および配信、短期集中合宿の準備と実施、運営、分散PBLや

発表会における学生指導、外部アドバイザーとの窓口担当や

ワークショップ開催の準備と実施などについても専任教員と

協力して実施する。またこれらの運営に関すること以外にも、

教育検討会、ワークショップ等の各種イベントへ参加すると

いったことも行う。

(4)外部人材の活用とその知見の定着、継続体制作り

ビジネスアプリケーション分野全体として次のことを行っ

ている。

●ビジネスアプリケーション分野運営委員会等に連携企業

や団体からの委員の参加を依頼し、事業全体への各種アド

バイスを継続的に受ける。

●短期集中合宿における講義・演習に連携企業等からの講

師を招聘し、ビジネスアプリケーション分野における実践

的な知見の教育を図る。また、これらの授業資料を参加大

学にも提示可能な形でまとめることで知見を定着させる。

●分散PBLでの連携企業からの講師の助言、成果発表会での

アドバイスや講評を受ける。

●教育検討会において、本事業の実施方法や教育内容に関

して外部の人材の知見を反映する。

●ワークショップを通じて、ビジネスアプリケーション分野に

関わる実践教育のあり方や、そこで対象とすべき最新の技

術動向等に関して討議する。オープンなワークショップとし

て開催することで、さまざまな視点からの知見を本事業に

フィードバックする。

●活動成果報告書を作成し蓄積するとともに、学生表彰、成

果発表会の開催などで、本事業を活性化させ、広く普及を

図る。

●収集した知見のドキュメンテーション化とWebサイト等で

の公開を行う。

●筑波大学筑波大学では、本年度は特定非営利活動法人 CeFILおよび

CeFIL連携企業との5回におよぶ連携ワークグループミーティ

ングを実施し、企業側と大学側の意識合わせや、企業から大

学への要望などを逐次確認し、産学連携でのプログラム実施

への反映に努めた。

また、成果発表会やワークショップにおける討論の場にお

いて、ビジネスアプリケーション分野に関わる実践教育のあ

り方や、そこで対象とすべき最新の技術動向等に関してCeFIL

連携企業の方と討議を行い、さまざまな視点からの知見を本

事業にフィードバックした。

その他、短期集中合宿における講義・演習に連携企業等か

らの講師として、パロアルト研究所から佐々牧雄氏、合同会社

イオタクラフトから塩谷敦子氏、株式会社ハーティネスから

高橋慈子氏、北陸先端科学技術大学院大学から布田裕一氏、

株式会社日立インフォメーションアカデミーから増本登志彦

氏、九州工業大学からMarat Zhanikeev氏を招き、エスノグラ

フィやドキュメンテーション、ロジカルシンキング、プレゼン

テーション、セキュリティ、クラウド環境に関する諸技術などビ

ジネスアプリケーションの実践に直結した教育を行った。

●産業技術大学院大学産業技術大学院大学では、昨年に引き続きスクラムコース

と、グローバルコースを実践した。

スクラムコースでは、株式会社セールスフォース・ドットコ

ム、楽天株式会社の支援のもと、クラウド環境であるHeroku

上で動作する楽天APIを利用するWebアプリケーションを開

発する体験を通じて、プロダクトの企画、プロジェクトの起ち

上げ、プロダクト開発と、より実践的なアジャイル開発を会得

することができた。

83e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

グローバルコースでは、ベトナム国家大学とはWebアプリ

ケーションを共同で開発するプロジェクトを実施し、ブルネ

イ・ダルサラーム大学、ニュージーランドのユニテック工科大

学とは日本を含め3カ国の共同チームでIoTサービスを開発

するというプロジェクトを実施した。これにより国際的な開発

プロジェクトにおける製品の企画から開発・実装までの一連

の開発プロセスおよび、国際的なチームのプロジェクトマネ

ジメントを会得することができた。

また、スクラムコース、グローバルコースそれぞれに外部か

らの評価委員数名と専任の若手教員を配置し知見の定着を

図ることを目指した。企業との連携としては、先に紹介したス

クラムによるWebアプリケーションにおいて、連携企業である

楽天株式会社から客員教授を招き、企業における実践的な

開発手法についての教育を行った。

●公立はこだて未来大学公立はこだて未来大学では、会津大学、同志社大学、室蘭

工業大学からの学生を受け入れた。短期集中合宿の1週目は

これら3大学の学生も一緒に函館で、合同演習を行った。2週

目は遠隔講義を行った。

参加大学とは適宜打ち合わせ会議を開催し、遠隔講義の

方法や講義プロセスの記録について検討し、教材開発・講義

の進め方の改善へつながった。

企業との連携としては、ICTデザイン通論で企業講師を招聘

し実践的な技術や現場の問題を講義してもらった。ビジネス

アプリケーション開発基礎演習やPBL型システム開発演習の

成果発表会では、企業から多くの方に出席してもらい有意義

なコメント等をいただいた。

また、地域との連携として、ビジネスサービスデザイン実践

では函館市の市役所、地元企業、近隣住民の方々に参加して

いただき、地域密着型のサービスデザインを提案できた。

教育実績2 . 4 . 5

筑波大学

まず基礎知識学習科目として、ソフトウェア開発工学、オー

プンシステム工学、組込みシステム論、サービス指向システム

開発、最新IT動向に関する特別講義、組込みプログラム開発

を開設し、幅広いIT技術に関する予備知識の教育に努めた。

また、短期集中合宿では、モバイルサービスソフトウェア開

発、ビジネスアプリケーション総合開発演習、プロジェクト実

践ワークショップを開設し、実践的な開発技法の学習と、プロ

ジェクトベースの開発手法についてその導入教育を実践的

に実施した。さらに分散PBL科目としては、イニシアティブプ

ロジェクトⅠ、イニシアティブプロジェクトⅡ、PBL型システム

開発Bを開設し、ビジネスアプリケーションにおける課題を基

にしたPBL教育を実施した。

短期集中合宿では、第1週を8月17日から24日まで、第2週

を8月25日から8月31日まで実施した。受講生は合宿初日の研

修時にチームおよび開発テーマを決定し、その上で第1週の

テーマを「提案テーマの洗練」、第2週のテーマを「実践・試行

に基づく開発速度の見積もりと開発計画」に定めて合宿を

行った。

第1週の初日は1日研修としてプロダクトディスカバリの演

習を行った。各自が「あなたやあなたの周辺で困っているこ

と・解決したい課題」を持ち寄り、これを基に受講生同士で自

己組織化的にPBLで解決したいテーマとチームの決定をし

た。その後、解決しようとする問題点に対して、対象顧客、顧客

の現状と抱える問題点、プロダクトが提供する価値をリーン

キャンバスにより明確にし、そこから相互レビュー、顧客イン

タビューなどを行いアイデア、顧客像、想定シナリオを設計し

検証した。第1週2日目以降は午前中にオムニバス形式の講

義、午後はPBLによるチーム開発を実施した。オムニバス講義

では、チーム開発に必要なロジカルシンキング/ライティング、

ドキュメンテーション、ユーザエクスペリエンス、プレゼン

テーションスキルの講義を行った。午後のチーム開発では初

日のプロダクトディスカバリ研修で学んだ内容を基に、提案

図表2.4.3 筑波大学におけるアジャイル研修Iの様子 図表2.4.4 筑波大学におけるアジャイル研修Iの様子

84 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

内容に対する対象顧客の決定と顧客像の考察、プロダクトの

提供する価値、価値提供の観点で重要度の高い機能の選定

と具体的なシナリオを設計し、その上で要件定義とプロダク

ト設計を各チームで進めた。提案内容やチームの状況に合

わせてプロトタイプシステムの開発や他チームへのレビュー

なども指導した。第1週の最終日には提案内容に関する成果

報告として口頭発表を開催した。第2週も初日に1日研修を実

施し、スクラム開発の研修を行った。スクラム開発において重

要な「振り返り」を実施したのち、幾つかの演習を通して開発

メンバーや顧客との対話の重要性を演習し、また、午後はス

プリントの意義や反復開発の重要性を学ぶため擬似的なス

プリント開発演習を行った。それを踏まえて第2週のチーム開

発では、分散PBL期間を含めた開発計画を立て、プロトタイプ

システムを開発した。また午前中のオムニバス講義では、

データ分析、セキュリティ、クラウドコンピューティングの最新

技術に関する講義を行った。合宿の最終日には口頭発表に

加えデモ展示を行った。

それぞれの受講生数は次の通りである。

●プロジェクト実践ワークショップ(93名)筑波大学:修士1年52名、修士2年0名

参加大学:修士1年38名、修士2年1名、学部4年1名、学部3

年1名

●モバイルサービスソフトウェア開発(15名)筑波大学:修士1年15名、修士2年0名

参加大学:修士1年0名、修士2年0名

●ビジネスアプリケーション総合開発演習(57名)筑波大学:修士1年31名、修士2年0名

参加大学:修士1年24名、修士2年0名、学部4年1名、学部3

年1名

分散PBL科目であるPBL型システム開発B、ならびにイニシ

アティブプロジェクトⅠ、Ⅱでは、ビジネスアプリケーションに

おけるICTに関する諸問題の解決のため、問題設定や要件定

義を正しく行い、その問題を解決するためのシステム開発を

プロジェクト形式で実施するために必要な実践的な開発能

力やプロジェクトマネジメント能力などを講義と演習で習得

することを目的としている。平成27年度は短期集中合宿に参

加したチームのうち17チームが引き続き参加し、合宿で構

想・設計したシステムの実装およびテストを行った。各チー

ム、テレビ会議システムやチャット、SNSなどを用いてメン

バー同士コミュニケーションをとり開発を進めた。進捗状況

は定期的にレポートまたはテレビ会議システムによる中間報

告会などで報告をし、チームの状況に合わせた指導を行っ

た。

図表2.4.5 筑波大学におけるオムニバス講義の様子

図表2.4.6 筑波大学におけるミニPBLの様子

図表2.4.7 筑波大学における短期集中合宿成果報告会の様子

85e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

成果は平成26年12月11日に筑波大学にて、テレビ会議シ

ステムおよびUstreamによる公開ワークショップの形式で開

催した。学生チームは、ショートプレゼンテーションおよびポ

スター・デモ発表による成果報告を行った。また、ワーク

ショップでは本年度の実施内容全般について教員、学生、社

会人それぞれの立場からの意見交換を行うパネルディスカッ

ションを実施しPBLや次年度以降のカリキュラム等のあるべ

き姿について幅広い議論が行われ今後の改善に役立った。

出席者

伊藤貴之(お茶の水女子大学)

三浦元喜(九州工業大学)

水口充(京都産業大学)

舘伸幸(名古屋大学)

田村慶信(山口大学)

遠藤慶一(愛媛大学)

小林真也(愛媛大学)

黒田久泰(愛媛大学)

粂野文洋(日本工業大学)

森本千佳子(東京工業大学)

三末和男(筑波大学)

加藤和彦(筑波大学)

田中二郎(筑波大学)

北川博之(筑波大学)

河辺徹(筑波大学)

早瀬康裕(筑波大学)

渡辺知恵美(筑波大学)

嵯峨智(筑波大学)

山口佳樹(筑波大学)

上田賀一(茨城大学)

神谷隆司(特定非営利活動法人 CeFIL)

菊池純男(特定非営利活動法人 CeFIL)

渡辺ゆりか(Co-Crente Tsukuba)

上野晶鋭(株式会社IDCフロンティア)

大島信幸(独立行政法人情報処理推進機構(IPA))

広瀬俊哉(株式会社 SEプラス)

鈴木良弥(株式会社クロノファクトリー)

竹林綾子(ホテルベストランド、つくば観光大使)

島谷憲司(リコージャパン株式会社)

臼井慎治(リコージャパン株式会社)

常間地悟(株式会社イントロンワークス)

永江耕治(株式会社エーピーコミュニケーションズ)

岩本智裕(株式会社オプト)

大城徳夫(株式会社タイムインターメディア)

藤原博文(株式会社タイムインターメディア)

永井明彦(筑波大学 産学連携課)

図表2.4.9 enPiT筑波大ワークショップ(12/5)の様子

図表2.4.10 enPiT筑波大ワークショップにおけるデモの様子

図表2.4.11 enPiT筑波大ワークショップ表彰式の様子

図表2.4.8 筑波大学の短期集中合宿 成果報告会におけるデモの様子

86 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

吉岡弘隆(楽天株式会社、産業技術大学院大学) 他

合計113名

また、筑波大学の分散PBL科目「PBL型システム開発B」の成

果報告会を、平成28年2月8日に筑波大学にて、テレビ会議シ

ステムによる公開講義として実施した。

分散PBL科目の受講生数は次の通りである。

筑波大学:修士1年50名、修士2年0名

参加大学:修士1年32名、修士2年1名、学部4年1名、学部3年1

産業技術大学院大学

基礎知識学習科目として、サービスサイエンス特論、データ

インテリジェンス特論、ユビキタスプラットフォーム特論、情

報システム特論、情報ビジネス特別講義、ネットワークシステ

ム特別講義、コミュニケーション技術特論、オブジェクト指向

開発特論、、情報システム構築プロジェクトマネジメント論、

短期集中合宿では、コラボレイティブ開発特論とアジャイル

開発手法特論を開設した。さらに分散PBL科目としては、ビジ

ネスアプリケーション特別演習を開設した。

短期集中合宿には、enPiT必須科目であるアジャイル開発

手法特論に36名、必修選択科目であるコラボレイティブ開発

特論に28名がそれぞれ参加した。

また、成果発表会平成27年12月12日に主会場である産業

技術大学院大学と参加大学を遠隔会議システムで結び開催

した。スクラムコースは産業技術大学院大学から3チーム、参

加大学である琉球大学から1チームが楽天株式会社のAPIを

利用したWebアプリケーション開発の事例を発表した。各

チームとも優れた内容であり、スクラム手法による短期間で

のアプリケーションの開発の可能性を実証した。

出席者

受講生:15名(産業技術大学院大学:12名、琉球大学:3名)

学内教員:5名

琉球大学教員:1名(ポリコムジャパン株式会社)

外部評価委員:4名

学外:11名(筑波大学:1名、九州工業大学:1名、琉球大学社

会人:3名、他:1名、ポリコムジャパン株式会社:5名)

合計36名

グローバルコースは2チームがそれぞれブルネイ、ニュー

ジーランドとベトナムの大学との連携で行った海外における

図表2.4.12 産業技術大学院大学スクラムコース 成果発表会(12/12)の様子

図表2.4.14 産業技術大学院大学における アジャイル開発手法特論の様子

図表2.4.13 産業技術大学院大学グローバルコース 成果発表会(12/12)の様子

図表2.4.15 産業技術大学院大学における アジャイル開発手法特論の様子

87e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

ビジネスアプリケーションのニーズに基づく開発事例を発表

した。

出席者

受講生:8名

学内教員:5名

外部評価委員:2名

合計:15名

公立はこだて未来大学

基礎知識学習科目として、ICTデザイン通論で最先端の技

術動向や実践的な技術についてオムニバス形式で講義およ

び演習を実施した他、e-learningを用いた基礎知識習得を実

施し、基礎知識の教育に努めた。また、短期集中合宿では、ビ

ジネスサービスデザイン実践とビジネスアプリケーション開

発基礎演習を、さらに分散PBL科目として、PBL型システム開

発演習を開設した。それぞれの受講生数は次の通りである。

●ICTデザイン通論(34名)公立はこだて未来大学:修士1年17名、修士2年0名

参加大学:修士1年15名、修士2年2名

●e-learningを用いた基礎知識習得(19名)公立はこだて未来大学:修士1年16名、修士2年0名

参加大学:修士1年2名、修士2年1名

●ビジネスサービスデザイン実践(29名)公立はこだて未来大学:修士1年12名、修士2年0名

参加大学:修士1年15名、修士2年2名

●ビジネスアプリケーション開発基礎演習(29名)公立はこだて未来大学:修士1年12名、修士2年0名

参加大学:修士1年15名、修士2年2名

●PBL型システム開発演習(30名)公立はこだて未来大学:修士1年13名、修士2年1名

参加大学:修士1年14名、修士2年2名

ビジネスサービスデザイン実践では、公立はこだて未来大

学の情報デザイン教員と共同で準備した会場と作成した教

材を利用した。「函館で起業する」をテーマとして、函館市内

で起業した人や店舗、施設などの調査に基づき、サービスデ

ザインを行った。函館市西部地区にある函館市地域交流まち

づくりセンターを基地に、起業家や周辺市民へのインタ

ビュー、市街地や空き家、函館旧ロシア領事館での参与観察

を通じて問題発見と分析を行った。最終的に自分のチームが

起業する際に提供するサービスをジオラマ、物語、プロトタイ

プやアクティングアウトを用いて提案した。地域に密着した提

案を行うために、地域の方 (々市役所の関係者、地元の起業

家、新聞社、近隣住民など)にも演習に参加してもらい、積極

的に意見を述べてもらった。本講義において、地域活性につ

ながる取り組みが注目され、北海道新聞やFMいるかに紹介

された。取材記事のなかではenPiTについても紹介され、有

意義な取り組みを市民に知ってもらえる良い機会となった。

ビジネスサービスデザイン実践の後半では九州大学の毛

利幸雄特任研究員を講師として招聘し、ファシリテーションの

考え方を学ぶために講義と個人・グループ演習で実施した。

議論を活性化し結論を引き出す際に必要となるコンセンサス

(総体的合意)を導くスキルを、演習を通して体験しながら学

んだ。チームの相乗効果を発揮させ生産性を向上するため

の具体的なスキルやツールを習得することができ、これ以降

の演習においてチームワークを高めることにつながった。

ビジネスアプリケーション開発基礎演習では、学生の作業

補助も活用してモバイルアプリケーション開発教材を作成し

た。開発環境として、開発用ノートPC、モバイル端末等を準備

し使用した。4名〜5名ずつ5チームがモバイルアプリケーショ

ン開発環境Appcelerator Studioを用いて、新しいモバイルア

プリケーションの提案と開発を行った。プロジェクトの進捗管

理にはRedmine、成果物のバージョン管理にはSubversionを

使用し、分散PBLで必要となるスキルを習得した。

会津大学、室蘭工業大学、同志社大学との通信のためにテ

レビ会議システムと多地点サーバを使用した。

本講義で使用した参考書籍は、次の通りである。

●iPhoneアプリ開発の教科書iOS8&Xcode6対応

森巧尚、まつむらまきお、平成26年10月、マイナビ

●SCRUM BOOT CAMP

西村直人、永瀬美穂、吉羽龍太郎、平成25年2月、翔泳社

●オープンソースに依るプロジェクト管理入門

ファーエンドテクノロジー株式会社、平成22年2月、秀和シ

ステム

●入門Redmine第3版

前田剛、平成24年8月、秀和システム

●作ればわかる! Titanium Mobileプログラミング SDK3対応

金宏和實、平成26年9月、マイナビ

次の書籍は、講義のために準備し自由利用とした。

『実用Subversion 第2版』、『GitHub実践入門』

また、やむを得ない事情で本演習に参加できない学生に

対して、Webアプリケーション開発を対象としたグループ開発

を自習で学ぶ教材を新たに作成・提供し、受講させた。この教

材による受講学生のために提供した参考書籍は次の通りで

ある。

『CakePHP2.1によるWebアプリケーション開発』、『ゼロから

わかるPHP超入門』、『PHP逆引きレシピ』、『SCRUM BOOT

CAMP』、『オープンソースに依るプロジェクト管理入門』、『入

門Redmine第3版』

分散PBL科目であるPBL型システム開発演習では、「自分と

異なる世代の人に何らかの価値をもたらすもの」をテーマと

したビジネスアプリケーション開発を、参加大学と遠隔PBL形

式で行った。作るものはWebアプリケーションだけに限定せ

ず、タブレットアプリケーション、Arduinoなどのデバイスも使

88 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

用可とした。最初に想定するユーザやステークホルダに対す

る参与観察やヒアリングを行い、イテレーション型開発やア

ジャイル開発の手法を用いてシステム開発を行った。平成27

年度は公立はこだて未来大学と会津大学、同志社大学、室蘭

工業大学の学生混成の6チームで活動を行った。チームそれ

ぞれ、①小学生向けの夏休み自由研究のアイデアが共有でき

るWebアプリケーション「みねるば」、②女子高生の最先端の

ファッションやメイクを共有するiPhoneアプリケーション

「Make Share」、③勉強しているかどうかをセンシングできる

ペンと、勉強している友だちを表示するスマートフォンアプリ

ケーション「avectoi」、④5分でしっかり掃除・片付けを指示し

てくれるスマートフォンアプリケーション「Kikkari Clean」、⑤

生徒の苦手な学習項目を知ることができて、それを克服する

ための練習問題を自動生成してくれるWebアプリケーション

「exam」の開発に取り組んだ。

本講義の成果発表会を平成27年12月18日にテレビ会議シ

ステムおよびネット中継(Ustream)を使った公開講義として

実施した。発表会では6チームによる参与観察やアイデア出

し、システム開発の成果をデモンストレーションを盛り込んで

発表した。出席者からは質疑応答形式でコメントをもらった。

発表会後は分散PBLの振り返りを行い、受講生は自分の授業

での経験を振り返るためにExperience Mapを作成した。個

人単位、チーム単位、受講生全員で各人の経験を共有するこ

とで、学びを俯瞰することができた。参加者

阿草清滋(京都大学)

重木昭信(日本電子計算株式会社)

金井学(文部科学省)

岡田由紀(株式会社ハイマックス)

久保秋真(株式会社チェンジビジョン)

山本雅基(名古屋大学)

吉岡信和(国立情報学研究所)

公立はこだて未来大学教員:3名

TV会議システム・ネット中継からの参加者:

嵯峨智(筑波大学)

吉岡廉太郎(会津大学)

佐藤和彦(室蘭工業大学)

平成27年12月19日には、これまでの演習で撮影した記録

写真を活用しながら本年度のenPiTカリキュラム全体の振り

返りを行った。ここでは本学のenPiT特任教員が開発した学

びのExperience Mapを使用した。模造紙、マーカー、学びの

付箋、旅人駒を使用した。振り返りを行うことで学生個人の学

びを外化し自分自身で認識でき、受講生全員で共有すること

図表2.4.16 公立はこだて未来大学におけるビジネスサービス デザイン実践(前半)のFieldSurveyの様子

図表2.4.17 公立はこだて未来大学におけるビジネスサービス デザイン実践(後半)のファシリテーション演習

図表2.4.18 公立はこだて未来大学における ビジネスアプリケーション開発基礎演習の様子

図表2.4.19 公立はこだて未来大学における PBL型システム開発演習での分散開発の様子

89e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

で学びを俯瞰することができた。参加者のコメントとして

「enPiTでの活動を通じてチームの雰囲気が重要だと分かっ

た」「分散開発だとメンバー全員のモチベーションが必要

だった」「期間をしぼってアイデアを出すのがうまくいくコツ」

「1年間のうち4つの演習ですべてチーム編成が違ったので、

自分の立ち位置・立ち回りのようなものがつかめた」などが

あった。学んだことの他に学べなかったことについても認識

でき、enPiT以降の自律的な学びにつなげることができた。教

員の視点では、学生の学びを把握することで、次年度の授業

計画や教材の改善にもつながった。

ビジネスアプリケーション分野全体として、第三回ビジネス

アプリケーション分野ワークショップを平成28年2月26日に筑

波大学東京キャンパスにて、テレビ会議システムおよび

Ustreamによる公開シンポジウムの形式で開催した。

教員養成・FD活動2 . 4 . 6

筑波大学では、平成25年度に本事業専任の2名の若手教

員が本事業における事前基礎知識学習、短期集中合宿、分散

PBLの実施全体に携わることで、実践教育の能力を強化育成

している。また、教育能力だけではなく、連携大学間のコミュ

ニケーション、参加大学との交渉、本事業活動に関わる各種

イベントの企画や実施にも中心的に携わることで、大学間連

携のためのネットワーク構築に関する能力の強化も図ってい

る。

産業技術大学院大学では、ベテランから若手までの専任教

員6名と特任教員2名で本事業に取り組んでいる。これらの体

制により、ビジネスアプリケーション分野のFDとして若手教

員育成も行っている。

公立はこだて未来大学において、1名の若手教員が引き続

き本事業の推進に中心的に携わることを通じて、実践教育を

推進できる能力を磨いている。また他の連携大学の発表会へ

参加したり、enPiT教員の情報交換会に参加したり、積極的な

FD活動を行っている。本学のenPiTに関する講義を公開する

ことで、大学間相互の教員育成にも貢献している。

また、3連携大学(筑波大学、産業技術大学院大学、公立は

こだて未来大学)においては、ベテラン教員の他に、若手教員

が本事業へ中心的に携わる。基礎知識学習、短期集中合宿、

分散PBLにおける教材開発等や、本事業で実施するさまざま

なイベントに携わることで、実践的教育に関する一層のスキ

ルアップも期待できる。

平成27年9月1日から3日にかけて行われた第40回教育シ

ステム情報学会全国大会では、3連携大学で企画セッション

「実践的情報教育の手法と適用事例」を企画・開催し、3件の

研究発表を行った。

●“PBLにおけるポートフォリオ活用による学習支援の試み”

雲井尚人, 冨永敦子, 伊藤恵(公立はこだて未来大学)

●“アジャイル開発の本質理解とグローバル人材育成のため

図表2.4.20 公立はこだて未来大学における enPiT振り返りの様子

のPBL教育” 中鉢欣秀(産業技術大学院大学)

●“筑波大学におけるプロダクトディスカバリーの実践” 嵯峨

智, 渡辺知恵美, 河辺徹, 三末和男, 北川博之, 田中二郎(筑

波大学)

平成27年9月9日から11日にかけて、ビジネスアプリケー

ション分野のFD合宿を実施した。講師に同分野の専門家で

コーチ経験が豊富な原田騎郎氏を招き、ワークショップ形式

で行った。産業技術大学院大学が主催となり、場所は公立は

こだて未来大学のエレクトロニクス工房にて開催した。3連携

大学から6名の教員が参加し、ワークショップを通してアジャ

イル型開発やScrumの本質理解に取り組んだ。また参加者同

士の意見交換を通して、教授法に関する研鑽を図った。

参加大学に在籍する教員に対しては、短期集中合宿や分

散PBLに積極的に参加してもらうことで実践的教育の普及展

開や教員のFDとしても効果的であった。また、連携企業の担

当者を交えた実践教育に関する情報交換、意見交換、レク

チャー等の場を設定することでビジネスアプリケーション分

野における効果的なFD体制の形成を図っている。

さらに、連携大学ごとのワークショップや分野ワークショッ

プの際に、本プログラムに参加している学生・教員・連携企業

担当者が一堂に会して本年度の活動の振り返りを行い、カリ

キュラムの実施方法や教育内容の改善に努めている。連携大

学、参加大学合わせて、40名程度の教員の参加を目標にして

いる(本年度の実施状況は前述の通り)。

これらを通して、ビジネスアプリケーション分野を中心とし

た実践的な大学院教育のレベルアップを図るとともに、連携

大学、参加大学において、PBLを中心とした実践教育を担当

可能な教員の一層の充実を図っている。その他、平成25年度

からの短期集中合宿における集中講義・演習と分散PBLを通

して、実践的教育手法を連携大学・参加大学と共有可能な情

報としてまとめていくとともに、連携大学や参加大学の情報

交換のためのネットワークを維持・強化し、実践教育の普及

を目指している。

90 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

来年度のイベント予定・募集情報2 . 4 . 7

●筑波大学enPiT-BizAppワークショップ大学名 筑波大学開催時期 平成28年12月開催場所 筑波大学

●筑波大学enPiT分散PBL成果発表会大学名 筑波大学開催時期 平成29年2月開催場所 筑波大学

●産業技術大学院大学分散PBL成果発表会大学名 産業技術大学院大学開催時期 平成29年2月開催場所 産業技術大学院大学

●公立はこだて未来大学分散PBL成果発表会大学名 公立はこだて未来大学開催時期 平成28年12月開催場所 公立はこだて未来大学

●第5回ビジネスアプリケーション分野ワークショップ大学名 筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて

未来大学開催時期 平成29年2月開催場所 未定

募集情報

連携大学、参加予定大学を含め、情報系の大学院に在籍し

ている大学院学生、情報系の学部レベルの基礎教育を習得

している受講希望者、情報系企業における実務経験を有する

受講希望者を対象とし、受講生募集を3〜4月頃に行う予定で

ある。

応募者には、指定する基礎知識を必要に応じて短期集中

合宿までに学習してもらい、前提知識の習得状況の審査に合

格することで、短期集中合宿への参加および分散PBLの受講

を認める(定員を超えた場合はさらに選抜を行う)。なお、前

提知識の習得状況の確認は、連携大学学生については指定

科目の履修実績により、その他の受講希望者については指定

科目と同等の内容の履修実績によって行う。

募集案内や参加・応募方法など詳細は、Webサイトにて公

開する。Webサイト http://bizapp.enpit.jp/

●4月〜5月 受講生決定、受講者説明会実施

●6月 短期集中合宿参加のための前提知識習得状況審査

▼enPiTビジネスアプリケーション分野事務局問い合わせ先

筑波大学大学院システム情報工学研究科

コンピュータサイエンス専攻事務室enPiT担当

TEL ▶ 029-853-4991

E-mail ▶ [email protected]

産業技術大学院大学

産業技術大学院大学内 enPiT事務局

TEL ▶ 03-3472-7833

E-mail ▶ [email protected]

公立はこだて未来大学

公立はこだて未来大学内 enPiT事務局

TEL ▶ 0138-34-6411

E-mail ▶ [email protected]

91e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

まとめ2 . 4 . 8

本分野は、先端情報技術や情報インフラを有機的に活用

し、潜在的なビジネスニーズや社会ニーズに対する実践的問

題解決ができる人材育成を目指している。そのため、次世代

社会情報基盤を成す先進要素技術を十分理解し、複合的か

つ俯瞰的にそれらを適用することで顧客要求を満足する解

を示す能力を教育することを目指した。加えて、ユーザーセン

タードデザインによるトータルなデザイン能力、さらに要求

分析・設計・実装等の開発力に加えて、情報デザイン力、問題

発見・解決力等も加味した教育を実施した。

本分野全体で平成27年度の短期集中合宿への受講生数

は160名にのぼった。このうち135名が分散PBLに進み。本年

度の全課程を修了した。本年度受講生数の目標は85名であ

り、この目標を大幅に超える実績を上げた。

また、筑波大学、産業技術大学院大学、公立はこだて未来

大学の3連携大学で24名、それに加えて、参加校である室蘭

工業大学、岩手大学、会津大学、富山大学、茨城大学、群馬大

学、宇都宮大学、千葉大学、お茶の水女子大学、拓殖大学、東

京理科大学、埼玉大学、津田塾大学、日本工業大学、名古屋工

業大学、京都産業大学、同志社大学、和歌山大学、広島大学、

岡山県立大学、徳島大学、愛媛大学、山口大学、琉球大学の計

24大学の参加大学から総計83名の教員の参加を得た。目標

の連携大学30名には満たなかったが、目標に近い値を達成

することができた。参加大学25名の目標は十分に達成するこ

とができた。さらに、九州工業大学などが来年度からの参加

を予定しており、より一層の拡大が期待できる。

産業技術大学院大学ではこれからのビジネスアプリケー

ション開発技術者に必要と考えられる2大要素の、アジャイル

開発手法とグローバル開発をテーマに集中講義や分散PBL

を実施した。アジャイル開発技術においては、利活用企業とし

ての楽天株式会社や、スクラム手法の第一人者の協力のも

と、短期間で品質の高いアプリケーションの開発を達成した。

また、グローバルチームは実際にブルネイやベトナムの大学

生からの要求を受け、グローバル基準に則った開発や文化の

違いを体感することができた。

産業技術大学院大学の分散PBL受講生38名のうち29名が

社会人学生であった。このうち22名は正規学生ではなく、外

部から科目等履修制度などを使って受講した学生である。今

後も、仕事を持ちながら学ぶ社会人学生が増えることが予想

される。産業技術大学院大学のenPiTプログラムは、このよう

な仕事を持つビジネスマンが参加しやすいように、夜間や土

曜日の講義を提供しており、本年度は社会人へ積極的に本プ

ログラムの広報活動を行ったことにより、多くの社会人の参

加を得た。今後も社会人が学ぶ環境を整備していきたい。

また、分野全体として、情報系以外の電気系や機械系など

の広く工学系の人材、芸術系や文化系なども含めた幅広い

人材に対するビジネスアプリケーション分野の教育を行うこ

とも目指していきたい。

本年度の各報告会やFDを通じて、関係組織の方々から多く

のご意見をいただいた。来年度はこれらを基に、より多くの学

生に対し高い教育効果をあげられるカリキュラムと体制を目

指す。そのためには、学生らしい斬新な提案に対する期待も

踏まえ、課題設定や実施内容を工夫するなどの対応も必要と

考えている。

92 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

2 . 5 分野を越えた実践教育

分野横断講義2 . 5 .1

分野を越えた実践教育として、教務WGで企画し、実施した

「分野横断講義」の詳細について述べる。「分野横断講義」と

しては、次の2種類がある。

A 分野によらず必要な汎用的内容の講義B 各分野の特任教員によって提供される特色ある講義

一昨年度は、Aを2種類(3講義)、Bを1種類(1講義)、昨年度はAを3種類(4講義)、Bを4種類(7講義)実施したが、本年度は、各分野、連携大学より提供可能な候補リストの更新と

充実、また各分野、連携大学において積極的な受け入れの検

討をしていただいたことにより、Aを4種類(5講義)、Bを6種類(7講義)と実施数を増やした。また、クラウドコンピューティ

ング分野とビジネスアプリケーション分野がテレビ会議シス

クラウドコンピューティング

分野提供セキュリティ分野提供 組込みシステム分野提供 ビジネスアプリケーション

分野提供 その他

クラウドコンピューティング分野開催

[ネットワークセキュリティ(アーカイブによる自主学習)]

Aファシリテーションスキル (4/24:大阪大学中之島センター)

Bデータサイエンス入門(12/9:九工大)Bアジャイル ソフトウェア開発 (5/25:九工大)Bスクラム開発入門 (5/13:東工大)

[産技大と分散PBLを共同開催(後期水曜日、テレビ会議にて開催)]

セキュリティ分野開催

Bクラウドエクストラ (11/13:NAIST+配信)

Aロジカルシンキング (11/30:情セ大+配信)

組込みシステム分野開催

Bハードウェアセキュリティ入門 (10/6:九大(遠隔))

ビジネスアプリケーション分野開催

Bクラウドエクストラ (8/28:筑波大 (短期集中合宿中))Aプレゼンテーションスキル  (8/21:筑波大 (短期集中合宿中))

B最新情報セキュリティ理論と応用 システム編 (8/26:筑波大 (短期集中合宿中))

Aドキュメンテーション (8/18:筑波大(短期集中合宿中)) Aファシリテーションスキル (8/21:未来大(短期集中合宿中))

【凡例】A汎用的な講義 B特任教員による専門的な講義※セキュリティ分野で開講している多くの科目は登録を行うことで他分野の学生でも遠隔受講が可能。※組込みシステム分野名古屋大附属組込みシステム研究センターの「社会人組込み技術者向けの公開講座」を、enPiT全分野の受講生は無料で受講可能。

図表2.5.1 平成27年度 分野横断講義概要

テムを用いて共同で分散PBLを実施するなどの取り組みも昨

年度に引き続き行われた。本年度の実施状況の概要は図表

2.5.1の通りである。

なお、昨年度よりセキュリティ分野の科目の多くは、登録を

行うことで、他分野の学生でも遠隔受講(同時、または蓄積)

が可能となっている。これに関し、クラウドコンピューティング

分野では、昨年度に引き続き、ネットワークセキュリティに関

する科目(アーカイブ)を学生に自主学習として受講させてい

る。

また、昨年度より、組込みシステム分野の名古屋大学附属

組込みシステム研究センターの「社会人組込み技術者向けの

公開講座」をenPiT全分野の受講生に無料で受講可能として

いる。

93e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

A 分野によらず必要な汎用的内容の講義

(a1) 組込みシステム分野から クラウドコンピューティング分野に提供

ファシリテーションスキル講師 毛利幸雄(九州大学)概要 ファシリテーションの考え方を、座学と個人・グ

ループ演習を通して学ぶ。また、議論を活性化し

結論を引き出す際に必要となるコンセンサス(総

体的合意)を導くスキルを、演習を通して体験し

ながら学ぶ。会議の効率化だけでなく組織・企業

変革にも役立つ、ファシリテータの役割と重要性

についての認識を深め、チームの相乗効果を発

揮させ生産性を向上するための具体的なスキル

やツールを習得する。実施日時 4月24日 10:00〜19:00実施場所 大阪大学中之島センター佐治敬三メモリアル

ホール参加学生 41名

[所属内訳]

大阪大学:12名  神戸大学:8名

和歌山大学:5名  大阪工業大学:2名

京都産業大学:3名  立命館大学:4名

高知工科大学:3名

奈良先端科学技術大学院大学:4名

(a1’) 組込みシステム分野から ビジネスアプリケーション分野に提供

ファシリテーションスキル講師 毛利幸雄(九州大学)概要 (a1)と同じため省略

実施日時 8月21日 9:00〜18:00

(a3) クラウドコンピューティング分野から ビジネスアプリケーション分野に提供

プレゼンテーションスキル講師 増本登志彦(株式会社日立インフォメーションア

カデミー)概要 本講義では、プレゼンテーションをちょっとした説

明資料の作成と捉えて、身近なものとして考える。

グループでのミニ演習が中心となる講義のため、

仲間の考え方も聞くことで参考になる。実施日時 8月21日 9:30〜12:15実施場所 筑波大学 共同利用棟A 101教室参加学生 92名

実施場所 公立はこだて未来大学 本棟 484教室参加学生 32名

[所属内訳]

公立はこだて未来大学:15名

会津大学:8名  室蘭工業大学:7名

同志社大学:2名

(a2) 組込みシステム分野から ビジネスアプリケーション分野に提供

ソフトウェア開発のためのドキュメンテーション入門講師 塩谷敦子(合同会社イオタクラフト)概要 ソフトウェア開発における開発文書づくり(ドキュ

メンテーション)の重要性と、その基礎技術を学

ぶ。開発文書はどう書くべきか、という基本的な捉

え方とドキュメンテーションの役割を学習し、情報

を正確に分かりやすく伝達するための文書の書

き方の基礎技術を学ぶ。実施日時 8月18日 9:30〜12:15実施場所 筑波大学 総合研究棟B SB0110教室参加学生 93名

[所属内訳]

筑波大学:52名  お茶の水女子大学:3名

愛媛大学:8名  茨城大学:5名

埼玉大学:4名  山口大学:5名

千葉大学:3名  拓殖大学:1名

徳島大学:2名  富山大学:4名

名古屋工業大学:3名  和歌山大学:2名

京都産業大学:1名

図表2.5.3 分野横断講義 「ファシリテーションスキル(8/21)」の様子

図表2.5.4 分野横断講義 「ドキュメンテーション(8/18)」の様子

図表2.5.2 分野横断講義 「ファシリテーションスキル(4/24)」の様子

94 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

[所属内訳]

筑波大学:51名  お茶の水女子大学:3名

愛媛大学:8名  茨城大学:5名

埼玉大学:4名  山口大学:5名

千葉大学:3名  拓殖大学:1名

徳島大学:2名  富山大学:4名

名古屋工業大学:3名  和歌山大学:2名

京都産業大学:1名

(a4) ビジネスアプリケーション分野から セキュリティ分野に提供

ICT分野の研究開発におけるロジカルシンキングとロジカルライティングの活用

講師 高橋慈子(株式会社ハーティネス)概要 研究開発のテーマの設定、要件定義の作成を行

うには、情報を整理し、ロジカルに全体を構築す

ることが重要になる。そうした思考方法のひとつ

としてロジカルシンキングが活用できる。本講義

では、ロジカルシンキングの手法、考え方を理解

し、情報整理やロジックの作成などの演習を通し

て実践する。また、技術文書作成へ進める際に求

められる、正確さ、わかりやすさを実現するため

に、ロジカルシンキングからロジカルライティン

グに落とし込んでいく方法も取り上げる。実施日時 11月30日 14:40〜16:10、16:20〜17:50実施場所 情報セキュリティ大学院大学 2F 201教室より遠

隔講義システムで配信参加学生 16名

[所属内訳]

情報セキュリティ大学院大学:5名

中央大学:1名  東北大学:7名(配信先)

北陸先端科学技術大学院大学:2名(配信先)

お茶の水女子大学:1名(配信先)図表2.5.6 分野横断講義

「ロジカルシンキング(11/30)」の様子

図表2.5.7 分野横断講義 「アジャイルソフトウェア開発(5/25)」の様子

B 各分野の特任教員によって提供される特色ある講義

(b1) ビジネスアプリケーション分野から クラウドコンピューティング分野に提供

アジャイルソフトウェア開発講師 永瀬美穂(産業技術大学院大学)概要 ソフトウェア開発の柔軟化、変化する要求に対応

しながら、ビジネスに柔軟に沿うことで価値を生

み出す、アジャイルなソフトウェア開発の手法が

脚光を浴びている。アジャイルソフトウェア開発

手法のひとつであるスクラムを中心に、アジャリ

ティの高いソフトウェアの開発を行うためのモダ

ンなチーム開発についての基礎知識を習得す

る。実施日時 5月25日 10:30〜12:00、13:00〜14:30実施場所 九州工業大学 情報工学部未来型インタラク

ティブ教室(MILAiS)参加学生 20名

[所属内訳]

九州工業大学:15名  九州産業大学:5名

(b1') ビジネスアプリケーション分野から クラウドコンピューティング分野に提供

スクラム開発入門講師 永瀬美穂(産業技術大学院大学)概要 (b1)とほぼ同じため省略

実施日時 5月13日 10:30〜12:00、13:00〜14:30実施場所 東京工業大学 大岡山西8号館W833室参加学生 16名

[所属内訳]

東京工業大学:16名

図表2.5.5 分野横断講義 「プレゼンテーションスキル(8/21)」の様子

95e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

(b2) セキュリティ分野から ビジネスアプリケーション分野に提供

最新情報セキュリティ理論と応用 システム編講師 布田裕一(北陸先端科学技術大学院大学)概要 暗号メール、VPN、Webブラウザなどで使用する

SSLを例に、公開鍵認証基盤(PKI)について解説

する。具体的には、公開鍵認証基盤の必要性や利

用場面、認証局システムや証明書発行/管理につ

いて解説し、さらに、公開鍵認証基盤の攻撃事例

として、認証局への攻撃(DigiNotar)、SSLの実装

に対する攻撃(Heartbleed)やそれらに関連した

話題を紹介する。実施日時 8月26日 9:30〜12:15実施場所 筑波大学 第3エリア3A202教室参加学生 56名

[所属内訳]

筑波大学:30名  お茶の水女子大学:2名

愛媛大学:8名  茨城大学:5名

千葉大学:3名  富山大学:4名

名古屋工業大学:1名  和歌山大学:2名

京都産業大学:1名

(b3) クラウドコンピューティング分野から ビジネスアプリケーション分野に提供

クラウドエクストラ講師 Marat Zhanikeev(九州工業大学)概要 クラウドは、データセンターを中心にした大規模

な技術である。「クラウドエンジニア」という正式

な職名はないが、データセンターにおいてクラウ

ド系の仕事をしている職員のことを、クラウドエン

ジニア(CE)と呼んでも間違いない。CEは、さまざ

まな問題を解決しなければならないが、共通する

内容は「作業の効率」と「性能管理」の2つに絞れ

られる。本講義では、ミニクラウドを構築・運営し

ながら、この2つの問題におけるいくつかの具体

的な解決方法を演習の形で学ぶ。実施日時 8月28日 9:30〜12:15実施場所 筑波大学 第3エリア3A202教室参加学生 56名

[所属内訳]

筑波大学:30名  お茶の水女子大学:2名

愛媛大学:8名  茨城大学:5名

千葉大学:3名  富山大学:4名

名古屋工業大学:1名  和歌山大学:2名

京都産業大学:1名

図表2.5.8 分野横断講義「最新情報セキュリティ理論と 応用 システム編(8/26)」の様子

図表2.5.9 分野横断講義 「クラウドエクストラ(8/28)」の様子

図表2.5.10 分野横断講義 「クラウドエクストラ(11/13)」の様子

(b3’) クラウドコンピューティング分野から セキュリティ分野に提供

クラウドエクストラ講師 Marat Zhanikeev(九州工業大学)概要 (b3)と同じため省略

実施日時 11月13日 13:30〜16:40実施場所 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 

プロジェクト室 P1、P2より遠隔講義システムで配

信参加学生 11名

[所属内訳]

奈良先端科学技術大学院大学:5名

北陸先端科学技術大学院大学:6名(配信先)

(b4) セキュリティ分野から 組込みシステム分野に提供

ハードウェアセキュリティ入門講師 本間尚文(東北大学)概要 情報通信機器などのハードウェアから情報漏えい

が生じるメカニズムを学び、物理的セキュリティ

に関する問題に対する理解を深め、ハードウェア

セキュリティ対策の重要性を学ぶ。特に、暗号ア

ルゴリズムを実装したハードウェアの動作中に生

じる副次的な情報(サイドチャネル情報)を利用し

て秘密情報を奪うサイドチャネル攻撃とその対策

の基本概念を詳細に学習する。実施日時 10月6日 13:00〜16:20実施場所 九州大学伊都キャンパスウェスト2号館506教室

96 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

イノベーターワークショップ2 . 5 . 2

本年度はハイブリッド人材育成に向けた準備として、情報

工学をベースとしない人材も含めたAものつくりの関連講義、Bイノベーターワークショップを実施した。

A ものつくりの関連講義

(a1) ものつくりにおけるナラティブデザイン講師 稲蔭正彦(慶應義塾大学大学院メディアデザイン

研究科 研究科委員長)概要 人間社会は、日常的にストーリーを語ることでコ

ミュニティを形成している。自分の意思を正確に

伝えること、そして相手の意思を正確に理解する

ことを実現するために、さまざまな言語が進化し

続けている。ツイッターのようなオンライン上の

つぶやきも短いストーリーである、として捉えるこ

とができる。いかにストーリーを魅力的に伝える

か?この問いに取り組んできた分野の1つがコン

テンツ分野と広報宣伝分野である。このクリエイ

ティブ産業で蓄積したストーリーテリングのメ

ソッド化は、ナラティブデザインとして学術的にも

扱われ、その応用がビジネスの現場でも注目さ

れている。本講義では、ストーリーを正確に伝える

だけではなく、魅力的に伝えるためのナラティブ

デザインの基礎を解説し、その上で視覚言語、五

感によるコミュニケーションに加え、モノを通した

ナラティブデザインの展開について紹介した。実施日時 12月1日 16:30〜18:00実施場所 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科  

6階大会議室受講生 9名(遠隔受講生4名、アーカイブ受講生5名)

[所属内訳]

室蘭工業大学:3名  筑波大学:2名

愛知工業大学:1名  九州大学:1名

神戸大学:1名  大阪大学:1名

図表2.5.12 分野横断講義 「データサイエンス入門(12/9)」の様子

図表2.5.11 分野横断講義 「ハードウェアセキュリティ入門(10/6)」の様子

において遠隔講義システムによる受信参加学生 九州大学:19名

(b5) ビジネスアプリケーション分野から クラウドコンピューティング分野に提供

ビジネスアプリケーションのためのデータサイエンス入門講師 渡辺知恵美(筑波大学)概要 近年のブログやSNS等の爆発的な利用者増加に

より世界中の人々の行動ログがインターネット上

のサーバに蓄積されている。これらの膨大なビッ

グデータを分析し、利用者の行動傾向を発見して

マーケティングにつなげ、利用者への適切な商品

推薦機能をアプリケーションに提供する「データ

サイエンティスト」という職業が注目を集めてい

る。本講義では、ビッグデータを分析しビジネス

につなげるためのデータ分析のプロセスや必要

なスキル、ビッグデータの扱い方について講義す

る。実施日時 12月9日 14:40〜16:10実施場所 九州工業大学情報工学部 N501室参加学生 15名

[所属内訳]

九州工業大学:14名  九州産業大学:1名

97e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第2章 実践教育の取り組み状況

(a2) デザイン思考とものつくり講師 奥出直人(慶應義塾大学大学院メディアデザイン

研究科)概要 ものつくりの基本はコンセプトをデザインするこ

とから始まる。日本の高度成長はさまざまなコン

セプトを作り、試して、市場に投入し顧客のビジョ

ンをかなえる商品をたてつづけに生み出すこと

によって可能になった。このような商品をイノ

ベーションと呼ぶ。1980年代後半から日本のもの

つくりは停滞を始め今に至るが、その理由の一つ

として個別のものつくりの技術やそれが提供でき

る機能にはこだわったが、顧客がそのものをほし

いと思うビジョンを提供できなかったことが挙げ

られる。イノベーション力にかけていたのである。

デザイン思考はこうしたものつくりの現場にコン

セプトをエンジニアが自ら生み出す方法として非

常に有効である。ラップトップコンピュータという

今までにないコンセプトを生み出したIDEOのイ

ノベーションの方法として知られているこの手法

は、顧客の観察と行動の分析、工作による試行錯

誤をとおしたコンセプトデザイン、顧客にコンセ

プトを商品として届けるビジネスモデルのデザイ

ンという3つのプロセスに分かれる。このプロセス

の詳細を具体的に説明しながら、ゼロから1をイ

ノベーションする方法としてのデザイン思考につ

いて紹介した。実施日時 12月1日 18:10〜19:40実施場所 (a1)と同じため省略

受講生 (a1)と同じため省略

B イノベーターワークショップ

講師 佐藤千尋(慶應義塾大学大学院メディアデザイン

研究科)概要 さまざまな分野で活躍するエンジニアの育成に

おいて、「社会の要請」を正しく理解しものつくり

を進める必然性がある。また、情報工学をベース

とする人材に「ものつくり」のセンスを附与するこ

とで、社会に浸透する技術を支援する人材の育成

に寄与するものと考える。本ワークショップでは、

異なるバックグラウンドの人材でチームを組み、

多様なサービス現場で実際にどういう現象が起

きているのかを学生自らが学ぶことで、よりリアル

なサービス設計と技術の融合を目指した。実施日時 12月5日 10:00〜18:30 

12月6日 9:00〜15:00実施場所 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科

C3S02教室参加学生 9名

[所属内訳]

室蘭工業大学:3名  筑波大学:2名

愛知工業大学:1名  九州大学:1名

神戸大学:1名  大阪大学:1名

 ●授業詳細具体的な授業は次のように行われた。

[12月5日]

❶自己紹介を通じてチームビルディングを行う。予め記入し

た自己紹介シートをもとに、専門分野や研究実績に加えて

趣味や家族構成についてのプライベートなことも共有す

る。

❷各チームでつくりたいもの(ビジョン)とそれによって人の

生活がどのように変わってほしいのか(哲学)を定める。今

回のワークショップではチーム別に予め調査先を割り当て

たため、1チームは「コーヒーショップ」、もう1チームは「フ

ラワーショップ」から学べることを基盤とした。

❸哲学とビジョンを定めた後は、現場に入り民族誌調査を行

う。今回も昨年度同様に、担当教員が調査対象現場に事前

交渉し、コーヒーショップとフラワーショップの2つを準備

した。参加者は1時間程度の参与観察(par t i c ipan t 

observation)を行った。調査の手法としては師匠弟子モデ

ルを利用した。師匠弟子モデル(Master-Apprenticeship 

Model※1)は、調査対象者を師匠と見立て、調査者は弟子と

してただひたすら見習う手法をとる。

❹行った調査を多数の視点から分析を行う。まず、調査の内

容を文章で書き起こし、濃い記述(Thick Description※2)を

作成する。その後、5つの異なる視点を用いて分析を行い、

調査の全体像を描き出す。5つの視点での分析とは、時間

軸、空間、事物、文化、人間関係それぞれに着目して分析モ

98 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

デルを作成する※3。描き出された調査の全貌をもとに、今

回デザインしたいもののターゲットペルソナとなる人を設

定する。

※1:Hugh Beyer, Karen Holtzblatt, Contextual Design:

Defining Customer-Centered Systems (Interactive

Technologies) (1997)より

※2:Clifford Geertz, The Interpretation of Cultures (1977)

より

※3:Beyer (1997)より

[12月6日]

❺調査で得たコンテキストをもとに、ブレーンストーミングを

行う。まずは、付箋を用いて言葉や絵などでアイデアを可

能な限り創出する。アイデアは、チームが設定したビジョン

を実現するためであれば、どのようなくだらないアイデア

でもかまわない。ある程度数が揃ってきたら、次は紙粘土

を用いて、形状を作ることで可能な限り数を出す。短時間で

できるだけ個数を出すことがポイントである。

❻複数のアイデアを統合させて一つのコンセプトを製作す

る。さまざまな素材を用いて原寸大のプロトタイプを素早

く製作する。素材は、ワークショップ運営者が予め準備した

もので、板ダンボール、木材、模造紙などをはじめ、綿、布、

折り紙などの素材や、傘、畳、ボールなどの既成品も含まれ

る。壁や床なども物理空間も利用し、なるべく身体性を最

大限活用して行う。

❼製作したコンセプトが与える経験を、寸劇を用いて表現す

る。設定したターゲットペルソナにとってどのような良い経

験を与えるコンセプトなのか、ということをストーリー仕立

てで演技を行う。今回は、自分の嗜好を覚えてくれるコー

ヒーカップ、水の鮮度を保ち続ける一輪挿しの花瓶という2

つのコンセプトが作られた。

 ●授業評価普段情報系ではあまり経験できないような実地調査や分

野を横断した協同作業であったことについては好評価であっ

た。デザイン思考のプロセスは理論としては知っていたけれ

ど、実際に体験することができてよかったという意見もあっ

た。また、ファシリテーションや参加者が意欲的であったこと

やチームの雰囲気がよかったことも挙げられた。さらに、2日

間という限られた時間の中で、効果的にエッセンスを学ぶこ

とができたことも評価されたが、もう少し余裕があれば自分

たちでテーマを決めることでより実践的な学習ができただろ

うという声もあった。

図表2.5.13 イノベーターワークショップ(12/5)

図表2.5.14 イノベーターワークショップ(12/6) 図表2.5.15 イノベーターワークショップ(12/6)

協力先のフラワーショップにて民族誌調査を行う様子

ブレーンストーミングを行う様子 アイデアを統合させて一つのコンセプトを製作

A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第3章

分野を越えた実践教育ネットワーク形成

100 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

3 .1 運営委員会、幹事会の実施状況

15連携大学が共同で本事業を推進するために連携大学の

代表で構成される運営委員会を設置している。運営委員会で

は、分野を越えた活動全体の情報共有と、推進に必要な協定

書の承認などの重要事項の意思決定を行っている。さらに、

分野間に関係する重要事項を協議し、推進のための具体案

を策定するために各分野の幹事校(大阪大学、情報セキュリ

ティ大学院大学、九州大学、筑波大学の4校で構成)と事務局

(大阪大学と国立情報学研究所が担当)で構成される幹事

会を設置している。このほかにも事業全体の方向性や実践教

育の普及に関して評価しアドバイスをいただくために、外部

の有識者から構成される外部評価委員会を設置している。図

表3.1.1に本事業全体の組織体制を示す。

図表3.1.1 本事業全体の組織体制

(1)運営委員会の活動運営委員会は年間4回程度を予定しており、本年度は次の

日程で5回開催した。

第1回運営委員会(合同委員会)開催日時 平成27年5月30日 14:40~16:10開催場所 北陸先端科学技術大学院大学

第2回運営委員会(合同委員会)開催日時 平成27年9月9日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

第3回運営委員会(合同委員会)開催日時 平成28年1月26日 9:00~10:30開催場所 つくば国際会議場

第4回運営委員会(合同委員会)開催日時 平成28年3月9日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

臨時運営委員会開催日時 平成28年1月6日 12:00~12:40開催場所 テレビ会議

平成27年度の成果実績の確認、各分野や作業部会の状況

報告、分野間の交流促進、シンポジウムの企画準備、本事業

の中間評価等についての情報共有を行い、現状課題や今後

の方向性等について議論した。

enPiT運営委員会

参加大学 連携企業・団体

幹事会外部評価委員会

enPiT事務局

連携大学

クラウドコンピューティング分野

大阪大学大学院情報科学研究科

東京大学大学院情報理工学系研究科

東京工業大学大学院情報理工学研究科

神戸大学大学院システム情報学研究科

九州工業大学大学院情報工学府

セキュリティ分野

情報セキュリティ大学院大学情報セキュリティ研究科

東北大学大学院情報科学研究科

北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科

奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科

慶應義塾大学大学院理工学研究科

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科

組込みシステム分野

九州大学大学院システム情報科学研究院

名古屋大学大学院情報科学研究科

ビジネスアプリケーション分野

筑波大学大学院システム情報工学研究科

公立はこだて未来大学大学院システム情報科学研究科

産業技術大学院大学産業技術研究科

101e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第3章 

分野を越えた実践教育ネットワーク形成

(2)幹事会の活動幹事会は原則月に1回の頻度で開催しており、本年度は次

の日程で11回開催した。

第1回幹事会開催日時 平成27年4月8日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

第2回幹事会開催日時 平成27年5月13日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

第3回幹事会(合同委員会)開催日時 平成27年5月30日 14:40~16:10開催場所 北陸先端科学技術大学院大学

第4回幹事会開催日時 平成27年7月8日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

第5回幹事会(合同委員会)開催日時 平成27年9月9日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

第6回幹事会開催日時 平成27年10月14日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

第7回幹事会開催日時 平成27年11月11日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

第8回幹事会開催日時 平成27年12月9日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

第9回幹事会開催日時 平成28年1月13日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

第10回幹事会(合同委員会)開催日時 平成28年1月26日 9:00~10:30開催場所 つくば国際会議場

第11回幹事会(合同委員会)開催日時 平成28年3月9日 12:00~13:30開催場所 テレビ会議

幹事会はスピードと経済的な効率を重視するため、基本的

には遠隔会議(テレビ会議)によって実施している。幹事会の

主な議題は、各分野や作業部会の状況確認や課題整理、作業

部会の活動の方向性や協定案の方向性の検討、分野間の交

流促進方法、シンポジウムの企画準備、次年度以降の予定・

計画などである。

(3)外部評価委員会大学における情報教育分野や産業界の有識者で構成され

る外部評価委員会を設置している。年に1回、全体の成果シン

ポジウム開催日に当年度の実施状況および成果を評価委員

会の構成員に報告し、評価をいただく会合を開催している。

平成27年度は次の日程で開催した。日時 平成28年1月26日 10:45~12:30場所 つくば国際会議場(エポカルつくば)

参加者は外部評価委員(学会および産業界の有識者合計4

名)とenPiTの運営委員や作業部会関係者、enPiT事務局で計

31名となった。enPiT側からは、enPiTの全体状況報告の後、

各分野の詳細活動状況、各作業部会の活動状況等が報告さ

れた。外部評価委員からはプロジェクト目標を超えた実績や

各教育活動、産学連携での取り組みに高い評価があった一

方、事業終了後の本教育的取り組みの定着に向けた具体的

方策が必要との指摘があった。

102 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

の成果と、実践的教育の普及度の割合を測定するために、同

様の調査を行った。この結果、次のことが判明した。

●●enPiTの認知率は、過去3年間の調査の中で最も高い

73.5%を達成し、enPiTは情報系専攻の間で広く浸透したと

いえる。

●●enPiTへの学生の派遣に対して関心を持つ専攻は、enPiT

非参加校にも拡大し、enPiTの有効性が広く知られるように

なった成果が表れていると考えられる。

●●実践教育を今後さらに充実化したいという意向が、情報系

専攻の中で全体的に上昇した。これはenPiTのような実践

教育を重視する取り組みが継続された成果といえる。

●●実践教育の重要性に対する認識の拡大を受け、enPiT非参

加校でも、産業界での実務経験を有する教員の採用や実

践性の高い教育を実施した教員を高く評価する動きが広

がっている。

enPiTの関心度に関しては、年々高まっており、平成25年度

の調査結果と比較して、「非常に関心がある」、「ある程度関心

がある」を合わせた回答の割合は上昇傾向にあり、平成26年

度と比較して1割程度上昇している(図表3.2.2)。

さらに、enPiTの修了生が就職する可能性がある企業の

enPiTの認知度を測定した。具体的には、平成26年度に行っ

た企業の調査先1,000社に対して、enPiTの修了生採用につい

ての興味などを調査し、関心度の経年変化を測定した。現在、

集計結果を集計中であり、調査結果はWebサイトで公開する

予定である。

この調査結果を踏まえ、企業への認知度向上のためのパ

ンフレットやWebサイトの充実を実施するという広報戦略を

策定した。

(3)広報物と広報活動平成27年度に作成した広報物を図表3.2.5に挙げる。本年

度は、昨年度の調査結果を踏まえ企業向けの広報物を追加

した。そして、広報物を用いて次のような活動を行った。

●●各連携大学の掲示板へのポスター掲示

●●説明会、イベント等でのパンフレットの配布

●●一般社団法人●大学ICT推進協議会(AXIES)2015年次大会

におけるenPiTのポスター発表とセッションの企画(図表

3.2.4)

●●連携・参加大学の教員、および情報系の教員、興味を持っ

ている企業一般・専攻へのニュースレターの配布

昨年に引き続き教員や全国の企業への認知度を促進させ

分野間の情報や知見の共有、そして協働ネットワークの枠

を越えた実践的情報教育の普及活動を強力に推進するた

めに、運営委員会のもとに必要なWG・部会を設置し、活動を

行っている。各WGには各分野から選出された委員が参画し

ている。平成27年度の活動内容を紹介する。

広報戦略WG 幹事:慶應義塾大学3 . 2 .1

広報戦略WGの目的は、enPiTで実施している実践的な情

報教育を全国に普及させるため、連携大学、参加大学、およ

び情報系の学科・専攻の学生や教員へのenPiTの認知度を向

上させ、本事業への参加を促すことである。具体的には、本事

業の目標とする受講生数を達成するために、広報戦略の策定

と広報活動を行った。

(1)活動の概要広報戦略WGの活動は、主に広報戦略の策定、広報のター

ゲットとなる大学、教員、学生等のニーズの把握や認知度の

測定などの市場調査、広報物の作成と配布である。これらの

活動を行うため、平成27年度はWGの会合を6回遠隔会議に

より実施した(図表3.2.1)。

3 . 2 作業部会の活動状況

開催日 時間

第1回 平成27年4月21日 ※メール審議

第2回 平成27年10月8日 12:00~12:30

第3回 平成27年11月5日 12:00~12:30

第4回 平成27年12月10日 14:00~14:40

第5回 平成28年1月21日 12:00~12:30

第6回 平成28年3月9日 13:00~13:30

(2)ニーズや認知度の調査広報戦略WGでは、広報ターゲットの絞り込み、広報活動の

成果の測定、および現状の実践的情報教育の現状を把握す

るため学生、教員、大学および企業に対して調査を実施した。

次にその調査の概要を述べる。

▼平成27年度の調査概要平成27年度に行った調査は図表3.2.3にある通り、平成26

年度に引き続き参加大学になる可能性がある全国の情報

系・電気電子系の大学専攻とenPiTの修了生が就職する可能

性がある全国の企業に対してアンケート調査を行った。

平成25年度および平成26年度にも全国の情報系・電気電

子系の大学専攻に対して実践教育の必要性やenPiTの認知

度について調査を行ったが、平成26年度のenPiTの広報活動

図表3.2.1 広報戦略WG 会合

103e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第3章 

分野を越えた実践教育ネットワーク形成

るため、ダイレクトメールによりニュースレター等広報物を配

布した。さらに、enPiTに参画している教員に対しては、FDWG

と連携し、公開講義のスケジュールや合宿スケジュールを同

封した。

(4)今後の広報戦略と活動平成28年度は、平成27年度に引き続き教員向けに広報を

行うとともに、企業向けにも積極的に広報を行う予定である。

具体的には、年3回のニュースレターの配布とWebサイトの

図表3.2.2 enPiTへの学生派遣に対する関心度

図表3.2.3 平成27年度の調査概要

対象 調査内容 調査方法

大学院の情報系・電気電子系の専攻(249専攻)(回収:185件)

•●実践教育の実施状況•●実践教育の重視度•●実践教育の充実化の必要性に対する認識•●実践教育の実施に関する課題•●enPiTの認知度•●enPiTへの学生の派遣に対する関心度等

平成27年4月下旬~5月上旬、郵送アンケート

enPiT修了生の受け入れ先となる可能性のある企業(ITベンダー企業 ユーザ企業)(1,000社)(回収:149件)

•●新卒採用時に重視する点•●情報系専攻者に対する期待•●情報系大学院での実践教育に対する関心•●enPiTの認知度/認知経路•●enPiTの教育内容等に対する印象・意見•●enPiT修了生の採用についての興味•●enPiTに対する期待や要望

平成28年1月中旬~1月下旬、郵送アンケート

図表3.2.4 AXIES2015年度 年次大会での発表の様子

非常に関心があるあまり関心はない

ある程度関心がある無回答

多少は関心がある

0 20 40 60 80 100

平成25年度(N = 107)

平成26年度(N = 123)

平成27年度(N = 185) 23.8 34.1 30.8

29.3 18.7 33.3

23.4 22.4 45.8

(単位:%)

改善を考えている。また、引き続き学会やFDWGと連携し、積

極的に教員にenPiTの魅力を伝える活動を展開する。

広報戦略WG

砂原秀樹(慶應義塾大学)

中村匡秀(神戸大学)

猪俣敦夫(奈良先端科学技術大学院大学)

舘伸幸(名古屋大学)

三末和男(筑波大学)

吉岡信和、末永俊一郎(国立情報学研究所)

オブザーバ:井上克郎(大阪大学)

104 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

========================================================●enPiT●メールマガジン●第18号:組込みシステム分野特集  ●http://www.enpit.jp/entry/mailmagazine.html========================================================

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1.enPiT-Emb●名古屋大学事業の夏季合宿のご報告2.組込みシステム分野のイベントご案内3.enPiT●第4回シンポジウムのご案内

☆☆☆☆☆☆☆●1.enPiT-Emb●名古屋大学事業の夏季合宿のご報告●☆☆☆☆☆☆☆

組込みシステム分野(通称●enPiT-Emb)の名古屋大学事業では、8月24日~28日と

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1.第4回シンポジウムの参加登録を開始しました!2.平成27年度enPiT各コース成果報告会のお知らせ

☆☆☆☆☆☆☆●1.第4回シンポジウムの参加登録を開始しました!●☆☆☆☆☆☆☆

来たる2016年1月26日(火)につくば国際会議場において、enPiT第4回シンポジウムを開催します。本シンポジウムでは、実践的人材育成についての招待講演、および

図表3.2.5 平成27年度の広報物

■Twitter(@enpit_jp)、Facebook(enPiT.jp)主な対象:教員、学生各分野の活動やイベント情報を紹介

■Webサイト主な対象:大学教員、学生、企業教員や企業向けにアピールするこれまでの成果ページを作成

■ニュースレター主な対象:教員、大学[7号]発表会特集[8号]合宿特集[9号]●シンポジウム、●

若手座談会

■メールマガジン主な対象:教員、企業8号から19号の発行

105e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第3章 

分野を越えた実践教育ネットワーク形成

■大学向けパンフレット主な対象:大学教員、学生ポスターデザインに統一

■企業向けパンフレット主な対象:企業企業のアンケート結果や修了生の声をアピール

■ポスター主な対象:学生デザインを変更

■学生の声(小冊子)主な対象:学生修了生の声を追加

106 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

図表3.2.6 FDWG 会合

図表3.2.7 授業・演習に関する満足度

開催日 時間

第1回 平成27年5月20日 10:00~11:30

第2回 平成27年7月15日 13:30~14:30

第3回 平成27年9月7日 9:00~9:45

第4回 平成27年10月13日 9:30~10:00

第5回 平成27年12月2日 10:00~11:00

第6回 平成28年1月15日 10:00~11:00

FDWG 幹事:東京大学3 . 2 . 2

本WGは、合宿形式での集中演習や遠隔会議システムおよ

びクラウド等を活用した分散PBL等、実践的教育手法の改善

につなげていくための分野横断的FD活動を検討し、推進する

ことを目的としている。本年度の活動内容、成果、来年度の予

定を記す。

(1)活動内容平成26年度までに分野共通様式の講義評価アンケート・

演習評価アンケートの試行と本格開始、公開授業の実施拡大

と参加促進、2回目の関連教員交流会の開催等を実施した。

平成27年度も分野共通様式のアンケートの実施や公開授業

の運用、3回目の関連交流会の開催を実施している。さらに、

教員を対象としたFD講演会の企画実施、国立情報学研究所

主催の教員向けセミナーへの協力活動を実施した。これらの

活動の計画および遂行のため、年間を通じ6回のWG会合を

遠隔会議で開催した(図表3.2.6)。

■この科目・演習を受講して満足しましたか?

(単位:%)

やや不満だった不満だった

■この授業・演習の内容は自分にとって有益であると感じましたか?

(単位:%)

あまり感じなかったまったく感じなかった

■この授業・演習を受講して、興味を持ち、より深く学びたいと感じましたか?

(単位:%)

あまり感じなかったまったく感じなかった

■この授業・演習の受講を他の人に薦めたいですか?

(単位:%)

あまり薦められないまったく薦められない

満足したやや満足した

強く感じた少し感じたった

強く感じた少し感じた

強く薦めたい薦めてもよい

48.943.8

5.4

1.5

49.3

50.8

40.7

1.4

7.1 7.1

1.5

37.1

54.3

42.5

6.5

2.1

授業(N = 724)

授業(N = 722)

授業(N = 723)

授業(N = 722)

54.134.7

4.8

0.7

59.839.5 53.2

0.5

6.8 6.0

1.3

40.2

52.5

37.6

7.0

1.3

演習(N = 937)

演習(N = 935)

演習(N = 937)

演習(N = 936)

107e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第3章 

分野を越えた実践教育ネットワーク形成

(2)活動成果(1)で記した活動内容の成果について、共通アンケートの

実施状況から順に報告する。

科目に対する評価アンケートは大学のFD活動として日常

的に行われているものであるが、enPiTの教育の取り組みに

おいて、その項目や内容等については共通化がなされてい

なかった。アンケート項目や内容を共通化した共通アンケー

ト票を整備し、分野横断でアンケートを実施し、アンケート結

果を集計・分析することで、enPiTの実践教育における授業

や演習の良い点、要改善点についての全体傾向を明らかに

することができる。このようなねらいのもと、平成26年度から

本格的な共通アンケートを開始した。平成26年度に実施さ

れた授業・演習において合計92科目・1,661回答(授業:48科

目・724回答、演習:44科目937回答)の評価結果が得られた。

■この科目・演習を受講して満足しましたか?

(単位:%)

やや不満だった不満だった

■この授業・演習の内容は自分にとって有益であると感じましたか?

(単位:%)

あまり感じなかったまったく感じなかった

■この授業・演習を受講して、興味を持ち、より深く学びたいと感じましたか?

(単位:%)

あまり感じなかったまったく感じなかった

■この授業・演習の受講を他の人に薦めたいですか?

(単位:%)

あまり薦められないまったく薦められない

満足したやや満足した

強く感じた少し感じたった

強く感じた少し感じた

強く薦めたい薦めてもよい

48.943.8

5.4

1.5

49.3

50.8

40.7

1.4

7.1 7.1

1.5

37.1

54.3

42.5

6.5

2.1

授業(N = 724)

授業(N = 722)

授業(N = 723)

授業(N = 722)

54.134.7

4.8

0.7

59.839.5 53.2

0.5

6.8 6.0

1.3

40.2

52.5

37.6

7.0

1.3

演習(N = 937)

演習(N = 935)

演習(N = 937)

演習(N = 936)

平成26年度の報告書では、平成26年4月から9月までのアン

ケート集計結果を報告した。本報告書では平成26年9月以降

のアンケート結果も含めた平成26年度の集計結果をまず報

告する。満足度の評価では、すべての質問において、授業、演

習ともに肯定的な回答が90%を超える結果となっている(図

表3.2.7)。平成27年度では4月から9月の授業・演習において

合計40科目・1033回答(授業:23科目・507回答、演習:17科目

526回答)が得られている。回答結果は平成26年度とおおむ

ね同じ傾向となっているが、その具体的内容については、平

成27年度の回答がすべて揃った後に分析を行い、来年度の

成果報告書で報告することとしたい。

108 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

クラウドコンピューティング分野

システム開発プロジェクト基礎

システム開発プロジェクトクラウド応用

ソフトウェア開発演習成果発表会

ソフトウェア・クラウド開発プロジェクト実践II

クラウドアプリケーション開発演習

冬合宿

クラウド開発型プロジェクト

クラウド発展プロジェクト

継続的チーム開発演習

クラウド基礎PBL(合宿)(8/21の成果報告会)

クラウド発展PBL最終発表会

セキュリティ分野

ネットワークセキュリティ技術演習

デジタルフォレンジック演習

Capture●The●Flag●(CTF)入門と実践演習

情報セキュリティ運用リテラシーⅡ

セキュリティPBL演習C●(リスクマネジメント演習)

セキュリティPBL演習E●(IT危機管理演習)

ハードウェアセキュリティ演習

情報セキュリティ演習

情報セキュリティ技術特論

組込みシステム分野

合宿A

合宿B

発展コース成果発表会

基本コース成果発表会

前期PBL発表会

サマースクール後半(ESSロボットチャレンジ2015、ESS2015)

ビジネスアプリケーション分野

コラボレイティブ開発特論

アジャイル開発手法特論

産業技術大学院大学(AIIT)2015年度enPiTプログラム成果発表会

ビジネスサービスデザイン実践(デザインワークショップ)

ビジネスアプリケーション開発基礎演習

PBL型システム開発演習

連携大学教員数 参加大学教員数 その他参加者数

平成26年度 209 172 793

平成27年度(1月現在) 236 241 834

図表3.2.8 公開授業見学推奨科目

図表3.2.9 公開授業参加実績(のべ人数)

図表3.2.10 関連教員交流会プログラム

(単位:名)

次に公開授業に関わる活動について報告する。平成27年

度は88科目を公開授業とし、その中からFD活動として特に有

益と思われる22の授業・演習を見学推奨科目(図表3.2.8)と

し、enPiTの関連教員に周知した。さらにenPiTの関連教員以

外の教員参加も可とし、広報を行った。これらの公開授業に

対する参加実績(平成28年1月時点、のべ人数)を図表3.2.9に

まとめる。平成26年度と比較して参加教員の数を増やすこと

ができた。

最後に本WGで主催しているenPiT関連教員交流会等のイ

ベント活動状況について報告する。

●●enPiT関連教員交流会本交流会は分野、大学をまたがる関連教員の交流を促進

する場を提供することを目的に開催するもので、今年度で3

回目の開催となる。平成28年1月25日に、つくば国際会議場に

て開催し、30名強の関連教員が参加した。図表3.2.10が交流

会のプログラムである。

最初の基調講演では、東京大学大学院情報理工学系研究

科長の坂井修一教授から「東京大学における実践的情報教

育協働ネットワーク(enPiT)のあゆみ」というタイトルで講演

をいただいた。本研究科では平成13年からさまざまな人材

育成プログラムが実施されてきた。それらの教育プログラム

の流れを振り返った後に、戦略ソフトウェア創造人材育成養

成プログラムや情報理工実践プログラムなどenPiTに至る実

践的人材育成プログラムの紹介があった。現在では就職先と

して民間企業の事業部門に就職する卒業生も多くなり、起業

志向の学生も増えているとのことである。実践的教育の重要

性はますます増している中、実践的人材育成を担える教員の

13:30 開会

13:40 基調講演「東京大学における実践的情報教育協働ネットワーク(enPiT)のあゆみ」東京大学大学院情報理工学系研究科長

坂井修一

15:00 enPiT関連教員によるマシンガントーククラウドコンピューティング分野

セキュリティ分野

組込みシステム分野

ビジネスアプリケーション分野

17:30 閉会

18:30 情報交換会

109e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第3章 

分野を越えた実践教育ネットワーク形成

●●国立情報学研究所主催の教員向けセミナーへの協力活動国立情報学研究所ではクラウド技術に関する教員向けセ

ミナーを実施している。enPiT教員にも有用な内容であるた

め、関連教員に対し、参加募集を周知した。

「AmazonWebServicesを用いたクラウドシステムアーキテクチャ設計入門」

日時 平成27年8月3日~7日場所 国立情報学研究所

「クラウドを活用したモバイルアプリケーション開発実習」日時 平成28年1月29日場所 国立情報学研究所

(3)来年度の予定従来実施してきた共通アンケート、公開授業の運営および

参加促進、関連教員交流会は平成28年度も継続していく予定

である。さらに本年度開始した新たな教員向けイベントを充

実する等、教員の実践教育力の向上に資する活動を進めて

いきたい。

FDWG

平木敬、小林克志(東京大学)

大久保隆夫(情報セキュリティ大学院大学)

久住憲嗣(九州大学)

飛田博章(産業技術大学院大学)

櫻井浩子(大阪大学)

粂野文洋(国立情報学研究所/日本工業大学)

育成が急務の課題であると指摘された。

基調講演に続いて、マシンガントークと称するトークセッ

ションが行われた。マシンガントークは、enPiTの特任教員が

まさにマシンガンのように連続してトークを行うセッションで

ある(一人あたりの持ち時間は5分+α)。一昨年の関連教員

交流会でも同じ形式のセッションを開催しているが、このとき

には自らの経歴、これまでの教育実践で感じたこと、研究内

容等、自己紹介を兼ねた内容のトークが中心であった。今回

のセッションでは、enPiTの一環で実施された海外プログラム

の報告、最新の演習内容の紹介、自らの教育活動に対する振

り返り、教育実践の経験をきっかけとした研究等、enPiTでの

教育実践経験を踏まえたさまざまな内容のトークとなった。

●●教員を対象としたFD講演会他分野での実践教育の手法や動向を学ぶことを目的に次

の講演会を実施した。日時 平成28年2月10日場所 東京大学工学部講演題目 医学教育のおける最近の動向:プロセス重視から

アウトカム基盤型教育への変化講演者 東京大学大学院医学系研究科医学教育国際研究

センター●

孫大輔講演概要 わが国の医学教育においては近年大きな変革が

続いている。PBL(problem-based●learning)など

のアクティブラーニング、模擬患者を利用したコ

ミュニケーション技能教育やシミュレーション教

育、OSCE(客観的臨床能力試験)などの技能試験

の導入などである。その背景には、社会からの医

学教育へのニーズの変化、教育学的な基盤の変

化、情報の膨大化などがある。現在、わが国の医

学教育は、プロセス重視からアウトカム基盤型教

育へと大きな変貌を遂げつつあるといえる。今回

のセミナーでは、近年の医学教育の変革の概要と

今後の展望について解説する。

図表3.2.11 関連教員交流会の様子

110 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

評価・産学連携WG 幹事:名古屋大学3 . 2 . 3

(1)目的enPiTの教育目標は「最先端の情報技術を実践的に活用

することができる人材育成」におかれている(http://www.

enpit.jp/)。そこで、enPiT評価・産学連携WGでは、その活動の

目的を、enPiT受講生が「最先端の科学技術を実践的に活用

することができる人材として育成されたか」を評価することに

設定した。

(2)体制構築評価を実施するためにenPiTの各分野から最少で1名の、

合計6名を選出した。さらに事務局として2名を置き、合計8名

で評価・産学連携WGを構成した。今年度は、平成28年1月ま

でに4回のWG会議を開催した。

(3)情報技術の実践力評価・産学連携WGは最初に、「実践的に活用」されること

が期待される能力について検討した。結果、評価・産学連携

WGでは、単に知識を記憶する能力にとどまらず、知識や技能

を問題解決に適用する能力が期待されると考えた。特に、社

会が要求する「実践力」は、定量的な問題ではなく、より複雑

な問題を解決する能力であると考えられる。評価・産学連携

WGは、前述のような視点からenPiT受講生の実践力を評価

することを目的とした。

平成27年度に実施した3種類の実践力の評価活動、「自己

評価の測定」「行動特性の計測」「修了生アンケート分析」を順

に報告する。

(4)自己評価の測定FDWGが実施する演習科目受講後の受講生アンケートの

場を借りて、自己評価を問うた。設問項目は「この演習を受講

する前に比べて、演習で学んだ技術の実践力(技術を適用す

る能力)が高くなったと感じますか?」であり、「まったく感じな

かった」「あまり感じなかった」「少し感じた」「強く感じた」の4

肢選択で回答を求めた。のべ500名の有効回答があり、図表

3.2.12に示すように、「強く感じた」と「少し感じた」の合計が

90%を占めた。

自由記述欄には、実践力に対する自己評価の高まりを示す

次の回答があった(原文をそのまま表記)。

●●実践的かつ刺激的で、取り組んでいる期間中、充実感がと

ても感じられた。

●●実践的な内容の演習を手とり足とり教えてもらえるのは、

学生にとってはとてもありがたいです。

(単位:%)

34.0

56.0

9.0

1.0

■この演習を受講する前に比べて、演習で学んだ技術の実践力(技術を適用する能力)が高くなったと感じますか?

(N = 500)

あまり感じなかったまったく感じなかった

強く感じた少し感じた

図表3.2.12 実践力の自己評価 図表3.2.13 PROGコンピテンシーの能力要素

課題発見力

計画立案力

実践力

感情制御力

自信創出力

行動持続力

親和力

協働力

統率力

対課題基礎力

対自己基礎力

対人基礎力

総 合

111e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第3章 

分野を越えた実践教育ネットワーク形成

1回目2回目

凡例7

6

5

4

3

2

1

0

**PROGテスト平均点

総合

注:** p < .01

**

対人基礎力

**

対自己基礎力

**

対課題基礎力

図表3.2.14 PROGコンピテンシーの得点変化

●●就職後にも大変役に立つ演習でした。

これらのことは、enPiTの特徴である分散PBLとして実施す

る演習科目の受講内容が、実践力の向上を促しており、受講

生の9割が実践力の向上を自覚することを示している。

(5)行動特性の計測平成27年度も引き続き、PROG(Progress● Report● on●

Generic●skills)テストをenPiTの受講前と後の2回実施して、コ

ンピテンシー(行動特性)の成長を測定した。ただし、本報告

書の執筆段階では、平成27年度のenPiT受講後のテストがす

べては完了していない。そこで、本報告書では、平成26年度の

分析結果を報告する。

PROGのコンピテンシー計測は、マーク式の251問を40分

間で解き、望ましい社会人のモデルとの差が点数化されるよ

うに設計されている。PROGでは、コンピテンシーを、全体的

な能力を表す「総合」としてまとめた上で、「対人基礎力」、「対

自己基礎力」、「対課題基礎力」の3つに分け、さらにその下位

に3種類ずつの能力要素を配置し、合計13種で構成している

(図表3.2.13)。各評価項目は、1から7までの7段階(7が最高)

で採点される。

情報技術を実践的に活用して社会の問題解決に取り組

むには、他者とのコミュニケーション能力に加えて、リーダー

シップ力や課題発見力などのコンピテンシーが高いことが求

められる。そこで、enPiTの受講前後に合計2回PROGテストを

実施し、コンピテンシーの得点変化を分析し、教育効果を測

定する。

行動特性は、PROGテストを2回実施して、その差を評価す

ることとした。1回目のテストは、平成26年5月9日から7月23日

にかけて行われた。2回目のテストは、平成27年1月5日から平

成27年2月23日にかけて行われた。テスト実施時期に幅があ

る理由は、大学ごとに分散PBLを行う時期や期間が異なるた

めである。

PROGテストの受検者は、1回目の受検者数が339名、2回目

が284名であり、1回目と2回目をともに受検した修士生230名

のコンピテンシーの採点結果を分析対象とした。230名の内

訳は、クラウドコンピューティング分野33名、セキュリティ分

野63名、組込みシステム分野41名、ビジネスアプリケーション

分野93名であった。

得点分布に正規性が確認できなかったので、符号付き順

位検定で2回の得点の差を検定した。その結果、すべての項

目で、2回目の得点が1回目に比べて有意に高いことが確認さ

れた(p●<● .01)。図表3.2.14には、「総合」、「対人基礎力」、「対

自己基礎力」、「対課題基礎力」の得点変化を抜粋して示す。

さらに、分野別の分析においても総合評価がすべての分野

で有意に高くなったことを確認した(組込みシステム分野で

はp●<●.05、その他の分野ではp●<●.01)。

以上のように、enPiTの受講によりコンピテンシーの得点が

有意に高まることが、PROGを用いた計測によって確認され

た。このことは、enPiTの受講により、情報技術の実践力に必

要な能力要素が成長したことを示している。

(6)修了生アンケート分析平成26年度にenPiTを受講した修士課程修了生に対して、

平成27年10月15日から11月30日の間に、アンケートを実施し

た。アンケートは、修了生向けとその上司向けの2種類を用意

し、修了生に対して、上司へのアンケート協力を依頼した。ア

ンケートは、HTTPSで暗号化されたWebサイトを用いて無記

名で行われた。

修了生向けのアンケートは、就職先企業の業種や、enPiTの

教育が現在役立っているかなど合計12問であった。上司向け

のアンケートは、enPiTの修了生と同期の他の新入社員との

比較やenPiTに対する要望など合計7問であった。いずれも回

答は、選択式で、一部を自由記述式で求めた。

有効回答数は、修了生が93名、上司が26名であった。

修了生に、enPiTの経験が就職活動に有益であったか否か

を、「大いに役立った」、「役立った」、「あまり役立たなかった」、

「役立たなかった」、「わからない」の5段階で問うたところ、

27%が「大いに役立った」、37%が「役立った」と回答し、合計

64%が役立ったと評価している。さらに、同期の社員と比べた

IT実践力の自己評価は、「高い」が15%、「やや高い」が39%で

あり、合計54%が高いと判断している。特に、「協働力」と「IT技

112 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

優れているやや優れている

同じやや劣っている

劣っている

0 20 40 60 80 100

親和力

協働力

統率力

感情制御力

行動持続力

課題発見力

計画立案力

実践力

IT技術知識

IT実践力

(単位:%)

19.2 23.1

15.4 38.5

7.7 34.6

7.7 38.5

23.1 38.5

19.2 46.2

19.2 30.8

11.5 42.3

65.4 23.1

42.3 38.5

術知識」に対する自己評価が高かった。

他方、上司に他の新入社員との比較を求めたところ、enPiT

修了生の方が、「協働力」、「行動持続力」、「課題発見力」、「実

践力」、「IT技術知識」、「IT実践力」の項目で、「優れている」

もしくは「やや優れている」の回答が過半数を占めた(図表

3.2.15)。

以上から、情報技術の実践力を育成するenPiTの目的は、

修了生の自己評価と上司による他者評価の双方で成果が実

感されていると考えられる。enPiTの教育目的が達成されてい

ることを確認した。

(7)産学連携活動平成27年11月25日に、独立行政法人情報処理推進機構

(IPA)および一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協

会(JUAS)の協力のもと、「IT実践教育会議2015」を国立情報

学研究所にて開催した。本会議の目的は、「学」と「産」で行わ

れている「実践教育の事例」を共有し、相互に情報技術の実

践教育を推進することにあった。enPiT側から12名、独立行政

法人情報処理推進機構(IPA)を含む企業側から10名が出席

し、各々4件の教育事例と、評価・産学連携WGの取り組み1件

を発表し、意見交換を行った。

教育事例として、enPiT側からは、4分野で行われている分

散PBLについて報告された。企業側からは、情報技術は進歩

が早く教育内容が早期に陳腐化するので、随時、新しい技術

テーマを取り上げて、技術者が自主的に勉強会を開催してい

る事例や、学習のモチベーションを高めるために組織の風土

を整備する必要性などが報告された。

意見交換では、実践力を高めるために、知識教育だけでは

十分ではなく、意識的にコンピテンシーを育成する必要があ

ることが指摘された。

(8)まとめ平成27年度に実施した評価活動で、enPiTの受講生は受講

前に比べてIT実践力を高めていることを確認した。さらに、修

了生の上司も、enPiT修了生のIT実践力を認めていることを確

認した。

産学連携の活動では、ユーザ企業を含むIT企業と、IT実践

力の教育事例を相互に発表し合った。そして、IT実践力には、

情報技術の知識に加えてコンピテンシーが必要であると、企

業側が考えていることを確認した。

本分析結果を情報処理学会●コンピュータと教育研究会

133回研究発表会で発表した。

(9)来年度の予定コンピテンシーの成長に関して、調査を継続する。

評価・産学連携WG

山本雅基、海上智昭(名古屋大学)

小林隆志(東京工業大学)

奥野拓(公立はこだて未来大学)

宮地充子、春名修介、櫻井浩子(大阪大学)

粂野文洋(国立情報学研究所/日本工業大学)

図表3.2.15 上司による評価:enPiT修了生と他の新入社員との比較

113e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第3章 

分野を越えた実践教育ネットワーク形成

教務WG 幹事:筑波大学3 . 2 . 4

(1)経緯とミッション教務WGはenPiTの4つの分野間の、特にカリキュラムに関

する相互交流を行うために平成25年3月に組織されたもので

ある。このため、主要なミッションとしては次の2つがある。

(Ⅰ)分野横断講義の企画・実施

(Ⅱ)カリキュラム関係資料の蓄積・整備

(2)平成27年度活動実績本年度は遠隔会議システムを用いて、6回(平成27年5月12

日、7月7日、9月7日、11月5日、平成28年1月14日、3月3日)の会

議を実施した。各分野(大学)におけるカリキュラム内容や教

材整備状況等について昨年度からの比較調査の上、分野横

断講義候補リストの更新とそれに基づく(Ⅰ)分野横断講義

の企画・実施を行い、次の2分類の講義を実施した。

A分野によらず必要な汎用的内容の講義B各分野の特任教員によって提供される特色ある講義

Aについては、●●「ロジカルシンキング」に関する講義●

ビジネスアプリケーション分野●

→セキュリティ分野

●●「プレゼンテーションスキル」に関する講義●

クラウドコンピューティング分野●

→ビジネスアプリケーション分野

●●「ドキュメンテーション」に関する講義●

組込みシステム分野●

→ビジネスアプリケーション分野

●●「ファシリテーションスキル」に関する講義●

組込みシステム分野●

→クラウドコンピューティング分野、ビジネスアプリケー

ション分野

の4種類(5講義)を企画・実施した。昨年度は3種類(4講義)

だったが種類数、講義数ともに増やした。

また、Bについては、●●「クラウドエクストラ」●

クラウドコンピューティング分野●

→ビジネスアプリケーション分野、セキュリティ分野

●●「ハードウェアセキュリティ入門」●

セキュリティ分野●

→組込みシステム分野

●●「最新情報セキュリティ理論と応用 システム編」●

セキュリティ分野●

→ビジネスアプリケーション分野

●●「アジャイルソフトウェア開発」●

ビジネスアプリケーション分野●

→クラウドコンピューティング分野

●●「ビジネスアプリケーションのためのデータサイエンス

入門」●

ビジネスアプリケーション分野●

→クラウドコンピューティング分野

●●「スクラム開発入門」●

ビジネスアプリケーション分野●

→クラウドコンピューティング分野

の6種類(7講義)を企画・実施した。こちらも昨年度の4種

類(7講義)に対し、講義数は同じであるが、種類を増やして

いる。(これらの分野横断講義の実施実績等の詳細について

は、2.5節参照)。

なお、これら以外にも、クラウドコンピューティング分野と

ビジネスアプリケーション分野がテレビ会議システムを用い

て共同で分散PBLを実施するなどの取り組みも行われた。 

さらに、セキュリティ分野の科目の多くは、登録を行うこと

で、他分野の学生でも遠隔受講(同時、または蓄積)が可能と

なっており、クラウドコンピューティング分野では本年度より

ネットワークセキュリティに関する科目(蓄積)を学生に案内

し自主学習として受講させている。

また、組込みシステム分野の名古屋大学附属組込みシステ

ム研究センターの「社会人組込み技術者向けの公開講座」を

本年度よりenPiT全分野の受講生に無料で受講可能とする取

り組みも昨年度から継続実施されている。

これらを含めた「分野横断講義」については各分野の受講

生に積極的に履修を進めるよう広く案内している。

次に、(Ⅱ)カリキュラム関係資料の蓄積・整備については、

継続して進めた。教材については著作権等の問題が生じるた

め一般公開はせず、文部科学省の担当者や本事業の評価委

員を含めた関係者のみ閲覧可能な方針とした。また、教材を

はじめとする各種のカリキュラム資料は、随時更新されるた

め、閲覧用データファイルそのものを教務WGで管理するの

ではなく、ファイル自体は各分野や連携大学のサーバで蓄積

し、そのリンクを集めたページを国立情報学研究所のサーバ

(Wiki)上に整備している。

また、カリキュラム関係の資料整備と関連して、本年度より

自習用e-learning教材の作成についての検討を始めた。各分

野で平成28年9月末をめどに、図表3.2.16の通り少なくとも一

つは整備する方針で作業を進めている。

分野 候補講義内容

クラウドコンピューティング分野

WEBアプリフレームワーク、テスティング手法 等

セキュリティ分野 アーカイブ用に作成した各種講義

組込みシステム分野 ロボットの制御手法、文脈指向プログラミング手法 等

ビジネスアプリケーション分野

Javaプログラミング、UML、システム開発技法、プロジェクトマネジメント等に関する基礎知識

図表3.2.16 e-learning教材作成候補

114 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

(3)平成28年度活動計画次年度も、遠隔会議システムを有効に使いながら定期的

に会合を行い、(Ⅰ)分野横断講義の本格的な実施と(Ⅱ)カ

リキュラム関係資料の継続的な蓄積・整備、ならびに自習用

e-learning教材の整備を進めていく予定である。

なお、平成27年度に複数の分野(クラウドコンピューティン

グ分野とセキュリティ分野など)の科目に履修登録を行う学

生が現れた。これらのマルチ分野受講生に対し、無理のない

カリキュラムや修了要件等になるような分野間での調整や対

応も行っていく。

教務WG

河辺徹(筑波大学)

小出洋(九州工業大学)

曽根秀明(東北大学)

毛利幸雄(九州大学)

末永俊一郎、吉岡信和(国立情報学研究所)

女性部会 幹事:大阪大学3 . 2 . 5

女性IT技術者の育成のためのネットワーク形成を目

指し、平成26年4月に女性部会(Women● in● Information●

Technology:●WiT)が設立された。enPiTにおける女性部会の

活動目標は、①女子学生・女性教員のネットワーク形成、②女

性IT技術者への関心を高める、③女性IT技術者育成の支援策

を提案することである。

(1)活動の概要女性部会では、定例会やワークショップ、女子中高生向け

イベントへの参加、学会での啓蒙普及活動を行った。これら

の活動を行うため、平成27年度は部会会議を5回(平成27年7

月13日、10月1日、11月24日、平成28年1月12日、3月(予定))開

催した。

(2)体制女性部会は、enPiT女性教員6名に、アドバイザーとして國

井秀子先生、enPiT男性教員5名で構成されている。

(3)活動成果本年度の活動内容と成果は、次の通りである。企画の案内

や活動の報告は、女性部会ホームページ(http://enpit-wit.

jimdo.com/)や、Facebook(https://www.facebook.com/

enpit.wit/info)、Twitter(https://twitter.com/enPiT_WiT)を

活用し、発信した。

①定例会の開催第3回定例会は平成27年5月27日に、「女性IT技術者の活

躍!」をテーマに、情報系学科を卒業して現在エンジニアま

たは実業家として活躍している二人の女性に講演してもらっ

図表3.2.17 定例会の様子

た。当日は、お茶の水女子大学をメイン会場としてTV会議を

用い、enPiTの連携大学である公立はこだて未来大学、筑波

大学、東京工業大学、慶應義塾大学、名古屋大学へ配信した。

31名が参加した。

まず、enPiT修了生で公立はこだて未来大学を卒業し、現在

は新日鉄住金ソリューションズ株式会社●システム研究開発セ

ンターに勤務されている坂井麻里恵氏からは、enPiTを受講

の経験が現在の仕事にどう役立ったのかなどについて聞い

た。次いで、お茶の水女子大学から東京大学大学院に進み、

友人とともに会社を起ち上げ、現在はシンガポールにて株式

会社シナモンを経営している平野未来氏からは、起業への道

のりや、仕事をするうえで大事なことなどについて聞いた。参

加者からは職場の様子や働き方について質疑応答があった

(図表3.2.17)。

第4回定例会は、平成27年12月17日に、「未来の”ふつう”~

これからのワークプレイスを考える~」をテーマに、東京工業

大学卒業生の二人の女性から「IT業界で働く」ということにつ

いて講演をしてもらった。東京工業大学をメイン会場とし、今

回もTV会議を用い、公立はこだて未来大学、筑波大学、慶應

義塾大学、名古屋大学へ配信した。10名(うち男性4名)が参

加した。

Milliman,● Inc.でコンサルタントとして活躍される松山科子

氏からは、現役で働き続けることや、社会人大学院生として博

士学位を取得したプロセスや仕事と勉学の両立、時間のやり

くりの工夫などについて聞いた。次いで、enPiT修了生で、株

式会社野村総合研究所就職後、現在、エヌ・アール・アイ・セ

キュアテクノロジーズ株式会社で営業を担当されている齋

藤真理子氏からは、セキュリティ・コンサルタントやセキュリ

ティ・エンジニアとしての経験、現在の業務や仕事と家庭の両

立について聞いた。そして、参加者とともに、特に国や職場の

子育て支援の取り組みの状況や課題について意見交換をし

た。

②ワークショップ 「電子工作でクリスマス飾りを作ろう会」開催平成27年11月7日、株式会社アニメイトラボにて、ワーク

115e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

第3章 

分野を越えた実践教育ネットワーク形成

ショップ「電子工作でクリスマス飾りを作ろう会」を開催した。

本ワークショップの目的は、参加者同士の交流による①女

子学生・女性教員のネットワーク形成、②近年注目を集めて

いる電子工作を題材にし、女子学生だけでなく、男性や親子

の参加も可能とすることで、WiTワークショップを通じて女性

IT技術者とワークライフバランスを考えるきっかけとする。講

師は、女性部会メンバーでもある公立はこだて未来大学の木

塚あゆみ氏にお願いをした。下は3歳から上は小学4年生ま

で5組の親子も参加し、総勢29名が参加した。実施にあたり、

技術アドバイザーとして筑波大学のenPiT修了生2名を雇用

した。

ワークショップでは、光センサーのついたクリスマスハウ

スを作ったり(初級者コース)、Arduinoを使って、LEDライトと

音を制御するプログラムを作ったり(上級者コース)した。参

加者からは「面白かった」、「またやりたい」、「次はもっと難し

いのを出来るようになりたい」との声が寄せられ、ITに興味を

持ってもらえた(図表3.2.18)。

ただし、前年度同様、enPiT関係者の参加が少なく、特に学

生に参加してもらうためにはどうしたらよいか、一層の工夫

が必要である。

③女子中高生への啓蒙平成26年度に引き続き、平成27年8月6日~8日まで、国立

女性教育会館で開催された「女子中高生夏の学校2015~科

学・技術・人との出会い」に参加した。女性部会では、「ITに関

わるお仕事 働き方のイロイロ」というテーマで、情報科学

系への進路に関する相談を受けたり、女性IT技術者のキャリ

ア選択を描いたチラシを学生たちに配布した。また、enPiTや

女性部会の活動紹介もした。

④女性IT技術者の働き方に関するWebアンケートの実施女性IT技術者の実態やキャリア選択の課題を抽出するた

めに、Webアンケートを行う。アンケートには、男性にも回答

してもらう。スケジュールは、2月にアンケートを実施、3月に分

析・検討を行う。

⑤学会での啓蒙普及●●一般社団法人経営情報学会 2015年春季全国研究発表

大会(平成27年5月31日、日本大学)●

「女性IT技術者のキャリア課題とアジャイル型キャリア開発

の提案」森本千佳子・渡辺知恵美・櫻井浩子・木塚あゆみ・

永瀬美穂

●●一般社団法人日本ソフトウェア科学会●雑誌(32巻2号)特集

「女性研究者」への寄稿

「女性研究者・技術者の本音トーク」渡辺知恵美・森本千佳

子・中島明日香・木塚あゆみ(座談会)

「女性IT技術者支援:「分野・地域を越えた実践的情報教育

協働ネットワーク」女性部会WiTの取組み」櫻井浩子(論

文)

(4)来年度の予定来年度は、定例会の継続開催に加え、国立女性教育会館主

催の「女子中高生夏の学校」での実験・実習、電子工作を使っ

たワークショップを行う予定である。また、Webアンケートの

結果を踏まえ女性IT技術者支援として必要な取り組みを考え

ていきたい。

女性部会

櫻井浩子(大阪大学)

森本千佳子(東京工業大学)

渡辺知恵美(筑波大学)

木塚あゆみ(公立はこだて未来大学)

永瀬美穂(産業技術大学院大学)

中島明日香(奈良先端科学技術大学院大学/NTTセキュアプ

ラットフォーム研究所)

アドバイザー:國井秀子(enPiT外部評価委員、芝浦工業大

学)

図表3.2.18 ワークショップ「電子工作で クリスマス飾りを作ろう会」の様子

116 e n P i T A N N U A L R E P O R T 2 0 1 5

なお、第1部と第2部の講演発表に加えて、受講生によるポ

スター発表も開催された。午前10時から合計17のプロジェク

ト成果や演習の体験談等、非常にバラエティに富んだ内容の

発表であった。

シンポジウムの後に情報交換会が開催された。情報交換

会には学生26名を含む79名が参加した。第2部の発表やポ

スター発表に関し、学生や教員との間で多くの活発なディス

カッションがあった。

3 . 3 全体シンポジウム

本事業の成果を公開・発表するenPiT第4回シンポジウム

を、平成28年1月26日につくば国際会議場にて開催した。プロ

グラムは図表3.3.1の通りである。

参加者数は144名となり、大学からは114名(学生を含む)、

企業等からは30名の参加となった(図表3.3.2)。

第1部の最初の招待講演「デジタルビジネス革命に立ち向

かおう!」では、特定非営利活動法人●CeFILの横塚裕志氏より、

「デジタル化」による新しいビジネスモデルが破壊的に出現

する現在の大転換期を企業が生き抜くための方策として、経

営者・戦略策定スタッフが自ら世界の最新状況や事例を学

び、新しい顧客価値を提供し続ける能力を組織として育む必

要性をご紹介いただいた。さらに、そのような活動を支援す

るために大学と産業界が今後連携してイノベーションの支援

を確実に行う組織として、デジタルビジネスイノベーションセ

ンターの役割についてご講演いただいた。また、2つ目の招

待講演「イノベーションを生み出すマネジメントスタイル」で

は、C●Channel株式会社●代表取締役●森川亮氏より、新しい価

値を生み出すための方策として、管理に基づいて安定的かつ

低コストでものを製造する従来のやり方から、高くても新しい

ものを生み出すようなやり方に変える必要性をご紹介いた

だき、新しいものを生み出す組織やマネジメントはどうある

べきか提言していただいた。どちらの招待講演もキーワードは

「イノベーション」である。イノベーションを生み出す人材の

育成がますます重要となることを示唆した講演であった。

第2部ではまず4分野のenPiT受講生が登壇し、続いて各分

野代表から4分野の状況報告があった。受講生からの発表内

容は、プロジェクト演習で実装したクラウドサービスシステ

ムのデモンストレーション、ハードウェアセキュリティ演習や

デジタルフォレンジック演習の体験談、お掃除ロボットの開

発および研究への発展、友人と勉強時間を共有・管理するス

マートフォンアプリ(加速度センサ付のペンを併用)のデモン

ストレーションであった。4分野の状況報告は本報告書の2章

である分野報告のサマリといえるものであった。

13:00~

13:10

●開会の挨拶

enPiT代表 大阪大学大学院情報科学研究科

教授 井上克郎

13:10~

13:20

●文部科学省 挨拶

文部科学省 北山浩士

[第1部]招待講演

13:20~

14:00

デジタルビジネス革命に立ち向かおう!特定非営利活動法人●CeFIL 理事長 横塚裕志

14:00~

14:40

イノベーションを生み出すマネジメントスタイルC●Channel株式会社●代表取締役 森川亮

[第2部]enPiT平成26年度活動報告

14:55~

16:35

各分野学生発表

●クラウドコンピューティング分野

●セキュリティ分野

●組込みシステム分野

●ビジネスアプリケーション分野

16:35~

17:00

各分野代表発表

17:00~

17:10

●閉会の挨拶

 筑波大学大学院システム情報工学研究科

 研究科長 北川博之

図表3.3.1 enPiT第4回シンポジウム プログラム

図表3.3.2 enPiT第4回シンポジウムの様子

Education Network for Practical Information Technologies

発行:�大阪大学大学院情報科学研究科�enPiT事務局

〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-5T E L ▶ 06-6879-4395F A X ▶ 06-6879-4649U R L ▶ http://www.enpit.jp/E-mail ▶ [email protected]

分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク

●平成27年度 成果報告書

enPiT運営委員会

AN

NU

AL

R

EP

OR

T

20

15

平成27年度 成果報告書

enPiT運営委員会大阪大学、東北大学、筑波大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、神戸大学、九州大学、九州工業大学、北陸先端科学技術大学院大学、

奈良先端科学技術大学院大学、公立はこだて未来大学、産業技術大学院大学、慶應義塾大学、情報セキュリティ大学院大学

文部科学省 情報技術人材育成のための実践教育ネットワーク形成事業

分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク

組込みシステム分野セキュリティ分野 ビジネスアプリケーション分野クラウドコンピューティング分野

Education Network for Practical Information Technologies

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